社畜配信者、女子高生たちの師匠となる ~うっかり無双して美少女JKダンジョン配信者たちを助けた結果、彼女たちを最強冒険者にプロデュースすることに!?~   作:軽井広

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第12話 女上司をわからせる

 とりあえず迷惑系配信者の徳田を撃退したのは良かった。けれど、実菜に師匠らしいことは何もできないまま時間切れになった。

 

 上戸の指示どおり俺には通常業務がある。

 

 それもこなした上で実菜たちも教えないといけない。

 頭が痛くなってきた。実菜は不満そうにしていたけれど、いったん俺は地上へと戻ることにした。

 

 徳田たちの問題の後処理もしないといけないし。

 実菜たちを先に帰して、役所の事務処理とダンジョン下層探索を終えて、オフィスに戻ってきたのが午後十時。

 

 もうかなり遅い。

 なのに、自分の席に戻ると、夏菜子も上戸も残っている。

 

 夏菜子は上機嫌にネット掲示板を眺めていて、いかに俺が人気かということを熱く語ってくれた。少し恥ずかしい……。

 

 問題は上戸の方だ。

 俺も夏菜子も配信されているのに気づかず、上司の上戸の悪口を言ってしまった。

 

 上戸は昼間と同じスーツ姿でびしっと決まっていた。ちらっと俺を見ると、立ち上がって不機嫌そうにこちらにやってくる。

 

「ちょっと……」

 

「昼間の件でしたら、すみません」

 

 俺は素直に謝った。たとえ上戸相手でも悪口というのは良くないものだ。

 上戸は綺麗な顔に憂鬱そうな色を浮かべた。

 

貴方(あなた)が私を嫌っているのは知っているわ」

 

「いえ、嫌ってなんていませんよ」

 

「嘘でしょう」

 

 そう言われると、たしかに俺は上戸と反りが合わないと思っている。

 

「業務を増やしたことは悪かったと思っているわ」

 

 いつもは傍若無人な上戸が、しおらしく言う。普段の凛とした雰囲気もなく、ちょっと泣きそうにすら見える。

 美人女性にそんな顔をされると、俺が悪い気がしてくる。

 

「いえ、大丈夫ですから! お気になさらず!」

 

 俺はついそう言ってしまった。すると、上戸は「あら、そう?」と言って、急ににっこりと笑った。

 しまった……! はめられた気がする。

 

「なら、遅くまで悪いけど、明日もよろしくね。追加で頼みたいことがあって」

 

「いや、実はもうキャパシティがないのですが……」

 

「私なんて楽勝で倒せる橋川なら、平気でしょ?」

 

 やっぱり、俺が言ったことを根に持っているらしい。

 上戸はSランクに近いAランク。自分の実力にプライドがあるから、俺が配信で「上戸なら簡単に勝てる」と言ったのを認めるつもりはないだろう。

 

「今度試してみるのもいいかもね。どっちが強いか」

 

「そんなことをしても意味がありませんよ」

 

「勝ったほうが相手のお願いを聞くって条件で、どう?」

 

「それ、俺が勝って、上戸さんに変な命令をしたらどうするんですか?」

 

「問題ないわ。私が勝つから」

 

 負けず嫌いで自信過剰。これが上戸の姿だ。

 そこに夏菜子が口を挟む。

 

「それなら、いい方法がありますよ」

 

 俺と上戸が一斉に夏菜子の方を見る。

 いつのまにか、水晶玉のようなものを夏菜子は手に持っていた。

 

「これ、最新の魔力測定器なんです! 手をかざすだけで潜在魔力量がわかるんですよ!」

 

 ダンジョン出現とともに、人類は魔法を使えるようになった。魔力という概念が現れたのも同時だ。

 

 体内にある魔力を、現実の事象としての魔法に変換する。それが魔法。

 つまり、魔法の才能は魔力量に大きく依存する。

 

 そして、冒険者、特に後衛は魔法を使うことが求められる。

 俺は回復役、上戸は魔法攻撃担当の冒険者だから、どちらも魔法使いなのだ。

 

「へえ、面白そうじゃない」

 

 上戸が興味を示す。

 

「昔は魔力量も漠然としかわかりませんでしたけど、便利な時代になりましたよね」

 

 実際、この水晶玉測定装置はつい半月前に発売された最新のもので、俺も一度も使ったことはなかった。上戸も同じみたいだ。

 

「せっかくなら配信もしましょう!」

 

 夏菜子が俺のチャンネルを起動して、ドローンが撮影を開始する。

 

<突然の配信開始!>

 

<女上司との対決か!>

 

<名前は上戸佐緖だっけ?>

 

<めちゃくちゃエロいよな>

 

<スーツの上からでもスタイル抜群なのがわかるし、胸も大きいし谷間も見えているし>

 

 コメント欄が勝手に盛り上がり始める。

 上戸はコメントを見て、うろたえて腕でブラウスの自分の胸のあたりを隠したが、それがかえって扇情的だ。

 

 俺は肩をすくめた。

 

「これで勝負するのか……?」

 

 俺は気が進まなかったが、上戸と夏菜子は乗り気のようだった。

 

「約束よ。負けた方が命令を聞くんだから」

 

「いや、俺はそんな約束した覚えはないのですが……」

 

「どうせ橋川は勝ったら、私にエロいことでもしようとするんでしょうけど」

 

 上戸はジト目で俺を睨む。部下を何だと思っているのか……?

 

「男子高校生じゃないんですから、上司にそんなことはしません!」

 

「どうだか……」

 

<俺が橋川だったらそうするだろうな>

 

<女上司をエロ調教www>

 

<ネット民の民度低すぎwww>

 

<わたしの橋川さんはそんなことハレンチなことしません! あっでもわたしにだったらいくらでもエロいことしていいですよ!>

 

 コメント欄が次々と勝手なことを言う。

 上戸はにやりと笑った。

 

「ま、私の勝ちに決まっているんだから、いいけど」

 

 その自信はどこから来るのか……? エリート特有の傲慢さなのか何なのか……。

 

 そして、上戸は夏菜子とともに水晶玉を覗き込んだ。

 ふたりとも目をきらきら輝かせている。

 

「ね、佐々木さん。どう使うの?」

 

「ここをですね……」

 

 上戸と夏菜子が水晶玉を前にして、和気あいあいと話している。というか、上戸は夏菜子にも悪口を言われていたはずだが……。

 

 美人と美少女が並ぶと絵になるなあ、と思ったらコメント欄も<こんな上司と後輩がほしかった……><ふたりとも芸能人並に美人だよな>なんてコメントが流れてくる。

 

 やがて上戸が得意げにこちらを振り向いた。

 

「ほら、橋川。見なさい! 私の魔力量は9,835!」

 

「上限値が10,000らしいので、ほぼ最高値ですね! さすが上戸さん!」

 

 上戸は上機嫌で、夏菜子もおだてるように言う。

 

<すげええええ!>

 

<見た目だけじゃなくて魔法の才能もあるとかずるいな>

 

<9,000超えるだけでも天才なのに、その後半なんて見たこと無いぞ!?>

 

 たぶんコメントの言う通りなんだろう。自信があるだけのことはある。やはり上戸は優秀なのだ。

 

 だけど、夏菜子はくすっと笑ってこちらを見る。

 

「でも、先輩ならもっと上だと信じていますから」

 

 夏菜子の言葉に、上戸は急に不機嫌そうになる。

 

「私よりこいつの方が強いと貴方も思っているの? 私はAランク、橋川はDランクなのよ?」

 

「でも、橋川先輩は元Sランクですし、すごい人ですし!」

 

 上戸がますます機嫌が悪くなっていく。

 ハードルを上げられた俺も、冷や汗をかく。これで「魔力量5」とか出て、夏菜子にがっかりされたり、「ゴミ」と上戸に罵られるのは嫌だなあ……。

 

「ほらほら、先輩! 早く!」

 

 夏菜子が強引に俺の手をつかむ。ひんやりとした夏菜子の手に俺はドキッとする。

 この後輩は距離感が近すぎる……。

 

 夏菜子が俺の手を、無理やり水晶玉の上に置いた。

 測定が開始される。すると、水晶玉に赤い数値が浮かび上がる。

 

 最初の一番大きな桁の数字が「1」だったので、上戸は勝ち誇ったような顔をした。普通に考えれば、1,000台の数字ということになるから、俺の惨敗だ。

 

「なーんだ。1,000程度しかないわけ?」

 

「ま、待ってください! これ……上限を超えています!」

 

 水晶玉には「190,268」と表示されていた。

 その場がシーンと静まり返る。

 

 つまり、俺の魔力量は190,268。上戸は9,835。

 俺の圧勝だ。

 

「なっ……! こんなの嘘よ! 壊れているんじゃない!?」

 

 上戸がそんなふうに叫ぶが、俺と夏菜子は顔を見合わせる。

 

「上戸さんの負けですよ……?」

 

 夏菜子が淡々と告げる。上戸はがーんとした表情を浮かべた。

 

<女上司ざまぁ!>

 

<橋川にエロいことされろよ!>

 

<というか橋川ぶっ壊れ性能すぎるだろ>

 

<上限値の19倍だもんな>

 

 上戸はううっと涙目になると、「あの……お願いだから……エロいことはしないで……」と俺に言う。

 

「そんなことしません!」

 

 俺は強調して言わないといけなかった。上戸はほっとした表情になると、少し頬を赤くして俺を睨む。

 

「と、ともかく! 私は明日も貴方の上司なのは変わらないんだからね!?」

 

「まあ、会社員ですからね」

 

「だから、これは上司としての命令! 貴方は明日、御城実菜たちの通う学校へ行きなさい」

 

「へ?」

 

「貴方は御城さんたちの教師になるの」

 

 俺は呆然とした。

 まさかこの年齢になって、女子高生たちと一緒に学校で過ごすことになるとは思わなかったのだ。

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