仮面ライダーLAMBDA   作:イチゴころころ

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5-END. 必ず夜明けは廻ってくるから

 

 

 枯れ木の立ち並ぶ林を、静かに見下ろす冬の空。灰色に白のグラデーションが差し込まれつつあるその空模様は、夜明けが近いことを表していた。

 そして、そんな空に向かって断続的に響く剣戟音こそ、本当の意味での決着が近いことを表しているのだった。

 

 

 

 

 

『ハアアアァァァァーーーッ!!』

『そぉれェェェーーーー!!!』

 

 シャフトを限界まで引き伸ばした退魔の槍、インサニティ・ジャッカーを振るうラムダ。対するガイストはスチームブレードの二刀流で彼の猛攻に応戦している。既に満身創痍だったラムダの動きに精細さはなく、普段と比べるとだいぶ我武者羅といった印象が否めないが、スペック的に格上であるガイストを確実に圧しているように見えた。

 

『クッッソがァァ……目白一織ィィ……!』

 

 その最たる要因はガイストの極端な弱体化だろう。インサニティ・ジャッカーによってライトフルボトルの力を吸い取られ、オクトパスフルボトルとのバランスを崩された彼。彼は現在トワイライトゾーンの発動はおろか、他の追随を許さないほどだった戦闘力さえ満足に扱うことができないでいる。

 ガイストは振り下ろされた槍先を受け止めると、槍を持つラムダの青い手を力任せに握りしめた。

 

『必殺技を、使えェ……! 私の力を返せ、吐き出せぇぇ……!』

 

 だがいくら握りしめても、この化け物の手は動かない。彼が槍のトリガーを引いて必殺技を放つまで、ライトフルボトルの力は槍の中に収納されたままなのだ。

 

『ああ。使ってやるよ、望み通り……絶対にお前をぶちのめせるってタイミングで、そのうちなァ!』

 

 ラムダは代わりにと言わんばかりに、アマゾンズドライバーからアマゾンスピアを引き抜いた。その勢いでガイストを後退させると、二刀流ならぬ二槍流でさらなる追撃を仕掛けていく。

 

『(おのれぇぇ……! 出力低下さえなければ、こんなクズごとき! いや……!)』

 

 その気になれば惑星すら文字通り狩ることのできるエボルドライバーの力は圧倒的だ。いくら弱体化によるスペックダウンがあったとしても、たかだか人喰いの異形一匹に圧されることなど本来有り得ない。攻めあぐねることはあったとしても、逆に劣勢になどなるはずがないのだ。

 

 そう。相手取るのが彼ひとりであったのなら。

 

『(くっ!?)』

 

 輝星の眼前を、鋭い狙撃弾が横切った。それによってたった今放とうとしていた渾身の反撃が牽制され、潰されてしまう。完璧なタイミングで狙撃弾を発射してきたのは言わずもがな――輝星は未だに名も知らないままの――仮面ライダーバルバトスだった。

 

『(あの小僧……っ!)』

 

 廻から託された彼女のキー・フローティングクリオネプログライズキーの力を身に纏った彼は片腕から伸びる1本の触手をターザンロープのように扱い、葉のない木々を飛び移りながら遠距離狙撃でラムダをサポートしていた。

 

『(やはり狙いは素人そのもの、お粗末としか言いようのない酷い精度だ……。しかし、なんだこれは……!?)』

 

 ガイストに当たりはしない、掠めもしない素人の狙撃。だが本城家の男子として幼い頃から戦闘訓練を受けてきた輝星の身体は、視界に入る銃撃にはどうしたって反応してしまう。そして何より、そのタイミングが絶妙なのだ。彼の狙撃はすべて、ラムダの隙を的確に埋めるようなタイミングで放たれている。これがガイストの反撃の手を緩め、未だにラムダの優勢を確定づける最後の要因になっていた。

 

『(なんだあの高校生! 即席のバディに、即席の武装である筈なのに!? 目白一織と完璧に合わせるこの独特のテンポは何なのだ!? 合いの手を入れる……いや、そんなレベルじゃあない! これはまるで、まるで()()()()()()()()()ような……!?)』

 

 

 

 

 

 満太は冷静だった。

 

 正直疲労で息は上がりっぱなしだし、酸欠気味なのか頭痛も酷い。トワイライトゾーンを食らってもいないのに視界はぼやけ、指先の感覚もなくなりつつある。しかしそんな彼が唯一、鮮明に感じ取れるものがあった――それは音だ。

 

『(すげーよく聞こえる……イオさんの呼吸が)』

 

 一織の息遣いをすべて聞き取っているわけではないが、満太は無意識にそれを『呼吸』と呼んでいた。それは前線で戦う先輩――目白一織という男が地面を踏みしめる足音であり、振るう武器の激突音であり、握った拳が柄と擦れる音であり、満太はそれらすべてを『呼吸』として認識していたのだ。

 とにもかくにも“あの子”に憧れ、何でも良いから彼女に誇れるものが欲しいと思って始めた楽器。それから1年足らず、特段才能にも恵まれていなかった彼の実力はお世辞にも高いとは言えず、ポジションはバッキングのまま。リードギターを引き立てる重要な役どころであることは間違いないが、年頃の少年が理想としていた姿にはほど遠い。

 

 だが、いい。問題ない。主役(リードギター)の『呼吸』に合わせ、後ろから自分の音を撃ち出す。全体の調和を維持し、自分たちの音を絶対に途切れさせない。それこそが彼の数少ない特技のひとつであり、青臭い見栄のために磨いてきたセンスであり、ここにきて開花した彼にしかできない戦い方であるからだ。

 

 

 

 

 

『ぐうううぅぅぅ、おのれェェ!!』

 

 反撃を悉く封じ込まれ、弱体してもなお圧倒できる筈だったスペック差を覆されたガイストは遂に有効打を叩き込まれ、大きく後ずさりすることとなった。しかし輝星は怨嗟の呻き声を吐き捨てるとスチームブレード掲げ、切っ先で大きく五芒星を描く。そうして紡いだのは短い呪文。エボルドライバーと相性が良いとされる、黄衣の王へ捧げる賛美の言葉だった。

 

『調子に乗るなよ、クズどもがァ!!』

 

 ラムダたちが驚く暇もなく、木々を薙ぎ倒しながら飛来したのは1匹のビヤーキー。つい先ほどガイストが召喚し、鈴を葬るためにけしかけた邪神の眷属が今、再び彼の号令によって呼び寄せられたのだ。

 ガイストがその背に飛び乗ると、ビヤーキーはまるで彼の意思を汲み取ったかのようにして急上昇。そのまま大きく旋回すると、ラムダたち目がけて凄まじい速度で滑空してきた。

 

《 Electric Steam...! 》/《 Electric Steam...! 》

 

 2本のスチームブレードを擦り合わせ、それぞれのバルブを回転させるガイスト。空飛ぶ怪物の背に跨がるその姿は、まるで御伽噺に出てくる竜騎士のよう。

 

『消し炭に、なるがいいィィィーーーーッッ!!』

 

 すれ違いざまに振るわれるふたつの刃。切っ先から放たれた電撃が地面に突き刺さり、一瞬遅れてビヤーキー通過による風圧が叩き付けられる。破裂するような爆発音が響き渡ると、真っ白な煙が辺りを包み込んだ。

 

『……ッ!』

 

 しかし、振り返った輝星は仮面の奥でその顔を大きくしかめることとなる。白煙を切り裂くようにして一対の影――2台のバイクがその姿を現したからだ。

 

 ジャングレイダーを駆るアマゾンラムダと、マシンリボルブリンカーに跨がるバルバトス。それぞれのマシンを乗りこなす仮面ライダーたちは悪路をものともせず、木々の間を猛スピードで蛇行しながらビヤーキーの速度に追随してくる。背に乗ったガイストはすぐさま加速の指示を出したが、背後のバイクは振り切れない。今の彼はトランスチームガンを所持しておらず、スチームブレードの投擲や必殺技以外での遠距離攻撃ができない状態にある。ビヤーキーに乗って形勢を入れ替えたつもりが、(かえ)って追い立てられる状況になってしまった。

 

『ハアァァァァーーーッ』

『うおぉぉぉおおおお!!!』

 

 そしてそんなチャンスを逃す彼らではない。ラムダとバルバトスはアクセルを振り絞り、一気にビヤーキーの真下にまで距離を詰める。

 

《 Progrise key confirmed. Ready to LINK... 》

 

 先に動いたのはバルバトスだ。ペンギンキーをバイクに装填し、風のエネルギーを抽出する。このマシンの持ち主はかつてこの技を応用して“世界一見栄っ張りなジャンプ”をかましたわけだが、本来の持ち主ではない満太にそんな芸当はできない。

 だが充分だ。先の戦いでは一織さえ仰天させた、持ち主のしょうもない遊び心。因縁とともにこのマシンを託してくれた彼女がノリノリで組み込んだ、無駄にかっちょいいビックリどっきりギミック、『リボルブキャノン』。――バイクに砲台が搭載されているなんて、誰が想像できようか。

 

STORMING(ストーミング) / REVOLVE-BRAVE(リボルブレイブ)! 》

 

 フロントカウルから伸びた砲身が輝き、風のエネルギーを射出する。放射状に放たれた風の矢はビヤーキーに直撃し、その翼に大きな風穴を空けた。ガイストもビヤーキー自身も、何が起きたのか咄嗟に理解できていない様子だ。

 

 大技を放ったリボルブリンカーと入れ替わるように再加速してきたのは当然、ラムダを乗せたジャングレイダー。バランスを崩し大きく高度を落としたビヤーキーに向けて、手にした(ランス)を大きく振りかぶる。そしてその柄に備わった引き金を、満を持して引き絞るのだった。

 

『堕ちろァ!!』

  ――《 INSANITY(インサニティ) JACKING(ジャッキング) BREAK(ブレイク)! 》

 

 それは槍に充填されたライトフルボトルのエネルギーに、クトゥルフと深きものの力が上乗せされた一撃。槍先から伸びる黄金色のエネルギーは翼の化け物を呑み込み、その冒涜的な巨体を瞬く間に消滅させた。

 

『ぐあああああ! ぬうううぅぅ!?』

 

 ワケの分からないまま眷属を倒されたガイストだが、ビヤーキーが実質的な盾となったお陰かなんとかダメージを受けずに済んだようだ。だが彼は今、足場を失って落下しながらも必死に思考を巡らせていた。

 

『(目白一織が、使った! あの槍の技を使ったぞっ! 封じ込めていたエネルギーを、放出させた……っ!)』

 

 これこそ彼の待ち望んでいた状況だ。実際、空中に霧散していったライトフルボトルのエネルギーが吸い込まれるようにして彼のベルト――エボルドライバーへと集まってきているのを感じる。

 だが輝星は忘れていない。目白一織が“絶対にこちらを倒せるタイミングで技を出す”と言っていたことを。

 

『(来る、必ず来る! エボルドライバーに力が戻るまでの数瞬の間に、この私を打ち倒すための最後の一撃が……!)』

 

 つまり、それにさえ耐えてしまえば輝星の勝ちだ。エボルドライバーの出力は完全に元通りとなり、トワイライトゾーンも使用可能となる。消耗しきった仮面ライダーのひとりやふたり、誇張無しで一方的に叩き潰せるだろう。

 

 

『受けて立とう……来いィィィーーーー!!!』

 

BITING(バイティング) “KABAN(カバン)” SNIPE(スナイプ)! 》

 

 

 輝星の叫びに呼応するように、電子音声が鳴り響く。

 バルバトスの放った狙撃弾が、眼下に広がる木々の間から飛来した。大口を開けたサメの姿を象ったそのエネルギー弾は一直線にガイストへと迫り――彼の突き出したスチームブレードと勢いよく衝突する。

 

『うぎぎぎぎっっぎぎぎぎぎ……!!! ウゥゥ、うおおおオオオオァァァァアアアアアアーーーーーーッッ!!!』

 

 踏ん張りのきかない空中であることが嘘のように、ガイストはその一撃と拮抗する。だがそんな人智を超えた鍔迫り合いもほんの一瞬だった。形容しがたい絶叫と共にスチームブレードは砕け散り――――サメ型の狙撃弾は大きく弾き飛ばされた。

 

『や、やった……! 一撃を、この一撃を防いでやった……っ!!』

 

 歓喜の呟きを背後に、軌道を逸らされた狙撃弾はガイストの後方へ飛んでいく。どうやらエボルドライバーの出力はほとんど戻りつつあるようだ。決して少なくないダメージを受けつつではあったが、アタッシュライフルの最大出力を単身で、それも空中で往なせたことが何よりの証拠だろう。

 

 しかし、

 

『誰が一撃だけって言った?』

 

 渾身の大技を弾かれ、弱々しくたたらを踏んだバルバトスは尚、毅然とした口調でそう告げた。

 

『は?』

『オレは、いま、()()()()()()()()()()

『なにを――』

 

JACK(ジャック) RISE(ライズ)! 》

 

 輝星の耳に飛び込んだ、禍々しい声色の電子音声。

 その音声は他でもない、かの槍がエネルギーを吸い取って模倣した合図であり、それが聞こえてきたのは背後の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『まさ――』

『いけえええええイオさん!! 今日だけはアンコール、大歓迎だ!!』

『――アアアアァァァア“ア”ア“ア”ア“!!!』

 

《 INSANITY JACKING BREAK! 》

 

 ガイストが振り返る間もなく、その槍先は力を解放した。先ほどの2倍以上に膨れ上がり、赤黒い輝きを纏ったサメ型のエネルギーがガイストの上方より振り下ろされ、ボロボロになった石灰色の体躯を地面へと叩き落とした。周囲の薄雪が一瞬で蒸発し、鈍い音と共に爆発が起こる。そんな爆煙をバックによろよろと着地したラムダは――もう一度、もう一度、その足を思い切り踏ん張るのだった。

 

 

『まだだ!』

『おう!』

 

 

 限界はとっくに超えた。

 各々のベルトは痛々しい駆動音を軋ませ、身体の節々は冷気やら蒸気やらをひっきりなしに吐き出している。

 それでも足りない。まだ足りない。

 

 彼女がくれた“信頼”には、限界()()じゃあまったくもって届かない!

 

 

VIOLENT(バイオレント)――

  ――FLOATING(フローティング)

     ――STROM(シュトローム)

      ――FEVER(フィーバー)! 》

 

 

 ぐしゃぐしゃにひしゃげた石灰色の鎧に、一対の跳び蹴りが突き刺さる。直撃を受けたガイストの身体は大きく弾かれ、裸の木々の隙間を縫うようにして吹き飛ぶ。そして地面と、それから石畳をそれぞれ一回ずつバウンドした後に元いた場所――すなわち霧島邸の玄関屋根に激突した。

 

『あああぁぁああぁぁああ!? クソがああぁぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!』

 

 同時に限界を迎えたエボルドライバーがエネルギーを逆流させ、その鎧とアンダースーツは遂に崩壊。敷地全体を揺さぶるほどの大爆発を引き起こし、大量の瓦礫と粉塵、それから輝星の悲痛な怨嗟が夜の明けた空へと打ち上げられるのだった。

 

 

 

 

 

 変身を解除した一織と満太は言葉を交わす余力もないまま、覚束ない足取りでひび割れた石畳を踏みしめる。どうやらいつの間にか屋敷の入り口近くまで戻ってきていたようだと、今更ながらに気づいた。

 彼らふたりの目線の先には派手に崩壊した屋敷の玄関と、自分らと同じように変身解除した輝星の姿があった。

 

「……」

「……」

 

 一織と満太の表情は険しいまま。それもそのはず、瓦礫の間にボロ雑巾のような姿で倒れていた輝星がたった今、へし折れたスチームブレードを支えに立ち上がったからだ。そして彼の腰の辺りで沈黙したままのエボルドライバーも――持ち主とは対照的に――全くの無傷であったからだ。

 

「私はぁ……負けない……負けて、なるものかァ……」

 

 その気迫に、ふたりは今度こそ言葉を失う。限界を迎え、さらにその一歩先まで振り絞って戦い抜いた彼らにはもう、一滴の体力も残っていない。

 

「つまりは、そういうことだ……私には結局のところ、覚悟が足りなかったのだ……この身を賭してでも勝つという、下品極まりない覚悟が……!」

 

 ドライバーから外れ、地面に散らばった2本のボトル。輝星はそのうち、使い慣れたオクトパスフルボトルの方を拾い上げ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「絶対に、絶対に負けないィ……。貴様ら部外者にだけは、決して負けては、ならないのだアアアアーーーーーーッ!!」

 

 虚ろな視線のまま、輝星はそれらのボトルをドライバーに叩き付けた。発せられるのはそれまでのどこか悠然とした威圧的な音声ではなく、エラー音、もしくは警告音のような不快な旋律。同時に禍々しい電撃のようなエネルギーが迸り、輝星は苦痛の叫び声を上げる。

 

「実現するんだ……私の夢を! 私の家族がこれ以上、二度と傷つかない秩序ある世界を! 下品で下らない争いが二度と起こらない平和な世界を! この私が、世界を、良くするんだァァァァ!! ウワァァァァァアアアア!!!」

 

 その叫びに応えるようにして、装填された薄桃色の方のボトル――オクトパスフルボトルが一際強く発光し、その姿を変える。フルボトル特有の半透明の見た目から、荘厳でメタリックな輝きを携える、漆黒のボトルに近い質感のものへと。

 

 

Octopus(オクトパス) 》/《 Rider System(ライダーシステム)

 

《 E V O L U T I O N(エボリューション) ! 》

 

 

 その音声が発せられた瞬間、凄まじいプレッシャーが辺りを包み込んだ。その威圧感たるや、オクトパスライトフォーム()()()など足元にも及ばない程であり、相対する者を問答無用で屈服させる程のもの。そして、どう考えてもひとりの人間が受け止めるには過ぎたる程のものであった。

 一織は“死ぬ”と思った。それはおどろおどろしい色に染まった血管を浮かべながらもベルトを操作しようとする輝星に対してであり、この変身を見届ける自分たちに対しての“死ぬ”だ。その力は地上にあってはいけない類いの、それこそ旧支配者と同程度の冒涜的なものだと即座に理解した。だがしかし、既に立っていることさえやっとといった状態の自分らには、この光景をただ見ていることしかできないとも悟ってしまう。

 

「(ここまで、なのか……! 霧島さん……俺は……!!)」

 

 だが、彼の変身が完了することはなかった。

 一発の銃弾が、本城輝星の脇腹を貫いたからだ。

 

「かっ……!?」

「え……?」

 

 血飛沫を舞わせ、大きくよろめく輝星。その挙動に合わせ、エボルドライバーが纏おうとしていたエネルギーは空気に溶けるようにして霧散していく。そして彼が片膝をつくと、装填されていたボトルは再び外れ、地面を転がった。

 輝星が顔を上げ、満太と一織も振り返る。そして各々が驚愕と、歓喜と安堵を露わにする。

 

「らん、じゅ……?」

「小黒さん……!」

「……」

 

 彼らの視線の先、砕けた塀の横に立っていたのはトランスチームガンを構える七塚藍珠と、彼女の肩に支えられてこちらを見据える小黒鈴であった。

 

「藍珠……そうか、お前が……」

 

 最後のトワイライトゾーンが発動した時、一織たち3人の思考に横たわったのは絶望の二文字だった。廻が決死の覚悟でふたりを庇いはしたものの、その時点でどうしようもなく全滅寸前。そして何より、ビヤーキーを止められずに鈴を見殺しにしてしまったという実感が彼らの心を折りかけていた。

 だがまさにトワイライトゾーンが解除された直後、彼らのインカムに鈴の声が届いていたのだ。『私は無事だから、みんなはみんなのやるべきことをやってください』という、そんな旨の言葉だった。その言葉がすんでの所で彼らの心を奮い立たせ、最後の攻防に繋げたのだった。

 

 ビヤーキーの突撃から鈴を守り、激しい戦闘音を追うようにしてここまで辿り着いた藍珠はいま、取り返しのつかない一線を越えようとしていた輝星に向かって引き金を引いた。奇しくも、彼に撃たれた箇所と同じところを撃ち抜く形で。

 

「藍珠ぅぅぅ……! なぜ私の邪魔をする! 『琥珀の星』の正義を、お前は信じていたはずだ! 私はその正義を、母とは違う形で実現しようとしたまで! お前も憂えていたはずだろう、この世界のどうしようもない理不尽に!!」

「……そうですわね。わたくしも世界をよくしたかった。都合の良い正義を見せて、わたくしたちを良いように使っていたとしても、それでも『琥珀の星』の正義は間違っていなかったと、今でも思います」

 

 でも、と藍珠は言葉を切る。彼女が目を閉じ、再び開けば、そこには静かな怒りが灯っていた。

 

「都内がいま、どうなっているかご存じですか、お兄様」

「都内、だと……?」

 

 秋葉原の拠点で目覚め、倒壊したEPビルまで足を運んだ藍珠はそこで、最悪の光景を目にすることとなった。銃創の痛みなど無視してここまで駆けつけるくらいには、最悪と思える光景を。

 

「EPビルの封鎖区画、でしたかしら。お兄様と、ここにいる小黒鈴が落とされたのだという、わたくしも知らなかった地下の廃棄場……そこから溢れ出たのです。大量のゾンビと、理性を失ったスマッシュが」

「……!」

 

 封鎖区画はどうやら使わなくなった下水道を再利用したものらしいが……それはつまり、東京都内で平穏を謳歌する人々の真下に、ゾンビやらスマッシュやらの巣窟があったということ。そして『琥珀の星』の壊滅はすなわち、そんな禁足地の管理者が不在になった事を意味する。

 

「都内は現在進行形で大混乱ですわ。有衣子様もアンチアンバーもいなくなり、霧島財閥も空中分解したいま、こんなことを隠蔽できる人も力も、もうどこにもない。唯一対処できるとしたら……いいえ、対処するべきなのは、いまここにいる、ここに残されたわたくしたちだけ! 違いますか!?」

「……」

「それをなんですか!? 新時代の支配者? 因縁の決着? 今起こっている混沌に関心すら向けないで、何が秩序ですか! ふざけたことを仰らないでください!」

 

 悲鳴にも近い藍珠の言葉が木霊する。「それでも、今ならまだ」という彼女の二の句には、弱々しい嗚咽が混じっていた。

 

「今ならまだ、引き返せます。わたくしたちが力を合わせれば、きっと丸く収めることができる。いいえ、それだけじゃありません。お嬢……様も、彼らもいる。わたくしたちと、わたくしたちの親たちが犯してきた過ちを、きっと償うことができるはずですわ。だから……」

「……」

「だから、もうやめましょう、お兄様」

 

 その言葉は幹部としてでも、部下としてでもない。ひとりの妹分としての、藍珠の心からの願いだった。

 

「う、うう……ううぅぅああああーーーーー!!!」

 

 果たしてその言葉は彼に届いたのか。それとも拒絶されたのか。ひとりの兄貴分だった筈の男は、どちらとも取れるような叫び声を上げ――スチームブレードを地面に叩き付けた。

 

「っ!? お兄様!!」

 

 舞い上がった粉塵を目にし、藍珠は慌てて引き金を引く。しかし弾丸は空を掠め、粉塵が晴れたその場所にはもう、誰の姿も残っていなかった。

 

「そんな、逃げられた……」

 

 唖然とした藍珠は思わず、握ったトランスチームガンを見下ろす。本当は最初の一発、輝星の変身を止めるために撃ったあの一発で致命傷を与えることもできた。敢えてそうしなかったのは、どうしても今の想いを伝えたかったがため。だがこれでは……。

 

「……大丈夫です、大丈夫ですよ」

 

 だが、そんな藍珠の心境を汲み取ったように、傍らの鈴がそう声をかけた。彼女は泥まみれのその頬を少しだけ緩ませ、静かに息を吐きながら続ける。

 

「あの人はもう、変身できませんから」

 

 鈴の視線の先には、地面に転がったフルボトルがあった。ライトフルボトルと、いつの間にか元の姿に戻ったオクトパスフルボトル。そして少し離れたところには、北館地下の解錠コードが入っているのだというUSBメモリも落ちている。正体不明の黒いボトルだけがどこにも見当たらないが、ボトル1本だけではいくら究極のドライバーとは言えどうしようもないだろう。

 

「生きていればきっとまた会えます。話せます」

「……」

「だから今は、私たちの……勝ちです。決着です……」

「……!」

 

 顔を見合わせる鈴と藍珠。元々敵同士だったからかすぐさま気まずい雰囲気が流れるが、彼女らにとってはきっと、居心地の悪いものではなかっただろう。

 そうしていると鈴の視界に――きっと今の自分も同じ顔をしているであろう――満太の姿が映った。お互い思うところがたくさんありそうな様子だったが、特にそれらを吐き出すこともせず、それぞれ小さく頷き合った。

 

「そう言えば、一織さんは?」

「……」

「糸巻くん?」

「迎えに行ったよ……あの人のことを。一足先に」

 

 

 

  *  *

 

 

 

 林の中を駆ける一織には、自身の荒い呼吸しか聞こえていなかった。雪が薄く積もった柔らかい地面に何度も足を取られそうになり、その度にずしりとした疲労が全身にのしかかる。それでも彼は決してその足を止めなかった。

 

「(霧島さん……!)」

 

 廻が最後に行った攻防は、一織と満太が体勢を立て直す時間を稼ぎ、ガイストの弱体化を成功させるためのもの。結果的にその思惑が功を奏し、本城輝星という意志を乗り越えるに至ったわけだが、その代償はあまりに大きかったように思える。

 最後に見た彼女の姿は凄惨なものであった。四肢こそ繋がっていたものの全身のパーツがひしゃげ、胴部を大きく抉り取られていた。素人には名称も分からないような液体が血液の代わりかのようにドバドバと溢れ、地面の雪を染め上げていた。めちゃくちゃにして腕を引き千切った自分が言えた立場じゃないが、酷い有様だ。

 

 損傷が一定に達したヒューマギアはどうなるのか、一織は知らない。機能停止をするだけなら、まだ問題はない。元より廻は今日を以て人間に戻る予定だったからだ。彼女の頭部にあるのだという記憶メモリが無事であれば、ひとまずは問題がないと言える。だからきっと大丈夫だと思う。大きな損傷を与えられたアンドロイドが爆発して粉々になるなんて、それはハリウッド映画とかアニメとかマンガとかだけのお約束だ。一織はそう思った。思いつつ、歩幅が大きくなっていくのを感じていた。

 

 そして、

 

 

 

「なんてカオしているのよ」

 

 

 

 その言葉をかけられたとき、彼は心の底から安堵したのだった。

 

「はあっ……、はあっ……っ!」

「どうせ、どうせ変態で安直思考の君のことだから。めちゃくちゃになったわたしが粉々に爆発する想像でもしていたのでしょうけれど、当てが外れたわね。……わたしって無粋で自己中心的な女なのよ、知らなかった?」

 

 木にもたれ掛かる廻の手には、ルルイエゼツメライズキーが握られていた。全体の損傷具合については一織の想像通り……よりもやや酷い程であったが、最も致命的だったはずの腹部の大穴だけが綺麗に塞がっているような状態だ。恐らく両腕と同じ素材であろう赤黒い金属の部品が、その大穴を埋めていたのだ。

 

「……知ってた。……とっくの昔に、知ってたよ、もう……」

 

 今度こそ緊張の糸が切れ、一織の両脚から力が抜ける。咄嗟に支えようとする廻だったが……

 

「あっ」

「あっ」

 

 一瞬たりとも支えられず、そのままふたりはもつれ合うように倒れ込む。

 

「いった……」

「ごめんなさい。機能停止をせずに済む程度の修復はしたのだけれど、それが精一杯だったみたい。今のわたしはきっと、鈴ちゃんにすら勝てないでしょうね」

「それ、マズいんじゃない? 今の君、鈴さんの理性を2回崩壊させても余るくらいのすんごい姿してるけど」

「……すけべ」

「あはは……ごめんごめん」

 

 並んで仰向けになり、空を見上げるふたり。一瞬の沈黙の後、口を開いたのは廻だった。

 

「……ありがとう」

 

 何を、と問うのは野暮だろう。一織はただ「うん」と返した。

 

 

 

 

 

 その後、ふたりは追ってきた満太たちと合流した。理性崩壊すれすれで踏みとどまって空気を読む鈴だったり、気まずそうにしつつも廻に声をかける藍珠だったりと各々の反応もあるにはあったが、程なくして誰からともなく歩き出した。行き先は言わずもがな、すべての始まりの場所――北館の地下である。

 

 

 

 思ったほど仰々しくない、というのが一織の率直な印象だった。北館そのものはあくまで屋敷の別館の講堂といった風体。封鎖されていたのだという地下への入り方も、輝星の残したUSBメモリをエレベーターの操作パネルに差し込むだけというもの。下へと降りていくエレベーターに乗っている時間の妙な長さだけが、その地下室が如何に厳重に封鎖されていたかを物語っていた。

 

 そうして一同は遂にその場所へ辿り着く。そこはやはり想像よりも簡素というか、どちらかと言えば寂しさすら覚える広い空間だった。

 

「研究記録がありますわ。文責は……霧島昇と、藤堂武蔵」

 

 埃を被ったモニターを弄っていた藍珠がそう呟いた。周囲から視線を向けられると、彼女は「データが壊れていて、“今は”内容はわかりませんけどね」と言って首を横に振る。

 

「それを読めば2……いや3年前の事故で本当は何があって、彼女がどうしてヒューマギアにされたのかがわかるかもしれないってことだよね」

「ええ。時間はかかるかもしれませんが、わたくしが必ず復元してみせます。藤堂武蔵の娘として、このわたくしが……責任を持って。でも今は――」

「うん。今だけは後回しにしようか」

 

 一織と藍珠は地下室の奥へと視線を向ける。そこでは満太と鈴に支えられた廻が、大理石でできた台座を見下ろしていた。

 

「……これが1年前、わたしが今のわたしとして目覚めた場所」

 

 忌々しい記憶として、己の趣味嗜好共々封印していた映像と一致する。その台座にはちょうどヒトの四肢を固定するような留め具が備え付けられていて、辺りには得体の知れないチューブやコードなどが散乱している。廻だけでなく、その場にいた全員がひと目見ただけで理解できていた。廻はそれを承知の上で、「そして」と言って敢えて言葉を紡ぐ。

 

「そして“この中”にいるのが、わたし。3年前に眠りについた、人間としての“霧島廻”……」

 

 台座の向こう。最奥の壁に立てかけられるようにして佇むカプセル。その棺にも見える出で立ちの巨大な装置こそ、3年もの間孤独に稼働し続けた鉄のゆりかご。人間・霧島廻の寝床兼生命維持装置ということらしい。

 

「ここに、メグさんが……」

「……」

 

 斜めにそびえ立つそのカプセルはくすんだ茶色の金属でできていて、顔にあたりそうな箇所にある小窓は曇っているため中の様子は見えない。

 だが確かにいるはずだ。透視能力にも似た機能を持つ今の廻には、曇ったガラスの向こうにある己の寝顔が見えているはずだ。

 

「……正直、後ろめたさは、まだあるわ。人間に戻ったら、わたしはもう変身できない、戦えない」

「廻さん」

「わかってる。それは今だって同じ。どのみち今の身体ではもう戦えないのだから。……けれど、きっとここにいる“わたし”は、戦えないどころの状態ではないでしょう」

 

 事故の日から3年。ずっと眠り続けた人間の肉体。生命こそ維持できているものの、その身体は酷く衰弱しているはずだ。歩けるようになるにはどのくらいかかるだろう。まともな生活を送れるのはいつからになるだろう。意外と早いかもしれないし、何年もかかってしまうかもしれない。その間、きっと迷惑をかけ続ける。これは起こりうる、間違いようのない事実だ。

 

 しかし、そんな廻の不安に待ったをかけたのは藍珠だった。

 

「何を言っていますの」

「え」

「そんなの百も承知ですわ」

 

 廻が振り返ると、腕を組む藍珠とその隣でうんうんと頷く一織の姿があった。

 

「確かにわたくしたちの戦いは何も終わっていません。都内に解き放たれたゾンビやらスマッシュやらは何としてでも片付けなくてはなりませんし、一連の事件で混乱しっぱなしの世界だってどうにかしなくてはなりません。きっと途方もない戦いになるでしょうが、収集をつけることは決して不可能ではないはず……霧島財閥がもう一度力を合わせれば。そして、バラバラになった財閥をもう一度まとめ上げることができるのは……貴女しかいないのですわ」

 

 廻は目を見開いた。藍珠は既に、そこまで考えを及ばせていたのだ。

 

「ま、前に出て殴り合うだけが戦いじゃないってわけだね。そこは今まで通り、俺たち仮面ライダーに任せてくれれば良い」

「もちろん貴女の体力回復、リハビリには全力を尽くしますが、その後は容赦なく働いてもらいますわよ。……今度こそ、正しい形で、お兄様の理想を引き継ぐために」

「……そう」

 

 一言だけ答える廻の胸中は穏やかで、先ほどまで見え隠れしていた不安は嘘のようになくなっていた。

 

「えーっと、もちろん、引き続き私たちも手伝いますからね」

「小黒さん、もう冬休み終わるからオレたちは帰らなきゃだけど……」

「忘れてた……忌々しき我らが日常……。あー、てかなくした眼鏡のことどう説明しよう。鬱になってきた。つらい」

「まあでも、手伝いたいっていう気持ちはオレも同じっす。だからその……週末限定とかでもよければ」

「休み明けテスト……冬休みの課題……3年ゼロ学期……」

「戻ってきてくれ小黒さん……こっちまで辛くなってきた……」

 

 まるで夢が覚めてしまったかのように、ありきたりなことで悩み始める高校生ふたり。彼らを一瞥して小さく微笑むと、一織は廻に手を差し出した。彼女は黙って、その手を取る。

 

「装置の操作はわたくしが引き受けますわ。準備ができたら声をかけますから、そうしたら……お嬢様の記憶メモリを渡してくださいまし」

「わかった」

 

 廻を支えながら、一織は歩みを進めた。彼女を台座に横たわらせると、その半分剥き出しになった綺麗な顔と改めて目が合う。廻は何も言わず、ただ見つめ返してくるだけだった。

 

「あのさ」

「……」

「えっと……」

 

 一織にはどうしてもやっておきたいことがあった。それは昨日の夜、今思うと突拍子も脈絡もあったもんじゃないあの”キス”をしたときから、ずっと思っていたことだ。鈴のときはすぐにできたのに、なんでかここまで後回しにしてきたことだ。

 

「えっと、んー。……うん」

 

 幾度かの逡巡の後、一織は意を決する。こういうのは後回しにすればするほど恥ずかしくなるモノと相場が決まっている。本来、大して恥ずかしくないことの筈なのに。そうして満を持して、その口を開いた。

 

()()――」

「――待って」

 

 開いたが、見計らったような廻の言葉に遮られてしまった。

 

「……それは、あとでが、いいわ」

「あ……」

「今のわたし、ボロボロだから。センサーもほとんど死んでいて、途切れ途切れだから。だから……あとでがいい。あなたのその言葉は、集音モジュールではなく耳で、鼓膜で、聞きたい」

 

 廻が手を伸ばす。傷だらけになった球体関節の指が、一織の唇に触れる。

 

「あとでね」

 

 咄嗟に言葉を返せなかった。その理由が、一織にはわからなかった。

 藍珠の声が響き渡る。一織は振り返り、廻はそっと目を閉じる。

 

 そうして、数奇な運命に弄ばれた一体の機械人形の物語は幕を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めて最初に感じたのは、柔らかいソファのようなものの上に横たわっているという実感。そして妙に懐かしく感じる、空気の匂い。薄目を開けた隙間から飛び込んできた光はあまりにも眩しくて、思わず顔を背けようとした。けれど自分の首はまったく動いてくれず、手で顔を覆うことはおろか腕を上げることすらできない。そもそも、さっきちょこっとだけ開けた瞼もあれ以上持ち上がらなかったと思う。それでも……眩しいなんて感情や息を吸う感覚はやっぱり、とてつもなく久方ぶりな気がした。

 

 その状態でどれほど経過しただろう。何時間も経ったようにも、数秒だけだったようにも思える。ようやく半目を開けられるようになったわたしの視界には、こちらを覗き込む男の顔が映り込んだ。

 

「――」

 

 思わず口を開いた。いや、開こうとした。瞼や指先と同様、全然思ったように動かない。力がまったく入らない。やっとのことで口を開けられたと思ったら今度は舌だ。下顎に張り付いているかのように動かない。もしかしたら本当に張り付いていたのかもしれない。

 

「――、――――」

 

 それでもわたしは必死に口を動かした。目の前の彼は黙って、わたしの言葉を待っていた。

 

「……あ――――」

 

 また何時間、経過してしまったのかわからない。そうして出てきたわたしの声はびっくりするくらいか細く、小さなモノだった。目の前で見開かれる両目が、それでも届いていることの証左になってくれた。

 

 長い長い静寂の後、わたしはついにその言葉を口にした。どうしても、最初に口にしなくてはならない言葉だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、だれ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わたしは呟いた。

 

 知らない顔に向かって。

 

 

 

「だれ……?」

 

 

 

 

 

第5幕 Amber  ――END

 

 

 




読了ありがとうございました。第5幕、完結です。
1話あたりの文字数も青天井となり、投稿ペースも鈍り、気づけば第5幕開始から半年以上経っていました。うそじゃん……。ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

と、いうわけで本作はまだまだ続きます。今後ともよろしくお願いいたします。


【告知1】
お馴染みのEX回、近日公開予定です。
様々な真実に、新ライダーに新フォーム、ライダーマシン新登場など、量と整理の仕方を考えるだけでも身の毛がよだつ盛りだくさんな内容になる予定です。
是非お楽しみに!


【告知2】
地獄のEX回を投稿した後はいよいよ新章です

「第6幕 alternΛtive」

ヒトとしての身体を取り戻した廻と、決してヒトには戻れない一織。
無かったことになった彼女の記憶と、無かったことにした彼の過去。
すれ違う心に這い寄る、深淵からの呼び声。

それぞれの想いが交錯する”最悪の後日談”、開幕――。



こちらも是非是非お楽しみにお待ちください。



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