バケモノ少女の影魔ちゃん   作:稲嫁とーかちゃん

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第28話 ごすろりめいどおーちゃん

 ……はぁ、何やってんだろオレ。

 

 見る分には良い。

 だが、実際に着てみるのはめちゃくちゃ恥ずかしい。こんなにハイレグが股関に食い込むなんて、こんなに色々なモノが露出するなんて、バニースーツなんて着るもんじゃないぜ。

 

「よーく似合ってるわおーちゃん! それで街を歩いてみましょうよ!」

 

 オレを社会的に殺す気か!?

 

 ――今オレが何をしているかというと、到着した仕立て屋さんの持ち込んだ衣服をギルドの一室を貸しきって試着させてもらっている所なのだ。

 ……つっても、オレはほとんどカナンとコルダータちゃんに嫌々ながら着せかえ人形にされてるだけだけど。

 ちなみに幸いと言うべきか、いちいち脱がずに魔法で瞬時に服を変えられるので裸になる事は無い。

 

 ……裸みたいな服は着させられるけど。

 

「ハア、すばらしい!! ずいぶんカワイイ娘とお友達になったんだな我が姪よ!」

 

「ふふふ、ミルク叔母さんもおーちゃんの魅力に気づきましたか」

 

 ……何を隠そう、仕立て屋とはなんとコルダータちゃんの叔母にあたる、ミルクという女性だったのだ。前にメルトさんが仕立て屋の姉がいるとか言っていた事を思い出す。なお、見た目はそっくりだけど、性格は全然違うな。

 

「てかさー、なんでオレばかり着せかえさせられるんだよ?」

 

「「「カワイイから」」」

 

 三人揃って即答かよ。

 というか、カワイイと言われる事に慣れてきた自分に若干の恐怖を覚えてる。元とはいえ男だったハズなのに。

 ……そもそも本当に男だったのか不安になってきたぞ。

 

「おーちゃんったらホント可愛い……あぁ、いっそ食べちゃいたいくらい……」

 

「はぁ!?」

 

 カナンがそれ言うと冗談に聞こえない。オレは多少死んでも蘇生できるからって、頭からバリボリムシャムシャ……

 おお怖い、普通に痛いからやめてちょうだいな。

 

 

 

「――さて、たっぷりおーちゃんを堪能したし、そろそろ真面目に選ばないとね」

 

「おーちゃんはゴスロリメイドって相場が決まってますもんね!」

 

「まだそれ引きずってたのかよ!?」

 

 何と言うか、軽いワンピースとかだったらまだ良いんだけどさ、こう、ガッツリ女の子って格好は抵抗があるんだよな。是非とも二人とも考え直してほしいな。 え、ダメ? ああ、ミルクさんまでもが衣服を収納してる空間拡張箱に手を入れて取りだそうとしてるじゃないの。

 

「〝ゴスロリメイド〟だな? ワタシのとっておきを見せてやろう! 我が姪とその友よ!」

 

 あー、ダメです。オレ以外みんな乗り気ですな。

 受け入れるしかないのか、ゴスロリメイド服を。

 ああ、神様どうかオレにご慈悲を……

 

 

 ――神は言っている、お前ゴスロリめっちゃ似合うと。

 

 

 ……なんかそんな声が聞こえた気がする。

 いやね、認めるよ? 正直今のオレは自分でも認めるレベルの美少女だって。そこらの子役よりカワイイってさ。

 

 でも、それとこれとは話は別なのさ。男のプライドにかけて、ゴスロリメイドだけは絶対に着ない……!

 

「嫌だ、この体は絶対渡さんぞ……!」

 

「えー? 着てくれたらぱふぇ食べ放題にしてあげようと思ったのに」

 

「た、食べ放題!? 着る!!!」

 

 こうしてオレの男のプライドは崩れ去った。

 嵌められたと気づいた時には既にお寿司。

 

 

 まーた肉体が精神を引っ張りやがりました。ちくしょう。

 

 

 

 *

 

 

 

「三人とも素晴らしく似合ってるぞ! さすが我が姪とその友だ!!」

 

 カナンとコルダータちゃんも新しい服を着て、ご満悦な様子だ。

 

 カナンは、全体的に軍服を思わせる赤いスカートと、背中の空いた半袖の紺色ジャケットを選んだ。見るからに強そうな印象だ。サイドテールの先っちょをにぎにぎしながらこちらを見ている。

 

 一方、コルダータちゃんはカナンの色違いである。

 スカートはピンクでジャケットは黒に近い紫で、カナンとは違い背中は開いていない。

 色違いとは言ったけど、最初に軍服っぽいのを選んだのはコルダータちゃんだ。ちなみに、後からおそろいにしようと提案したのはカナンである。

 

 そんで、オレの服はというと――

 

 もったいぶらずに言おう、ゴスロリメイドである。

 

「はわわ……想像以上よおーちゃん……」

 

 ……うん。

 

「あぅ……」

 

 キリッとした軍服っぽい黒コートにメイドのような装飾を施せばこのドレスになるだろう。

 鏡に映るお嬢様が恥ずかしそうにこちらを見ている。

 

「実は三人の服には、破れても魔力と時間さえあれば元通りに治る刻印を施しているのだ! 本来ならば1着3万ゴルドは下らないが、ギルマスの頼みと我が姪達の為だ、特別に1着3000ゴルドにしておいてやろう! 何よりワタシは今気分が良いのでな!」

 

「じ、十分の一!? いやいやいくらなんでも安すぎないですか?!」

 

「いやいや良いんだ。ぶっちゃけこいつらは長いこと買い手がつかなくてな、我が姪とその友にならこの価格で売っても良い。我が姪のよしみだ、受け取ってくれ」

 

 そこまで言うならと、カナンとコルダータちゃんは了承して九千ゴルドの代金をミルクさんに支払った。

 

「まいどあり。これでその服は三人のものだ」

 

 ……という訳で、オレはこれからこの服を着て生活しなきゃいけないらしい。それに対しカナンは、慣れれば気にならなくなるって言うけど、正直それが一番嫌なんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、終わったか。三人とも可愛くなっちゃって」

 

 試着室から出ると、ギルマスが扉の前でポテチをかじりながら壁に背をもたれていた。

 こんだけポテチ食べてよく太らないなこの人。

 

「さて、ワタシは我が妹の所に用があるのでな、お暇させてもらうとしよう」

 

「ミルクさんありがとさん。またよろしく頼むねー」

 

 ギルマスのエルムと入れ替わるように、ミルクさんはギルドを後にしていった。

 それから、エルムは少しニヨニヨしながら切り出す。

 

「今さっき緊急で依頼が入ってきたんだけどね、ここから北東の村でBランク相当の不死者(アンデッド)が出現したそうだ」

 

「へえ、Bランクの魔物なら私達何度か倒した事あるわ? ささっとやって来ようかしら?」

 

「そうだね、他の街から派遣されたB級二人が既に向かっているんだが……どうも例のアンデッドは複数体同時に突如出現したらしい。恐らく……〝不死王(リッチ)〟が誕生する予兆かもしれないね」

 

不死王(リッチ)って強いのかしら?」

 

 そう聞くあたり、ここでもカナンは敵の強さが気になるようだ。

 

「ああ、最低でもAランク上位……よもやするとSランクに足を踏み入れかねない強力な魔物だよ。存在が確認されたら、国家総動員で討伐に乗り出さなきゃならないレベルのね」

 

 Sランクか……今まで倒した中で最強だったのは上位悪魔(グレーターデーモン)だ。ランクは確かAくらい。

 

 ……それより強いとなると、オレやカナンでも多少苦戦しそうだな。

 

「あの、現場に向かっているBランク冒険者って誰でしょうか?」

 

 カナンが蠱惑的に頬笑む中、申し訳なさそうにコルダータちゃんが質問をした。

 

「知り合いがいるのかい? えっと、〝ザッコル〟という風魔法使いの青年と、〝ルミレイン〟という炎魔法を使える少女だね」

 

 ルミレインいるのかよ。行かなくても勝利確定じゃんそんなの。

 

「よし、今すぐ行くわ! ルミちゃんに先を越される前にリッチを倒すわよ!!」

 

 まあカナンならその程度で諦めはしないよな。

 こうしてオレ達は、急遽リッチ討伐へ向かう事になったのであった。

 

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