こんばんは。イチゴころころです。
今日は久しぶりの分割投稿です。
そういえば最初の頃は「開店準備編が第1話で~……」みたいなこと言っちゃっていましたが、いつの間にか自分もどこまでが第2話なのかよく分からなくなっていました(殴
ですので忘れてください(力業)。
これからも「第○幕」で大きく区切って、「○-□.」で1話ずつ進めていくつもりです。
長くなっちゃったら分割投稿する、みたいな具合でやります(開店準備編がどれだけ長かったんだよという話)。
『――はあっ』
地下の暗闇の中、アマゾンラムダの黄色い眼光が踊るように動いていた。14人の教徒は各々が鉄パイプや角材を持ち、サメの怪人に殴りかかっている。それぞれの動きは重鈍で、14人ぶんの手数をもってしてもラムダの防御を掻い潜れず、全ての攻撃が的確にブロックされていた。
「(仮に直撃したとしても、今の彼に対する有効打にはなり得ないでしょうけれど……。ただ、今はそれよりも――)」
破壊されたドアの隣で戦闘を分析する廻は、スマホの画面を見て顔をしかめた。
「生体反応、1件……。やっぱり目白くんのものだけ……どうして」
『よっと!』
飛び退いたラムダが廻のすぐ前で着地する。
『やっぱ検知できない? どうにもおぞましいな……。殴り合ってみて分かったけど、こいつら遅い上に軽すぎる。体温も異様に低い』
「体温……? そんなことまでわかるの?」
『変身中だけ、なんとなくね。ほら、サメにもロレンチーニ器官ってのがあるだろ?』
「サメのロレンチーニ器官が感知するのは電気だったはずだけれど……」
『あれ、そうなの? まあなんでもいいや。とにかくわかるんだよ、アマゾンは超感覚なのだ。――フンッ!』
ラムダの回し蹴りが教徒5人をまとめて弾き返す。彼はそのまま後続に突撃し、再び乱闘状態となった。
『確かなことは昨日も、一昨日も、戦った教徒はこんなんじゃなかったってこと。おまけにこいつら、今までと違って適度なダメージ程度じゃ止まらないみたいだ!』
これまでは軽い攻撃が当たりさえすれば、教徒たちは無力化されていた。しかし今は違う。現にこの14人は、何度も弾き飛ばされながらも立ち上がっている。
「一体なにが……。いえ、でも……? まさかね」
とある仮説に辿り着いた廻はスマホからデバイスを引き抜いた。画面には一般的な、この世の誰もが使っているインターネット検索エンジンが表示される。
「うっ……ヒットした。しかもこんなに……。信じたくなかったのに……。そしてこのことを目白くんに伝えなくてはならないなんて、心底嫌気が差すわ」
『聞こえてるからね! なにが分かったのか知らないけど私情を挟まないでくれると嬉しいな!』
「わかってるわよ! ……信じたくないけれど、その人たちは既に死んでいる。彼らは生ける屍――ゾンビよ!」
『おいおい、うそだろ……』
「ええ、わたしも嘘だと思いた――」
『霧島さんがクソ真面目な顔でゾンビとか言うなんて……』
「だ か ら 伝 え た く な か っ た の よ ! !」
廻渾身の絶叫が地下室に響き渡る。反響して聞こえる自身のツッコミに、廻は頭を抱えた。
『正直めちゃくちゃ納得したけど一応聞くよ、証拠は?』
足払いで教徒を転ばせ、ラムダが振り返る。
「ないわよそんなの……。この『世界クリーチャー大全』っていうサイトに載っていたの……」
スマホの画面に映ったオカルトマニア御用達らしきまとめサイトを示しながら、廻は穴があったら入りたいという感覚を理解した。
『じゃあ根拠は?』
「え?」
『“ゾンビ”ってのは、君が恥を忍んで俺に伝えてくれた結論だ。そこまでするんだ、証拠がなかったとしても根拠はあるでしょ? そんなたまたま一番上に出てきただけのサイトよりも、確固たるモンが』
目を見開く廻。そして観念したように目を伏せ、再びラムダを見据える。
「根拠は……あり得なくはないと思ったからよ。ゾンビなんていうオカルトでさえ、”この時空に存在しない技術”を扱える教団なら生み出しかねないと!」
『なるほど――』
ラムダの後ろから教徒の影。振り上げられたのはひしゃげた鉄パイプ。
しかし彼は振り向かないままその鈍器を掴み取り、教徒ごと地面に叩き付けた。
『それならもう、手心はいらなそうだな』
床を一蹴りで距離を取り、彼は左手でドライバーのグリップを握る。
『少々暴力的だけど――』
《
『――安らかに眠ってもらおう』
肥大化する両腕のブレード。そのままラムダは14人に向けて腕を振り抜いた。コンクリートが砕ける音がし、衝撃波で床がめくれ上がる。破壊の波に巻き込まれた14人の教徒たちは廻の前まで吹き飛ばされて地面を転がり、今度こそ動かなくなった。
これまでの乱闘が嘘みたいに、一瞬で出来上がった一方的な光景に廻は呆然と立ち尽くしていた。
「……彼が心まで人喰いに堕ちなかったことを、人類は感謝すべきかもしれないわね」
より正確に表すならドン引きしていた。
『どうだろうな、教団が生み出したアマゾンが俺だけとも限らないし。まあ……ここにいたのはゾンビなわけだけど』
廻が声のする方へライトを向けると、舞い上がった粉塵の向こうからラムダが現れた。粉を被って、青色の体表がほのかに白ばんでいる。
「そのあたりも今後調査する必要がありそうね。でも今はひとまず……」
動かなくなった教徒たちを見下ろす。見覚えのある顔がいくつかあり、14人全員が以前廻を襲った人々と同一と考えて良いだろう。そして彼らの青白い顔色から、既に死亡していることも分かってしまう。
そのとき、
「え……」
『……!』
教徒たちの身体が音もなく崩れ始めた。慌てて廻が駆け寄るも、既に原型はなくなっていた。全員が腐った木片のような、乾いた土のような物体となって崩れ去り、あとには14枚のローブだけが遺された。
「そんな……」
『……進もう、霧島さん』
ラムダが声を掛けると、彼女は黙ったまま立ち上がる。
『きっとこの先に、こいつらを配置してまで隠したかった物があるはずだ。生体反応が検知できない以上、他に敵がいないとも限らない。……ゆっくりはできないよ』
「ええ、でも……」
『……せめて身元を確認して、弔ってやれたらよかったんだけどな』
「あ……」
ゾンビとなった教徒を一網打尽にしたラムダの一撃。動かなくなった彼らの身体には生きていたら大怪我では済まないようなダメージこそあったが、しっかりとヒトの形のまま地面に倒れていた。……崩れて消えるその時までは。
『行くぞ。先行する』
そしてそんな大技を直撃させず、わざわざ距離を取ってから放った彼の姿を思い出す。
「なにが、手心はいらなそう、よ」
先行するラムダの背中、尖った背びれを見つめながら、廻は零すように呟く。
「格好、ついていないわよ……っ」