感想が二件も来てました。めちゃめちゃハッピーです。評価数も増えてました。あったけぇ。
「きゅうん?」
「きゅうん?じゃなくて、ほんとーにどっからきたんだおまえ」
「ざっくっど」
へんてこの激闘から少し経って。陽は完全に落ちて、夜が来てしまった。
今はあの頭部爆弾愉快犯が起こした炎を再利用して、壊れてしまったぼくが目覚めたあの建物の周辺、岩山に隠れるようにして暖を取っている。
へんてこが周りの木を切ってくれたので、それを使って焚き火のような形をとったのだ。ぼろぼろで動くのも辛いだろうに、へんてこには感謝しかない。
正直、何も着ていないぼくはこれが無かったら死んでいただろう。
「へんてこ、けがはだいじょうぶか?だいぶひどそうだけど」
「ざっくっど…」
「ぼくもひどい?まあ…それはそう」
「きゅー…」
「たべれそうなきのみとか、ぜんぶもえちゃってたもんな。はら、へったなぁ」
結局あのあと、頭部爆弾愉快犯は何処かに消えてしまっていた。
いつの間に消えたのだろうか、へんてこが押し潰した所までは見ていたんだけどなぁ。
現れるのも突然だったが、消えるのも突然な嫌なやつだった。
…結局、へんてこはなんでぼくを助けたり着いてきたりするんだろうなぁ。
まあそんな色々ごちゃごちゃ考えるよりも。今はそれより。
「へんてこがなにもしないから、たぶんわるいやつじゃないんだろうけど。わけわかんないぞおまえ」
「きゅ!」
「ざっくっど!」
このふわふわについて、だ。
頭上の夜空を思わせる身体の色に、月の光のような黄色い瞳。なんだか不思議で不気味なこいつ。
火を維持するために、へんてことあーだこーだしてる最中に色々聞いたのだが、正直情報量が多すぎる。
そうだそうだとへんてこも言ってる。
まず、ふわふわはあの球体から出てきたらしい。
ぼくが投げたからそこから出てきたとか。なーに言ってんだよこいつは。確かにふわふわは小さいけど、だからってあの球体には収まらない。謎だ…。
因みに回収した紅白の球体は完全に壊れてしまっていて、二度と球体になることはないだろう。真っ二つだ。
次に、あの炎から助けてくれたのはふわふわだということ。
なんとふわふわ、瞬間移動を使うことが出来るのだ。それを使ってぼくを助けてくれたっぽい。
ただ瞬間移動を自分以外に使うのはとても疲れるみたいで、おいそれと使えるものではないそうだ。
だとしてもとんでもないやつだ、ふわふわ…。
最後。何故ぼくを助けてくれたのか?
これも意味不明。ふわふわはぼくのことを親だと思っているようなのだ。だから助けた、らしい?
懐かれているのは嬉しくないわけではないが、ふわふわを生んだ覚えは一切ない。
…生んでない、よな?
唯一救いだったのは、ふわふわは聞いたことを素直に答えてくれること。
へんてこは色々聞いても誤魔化してくるというか、全然答えてくれない。
なんで着いてくるのか、とか、どうして助けてくれたのかとか。本当に一切答えてくれない、何の話?とか言ってくる。
何が当然のことだよ、理由を教えてくれ~~~~!!!!!
「きゅうぅーん!」
へんてこを睨み付けながら悩んでいれば、ふわふわが心配そうにぼくの頭に乗っかった。
…思考がずれた、今はふわふわについてを考えるべきだ。
「…そんなこといっても。ふわふわ、ついてくるのだめだからな」
「きゅ!?」
火に枝をくべて、焚き火が消えないようにしながら、ぼくはふわふわに言い付ける。
このふわふわについて困っていることがもう一つ。
ぼくに着いていく、といって聞かないことにある。
ふわふわは何処に行くにも着いていく、離れたくない、と言って聞かないのだ。
…そんなこと言われたって、困る。ぼくは何処に行くつもりもない。行きたい場所も無ければ、行くべき場所も特に存在していない。
なんでかって言えば。なんか燃え尽きた。
色々ありすぎて疲れて燃え尽きてしまったのである、ぼくは。なんもしたくない。なんかする理由もないし。やる気が起きない!
「しにたくはないけど、どうすればいいか。わかんないしなぁ」
「きゅうーん…」
ここに居るのだって、へんてこがいきなり壁を壊してぼくを連れ出したからだ。なりゆきである。
そんなことをしたへんてこも、今や黙り。此方の体調や怪我についてを気にしてくるが、それだけだ。
無理矢理頭に乗せて何処かに行こうとはしてこない。またじーっとぼくを見続けている。
あとはまぁ。服もない、食料もない現状だと、正直手の打ち所がない。
なんなら今のぼくに走り回れる体力は一切残っていない。腹も減りすぎてどうにかなりそうだし、焚き火で軽減しきれていない寒さも辛すぎる。
何処にも行けそうにないぞ、ぼくは。
本当に困った。八方塞がりなんだよな。
何処にも行けないやつに着いていくことなど出来ない、というわけだ。
そういうことなので、ふわふわにはぼくの事を放って自由に何処へなりとも行ってほしいわけだ。
ふわふわは浮いてるしあの極寒の湖も越えられるだろう。ぼくに着いてくるとか時間の無駄だ、それだけで損をする。
「きゅー!!!」
「いたい、いたいってば。けがにんはていちょーにあつかえー!」
だがしかし。
何度も言ってもふわふわは聞いてくれない、本当にどうすればいいのか。
「ざっくっど!」
「…おまえもおまえだぞ、へんてこ」
へんてこは悪いやつではない、のは確かだ。
人懐っこいし、心配もしてくれる。爆発から守ってくれたり、戦ってくれたりもした。
この焚き火があるのもへんてこが頑張ったからだ。
でも、何度も言うけど謎が多すぎる。理由の分からない献身はちょっと怖い。
…そもそも、一日に色々起き過ぎなんだよ。
無理、疲れた。眠い。腹へった。
寒すぎて寝れる気はしないので、手元のふわふわで遊びながら時間を潰す。ふわふわは少し嬉しそうだった。
「うわっ」
「きゅ!?」
それからまた暫くして。
ふわふわで遊ぶのに飽きてきた頃、突然強い風が吹く。
冷たすぎて痛い、ふわふわが飛ばされそうになったが、長すぎるぼくの髪を引っ付かんで堪えていた。痛い。
「さっっっむい!!なんだよ、きゅうに…?」
あまりの痛さに、風が吹いてくる方向を恨めしげに睨む。
…おいおい、またこういうのだよ。
徐々に強まる凍てつくような風。思わず視線を月へと向ける。
そこに映るのは月に照らされている巨大な影だ。そいつは静かに佇み輝く月を背に、寒風吹きすさぶ中現れた。
この暴風の原因は、間違いなくあいつだ。
段々と寒風が熱風へと変わっていく、焚き火が吹き飛ぶ、美しい雪景色が破壊され、損なわれていく。
思わずぼくとふわふわはへんてこの背に隠れた。
へんてこは傷ついている身体を必死に動かして、この場に吹き飛ばされないよう、この場に佇み続ける。
「 か が よ ふ 」
一見すると、その姿は着物を纏った女性。もしくは門松も近しいかもしれない。
ただ、月明かりに照らされている新緑の巨体はどうあれ異形であることには変わらない。
竹に似ている左右の腕部と思われる部位から地に向かって吹き出す炎、それによって地面が融解し、真下にあるのであろう湖さえも蒸発していくのが分かる、イヤな音がここまで響いてきている。
距離こそ遠いが、あの巨体にとっては無いに等しい距離かもしれない。
「また、ぼくねらい?…っぽいなー。そういってるし。…めがさめてから、こんなんばっかじゃん」
「ざっくっど…!」
「むりしないでよ、へんてこ。それと、たてみたいにしてごめんね」
へんてこが戦闘態勢に入ろうとしたので腕を掴んで止める。
別に守ってほしいとかは思ってないし。無理をしてへんてこが倒れてしまう方が嫌だ。
「にげる?…あのきょたいからはむりかな。でも、からだはにげろっていうんだよな」
そう、そうなのだ。あの巨体を見た瞬間から、気を抜けばふわふわもへんてこも置いていって今すぐこの場から逃げ出してしまいそうなのだ。
心は怖がっていないのに、身体が恐怖を感じている、手足の震えが止まらない。どうやらぼくは相当に臆病らしい。
…そういえば、あの頭部爆弾愉快犯の時もそうだったな。ちょっと自分が嫌になる。
やっぱり、こんな奴を守るために身を削ってほしくない。
「はなせばわかる?いや、あそこまでこえがとどかなそうか」
「きゅう!」
「あれのあたままでとぶ?そっか、しゅかんいどー、か!」
「きゅうぅーん!」
頭上のふわふわはやる気まんまんだ、どうなるかは分からないけどやるしかないか…?やるしかないか!
「ざっくっど!」
「きけん…それは、そうだけど。にげれない、たたかうのもむりそう。ならふわふわのかんがえしかないよ、へんてこ」
「ざっくっどっ!」
ぼくを振り切ってへんてこが勢いよく飛び出した。
人の話を聞いてくれ、へんてこ!あんなボロボロの身体で戦えるわけがない…!
咄嗟にぼくもへんてこに追い付くために走り出す。身体がきしむ音がするが、へんてこを止めなきゃ不味いので無視をする。だが、追い付けそうにない…!
「まてって!へんてこ!!あんなでっかいのにかてるわけない!」
あの身体の何処にそんな体力が残っていたのか。へんてことの距離はどんどん離れていく。
へんてこの馬鹿野郎!話くらい聞いてくれよ!
「ぜぇっ、あのたけもどきがおそってくるかは、まだわからないだろ!」
叫んでも、へんてこは聞こえていないのか、無視をしているのか、応えてはくれない。
マジで寒い!雪に突っ込んでる足の感覚が無くなっていくのが分かる。多少強引にでも止めにいくしかない…!
「ふわふわ!しゅんかんいどー!!」
「きゅ!?きゅうぅーん!!」
ごめんふわふわ!今はお前だけが頼りなんだ!!へんてこがたけもどきの元に着く前に、どうにかする!
視界が捻れる、意識が浮遊する。一瞬視界が暗転し、それが元に戻ればそこは既に、たけもどきの頭上だった。
「 か が よ ふ 」
「っ、こえ、でか!」
たけもどきはぼくが頭上に現れたのと同時に此方に顔を向けた。
その大きな声に鼓膜が割れそうだ、ぼくは宙で泳ぎながら落下する地点を変えて、なんとかたけもどきの角らしき部位に取り付いた。
「おまえの、もくてきはなんだ!!ぼくになんのようが、あるわけ!?」
「 か が よ ふ 」
「…っ!?もっとわかりやすく、はなしてよ!!」
出来るだけ大声で語りかけるが、返ってきた答えはひどく曖昧だ。
頭部爆弾愉快犯と同じだ、何を言っているのかが抽象的にしか分からない。
分かるのは戸惑い、帰りたい、匂い!?なんのことだよそれ…!!なにに興奮してるんだよ、こいつは!
「うあぁっ!?」
たけもどきがその首を大きく円を描くように振るった。
当然こいつの頭部に捕まっているぼくもそれに追従するように振られる。
もう身体に力が入らないぼくはその頭部に数秒も掴まってられず、簡単にそこから吹き飛ばされた。
腹に重りがあるような、見えない壁に押し出されるような感覚。
全身で感じる浮遊感。
風圧で叫び声すら上げられない。
やばい、落ちる─────!!
「────ラティオスッ!」
突如。全身から浮遊感が消えた。
高速で飛行する何かが、その上に乗っていた
「きみ、大丈夫ですか!?」
「…へぁ?」
ぼくを抱えていたのは、人だった。目覚めてから始めて見る、ぼく以外の人間。
全身を黒い不思議な衣服で包んでいる、月明かりにぼんやりと透ける薄紫色の髪の女性。
何が起こったかを処理しきれていないぼくを、酷く焦った顔で彼女は見ていた。