バケモノ少女の影魔ちゃん   作:稲嫁とーかちゃん

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第42話 こちょこちょはおしおきに入りますか?

 「あぅっ……! や、やめてぇ……」

 

 何とかお風呂を出てからも、オレは二人に敏感なトコロを攻め続けられていた。

 

 お布団の上でカナンに抱きしめられ、無防備な背後ではコルダータちゃんがオレの下着に手を入れて、尻尾の付け根をにぎにぎしている。そして案の定、オレの抵抗は一切の意味を成さない。

 

 「ホント、おーちゃんってどうしてこんなにカワイイのかしら?」

 

 オレが動けないよう抱きしめるカナンが、ニヤニヤ微笑みながら言う。

 

 「それは、おーちゃんだからですよ!」

 

 「何その謎理論……って、あぅ……―――~っ!!」

 

 また、脳が蕩け体の骨が抜けたような感覚が、波のように押し寄せてくる。

 何度も何度も繰り返し、オレの尾を揉みもみするその手がようやく止まるまでの記憶は、霞のように曖昧になっていた。

 

 

 ――あれ? いつの間にかコルダータちゃんの手が止まってる?

 

 「すう……すう……」

 

 ね、寝てるーっ!? オレのパンツに手を入れながらっ!?!

 

 「ふふ、コルちゃん寝ちゃったのね? それじゃあ私も、ふわぁ……そろそろおねんね……」

 

 「そっか。今日もお疲れさま、おやすみ主様(ますたー)……」

 

 「おやすみおーちゃん……」

 

 そうして、カナンも夢の世界へ行ってしまった。

 オレも眠いものの、眠るにはまだ少しかかりそう。

 

 ん……?

 ふと、カナンのお腹が光っている事に気がついた。オレが体内に置いてきちゃった明光石がまだ光ってる。

 

 朝には出てくるのかなぁ。こんなに光ってたらバレるよな、それまでに光が消えている事を祈ろう。

 

 

 

 

 ――

 

 

 

 

 

 ……?

 オルゴールの音がする。優しくも、どこか切なく懐かしいメロディ。

 目を開けると、ステンドグラス一面に虹色の翼を持つ天使が背を向けて首を吊っていた。

 

 「……まーた凄い量の魂を食べたのだな」

 

 「うちの主様(ますたー)は大食らいだからな。今日はオレまで飲み込まれたし」

 

 横から話しかけてきたアスターに、オレは今日あった事を軽く報告する。

 

 「飲み込まれた……? なにを比喩してるのか分からないのだ?」

 

 「いや、比喩じゃねえ。異質物(アルカナム)で小さくされたオレを、無理やり丸呑みにしやがったんだ。危うく消化される所だったぜ……」

 

 「うっへえ、とんでもない悪食なのだ……」

 

 アスターを引かせるなんて、さすがカナン。丸呑みにされて喜んでいたコルダータちゃんの事も言ったら、更に引く事だろう。言わないけど。

 

 「……にしても、ここにある魂って――」

 

 これもカナンの胃の中で見た事なのだが、魂を消化すると言っても、全てを溶かしている訳ではないらしい。魂の核……水晶みたいな硬い部分が、消化されずに胃の底にずっと沈んでいたのだ。

 

 ここにあるのは、その未消化部分のようだ。

 消化できないのに、どこからか吸収だけはしているらしい。

 

 まあ、カナンの消化器官について深く考えるとトイレにまで行ってしまうので、これでこの話はおしまい。オレにそういう趣味は無いしな。

 

 それはそうと、アスターにはまた聞きたい事がある。

 

 「ところでアスター。〝管理者〟って何者なんだ? 何か知ってたら教えてくれ」

 

 「かんりしゃ? そいつはどこを管理してる者なのだ?」

 

 「なんかな、迷宮の管理()している者だとか自称してて、頭の中に直接話しかけてくるんだ。のじゃのじゃが口癖でな」

 

 オレがそこまで説明すると、アスターは顎に指を当ててぶつぶつ言いながら考えだした。

 

 「迷宮を支配する力に、のじゃ……そうかラプラスの奴か。懐かしい、アイツ変わってなさそうなのだ」

 

 「ラプラス?」

 

 「あ、いやこっちの話なのだ。悪いけど向こうにも事情があるだろうし、〝管理者〟についてわたしが詳しく話せる事は無いのだ。

 ……ただ、キミ達とんでもない大物に気に入られてるのだ。それだけは言えるのだ」

 

 なんだよもったいぶって。だがまあ、ラプラスとやらにもプライバシーってのがあるのだろう。仕方ないな。

 ただあいつ、大物……らしいな、あののじゃロリ。ほんとかなぁ。

 

 「おっと、そろそろ時間が迫ってるのだ。何か一つまた能力(アビリティ)でも作るか?」

 

 「おっ、そんじゃ――」

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 ふと、目が覚めた。

 迷宮の中は基本的にうっすら青く光っていて明るい。

 常に明るさの変化はほぼ無いので、今の時間は枕元の時計を見て確かめるのだ。

 

 ちなみに壁の中はその限りじゃなく暗いぞ。だから明光石が必須である。

 

 「ん……主様(ますたー)、コルダータちゃん。起きる時間だぞ」

 

 「んむぅ……おはよおーちゃん」

 

 オレを抱き締めて眠っていたカナンが、目をくしくし擦りながら目を覚ました。

 

 「ほら、コルダータちゃんも」

 

 「ふしゅぅ……起きてます(おひへまふ)

 

 すると、コルダータちゃんはオレのお尻に埋めた顔から声をあげた。もしかして一晩中その状態?

 

 ちょっとドン引きした所で、オレ達はもそもそ布団から起き上がって支度を始める。

 

 着替えて寝癖を直して、身だしなみを整えてから朝食を採る。

 

 今日のメニューはお魚の丸焼きとトマトサラダ。シンプルながら、栄養はしっかりしてるので迷宮探索前に食べるならぴったりだろう。

 

 「ごちそうさまー」

 

 食べ終わったら、ゴミや布団や色々と散らかしたものを全て【次元収納】で回収する。それから出発するのだが……

 

 「ごめん、ちょっとおトイレ行ってくるわね」

 

 「はーい!」

 

 カナンがさっと浴室の方へ向かう。

 浴室の奥に、コルダータちゃんはおトイレまで作っていたのだ。どこまでも有能な能力である。

 

 

 ……トイレ?

 

 あっ!? そうだ忘れてたっ!!

 

 

 オレにどうする事もできないが、もしかしたら明光石が出てくるかも。

 うぅ、気づかれたら間違いなくカナンに怒られそうだ……

 

 「おーちゃんどうしたのです?」

 

 「あぁ、いやな。別に何ともないというか……」

 

 「カナンちゃんのおトイレに反応……もしや、体内に何か置いてきちゃいましたね?」

 

 な、なぜそれを……

 コルダータちゃんの勘が妙に鋭い。

 

 「当たりみたいですね? それがそろそろ出そうだと。……全くおーちゃん、言ってくれればわたしが取りに行ったのに!」

 

 「あぅ……」

 

 理由をつけてまたカナンに飲み込まれたいだけなのだろうが、確かにコルダータちゃんに知らせるべきだったかもしれない。別に知らせてもオレが取ってくる必要は無いのだし。

 

 「……その様子だと、心当たりがあるみたいね、おーちゃん?」

 

 「まっ……主様(ますたー)!?」

 

 いつの間にか、トイレから戻ってきたカナンがオレの背後に立って額に青筋を浮かべていた。やっぱり怒ってる……

 

 「ご、ごめんなさい……」

 

 「あら? 別にいいのよ、怒ってないわ?」

 

 「あぅ?」

 

 怒ってない? 本当に?

 それなら良かった、心配のし過ぎだったみたいだな。

 

 「……ただ、おしおきは必要だと思うの」

 

 「あぅっ!?」

 

 結局怒ってるじゃん!

 微笑みながら手をわきわきさせるカナンに捕まったオレは、朝っぱらからひどいおしおき(こちょこちょ)を身に受けたのであった。あぅぅ、脇が死にそう。

 

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