バケモノ少女の影魔ちゃん   作:稲嫁とーかちゃん

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第37話 じぇのさいどごぶりん再び

 食べちゃいたいくらい可愛い……。いっそ食べてしまいたい――と思っていたら、まさか本当に食べちゃう機会が巡って来るなんて。

 

 「あーん♡」

 

 「おいおい……冗談……だよな主様(ますたー)?」

 

 うふふふ……そんなにカワイイ顔されちゃうと、もっといじわるしたくなっちゃうじゃない?

 さあおーちゃん、ステキな所へご案内してあげるわ。

 

 「いただきまぁす」

 

 

 ごくり

 

 

 あぁ、おーちゃんが私の中に入ってくる……喉から胸の奥を通り抜け、より深い所へ落ちてゆくのが感覚でわかる。

 

 「ごちそうさま、後は私に任せて」

 

 私のお腹の中に入ったおーちゃんへそう語りかける。そして、ゴブリンに拐われたコルちゃんを助けに向かうのであった。

 

 

 

 *

 

 

 

 

 見つけた、ゴブリンだ。

 十数体の隊列を組んで、どこかへ向かっているようね。さっきの大集団が本陣とすれば、あれは偵察部隊って所かしら?

 どの個体も剣や棍棒みたいな武器を持ってるけどどこからを調達したのか気になるわ。

 

 「ふっ!」

 

 「ゴブッ!?」

 

 そっと背後から忍び寄って、さっと斬りつける。その一瞬で、ゴブリン数体の首が宙を舞った。

 

 「うふふ」

 

 「グギャッ!!」

 

 突然の襲撃に気づいたゴブリン達が、粗末な武器で私に反撃してくる。けれど甘い甘い。

 

 「あはっ♡」

 

 武器ごとみんなの上半身と下半身が泣き別れ。もう永久に結ばれることの無い二人に、悲しくって笑いが止まらないわ!!

 

 「あははっ! あはっ! はははっ♡」

 

 

 ザシュッ! グシャッ! バキッ!

 

 

 そのまま、隊列のゴブリンのほとんどを粉々に切り刻んでやったわ。血しぶきのシャワーが温かくて気持ちがいいわ。

 

 「ご、ゴブゥ……!?」

 

 「残りはあなただけね……?」

 

 一匹だけ生き残ったゴブリンが、私を見てガタガタ震えてるわ。そんなに怯えられるとついつい勢い余って殺したくなっちゃうけど、ここは我慢我慢。

 

 「ブキャアァ~!!」

 

 よしよし、逃げてくれたわね。

 

 おっと、よだれが出てきたわ。そういえばまだお昼も食べてないし、お腹ペコペコね。アレをこっそり追いながら、ゴブリンの魂(おべんとう)でもお腹に入れておくとするわ。

 

 「あーん」

 

 私の背中から伸びる何本もの〝鎖〟が、繋ぎ止めた半透明の球体(たましい)を一つずつ私の口に入れてくれる。

 これが【魂喰】の正体よ。半自動でこの鎖が漂う魂を捕まえて、私の口まで運んでくれるの。

 

 「もぐもぐ……素朴な味ね。質はともかく、量はあるからちょっとお腹を満たすくらいにはなるわね」

 

 お腹が空き過ぎてて、次から次へと入っちゃう。

 おーちゃんはいつも「もっと噛んで食えよ」って口酸っぱく言うけど、お腹に入っちゃえば噛まなくても一緒よ。

 でも、そんな風に叱ってくれるおーちゃんも可愛いわ。今夜はたっぷり可愛がっちゃうおう。

 

 ……あっ!

 そういえばお腹の中におーちゃんいるのすっかり忘れてたわ! いっぱい食べちゃったけど大丈夫かしら?

 

 「~!! ~~!」

 

 でも、消化されないようポーションを飲んでおいたから多分大丈夫でしょ。お腹の内側からぽこぽこ叩いて抗議してるのはきっと気のせいよ。気にしなーい。

 

 

 「ゴブゥ! ゴブゥッ!」

 

 そんなことしてたら、あえて殺さず泳がせたゴブリンが拠点と思われる場所まで案内してくれたわ。

 今まで通ってきた道とは違い、幅も天井も広く、道というよりは青い部屋のような空間ね。

 そこにゴブリンが数百匹、部屋の奥の方を向いてまるで祈りを捧げるみたいに手を合わせてる。

 

 何をしているのかよくわからないし、奥に何があるのかもゴブリンどもが邪魔で見えない。みんな殺しちゃえば解るか。

 

 「コルちゃんを返してもらうわよ!」

 

 「ゴブッ!? ゴブッ!!!」

 

 私の存在に気づいたゴブリンどもが、一斉に振り向いた。そしてお祈りをやめて、その内武器を持つゴブリンたちが私へ襲いかかって来る。

 

 ふふ、むしろご飯が向こうから近づいてきてくれて助かるわ。思わず舌なめずりしちゃうわね。

 

 「ははっ!」

 

 

 

 

 

 何匹かゴブリンを殺した辺りで、中でも良質そうな武器を携えた数匹が私を取り囲んでいた。他の武器を持たないゴブリンはみんな部屋の奥にある別の部屋へと逃げて行っちゃった。

 

 弓矢に斧に剣、あれは杖かしら? あいつだけローブみたいなの纏って、魔法も使えそうね。

 恐らく、この4匹で連携して私を仕留めるつもりかしら? 少し様子を見てみましょう。

 

 「ブギ」

 

 杖を持った個体が合図のような声を発する――と、剣と斧の二匹が前方と背面から同時に斬りかかって来た。

 

 「なるほどね」

 

 なかなか良い動きで私の頭を狙ってくるわ。とりあえず剣の方を先に仕留めちゃおうかしら?

 

 うーん、この動きはどちらか一方が私の隙を作ろうとしてるみたい。

 

 確かに、剣士ゴブリンと打ち合った事で隙ができたかもね。

 

 背面の斧が私の後頭部を叩き割らんと振り下ろし、弓矢のゴブリンが同時に頭へ向け矢を放ってきている。

 

 なら――

 

 「ギャッ!?」

 

 身代わりになってもらいましょう。

 

 剣士ゴブリンの顔面を掴んで持ち上げる。

 じたばたするゴブリンを後ろにかざし、直後に斧の一撃を代わりに受けとめてもらう。

 

 

 ゴスッ

 

 

 斧がゴブリンの頭部を真っ二つに裂き、赤色の混ざった脳髄が噴き出す。

 それから、剣士ゴブリンの手から力が抜けてカランと剣が落ちた。

 

 「楽しいわね?」

 

 「ゴブ!?」

 

 剣士ゴブリンの死体で、遅れて飛んできた矢も防ぐ。

 さて、まだ動きを見せていない魔導師風の杖ゴブリンがどうしかけてくるか気になるわね。遠くからこちらを見つめるばかりで、特に動きは無い。

 

 「……うん?」

 

 僅かな違和感。

 ねっとりと重たい空気が私の頭上へ集まってゆく。

 

 「ゴブッ! ゴブブブブ!!!」

 

 斧ゴブリンが捨て身で私に攻撃をしかけてきた。斧を奪っても、素手で私に掴みかかる。

 そして、遠くから射ってくる弓ゴブリンの目に、一筋の涙が浮かんでいた。

 

 「……へえ、そうくる?」

 

 バチバチと音を立てる、イバラのような青白い光の筋。それらがぐちゃぐちゃに丸く集まって、大きな光の弾が私の頭上に現れた。

 

 なるほど、剣、斧、弓矢の3体で時間を稼いで、魔導師ゴブリンが雷魔法を発動する時間を稼いでいたのね。

 武器を失ってなお私の生足にしがみついてるコイツは、私を道連れにするつもりかしら?

 

 泣かせるじゃない。

 

 「あははははっ!!」

 

 悲しくって笑いが止まらないわ!

 だってそんなものぜーんぶ無意味だもの!!!

 

 ほんのちょっと楽しみたくって手加減してたけど、もう終わりにするわ。

 

 武器を失ってなお、私の足にしがみつく丸腰ゴブリンを引き剥がして、弓ゴブリンに投げつける。

 このまま行っても良かったけど、なるべく長く楽しみたいからね。

 

 「まずはあなた達から!」

 

 たった今投げつけた丸腰ゴブリンと弓ゴブリン。その背後まで一気に回り込んで、2匹とも掴んで持ち上げる。

 

 そして、投げつける。

 

 ――膨れ上がる雷魔法の弾に。

 

 

 ボジュウウ!!!

 

 

 仲間の魔法の雷に焼かれ、2匹のゴブリンは一瞬で丸焦げになった。

 

 「さ、あとはあなただけよ?」

 

 「ゴ……ゴブゥ……」

 

 あらあら、腰が抜けちゃったみたい。頑張って発動しようとしてた魔法も消えちゃったし。うふふ、そんなに怯えられると興奮してきちゃうじゃない?

 

 「安心して、みーんな一匹残らず私のお腹の中(おんなじところ)に送ってあげるから、寂しくないね♡」

 

 

 

 

 *

 

 

 

 いたいた、いっぱい集まってるわね。

 ゴブリンの群れが、戦った所よりも一回り小さい部屋に密集して、やっぱり何かに祈ってる。何なの? ここはゴブリンの教会か何かかしら? 私、教会に良い思い出無いんですけど。

 

 「はあい、調子良い?」

 

 「ギャッ!?」

 

 ああもう、そんなに怯えられるとホントに興奮しちゃってたまんないわ。

 

 ふふふ、みんな様々な方法で助かろうとしてるわね。怯えて私にひれ伏しているのもいる。ま、神とやらの前では皆平等なんだから、私が平等に殺してあげるわ。

 

 「あぁ……快 感 ♡」

 

 刻んで刻んでバラバラにして、一匹も逃がさずぐちゃぐちゃに。

 ゴブリンどもを殺戮しながらうっとりとしていると、部屋の更に奥に変わったゴブリンがいるのが見えた。

 

 ……司祭?

 いやに白いローブを羽織ったゴブリンが、てんやわんやの中でも手を合わせて祈りを捧げてる。

 その前方には、大きな魔方陣が床に刻まれており、ガラスの瓶が五芒星の角に置かれていて、中に何か入っているように見え……

 

 「コルちゃん!?」

 

 瓶の中に、小さくされた人が入れられてるわ。

 司祭ゴブリンに近づいても祈るのをやめないし、嫌な予感がする。

 

 「ブギャッ!」

 

 私は司祭ゴブリンの胴を一刀両断し、コルちゃんが入ったガラス瓶を拾い上げた。

 

 「コルちゃんっ!!」

 

 「う……カナちゃん!?」

 

 良かった、生きてる。他の瓶の中にも小さくされた冒険者が入ってるみたいだし、ついでに助けてあげるわ。

 

 

 ……と、他の瓶を拾おうとした時の事だった。

 突如魔方陣が明滅しだし、置かれたガラス瓶がパリンと割れ、中から血が流れ出した。

 更に、胴体が両断された司祭ゴブリンの死体が床に吸い込まれるように消えていった。

 

 「カナちゃん……これは一体何が起こってるんですか……?」

 

 「私にもわかんない……」

 

 異常はそれだけに留まらない。

 魔方陣の中から黒い液状の〝何か〟が溢れだし、固まって生き物のような形を作り出してゆく。

 

 これ、前にも見たことがあるわ……

 

 「あれってまさか……ってカナちゃんどうし――」

 

 コルちゃんを瓶から手のひらに移し、そのまま口に放り込んでごくり。

 

 「ごめんねコルちゃん、後で必ず出してあげるわ」

 

 ……アレはヤバいわ。

 小さくされた今の二人では、〝アレ〟とはどうやっても戦えない。私の体内こそが二人にとって最後の砦。

 

 そうこうしている内に、液体は大きな漆黒の竜を形作っていた。

 

 「ゴブリンめ……上位魔霊を召喚しやがったわ……」

 

 

 

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