バケモノ少女の影魔ちゃん   作:稲嫁とーかちゃん

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第92話 続・ショッピング

 たまたま出会ったリナリアさんとエリナリアさんと一緒にショッピングを楽しんでいる最中、なんと同じ依頼を受けていたという事が判明した。

 

「そんな、カナンちゃんたちもあの飛竜(ワイバーン)討伐作戦に……?!」

 

「うーん、そうねぇ。魔人の中には見た目が子供のまま歳を取らない種族もいるし、そういうことなんじゃなぁい?」

 

 今回の依頼は推奨Bランク。それも今後次第でAランク以上に達する可能性もあり、依頼を受けられるのは最低でもBランクの中でもAランク以上と遜色ない実力を持つ冒険者に限定されている。

 

 つまり、それに参加するというだけでこの二人は相当の実力者である事がうかがい知れる訳だが、それは向こうからしても驚きだろう。

 

「私はまだ11歳よ。おーちゃんは人化してから2ヶ月ね」

 

「へぇ、一月二月でBランクだなんてカナンちゃんは天才だねぇ。オーエンちゃんもまだ人間種の社会には慣れてないだろうに、よく馴染めてるねぇ。二人とも凄いねぇ」

 

「……とはいえ、あたしたちには後輩を守る義務がある。もしも困ったら迷わず頼ってくれよ?」

 

「ありがとう。よろしくねリナちゃん、エリちゃん」

 

 この二人は信頼できそうだな。

 何より、【明哲者】で視たところなかなかの実力もあるし、リナリアさんなんて――

 

 それからオレたちは、改めてショッピングを楽む事とした。

 

「迷宮探索みたいに数日かかる依頼には〝どこでも清潔タオル〟は必須よぅ? 特に女の子にとってはねぇ」

 

「お、おう……。確かにそうかもな……」

 

 すみません、多分オレがいればそれ必要ないです。

 

 シャワーを浴びれないけど体を清潔にしたい、という主に女性冒険者の声に応えたとある商会が開発した〝どこでも清潔タオル〟。

 大きなウエットティッシュみたいなシロモノで、これでごしごし体を拭いて使うのだとか。使うといい匂いと清涼感が心も体もさっぱりさせるとかさせないとか。

 

 間違いなく冒険者には必須なんだろうとは思うけど、オレの【清浄】があると一発で綺麗にできてしまうしなぁ。

 

 とはいえ買わないのもなんだか申し訳ないので、無用の長物になりそうだが一応いくつか購入しておいた。

 タオルの他には生理用品や簡易トイレ、予備の明光石などの雑貨も。

 

「ところでぇ、二人は荷物をどうやって持って歩いてるのぉ? 見たところ荷物袋も無さそうだし……」

 

「ふっ。そこでおーちゃんの出番よ! おーちゃんの能力(アビリティ)なら、重量を気にせずいくらでも収納できてしまうのよ!!」

 

「もしかして【次元収納】か? 噂には聞いていたが、実際の使い手に会うのは初めてだ」

 

 とまあ、オレたちに荷物の量を気にするという概念は無いという話を二人にしているカナンは、なぜか誇らしげであった。

 

 

 雑貨を購入し尽くし、これでやっとショッピングは終わりか……と思ったら次は食料品の買い出し祭りが始まった。

 

「元々食糧は持ってきているけどな、念のためもう少し貯えておきたいんだ。カナンちゃんたちもお金の余裕と収納があるならいっぱい貯えておいたらいい」

 

「そういえばちょっとした調理器具も欲しいわね」

 

「うぇっ、まさか主様(ますたー)何か作るつもりじゃ……」

 

 脳裏に甦る、あのトラウマ。

 カナンの料理の腕はまさに天災級なのだ。ゴブリンでさえ悶絶すること間違いなし。

 いやあれはマジで死ぬかと思った。

 

「それもいいけれど……私はおーちゃんの手料理が食べてみたいわ」

 

「へぇ、オーエンちゃんはお料理が上手なのか」

 

「あらあら、それはわたしも食べてみたいねぇ」

 

「え、あぅ?」

 

 カナンの絶望味料理を食べなくて済むのはよかったが、なんでオレがお料理する事になってんの?

 いやまあ、確かに料理は得意だけど……。

 

「しょーがない、カレーでも作るか……」

 

「わぁい! おーちゃんの手料理楽しみー!!」

 

 という訳で、食材を買い貯めたら今度は冒険者用の調理器具を買う事となった。

 

 魔術で火をつけるアイテムに、お鍋や鉄板。それから大きなまな板や小さな包丁も。さながらキャンプグッズだな。

 

 色々と買い漁りようやくお買い物も終わりかと思ったら、まだあるらしい。どうして女の子ってこうも買い物が好きなんだ……?

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 あれからお買い物は更に二時間以上続けられ、オレがそろそろお腹が空き始めた頃にようやく解放された。

 時間はお昼前くらいで、道中購入したハンバーガーを片手にギルドへと向かう。

 

 うむ、レタスのしゃきしゃき感とお肉の肉汁がバンズの甘味とベストマッチしておる。おいちい。

 

「おーちゃんったら、またほっぺに食べかすついてるわよ。かわいいわね」

 

「ふぇ?」

 

 このやり取りはもう何回繰り返されたのだろうか。

 カナンがオレの頬っぺたについた食べかすをぱくり、そしてオレは赤面するといういつものお約束の流れだ。

 しかし分かっていても、赤面からは逃れられないさだめなのである。

 

「ふふっ、二人はとても仲が良いんだね」

 

「わたし達の馴れ初めを思い出すわねぇ……。あの頃のエリナはそれはそれは小さくて泣き虫で……」

 

「ちょ、それは言わない約束だったろっ!?」

 

 うーん、これは勘だが、リナリアさんとエリナさんってもしかして……?

 

 そんなやり取りをしている内に、オレ達はギルドへと到着した。

 例の依頼の目的地へ送迎車を出してくれるそうなので、その為に一旦戻ってきたのである。

 

 それともうひとつ。

 発注していた道具の受け取りだ。

 

「いらっしゃいカナンさん。例の品が届いていますよ」

 

「話が早くて助かるわ」

 

「ふむふむ、例の品ってなぁに?」

 

 リナリアさんとエリナリアさん……名前似てるし呼びにくいから、二人まとめてリナエリでいいや――の二人が、興味深そうに受付の脇から顔を覗かせる。

 

「少し前にとある魔物を討伐した時にね、お金の代わりに色々依頼に使えそうな物を取り寄せてもらっていたのよ」

 

「へえ。それはいいな」

 

「そんな事できたのねぇ。知らなかったわぁ」

 

 そんなこんなで受け取ったそれは、だし巻き玉子みたいにくるくるに丸まったテントと寝具だった。

 

「これらはバランタイン商会製の品物です。高機能すぎてそこらの冒険者では手の届かない価格ですので、大事に使ってください。詳しい機能や使い方は付属の説明書を見てくださいね」

 

「ありがとうね」

 

 またバランタイン商会か。さっきの『どこでも清潔タオル』も、そこが作った製品らしいな。

 

 そうしてカナンがそれらを受けとると、オレが次元収納へ取り込む。

 重量を気にせずに持ち運べるのはとても便利だな。

 

 ちなみにバランタイン商会では重量を軽減させる荷物袋も開発しているとかいないとか。オレたちには無用の品だろうけど。

 

ギルドを出て、山脈まで送迎してくれるという車へ向かう最中。

 

「オーエンちゃんは凄いねぇ。かわいいだけじゃなくって、しっかりお役に立っているんだから」

 

「ふふ、うちにもかわいい次元収納の使い手が欲しい所だな」

 

「あらあらぁ、浮気は許さないわよぉ?」

 

「ち、違うって! あたしかリナリアにも次元収納が使えたら良いなって話だよ! ほら、リナリアはかわいいから!!」

 

「あらぁ。褒めてるのかしらぁ?」

 

 この二人、やっぱりそういう事か……。

 百合はいいぞ、見ているだけで癒される。

 

「どうしたのおーちゃん? 変ににやついてるわよ?」

 

「はうっ!? な、何でもない!」

 

 いかんいかん、顔に出てたか。

 しかし百合とは尊いものなのだ、素晴らしい宝なのだ。

 ふへへ、影ながらリナエリの二人が末長く幸せである事を祈っているぜ。

 

 

 

 ……等と思っているオレも、端から見ればカナンとそういう関係であるのだと、この時は考えてもいなかったのである。

 

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