再び太陽は昇る   作:ポド

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中級魔術師

 ──ルーデウスside

 

 

 ヨリイチたちの荷物は少なく、空いてあった部屋、客人用の部屋に3人で寝てもらうことになった。

 部屋に荷物を置いた後、みんなで夕食だ。今日は前世で言うクリームシチューだ。暖かくてまろやかで俺の好物の1つ。ヨリイチたちの口にも合ったようだ。

 

「どう? 美味しい? ヨリイチちゃん」

 

「はい。とても美味しいです」

 

「それはよかった。おかわり、沢山してね」

 

「お言葉に甘えます」

 

 礼儀正しい。とても15歳とは思えない佇まいだ。武士? 剣士? の家系だからだろうか、所作もとても綺麗だ。

 まぁ、3歳になったばかりの俺も普通の3歳児には見えないけどな。俺ならこんな3歳児が居たらと思うと不気味に思うぜ……あれ? ひょっとして俺がリーリャに避けられてる理由はそれか? 

 

「にしてもヨリイチはすげぇな。立派な剣士になりやがって。剣神流でも水神流でも北神流でもねぇ。あれはどこの流派の剣だ?」

 

「ヒノカミ神楽と申します」

 

「なんじゃそりゃ」

 

「そう言えばパウロには見せたことがなかったか。カグラ家に代々伝わる剣術さ。剣神流はまだ教えてないんだ。多分だがヨリイチには合わない」

 

 ヒノカミ神楽? 聞いたこともない流派だ。火の神か? それとも日の神なのか……どっちでもいいか。そんなことは。あのパウロが絶賛している剣技だ。是非ともみてみたい。明日にでも見せて貰えないかお願いしてみよう。

 今もヨリイチの剣技の凄さについて語っている。それを嬉しそうに聞くレイの叔母様も可愛い。家族っていいもんだな。

 

「──ルディもヨリイチみたいな立派な剣士になれよ」

 

「は、はい……」

 

 正直剣術は苦手なんだよなぁ。俺はどっちかと言うと魔術に興味がある。だがまぁ、折角だし剣術も頑張って習ってみるか! 第2の人生。本来一度しかない筈の人生が運良く2回目だ。やらずして後悔よりもやって後悔しよう。前世ではやらないで後悔したことが多いからな。

 

「……1つよろしいでしょうか」

 

 黙々と話を聞いていたヨリイチが言葉を発した。全員ヨリイチの方に視線を向けて、どうした、と言葉を待っている。

 すると俺の方を見て言葉を続けた。

 

「ご存知だとは思いますがルーデウスには魔術の才能があります。齢3歳にして既に中級魔術を扱えるレベルのように見受けられます。ですので恐らく剣士になるよりも魔術師の方が向いているかと」

 

「は?」「え?」「……」

 

 パウロ、ゼニス、リーリャが首を傾げた。ヨリイチの言ったことが理解できないみたい……いやまてまて。どうしてバレた? 明日辺りに中級魔術も試してみようかと思っていたけど……どこかで俺を見てたのか? いや、ヨリイチたちが来てから魔術は1度も使っていない……どうして俺が魔術を扱えるって分かったんだ? 

 

「い、いやいや。確かに俺とは違って賢い息子だが……流石にこの歳で魔術を使えるなんてことはねぇだろ」

 

「そうかな? 私も息子に同意見だが」

 

「おいおい、アポロまで何言ってんだよ。自分の息子が優秀だからって自慢か?」

 

「まって2人とも。アポロ、さっきあなたもルディを見て『将来は立派な魔術師なりそうだ』って言ってたけど……ルディ本当に魔術が使えるの?」

 

 今度は俺に全員の視線が集まった。

 ……はぁ。本当はもう少し隠し通したかったけど仕方ないな。

 

「……ウォーターボール」

 

「「うそ(だろ)!?」」

 

 ゼニスとパウロが同時にその場で立ち上がった。

 俺は手の上に浮かぶ水玉、ウォーターボールを自身のコップの中に落とす。綺麗にコップの中に水が収まった。

 

「これは凄いな。詠唱省略にこの精度……私が思った以上にルーデウスは将来優秀な魔術師になりそうだ」

 

 アポロも驚いた表情を浮かべている。ヨリイチを息子に持つアポロが驚いているのだがら俺はやはり凄いのか。

 他が分からないから比べられなかった……だけど、凄く嬉しい。頑張った甲斐があった。

 

「す、凄い! 凄いわルディ! 本当に魔術師の才能があるのね!! 明日から魔術の勉強をしないとだわ!」

 

「お、おい! ちょっと待てよ! 男の子が産まれたら剣士にするって約束だろ!?」

 

「だってこの歳で中級の魔術を発動できるのよ!? アポロとヨリイチちゃんの言う通り鍛えれば将来世界に名を残す魔術師にだって──」

「──だからな、ルディが凄いのは俺も分かっている。でもまだ中級魔術が使えるから分からないだろ」

 

「なら試せばいいじゃない。今から外で」

 

「レイの言う通りだね。ルーデウス、おいで。庭で中級魔術を使ってみよう」

 

「そうしましょう! 行くわよルディ! リーリャは上から魔術教本を持って来て!」

 

「かしこまりました奥様」

 

「あ、おい! 俺はまだ──」

 

 レイとアポロにそう提案され、俺らは庭へとやって来た。リーリャが2階から魔術教本を持って来る。どうやら俺の意思は関係ないらしい。

 仕方ない。こうなったらやるしかないな! 話を聞いている感じ、中級魔術を使っても怒られることはなさそうだ。

 俺は教本のページを捲り、水砲の術を唱えた。ちゃんと詠唱して。その結果──

 

「まって! 私の木が!!」

 

 ゼニスが趣味で育てている木に向かって飛んだ。やばい怒られる! なんとかして解除しないとッ! ……って思った次の瞬間、俺の水砲の術はヨリイチによって斬られていた。

 

「よ、ヨリイチちゃんありがとうぉ〜! 助かったわ!」

 

「いえ。大事に育てておられたようでしたので」

 

「ヨリイチ兄様ありがとうございます……助かりました」

 

「気にするな。弟の晴れ舞台、失敗はさせない。いい魔術だった。ルーデウスは凄いな」

 

 頭を撫でながらそう言われた。ただ中級魔術を使ってみることが、晴れ舞台と言っていいのだろうか? まぁ細かいことは気にしたら負けってやつだな。

 それにしてもヨリイチは凄い。俺の背後に立っていたのに、気がついたら目先にいた。音なんてしなかった。まるで瞬間移動のよう。それも魔術なのだろうか? もしそうなら習いたいな。

 

「決まりだね。ルーデウスは中級魔術師、それも3歳だ。誰がどう見ても魔術師を目指すべきだ。もちろん本人にその意思があるならね?」

 

「だから待てって。ルディは剣士する。そう言う約束だったろ?」

 

「なによ約束って! あなたいつも約束破るのによく言えるわね!」

 

「俺のことはルディとは関係ないだろ!?」

 

 ゼニスとパウロが喧嘩を始めてしまった。

 この世界で魔術は嫌われているのか? 実際にヨリイチだって魔術ではなく剣術を選んだ。ひょっとしたら魔剣士みたいな存在があるのかも知れない。

 ただの魔術師よりも剣と魔法どっちも高次元に扱える存在……ってあれ? それならどっちも習った方が良くないか? てかどっちも習えばいいじゃん! 

 俺がそう思いついた時、どうやらレイも同じことを思いついたみたいだった。

 

「ならどっちもやらせればいいじゃない」

 

「は?」「え?」

 

「ね? そう思わない? リーリャ」

 

「そうですね。午前中は魔術、午後からは剣術を学ぶ。どうでしょうか?」

 

 結局、リーリャのこの提案が採用されて、俺は剣術と魔術の両方を習うこととなった。

 レイやアポロは子供の意思を確認する素晴らしい両親だが、うちの両親は親バカなせいで息子の俺をエリートに育てたいようだ。それはそれで素晴らしい両親だと思うが……せめて本人の意思確認はしろよな。

 

(まぁ、でもいいか……今度は本気で生きるって決めたんだから)

 

「頑張れ。ルディ」

 

「……っ! はい! 兄様!」

 

 俺の頭を撫でてくれるヨリイチの手が少しくすぐったかった。

 

 

 

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