バケモノ少女の影魔ちゃん   作:稲嫁とーかちゃん

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第8話 おーちゃんかわいい

『よっす、半日ぶりなのだ』

 

『うお、どっから現れた!?』

 

 虹の翼の天使(ステンドグラス)を眺めていたら、いきなりひょっこり話し掛けられた。

 いつかのお馬鹿な白髪少女じゃないか。

 

「あ! また馬鹿って考えてたでしょ! わたしは〝大人〟だから、もう気にしないのだ! ふふーん!」

 

 相も変わらず子供だな。

 

『契約の時は世話になったな。で、今度はどんな用があるんだ?』

 

『その前にー、わたしがお願いした事が先なのだ』

 

 何やらもじもじ上目遣いでオレの事を見つめてる。お願いされたって……何を頼まれた?

 

『わ た し の 名 前 なのだ! 忘れてたなんて言わせないのだ!』

 

『あ~そうだったな、ちゃんと考えて来たぜ。三つあるから好きなのを選べ』

 

『3つも!? 素晴らしいのだ! さっそく教えて欲しいのだ!!』

 

 とは言ったものの、実は全然考えていなかったのが実状だ。

 その場のノリとオレのセンスで、とりあえず3つ言ってみた。

 

『まず〝ワガママヨウジョ〟だろ? それから〝ゴウマンヨウジョ〟。最後に〝アスター〟だ』

 

『のだっ!? 3つめ以外に選択肢が無いのだ!!?』

 

 こうして少女の名前は「アスター」に決定した。

 オレがポカポカ叩かれたのは言うまでもあるまい。

 

 

『で、結局本題は何なんだ?』

 

『そうそう、わたしはこれからキミに力を与える事にしたのだ。ありがたく思うがいいのだ』

 

『はぁ? 力ぁ?』

 

 ククク、力が欲しいか……? 的なノリですか? アスターちゃんに全然そんな覇気は無いですけど。

 

『まーた失礼な事考えてたでしょ……正確には、キミとカナンちゃんに備わる、新しい〝能力(アビリティ)〟を開拓する能力(アビリティ)……を補助する事にしたのだ』

 

『あ、アビリティ? ちょっとよくわかんねぇから、まずはそこん所の解説頼む』

 

『アビリティとは、この世界特有の概念なのだ。世界の理に干渉して特定の事象を起こす力……

 ……キミにも解るよう簡潔に言うと、イマドキのゲームのスキル的なものなのだ。現時点でキミが使っている【上位氷結魔法】も、アビリティなのだ。どう、伝わった?』

 

 なるほど、完全に理解したわ。半分くらいは伝わった。

 ますますゲームっぽい世界なんだなここ。

 

『戦力が上がるって事はよく分かったから、さっそくアビリティとやらを作りたい。手伝ってくれるんだろ?』

 

『一口に作ると言っても、無から有を生み出せる訳じゃない。その分の〝素材〟が必要になってくるのだ』

 

『素材……って何を用意すりゃいいんだ?』

 

『ふふふ、聞いて驚くなよ~? それは―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そうだった。多分こいつはアスターの仕業だ。

 昨日の時点で集まっていた〝素材〟を使って、さっそくアビリティを作っていたのだ。

 

 どんなアビリティを作れるのか色々と聞きながらやっていたんだが、アスターのやつめ、多分【人化】とかその辺のやつをどさくさに紛れてこっそり作りやがったな。

 オレの種族を聞き忘れた上に、まさか幼女にされるとは……

 

「隠れてないで、出ておいで~? なんにもしないからさ~」

 

「昨晩さんざんオレを困らせて楽しんでいたのはどこの誰だよ?」

 

 オレは今、シーツに包まりベッドの下で絶賛籠城中である。悪魔(カナン)の声に耳を傾ければ、何をされるか解ったもんじゃない。

 

「昨日の事まだ根に持ってるの? ごめんってばー」

 

 魔法は使えるのかもしれないな。しかし、身体能力は見た目通りに弱体化してしまっている。当然、ゴブリンをジェノサイドしまくったカナンの膂力に敵うはずもなく、目が合った瞬間咄嗟にここへ逃げ込んだのだ。

 がるるるる……!

 

「うーん……? カナちゃんどうしたの?」

 

 救いの女神が目を覚ます。

 コルダータちゃん助けてっ!

 

「この子は……もしかして、おーちゃん?」

 

「面影あるし多分そうよ。全然出てきてくれないの」

 

「すっかり警戒されているじゃないですか」

 

 ベッドの下を覗きこんで、優しく頬笑むコルダータちゃん。その顔の安心感といったらもう。

 

 そっと手を差し伸べて、出ておいでと慈愛に満ちた顔で言う。オレはその言葉に従って、シーツを纏ったままベッドの下から這いずり出た。

 

「どうしてよおーちゃん?! (マスター)は私なのに……」

 

「はは、わたし懐かれちゃったみたいですね」

 

 コルダータちゃんはオレを抱き抱え、頭をなでなでしてくれた。なんだか悪い気はしないぞ。

 しかし、今のオレの格好はかなりアウトだな。これでは部屋の外に出る事ができないし、メルトさんにどう説明すればいいか。

 

「服……着るものが、欲しい」

 

「お洋服かぁ。そうだ、この部屋から出て右の突き当たりに物置き部屋があるのですが、そこにわたしのお古が何着かあったハズです。カナちゃん取ってきてくれませんか?」

 

「なんで私が取ってこないといけないのよ?」

 

「だって、一人で部屋に残るのは不安でしょうし、カナちゃんと留守番するのは嫌でしょう。ねー、おーちゃん?」

 

 その通りである。二人きりになったら今度こそ貞操権を侵害されかねん。

 ここは信頼できるコルダータちゃんと仲良く待っていたいのだ。

 

「……ちぇっ、ならできるだけ可愛いお洋服を選んであげるわね」

 

「か、可愛くなくていいからっ!」

 

 オレは男だ! 女の子の格好するなんて絶対に嫌だ!

 ……けれど女の子の服しかないのであれば、せめて地味なものがいいな。

 そうしてカナンは扉を開けてしぶしぶ出ていったのだった。

 

 

「二人きりだね」

 

「ああ。まさかこんな姿になるなんて、びっくりしたぜ」

 

 優しく微笑みながら、オレの頭を撫でるコルダータちゃん。

 

「言葉使いから男の子だと思ってたよ。まさか女の子だったなんて」

 

「いや違う、オレは本当は男なんだ。この姿はきっと手違いなんだ……」

 

「そっか。じゃあ、急に女の子の体になって戸惑っているでしょう?」

 

「全くもってその通りだな」

 

 コルダータちゃんが後ろからオレをぎゅっと抱き寄せると、柔らかい2つの感触がオレの頭を包み込む。ヤバい、なんだこの感じ……お腹の下の方が熱い?

 

「ふふ。女の子のカラダ、教えてアゲル……」

 

 はぇ? なんだなんだ、コルダータちゃんの様子がちょっと、いやかなりおかしいぞ。なんでオレがくるまってるシーツを剥がそうとするんだ?

 

 ……嫌な予感がする。

 突き飛ばして少し強引に距離を取ると、コルダータちゃんは蕩けた顔して追ってきた。

 

「逃げないで、もう! カワイイんだからっ♡」

 

「く、来るなぁ!」

 

 オレは狭い部屋の中をシーツを纏ったまま逃げ惑う。そんなオレを弄ぶかのように、コルダータちゃんはじわじわと壁の端の方へと追い詰めてゆく。

 

「立てばロリータ、座ればアリス! かく言うわたしはペドフィリアーッ!!!」

 

「何その迷言!? ……ってもう逃げ場が無い!?!?」

 

 たすけて主様(ますたぁ)!!!

 

 瞳を光らせ両手ををわきわき、獣のごときコルダータはついにオレを押し倒した。力は向こうの方が上……! 本当にオレは弱体化してしまっているらしい。

 

 くっ、ここまでか……

 諦めかけたその時だった。

 

「とりあえず虫食い無いのを何着か持ってきたけ……ど? 何やってるのコルちゃん?」

 

「あぅ……主様(ますたぁぁ)っ!!」

 

 一瞬押さえつける手の力が弱まった隙に脱出して、戻ってきたカナンの胸に飛び込んだ。

 助かった……助かった!

 

「……ははーん。さてはコルちゃん、おーちゃんを独り占めしようとしたわね?」

 

「ごめんなさい、あまりにも可愛らしくてつい……」

 

 つい、じゃねーよ! 危うくオレの純潔が穢される所だったわ!!

 こうしてオレは今日、コルダータちゃんはカナン(ますたー)以上の危険人物であると学んだのであった。

 

 

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