私は寺生まれだ。
そのせい?そのおかげ?なのかは分からないけど。昔からヘンテコな奴らが人に張り付いているのを何度か見てきた。ああいうのを怨霊とか悪霊とか幽霊とかなんて呼ぶんだろう。
まあ、私には関係ないけど。
そう思っていたのに一つ年下でたまに本屋で会ったりする四谷みこという半泣きの後輩に「助けて、センパイ!」と言われてしまった。彼女がどこでどう聞き間違えたのかは私が幽霊を祓えると思っているらしい。
いや、お寺か神社に行けよ。と、私が言ったら「そこまで遠出するお金が…」としょんぼりしている。全く私も素人だからほんとにやれるか分からないからね?と文句を言いながら四谷の後ろにいるオバケを右手で思いっきりブッ叩いた。
「えっ、いま、ぱんち…」
わりと殴りやすいわね。
私はオバケを殴った手をグーパーしながら四谷の手をもう片方の手でつかみ、よろよろと立ち上がってきたオバケの頭に蹴りを入れて窓の外に押し出す。もっかい、そこらで死んどけ。
もう、いいんじゃね?と四谷に聞けばコクコクと何度も頷き、私とオバケの置いていった窓を見比べている。いや、さすがに生きてる人は落とさんよ?等と思いながら梵字入りネイルやマーカーペンで魔除けのマークを手の甲に書いてあげる。
ばっちゃもこれやってたから。
「ばっちゃ……あっ、おばあちゃんか」
その、ばっちゃね。
………ところでさ、私がオバケや幽霊が見えるって誰に聞いたわけ?こっちのほうだと有名になるほど変なことしてないつもりだけど。
そう四谷に問い掛ける。
少しだけ悩んだ後、ようやく観念したのか。
ぽつりぽつりと彼女は話し始めた。
突然、春先からオバケが見えるようになったこと。いつも無視しているのに、なぜか今日だけめちゃくちゃオバケに絡まれること。ただ、私に関しては寺生まれのセンパイがいるのは噂でなんとなく知っていただけだそうだ。
「センパイ、ほんとにどうすれば…」
とりあえず、近場のファミレス寄る?
「………はい…」
そう言って四谷と歩いているとほんとにオバケや幽霊が寄ってきた。どんだけ来るんだよと呆れながらばっちゃに無理やり習わされた簡易式の身固めを四谷に教えて私は足だけでやる。
「センパイ、すごいですね。ほんとに」
そうなのだろうか。
私としては当たり前の日常だから新鮮味は薄いし、なんなら見えるようになった四谷のほうが気になって仕方ない。なにかに障られたのか、あるいはなにかに気に入られたのか。
さっきから幽霊が鬱陶しい。
「破ぁっ!!」
ばっちゃがやったように片手に霊的エネルギー?ってやつを集束させてオバケに投げつける。ボシュウウゥゥッ!!という消滅する音に四谷は驚いてる。はじめてやったけど、意外とイケるわねこれ。
「…寺生まれってすごいですね」
そんな四谷の感想を聞き流しながらオバケや幽霊のいないファミレスに入っていく。これは、あとでばっちゃに本格的な魔除けとかグッズなんかの作り方を聞いてみるのもありだね。
〈四谷みこ〉
女子高生。
オバケや幽霊など霊的存在を視認できるようになっちゃった女の子である。ガチでオバケにビビったりするし、ガン無視を決め込んで見えているのがバレないように頑張っている。最近のベストプレイスはT子さんの近くらしい。