「ふんふふふ〜ん♪」
雪解け水が草木を育て花を咲かせるこの頃、皆様どうお過ごしでしょうか。僕は春アニメに期待を膨らませています。最近は異世界に転生するアニメが多いのは、僕への当て付けか何かなのかな?
機嫌が良いように見えるのは何故かって?そりゃ僕ももう2年生だからね、後輩が出来たわけよ。
「ご機嫌ですね」
「ええ、マリーさん」
伊落マリー。新しくシスターフッドに入った1年生で、とってもいい子だ。礼儀正しく、優しく、そして何より目にいい。
「マリーさん、ワタクシたちはずっと同志ですよ?」
「は、はい?ええっと……そうですね?」
ヒナタといいサクラコといい、声フェチもそうだけど……今思えばハナコも!どうしてどいつもこいつも人を馬鹿にしたようなバストサイズなんだ?僕はこの1年で微塵も成長しなかったというのに。
それに比べてマリーのこの慎ましい体よ。こういうのでいいんだよこういうので。マリーは不思議そうな表情をしているけど、僕達は心で通じ合っているからね。
「ああ、そういうことでしたか!」
突然、マリーが表情を明るくしてこちらを見た。え、何?どういうこと?
「先程サクラコ様が仰られていたことですね?」
「ごめんなさい、ワタクシは何も聞かされていないんですけど……」
「あ、あれ?サクラコ様が近々私たち2人に仕事を任せることになると仰っていたのですが……」
「な、なにそれ!?聞いてなくてよ!?なん、なんの仕事ですの?」
「それが、その時になればわかるとしか……」
「……あの人らしいですわね」
当然僕も仕事の内容は知らない。まあ『時が来ればわかる』とか正直かなりかっこいいけど、現実でやられると結構迷惑だな。
サクラコもアニメ好きなんだろうなきっと、今度好きなアニメとか聞いてみようかな。
「まあ、その時になったらまたよろしくお願い致しますわ」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
んー、いい子。動物の耳とか着いてるし、撫で回したくなる。獣人って結構動物寄りの行動しがちだけど、この世界ではあんまりそんな事ないのかな?四足歩行してる子とかこの世界じゃあんまり見ないし。
サクラコが言ってた仕事の内容は気になるところだけど、どうせ教えてくれないしいいや。今日の僕の仕事に戻るとしよう。
「そちらは、古文書ですか?」
「はい、ヒナタさんから預かっていまして。これを資料室に運んでおいて欲しいとのことです」
「なるほど。さっき熟読されていたということは、クララさんは内容がわかるんですか?」
「あ、あー……まあ雰囲気くらいはなんとか、ですわ」
「すごいですね!それにはどんなことが書いてあるんですか?」
「施設の利用者と日付が書いてありましたわね。きっと記録のたぐいでしょう。ハズレですわ」
「え、えぇ!?ハズレなんですか?」
「ワタクシはもっと古代の技術とかが見たくて盗み読み……じゃなかった、検閲しているんですわ。まあ一応最後まで読みますけれど、この手の書物は大体ハズレですわね」
「そうなんですね……」
あくまでシスターフッドのお仕事だからね。危ない危ない。
「では、私はこれで」
「はーい、またですわー」
次の仕事があったのだろう。マリーは一通り話が終わったあとにその場を後にした。
まあ別に、胸の大きさとか気にしてないけどね。マリーに親近感が湧いたのは決してそういうアレじゃないし。でも将来もしマリーがナイスバディになったら僕は1週間寝込む。
しかし、シスターフッドは歴史を重んじる集団。お世辞にも深く知っているとは言い難い僕と新入生のマリーだけに任せる仕事なんてあるんだろうか。今でも遺跡などの調査は先輩にあたる生徒と一緒にしか行ったことないし、それ以外の重要な仕事は既存の資料を整理したりするだけだ。
そんなことを考えながらフラフラ歩いていると数人のシスター達が話しているのが見えた。別に会話に混ざるつもりはないけれど、その会話は聞こえてきてしまう。
「…………て、本当にあの方が?」
「正義じ…………聞いたので、おそらく……」
ただ、意識的に声を抑えているのだろう。ところどころ聞き逃しが発生して逆に聞き耳を立ててしまう。
「まだまだ夜は肌寒い季節でしょうに、一体どうして……」
「というか、水着で徘徊すること自体がおかしいと思うのですが……」
「それは、その通りですが」
水着で徘徊?ようやく春になろうというこの時期に?
まあ水着なんてよく作るね文明人はって思ってたけど、水泳用ではなく出かける時に着るのはこう……なんで?どういう意図で?全然わかんない。
「しかしやはり、何かの間違いなのでは?」
「私もそう思いましたが、何度聞き返しても同じ答えが返ってくるだけでした」
「そう、ですか……何かあったのでしょうね」
「ええ、そうに違いありません」
不穏すぎる会話の横を何食わぬ顔で通ると途端に彼女たちは表情を変えてそそくさと退散した。そんなに聞かれたくなかったのかい。
なんかシスターって高潔というか、違う世界の人みたいな感覚あったけどこの世界では普通の女の子だよね。俗っぽいって言うんだっけ?
「それはまあ、聞かれたくないでしょうね」
「うおあああっ!?!?」
後ろ、それも至近距離から突然話しかけられて思わず飛び上がった。ていうか結構な声出ちゃった。犯人の声フェチはそんな大声を出した僕に驚いた様子もなく、ただ少し心配そうな表情でこちらを見つめていた。
「お、驚きましたわ……」
「それが目的でしたからね」
ウインク。いやいやそんなイタズラ成功みたいな顔されても。
「それで、何か用ですか?」
「ええ、貴方に伝えることがあって探していました。といっても、クララさんにとってはあまりいい知らせではないでしょうけれど」
「先日、クララさんのご友人の浦和ハナコさんが正義実現委員会に拘束されました。罪状は深夜の校内において水着姿で徘徊していたこと……つまりは不審な動きをしていたとして何かしらの疑いを持たれたのでしょうね」
「…………はい?」
「あの方たちが話していたのはその件についてでしょう。おそらく名前は聞けなかったのでしょうが、クララさんは知っておいた方がいいと判断して伝えに来ました」
「……………………はい?」
お願いだから聞き間違いであって欲しい。
エタったりしない、ワタシウソツカナイ。