ぼくとレジドラゴ   作:鯰の蒲焼き

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たたかい

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い怪我…! きみはこれを羽織って、ラティオスと待っていてください!…直ぐ戻ります」

 

「え、あ?」

 

「ラティオス、この少年をよろしくお願いします!」

 

「しゅわーん!!」

 

 

 な、なんだ?何が起きてる?!

 人!? ぼく以外の、人…!!? らてぃおすってなんだ?! このあおいやつ!?

 

 

 正体不明の女性は、優しく彼女が着ていた黒い衣をぼくに羽織らせる。め、めちゃめちゃ暖かい…! これだけで寒さに震えなくてよさそうだ…!

 未知の感覚に驚いているぼくに、彼女は優しく微笑んだ。

 そして、その懐から球体…へんてこが渡してきたあの袋に入っていた、紅白の球体に似たものを取り出し、空中へと放る。その球体は宙で目映い白い光を放ち、そこから赤い翼を持った四足の獣が現れた。

 

 

「ボーマンダ!」

 

「グオオォン!」

 

 

 彼女はぼーまんだ、と呼んだ生物に身軽な動きで飛び乗り、その背に跨がってぼくを一瞥した後に、未だ此方を睨み目の前に鎮座するたけもどきへと突っ込んでいく。

 ちらりとだが、その右手にはまた別の球体が握られているのが見えた。

 

 

「なになになになに、なにごと?」

 

「しゅわーん?」

 

「あ、どうも…」

 

 

 ぼくを乗せてくれた、らてぃおす?と呼ばれていた青い鳥みたいなやつが心配そうに声をかけてくれる。

 その声は酷く落ち着いていて、此方を安心させたいという優しさが伝わってくる。

 あ、あったけぇ…この鳥の体温もだけど、労りの気持ちも心に染みる。

 

 そうだよな、ぼく以外に人が居ることに驚く必要はない。いきなり現れたから驚いただけで。

 分からないことこそ増えてしまったが、冷静にならねば。

 

 今大事なのは、あの人の事情とかは一切分からないけど、たけもどきと敵対を選んでいる事。

 そして、あの女性が此方に害がない事、むしろぼくを助けようとしてくれている事。

 

 ええと、つまり?

 

 

 …まあとにかく、つまり最善はこの場で大人しくしていることになる、はず。

 

 

 

「しゅわわーん!!?」

 

「え、あ。うん。はなすこと、わかる」

 

「しゅわーん!!!! きゅ!! しゅわ!!?」

 

「なんで、わかるのって、いわれても…?」

 

 

 どうしてか大興奮のらてぃおす。凄い押しが強い。どんどんまくし立ててくる。

 言葉を完璧に分かってくれる人間が初めて?そうなんだ…。コツ?いやちょっと分からない、けど…?? 

 

 

「ら、らてぃおす!! そんなことより、あのひとはだいじょーぶなの?」

 

「しゅわわーん!!」

 

 

 りらなら、大丈夫?

 りら、というのがあの人の名前なのだろうか。腕の立つトレーナーであり、あのたけもどきのようなポケモンを既に何体も捕まえている、らしい。

 また知らない単語ばかり出てるよ。

 

 確かに、たけもどきに勇猛果敢に挑んでいった、りら? という女性は強そうだった。覇気があるというか。

 なんとか目を凝らしてりらさんを探してみれば、あのぼーまんだ? と共にたけもどきと戦っているのが見えた。

 見たところ、接戦どころか押してるように見える。凄いな、あの巨体を苦にしてないなんて…。

 

 うおっ。ぼーまんだ、炎吐いてる。

 なんでりらさんはあんな高速で動くぼーまんだに乗りながら指示を出せているんだ…?ぼーまんだもその指示に反射と言っても過言じゃない早さで応えている。

 信じられないほどの連携における練度の高さ。

 あれが、らてぃおすの言うトレーナー…?

 

 

 

「とれーなー…たたかい? ……そうだ、へんてこ!!!!」

 

 

 やっっっっっべ忘れてた!!! ごめんへんてこ!!!!

 

 らてぃおすから身を乗り出して、急いでへんてこを探す。

 なんで忘れちゃいけないことばかり忘れるんだ、ぼくは…!

 暗い地面、だが月明かりとそれを反射する雪のおかげでなんとなくは見える。

 

 

「いたーーーー!!!!」

 

 

 いた! たけもどきの下半身に当たる部位にめちゃめちゃ攻撃しているのが見える。

その姿は壁を破壊したあの変形した姿で、猛る怪物のようにたけもどきへと襲いかかっていた。

 

 よく見れば、たけもどきの注意をより多く引いているのはぼーまんだではなくへんてこだ。あの傷付いた身体で、的確にたけもどきが嫌がる所を攻撃している。

 へんてこが先の戦いで使った技以外にも、見たことのない光線とか斬撃を使っているのもわかる。

 何がへんてこをそこまで動かすのか?少なくとも、鬼気迫る勢い、というのはああいうのを言うのだろう。

 だが、そのまま猛攻を何時までも続けれるほど、へんてこに余裕は無さそうだった。

 

 

 …いや、なんかしらんけど、めちゃめちゃ怒ってるじゃんへんてこ!!?

 というか、りらさんが押してるのってへんてこの猛攻もあってだなこれ!?

 へ、へんてこ…!!

 

 ど、どうする。どうする!?

 そう。とりあえず、りらさんには悪いけどやはりへんてこを止めよう、そのためには。

 

 

「しゅわわん?」

 

「へんてこが、たたかってる!ちから、かして!」

 

 

 借りれそうな力はなんでも借りる必要がある。興奮しきっていた思考を無理矢理冷まして動かす。

 ぼくはかいつまんで、らてぃおすに事情を説明する。その中で、へんてこを助けたいという思いを全面に出す。

 

 

「しゅ、しゅわわーん…」

 

 

 君があの女性に言われてここで待ってなきゃいけないのも、ぼくを危険な目に合わせられないのも分かる。

 でも、それでもお願いしたいんだ。

 

 

「こえを、かけにいくだけでいい。それでだめなら、あきらめる」

 

 

 戦っているへんてこの身体に、ひび割れが入ったのが見えた。

 うおおおお、本当に頼むらてぃおす…!

 

 

「…しゅわわーん!!」

 

「! ほんとうか、らてぃおす! いってくれるのか!!」

 

 

 らてぃおすは笑顔で応えてくれた。

 続けてしっかりと捕まっているようにと促される。

 促されるがままに、そのままなけなしの腕力を振り絞ってらてぃおすの首に戦力で掴まる。

 

 

「うひっ」

 

 

 今見える世界が、瞬きの間だけではあるが色を失った。

 あと少し首に掴まるのが遅ければ。間違いなく、この四肢は弾け飛んでいただろう。音の壁にぶつかった、実は飛びかけていた意識が強制的に覚醒させられる。

 それほどの速度で、らてぃおすは加速した。 

 

 

「しゅわわーん!!」

 

 

 三度瞬きが終わればそこは既にへんてこの隣だった。

 これにはへんてこ驚いている、此方を見てその猛攻を止めて間の抜けた動きを…まてまてまてまて。

 

 

「へんてこ、このあおいやつ、てきじゃない。ぼくのこと、たすけてくれたやつ!」

 

「しゅわわん!」

 

 

 急な加速に全くもって着いていけていなかった為なのか、胃液含めて体内から色々出てきそうなのを無理矢理抑え込んで、へんてこを説得する。

 結果として、ぼくの言葉を聞いてくれたのか、何だか危なげな光を蓄え始めていたへんてこが動きを止める。危なすぎる。

 

 

「へんてこ、もうたたかわなくてだいじょーぶだ。おまえもけがひどいし、やすんでくれ…! うえのやつもみかた、だから!」

 

「……ざっくっど」

 

「そう! むりしてたたかわなくても、いい」

 

 

 へんてこは未だに少し不服そうというか、らてぃおすを怪しむ目で見ていたものの、渋々納得してくれたようでその姿が元に戻っていく。

 ほ、本当に迷惑ばかりかけてごめんな、へんてこ。

 

 

「とにかくへんてこも、はなれよう! ここ、あぶないし」

 

 

 忘れてはならないのがこの場所がたけもどきの足元の、目と鼻の先であること。

 どうやら、上で戦っているりらさんが気を引いてくれていたらしい。ぼくとらてぃおすは先に上空へと戻り、へんてこは隙を見て全力でたけもどきから距離をとった。

 

 

 そうして。ぼくらがまた安全圏内に戻れたと時を同じくして。

 

 

 

「そらが、おちてくる」

 

 

 

 信じられない光景が広がっていた。

 

 雲ひとつ無い夜の空が、唸りを上げる。

 空が瞬く、風景でしか無いはずの満天の星々が空を砕く。

 手の届く筈の無い美しい光が、どんな奇跡が起きたのか、ただ敵を打ち砕くためだけにこの場に満ちていく。

 

 ──流星群。

 

 星降る夜が、始まった。

 

 敵と見定められてしまったそれに降り注ぐ星の数は一、十、百…もしかすればそれ以上。この場に引き寄せられた大小様々な星たちがこの場の全てを打ち砕いていく。

 

 星は降り続ける。次第に目を開けられなくなってくる。次に目を開けた時には。

 

 

「たけもどきが、きえた」

 

 

 いつの間にか、りらと呼ばれていた謎の女性とぼーまんだ、たけもどきの戦いに決着が着いていた。

 その場に残っているのは星が降り注いだために酷く抉れた大地のみ。

 

 ただ、酷くとは言ったがそこまで被害は大きくなさそうだった。抉れているのもたけもどきが佇んでいた周りのほんの少しだけ。

 まさか、あの流星群が全てたけもどきにぶつかっていた、とか?

 

 

「きゅうぅーん!」

 

「あ、ふわふわ。そんなとこにいたのか」

 

「きゅ!」

 

 

 突然、ふわふわが長すぎるぼくの髪から飛び出した。さっきから見かけないとは思っていたが、どうやらずっとそこに居たらしい。無事なら、良かった。

 

 ぼーまんだと呼ばれていた四足の青い獣が赤い翼をはためかせて此方に近づいてくる。顔、こわ。そしてその背には当然、あの女性が立っていた。

 ぼくに着ていた黒い衣を渡したからか彼女の格好は、衣の下に着ていたのであろう薄手に見える、これまた見覚えのない白い服。

 寒そうにその両の頬と鼻を赤く染めていて、月明かりを背にしたその姿は何故だか絵になる。

 

 その手には、四本の黄金の爪を模したかのような装飾が目立つ、深い深い夜空の色をした球体が大事そうに握られていた。

 

 

 

 

 

「申し訳ありません、少し手間取りました。怪我などはありませんか?」

 

「え、あ。ない、です」

 

 

 りらさんはぼーまんだとらてぃおすに指示を出し、ぼくらは上空から地上へと降りた。

 やはりまだ寒い。借りた暖かい黒い衣のおかげでめちゃめちゃ耐えられるようになったものの、気が抜けたのもありまた意識がうつらうつらとしてきた。

 彼女もそれを察したのか、無言でぼーまんだから降りて何か差し出してきた。なんだこの白くて四角いやつ。

 恐る恐る受けとる、なんで無言なんだろう。

 

 あったかいなこれ!

 

 

「そうですか。それは良かったです。…ずいぶん探しましたが、見つかって良かったです。其方さえ宜しければ、今すぐにでも村に戻りましょう。怪我も酷いようですし…お婆様も心配していることでしょう」

 

「しん、ぱい?ばさ?」

 

「…?」

 

 

 ぼくが村があること以外、何を言ってるのか理解できずに首を傾げれば、彼女も追随するようにその頭上に疑問符を浮かべる。

 なにごと?   

  

 あっ! もしか、して。

 

 …これ、人違いが起きてたりする、のか?

 

 そうして、ぼくが硬直している間に、彼女は四角い板に何かを喋っていた。

 よく聞き取れないが、板から声が聞こえる。見つかった、戻ってこい。はんさむ?

 りらさんはぼくを何度か見ながら喋り続けていたが、それもすぐ終わった。

 一体、なんなのだろう。

 

 

「…ええと。一先ずは移動をしながら話しましょう。事情はどうあれ、ここは寒すぎますから」

 

「え」

 

 

 いや、それはおかしい。

 ぼくは思わず声が漏れた。だって今の話を聞く限り、この人は人を探していたのだ。りらさんも、それに気づいている顔をした。

 その該当人物ではないぼくを何故助けるのか?助ける理由、なくないか。

 ぼくは少し、不思議だった。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「え、いや。えと、ぼくはたぶん、あなたにたすけてもらえるような、りゆうが、ない」

 

「…? 大人が子供を助けるのは当たり前のことですから。それが理由では不満がありますか?」

 

「え。ない、です」

 

「それは、良かった。では、そのままラティオスの背に乗っていてください」

 

 

 彼女は優しく微笑んだ。

 なんだか、ぼくが無粋なことをしてしまったような気までしてくる。ちょっと、恥ずかしい。

 

 

「あ、えっと。ちょっとまってくだ、さい。まってるやつが、いるので」

 

「まだ人が?」

 

「ひと? じゃない。…へんてこ?」

 

「へんてこ」

 

 

 また彼女は疑問符を浮かべる。説明が出来なくて申し訳ない。

 でもぼくあいつが何か知らないんだよな…。

 岩石生命体?でも岩って感じじゃないんだよな。

 

 

「へんてこー! ちょっと、きてくれるとうれしいー!」

 

「ざっくっど!」

 

 

 出てきた。今何処から現れたんだ。

 気がつけばへんてこはぼくの背後に佇んでおり、少し呆れた様子だ。ぼくを乗せているらてぃおすも驚いている。

 やはりというべきか、りらさんにも相当の警戒を示している。最悪、今にも飛び出して襲いかかってしまいそうだ。

 人見知りなのかな…。

 

 

「あなたの手持ちのポケモン、ですか?」

 

「ぽけ…? いや、たぶん、ちがう?」

 

 

 またポケモンだ。目が覚めてから四度目のポケモンという言葉。

 思っていたよりも、常識的な言葉であるらしい。

 

 ポケモン、ポケモン…いや、そろそろ流石に分かってきた。

 へんてことか、多分らてぃおすとか、ぼーまんだとかふわふわ。ああいった何だか不思議な生物を纏めてポケモンと呼んでるんだ。

 合ってるか? 分からない。

 ただらてぃおすの言ってた事と今りらさんから聞かれた事から考えると、いい線いってる気はするんだけど。

 へんてこを見ていた時だって、ポケモンって単語が過っていた。もしかしたら元々知っていたことなのかもしれない。

 

 でも、まだ手持ちっていうのがいまいち分からないな。

 らてぃおすがりらさんの事をトレーナー、と呼んでいたことと関係がある?

 

 トレーナーもポケモンも、どういう意味か分からない不思議な言葉だからどうしても噛み砕くのに時間がかかってしまう。

 今考えている字面なのかも不明だし。

 

 いや本当に。穴だらけの知識にない知識、本当に何があったらこうなるのか。

  

 

 

「なるほどね…。分かりました、へんてこさんはボーマンダに乗って貰いましょう」

 

「いいん、ですか?」

 

「ええ。勿論です」

 

 

 りらさんは何か考え込むような素振りを見せて、まだぼくを乗せてくれているらてぃおすに跨がる。

 ぼくとりらさんでらてぃおすに2人乗りする形だ。りらさんがぼくの後ろに座っている。

 

 遅れてぼーまんだが吠えた。ぼーまんだは少し眠そうだが、快諾しているようだ、へんてこに近付いてくるように促している。

 ただ、へんてこはそれを拒否。やっぱりなんだか怒っている。

 

 

「へんてこ」

 

「ざっくっど!!!」

 

「そういうなよ、へんてこ」

「たぶん、りらさんは、ひとのいるところにいくんだ。へんてこは、ぼくにあんぜんで、いてほしいんだろ? だったら、ついていったほうが、いいとおもう」

 

「ざっくっど…ざっくっど?」

 

「うん。いやないいかたして、ごめんな」

 

 

 まぁ多分安全でしょ、わからんけど。

 りらさんが今ぼくに危害を加える理由とかないだろうし、今までの話の意味合いからぼくの安全の確保のために動いてくれているのは間違いない。

 此方はそれを無碍にするような理由がない。なら大人しく助けられて貰おう。

 

 

「きみは、あの子達の言っていることが解るんですね」

 

「へん、なこと?」

 

「いえ、そういうわけでは。…準備は大丈夫そうですか?」

 

「たぶん、だいじょーぶ」

 

「分かりました。では行きましょう、大体三十分程で着く筈ですから」

 

 

 らてぃおすが宙に浮き上がる。そのまま大きな音を立てることなく、らてぃおすは低空での飛行を開始した。

 今回のらてぃおすはぼくら二人に負担をかけないようにしているのか、本当に移動しているのか疑いたくなるほどに揺れや風を感じない。

 先程のは、ぼくが急いでいたのに合わせてくれていたのだろう。比べれば、ずいぶん遅い。

 横を見れば、ぼーまんだに肩(?)を捕まれて運ばれているへんてこ。なんだか少し面白かった。

 

 

「そういえば」

 

「?どう、したんです、か?」

 

 

 らてぃおすが湖の上すれすれを飛行する。

 たけもどきやあの流星群によって明らかに湖の水嵩が減っていることに少し恐怖を覚えるが、それよりも渡れないと思っていたこの湖を、こんなにも簡単に渡れてしまう方がなんだか嬉しい。

 

 

「私の名前は誰から聞いたのか、気になりまして」

 

「えっと。らてぃおす。いっぱい、あなたのことをじまんしてた」

 

「そうなんですか。…ふふっ、なんだか気恥ずかしいですね」

 

 

 なんか真後ろで喋られるとむず痒いな…。

 らてぃおすが鳴いた、なにやらぼくを介してりらさんと話をしたいらしい。

 え、りらさんはらてぃおすの話してること分かんないのか。

 

 

「えっと」

 

「別に、お好きに呼んでもらって構いませんよ」

 

「え」

 

「…すいません、そこについて気になっているのかと思ったのですが、違いましたか?」

 

 

 なんとりらさんの事を呼んで良いのか迷っていれば、考えが読まれているのか聞く前に答えが返ってきた。

 少し驚いた。さっきからなんだか此方の事を見透かしている? 感じがするし、不思議な人だ、りらさんは。

 

 

「だいじょーぶ。じゃあ、りらさん。りらさんは、らてぃおすのはなすこと、わからない?」

 

「そう、ですね。私には分かりません。きみのように、この子達の言葉が分かる方はそう多くありませんから」

 

「ふーん…」 

 

 

 え、じゃありらさんは話してることが分からないのにこんなに意思疏通が取れてるのか? 

 ぼくからしたら其方の方が驚きだ、よく怖がらずに接することができるな。

 

 

「次は私から聞いてもいいですか?」

 

「? うん」

 

「ありがとうございます。…実は、どうしてきみがあそこに居たのかが気になっていて」

 

「…なりゆき?」

 

「成り行き」

 

 

 どう説明すればいいんだろうなこれ。

 どう、というか何処からというか。情報量が多いのでこの妙に舌ったらずな口でどこまで説明できるものか。

 困った。

 

 

「ながくなるんだけど、それでも、だいじょーぶ?」

 

「ええ。問題ありませんよ」

 

 

 気づけばぼくたちを乗せているらてぃおすは既に湖を渡りきっていて、ほの暗い洞窟の中を潜っている。

 洞窟の中は入り組んでいて、ここを抜けるのは湖を渡りきるよりは長そうだ。ここを抜けきる前に、話しきれるといいけどなぁ。

 

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