五条悟並みのチートをゲットした 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
なにか良いものはないだろうか…
呪術高専一年生、七海建人にとって、矢田葉月という男は、正に理想の先輩であった。
適度なタスクを試練として後輩に受け渡し、成長を促す。時に鬼のような模擬戦を行い、またある時は呪術を論理的に解釈した知識を授ける。それでいて、後輩の労いも忘れない、信用信頼ができ、尊敬もできる先輩である。
だが、単純な好奇心故に、七海には一つ気になる事があった。
同じく先輩の家入硝子と、矢田葉月の関係性である。
例えば、二人はよく一緒でいるところが目撃されている。これは匿名の、白い髪と青い眼をしたグラサンからの情報提供である。またある時は、家入から差し出された食べ物を食べていたという事もあったそうだ。こちらの情報は、同じく匿名のおかしな前髪をした男からの情報提供だ。
このように、明らかにただの友人と呼ぶには近すぎる距離感があの二人にはある。それが気になっていた。
「あの二人、いつも距離近いよね! 付き合ってるのかな?」
「灰原、滅多にそんなことを言うもんじゃない。バレたりしたらどうなることやら」
「僕は気になるよ! あの二人が一体どんな関係なのか! あぁ、気になるなぁ!」
七海は隣の灰原の言葉に、呆れた表情を浮かべながらも、胸中で同意していた。明らかに近い距離感、下の名前で呼び合う関係といえば、真っ先に思いつくのはそういう男女の関係である。
だが、二人が一緒のところに行っても、葉月は普段と変わらぬ受け答えをするし、硝子もそれを気にせずいるのだ。
友人というにはおかしな距離感、恋人というにもおかしな距離感。そんなところだった。
「あ、先輩たち滞在一日伸ばすって」
灰原のそんな言葉に、自販機のボタンを押す指が強張った。
特級呪霊を祓え、よくある事だった。書類上では一級呪霊の討伐となっているのが、実際現場にいるのは特級呪霊だった、なんていうのはザラだ。これには主に二つ程パターンがある。
一つ目。単純な報告の際の間違い。呪力感知の段階では一級呪霊程度の物しか探知できず、実際は特級並みの実力を持つこと。これは主に呪霊側が狡猾であることが原因だ。
二つ目。上層部の嫌がらせ。基本的に上層部にとって面倒な人間を都合よく処理したいときに使われる手法だ。術師と上層部の間を取り持つ補助監督に、ほんのちょっとでも金を握らせてやればそれでもう上層部は危険な任務を安全な任務に仕立て上げれる。
これは恐らく後者だろう。
「こいつは特級かな」
「キヒッ」
目が三つあるのか? これは。随分と面白おかしい滑稽な姿だ。とは言え生得領域を持っているから、恐らく、というかほとんど確定的にこいつは特級だろう。
「面倒臭いんでな、ちゃっちゃか終わらせてもらうぞ」
刹那、空間が爆ぜた。
極々単純な、術式を用いた仕掛けだ。だが、これで呪霊は葉月の姿を見失ってしまう。
「うん、やっぱり特級だな」
後ろに回り込み、呪霊の頭を破壊せんと振り下ろされた拳は、しっかりと呪霊の手によって受け止められていた。
「だがそいつは悪手だ」
拳をうまい具合に開き、手をつなぐ―――と、その手のひらに明らかな異常を察知した呪霊は、手を無理やり離して後ろへ跳んだ。
「吸転呪法、俺の術式だ。極々単純でな、順転も反転も行わない場合、俺の術式は、手のひらから呪力を吸収する」
吸転呪法。由緒ある、とは少しおかしい言い方だが、呪霊操術と同レベルの希少性を持つ術式。また、その術式を持つ者は悉く呪術史に名を刻んでおり、その術式の詳細も確認しやすい。
何より、身体そのものが呪力で構成される呪霊にとって、呪力の吸い出しというのは、自身の身体が消える事に他ならず、この術式はそれ故に対呪霊の術式として記録されている。
「加えて、この術式は少々特殊でな。特殊な術式効果として、呪力総量は底なしになる。文字通りな。呪力出力も、ある一定量の出力が約束されてる」
術式の開示。術師ならば行って当然の、術式開示による縛り。だが、それで呪力を底上げしたからと言って油断するつもりは、彼にはなかった。
「腐っても特級だろう? 油断はしない、堅実に祓わせてもらう」
何処から取り出したのか、彼の手には大太刀が握られていた。
「術式反転―――漏淘」
形容することすら出来ない速さで刀が振り下ろされ、頭のてっぺんから呪霊が裂ける。
呪力を吸い取っても良かったが、まだ特級相手に楽勝出来るほどの強さを持っている訳でも、それほど驕っているわけでも無いが故に、彼は安定策を取っていた。
暑い、などと思いながら生得領域が崩壊するのを眺めながら、帰り際にアイスを買って帰ろう、そんなことを考えていた。
変な戦闘シーンの入れ方になってしまった…(後悔)