ハリーポッターとまどろみの逆行 作:ユフィ
ハリーが二度目の死を受け入れたのは四十二回目のハロウィンの日だった。
ヴォルデモートたち闇の勢力、闇祓い時代に受けてきた傷や呪いの蓄積が彼の長生きを許さなかった。
ある日突然血を吐いて倒れたハリーはそのままベッドで永遠の眠りについた。
ベッドの周りにはハリーの大切な人たちがいた。
ジニーはベッドわきに座り、ハリーの手を強く握っていた。
その後ろでハーマイオニーは顔を覆い、ロンは妻の肩を抱いて静かに涙を流した。
ジェームズ、リリー、アルバスはジニーの横で、母と同じようにベッドに詰めて父の名を呼び掛けていた。
テッドは三人の後ろで佇んでいた。
ジニーたちとは反対側に座るドラコは何かを我慢しているかのように顔をしかめていた。
癒者として纏うその白衣はハリーの血もついていた。
スコーピウスは涙で顔をぐちゃぐちゃにして父の横に立っていた。
ベッドから少し離れた場所には授業を放り出して駆け付けたネビル、ぼんやりとした表情のルーナ、ドアを壊して入ってきたハグリッド、
そしてなんてことだろう。
ウィーズリーおじさんが連れて来たダドリー、ペチュニア、バーノンまでいた。
三人とも衝撃を受けた顔でハリーの方へ視線を向けている。
そしてウィーズリーおじさんに促され、ベッドに近づいて一言「さよなら」を言い、またいそいそと部屋の隅に戻った。
こうしてハリーのために集まった人々は、ハリーの死を見送った。
ハリーは死の間際、もはや目を開ける事も何か言うこともできなかったが、その耳はまだ聞こえていた。
まるでまどろみの中にいるかのように、穏やかで、ゆらゆらとしている。
ジニーが握る右手が一番温かい。
そして子どもたちが縋り付いている感覚もかすかにあった。
瞬間、ハリーはセドリックにしがみついて帰ってきた時を思い出した。
セドリックの耳にも自分の声は届いていただろうか、いや、死の呪文はそんな余韻すら許してはくれない。
それにあの日のセドリックは死んでからしばらく経っていた。
ハリーは、子どもたちが触れている感覚が薄れていく気配とともに、誰も自分を抱きとめていなくて良かったと思った。
自分の名前を呟いて事切れたドビーや、自分の瞳を見つめ続けたスネイプがだんだん重たくなっていく感覚は生涯忘れることはできなかったからだ。
ハリーはあまりにも多くの人の死に立ち会い、死にゆく人の重みや冷たさに触れてきた。
セドリックも、両親も、シリウスも、フレッドも、ルーピンも、トンクスも、誰もハリーのように看取られることなく逝ってしまった。
あまりにもあっけない死であった。
対して自分にはこうして大切な人たちに見送られる時間がある。
ハリーは自分のために死んでいった人たちの死は突然であったのに、
自分だけがこうして穏やかに死ぬことに負い目を感じながら息を引き取った。
まどろみの心地よさが深まっていく。
何もかもが遠のいていく。
みんなの声が聞こえる。
何かに引き寄せられる。