ハリーポッターとまどろみの逆行   作:ユフィ

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一人目の協力者

 やり直すと言っても何から始めればいいのだろう。

 

 

 ダドリーの誕生日は記憶の通り動物園に行くことになった。

 けれど、四十を超えた大人にもなれば癇癪を抑えるくらいどうってことはない。

 蛇を逃がすようなこともせず、その日は平穏無事に済んだ。

 そのため、以前のように物置部屋に閉じ込められるお仕置きもされなかった。

 

 そしてマグルの学校も終わり、夏休みが始まった。

 だが、ホグワーツの手紙が届くまではまだ時間がかかる。

 

 ハリーは庭に出て、窓の下にできた日陰に寝転がりながら考えていた。

 ここならペチュニアたちに見つからずに暑い夏も涼むことができる。

 ハリーが落ち着き払って生活するようになったおかげか、ダーズリー家とは以前ほど衝突を起こさなくなった。

 甥の急な変わりように初めは訝しげに見ていたバーノンたちも、大嫌いな魔法の気配が遠ざかったことに気づき、とうとう彼から魔法(アレ)を追い出せたと喜んだ。

 

 だが、それでもハリーへの恐怖は薄れないようで、冷遇は続いていた。

 ハリーもそれでよいと思った。

 必要以上に交わればヴォルデモートが目をつけるかもしれない。

 このまま癇癪を起して魔法を使うことを避ければダーズリーとは適度な距離を保てるだろう。

 

 そもそも、忌まわしいことにハリーは杖がないことには魔法が使えなかった。

 先日、こっそり「姿あらわし」をしようとしたが、不格好に前転するだけだった。

 どうやら、魔法の力も子供のころに戻ってしまったようだ。

 

 ハリーは思うように動けないことに不貞腐れながら目を閉じた。

 この幼い身体でいると、無性にロンとハーマイオニーが恋しかった。

 何かするときは必ず二人が助けてくれたからだ。

 けれど、今はまだ二人とも友人ではない。

 

 ハリーは顔を傾けて、なんの気なしにお隣の庭を眺めた。

 よく手入れされた庭だ。ペチュニアおばさんが好む「まともな」庭だ。

 けれどウィーズリー家の庭はもっとメチャクチャで面白く、ハリーはそっちの方が好きだった。

 

 プリベット通りはダーズリー家が好むだけあって見渡す限り「まとも」なものしかない。

 こんなマグルの世界では自分を助けてくれる人なんて一人もいない。

 一人も……

 

 

 いや、一人いるじゃないか!

 

 

 ハリーは勢いよく起き上がった。

 その拍子に思いっきり額を窓にぶつけてしまった。

 ガーンと大きい音が出て、ハリーは額を抑えながらうずくまった。

 

「なんだ?!」

 

 窓際で起きた大きな音に驚いたバーノンが慌てて窓を見下ろした。

 そしてうずくまるハリーを見つけて数週間ぶりに眉を上げた。

 

「小僧っ!ここで何をしていた?!えっ?大人しいふりをして何を企んでいた!」

「何も企んでいないよ…ここが日陰で心地よいから昼寝してただけだよ」

「じゃあ、今のバカでかい音はなんだ!」

「思いっきり起き上がって頭をぶつけただけだよ」

 

 ハリーは痛みにうずくまりながらもどうにか返事をした。

 バーノンはどんな悪事も見通すぞと凄みながらにらみ続けた。

 だがあまりにもハリーが痛がっているのを見て、本当に寝ぼけてぶつかった音だと判断したらしい。

 

 これからそこで寝ることは許さない、と一言残してバーノンは居間の奥へ戻った。

 ハリーは生返事をしながらなおも額を抑えていた。

 

 

 だが、そんな痛みはどうでもよかった。

 フィッグばあさんがいることをどうして忘れていたのだろう。

 変人フィッグばあさんはマグルのふりをしたスクイブで、ダンブルドアの命令でハリーをずっと見守っていたじゃないか。

 ハーマイオニーのように完璧な記憶力があれば、と今ほど思ったことはない。

 

 とにかく、今のハリーを助けてくれそうな人はフィッグばあさんしかいない。

 

 ハリーは今度こそ窓に気を付けてゆっくり立ち上がった。

 そしてバーノンに見つからないように気を付けながらフィッグばあさんの家へ向かった。

 

 呼び鈴を押して出て来たフィッグばあさんはハリーを見てぽかんとした。

 

「なんの用だい」

「あの、えーと元気ですか?」

「まあ、元気ではないね」

 

 勢いのまま向かったはいいものの、ハリーはなんて切り出せばいいかまで考えていなかった。

 

 僕は未来から来たハリー・ポッターであなたがスクイブである事も知ってます。

 

 なんていきなり言ったらどうなるのだろう。

 だけどそれを言わないと助けてもらえない。

 まずは家に入れてもらうために何か言わないといけない。

 フィッグばあさんが見つめてくるのがなんだか恥ずかしくなって、ハリーは下を向いた。 

 その時、ばあさんの足首に巻かれたギプスが目に入った。

 

「用はそれだけなら家へお帰り」

「あの、この前フィッグさんが脚を折ったって聞きました。ほら、ダドリーの誕生日は必ずフィッグさんのお宅に行っていたのに今年はそれがなかったから。それで、その…何か困ってることはないかと思って」

 

 たどたどしい言葉であることはハリーが一番よく分かっていた。

 だが、フィッグばあさんはまるで初めて親切をされたかのようにびっくりしてハリーを眺めた。

 

「私の脚が折れたから手伝いに来てくれたのかい?」

「ええ。ほら、買い物とか何かと不便かと思って。僕、毎年お世話になってるのにロクにお礼を言ってこなかったから」

 

 少々言い過ぎだと思いつつもハリーはどうにかフィッグばあさんの心に届くように言葉を並べた。

 どうやらそれが効果てきめんだったらしい。

 フィッグばあさんは大げさに天を仰いで「なんて親切な子だ!」と言ってハリーを家に招き入れた。

 ギプスをしているもののしっかりとした歩き方をしていた。

 

「わざわざ助けに来てくれたようだけど、心配はご無用さ。ただその親切心のお礼にチョコレートケーキを出してやろう」

 

 手伝おうとするハリーを無理やり座らせてフィッグばあさんはお茶とケーキの用意をしだした。

 あのチョコレートケーキはハリーの記憶通りならカチコチであまり美味しくないから、正直に言うとハリーはできることなら食べたくなかった。

 

 なんにせよ家へ入れてくれた。

 これからどう切り出していこうか。

 ハリーは乱れた前髪を整えようと額に手をやった時、さっきぶつけた額がまたズキリと痛んだ。

 

「いたっ」

 

 パリンと音がした。

 フィッグばあさんが持っていたティーセットをお盆ごと落としてしまったようだ。

 

「大丈夫ですか」

 

 ハリーは慌てて立ち上がった。

 だが、フィッグばあさんは割れたカップや零れたお茶を気にする素振りすら見せなかった。

 

「あんた、その傷が痛むのかい」

「えっ?」

「額の傷が」

 

 フィッグばあさんは何かを恐れているようだった。

 ハリーは途端に何を言われているのか理解した。

 そして何を言うべきかピンときた。

 

「実は、最近変な夢を見るんです。それでその時に一緒に額も痛んで」

「夢?」

 

 フィッグばあさんがささやくように聞いてきた。

 

「ええ。けど、目が覚めるとなにも覚えていないんです。嫌な気分だけが残って、傷が痛むんです」

「奇妙なもんだね」

「ええ、けどただの夢だから誰にも相談するわけにもいかないでしょう?あんまり変なことを言うとおじさんたちに怒られますから」

「そうだろう。すでにあんたは危うく精神病院に連れていかれそうになっているから下手なことは言えんさ」

「どうして僕が精神病院に連れていかれそうになったことを知っているんですか?」 

 

 ハリーが尋ねたらフィッグばあさんの顔が恥ずかしそうに赤く染まった。

 

「それは…その、あんたのおじさんの大声は意外とご近所さんにも聞こえてるってもんさ」

 

 ハリーはもう少し聞きたいことがあったが、フィッグばあさんが慌ててハリーを追い出してしまった。

 別れ際にフィッグばあさんは付け足すように言った。 

 

「夢についてはあたしは詳しくないけど、若いころに悪夢はよく見るもんだ。気にするんじゃないよ」

 

 確かにヴォルデモートの夢は子供のころによく見ていたから間違いではない。

 だけどそんな子供は後にも先にもハリーだけだろう。

 そんなことを思いながらハリーは畳みかけた。

 

「けど、僕なんだか気になるんです。相談したいけど誰にすればいいのか分からなくて。また話を聞いてくれませんか?日に日に痛みが強くなっているんです」

「悪いけど、あたしゃ専門家じゃないから。今日は親切に来てくだすってありがとさん」

 

 そう言ってフィッグばあさんは鼻先でぴしゃりと扉を閉じてしまった。

 これでダンブルドアにハリーの傷跡が痛んだことが伝わるはずだ。

 本当は痛んではいないけれど、ダンブルドアなら額の傷が痛む意味が分かるはずだ。

 とにかく待つしかない。

 

 ハリーはこんなに上手くいったことに驚いた。

 フィッグばあさんに打ち明けずにダンブルドアにつながり、しかもチョコレートケーキも食べずに済んだ。

 

 これからのことを考えれば、むやみに未来のことを語るのは危険だ。

 口が多くなればなるほど、ハリーが未来から来たことが闇の陣営に伝わってしまう可能性は高くなる。

 

 

 貧相な夕食をを終え、物置部屋に戻ったハリーはフィッグばあさんの家での会話を思い返した。

 ばあさんはバーノンおじさんの言葉を聞いていた。

 ご近所さんに聞こえるほどの大声と言っていたけど、精神病院云々は会話程度の声の大きさだったはずだから、ご近所さんに聞こえているはずがない。

 

 昔ここでディメンターに襲われた時、ダンブルドアがフィッグばあさんや不死鳥の騎士団の人たちを使ってハリーを見守っていたことを知ったが、もしかしたらもっと前から見守っていたのかもしれない

 

 ダンブルドアは慎重にハリーを守っていた。

 こんな回りくどいことをせず、一言ハリーに「君を見守っている」と言ってくれれば子供の頃の彼はもっと素直に愛情を受け取れた気がする。

 けれど、ダンブルドアは決してハリーと個人的なつながりを持とうとはしなかった。

 

 きっとこの世界でもそうだろう。

 ハリーの傷を調べに誰か来るかもしれないが、それはダンブルドアではないはずだ。

 以前と同じくハグリットか、それかセブルス・スネイプが来るのではないだろうか。

 

 もしスネイプが来るならハリーにとっては好都合だった。

 ハリーはダンブルドアとスネイプに全てを打ち明けて助けを求めるつもりだ。

 魔法をまともに使えない今のハリーには強力な魔法使いが必要で、それに見合う人はこの二人以外に思いつかなかった。

 

 これで来ないでハリーを放ったらかしにしたらもっと変なことをしてやろう、と思いながらハリーは目を閉じた。

 

 

 

 意外にもハリーを迎えに来たのはダンブルドアだった。

 ダンブルドアは以前のハグリットと同じようにホグワーツの手紙を片手にやってきて、バーノンおじさんから巧みにハリーを連れて行った。

 

 けれど、ハグリットのようにダドリーにしっぽを生やすようなことはせず、ダンブルドアは魔法は一度も使わずにきわめて紳士的に話した。

 そのため、ダーズリー家は以前ほど混沌としなかった。

 ダンブルドアを見たペチュニアが静かになったこともその要因の一つであった。

 

 二人は通りを歩いていた。人気のないところまで行って姿あらわしをするのだろう。

 魔法使いであることを告げられても落ち着いていたハリーをダンブルドアは注意深く見つめていた。

 

 ハリーはその視線には覚えがあった。

 トム・リドルを見つめる視線だ。

 ハリーは気味の悪さと居心地の悪さを感じた。

 けれど、ダンブルドアがそんな視線を向けるのも仕方ないと思った。

 

「君の学用品を買いに行くことも必要だが、その前に聞きたいことがあっての。しばしそちらに付き合ってくれ」

 

 ダンブルドアはそう言って片手を差し出した。

 ハリーはダンブルドアの腕をつかんで「姿あらわし」の衝撃に備えた。

 

 着いたのはホグワーツ行急行列車の終着駅、つまりホグワーツだった。

 といっても中までは姿あらわしができないため、そこからしばらく歩いた。

 夏休みのホグワーツに来たことは初めてだったが、誰もいなくガランとした寂しい場所だった。

 

 ダンブルドアはハリーを校長室へ連れて行き、座り心地の良いソファに座らせて、紅茶とお菓子を出してくれた。

 お菓子はマグルのお菓子だった。

 ハリーはダーズリー家ではまともなものを食べられなかったため、ここぞとばかりに食べながら切り出した。

 

「初めに謝らなければいけないことがあります。傷跡が痛むと言ったのは嘘です。ダンブルドア先生と会うための口実でした」

 

 ダンブルドアはお菓子の包み紙を剥く手を止めた。

 

「信じられないとは思いますが、僕は未来から来ました。未来の僕は一度死に、目が覚めたらこの身体になっていて、時が遡っていました」 

 

 ダンブルドアはハリーを見つめながら尋ねた。

 

「君はその時何歳だったのかの」

「四十二歳でした」

「まだ死ぬには若かろう」

「でも僕を守るために、それより若くして死んでいった人がたくさんいました。彼らに比べれば僕は長生きです」

 

 ダンブルドアがじっと見つめてくる。彼の青い瞳は相変わらずすべてを見透かすようだった。

 しかし、ダンブルドアはもう探るような視線を向けてはこなかったため居心地の悪さは感じなかった。

 

「君の話を聞かせてもらおう」

 

 そしてハリーは学生の間に起きたヴォルデモートとの戦いについて話した。

 毎年ヴォルデモートに関わるトラブルに巻き込まれたこと。

 ヴォルデモートが復活し、多くの犠牲が出たこと。

 ハリーは友人の力を借りて分霊箱を破壊し、自身も分霊箱であったため一度死んだこと。

 ヴォルデモートが死に、世界が平和になったこと。

 そして、その立役者がダンブルドアとスネイプであること。

 

 ダンブルドアはハリーの話を一度も止めることなく全て聞いた。

 彼は流れる涙を拭おうとすらしないほど集中していた。

 ハリーが話し終えてからも彼は動こうとしなかった。

 

 二人の紅茶はもう冷め切っていた。

 

 何十年もの時が流れたように感じたころ、ダンブルドアが口を開いた。

 

「まず、君の並外れた勇気と、そしてご学友の揺るぎない友情に称賛を送ろう。君のなしたことは誰よりも素晴らしい。そしてこの老いぼれを信じ続けてくれたことに礼を言いたい。わしは君を誇りに思う。君は間違いなく世界を救った」

「僕の成果でなく、何人もの人が多大な犠牲を払って築きあげたものです」

「なんて謙虚であろう」

 

 ダンブルドアは杖を振って、新しい紅茶を入れた。

 さっきとは匂いの違う紅茶のようだった。

 

 

「君がアラベラに上手く言ってくれたのは賢明じゃった。おかげで、わしも適当に誤魔化すことができた。あの者がこれからも安寧に暮らしたいなら、額の傷を通じて君とヴォルデモートが繋がっていることを知らない方が良いだろう」

「アラベラ?ああ、フィッグさんですね」

「彼女は魔法は使えぬが敏いからの。君が単なる悪夢を見て感じた不安が、傷跡も痛んでいるように感じさせたと言っておいた」

「フィッグさん曰く、悪夢を見るのは若いころにありがちなことらしいですから納得するでしょう」

「それは少し違うの。残念ながら悪夢はどの年齢になろうと見るものじゃ。けれど、年を取ればとるほど夢に捉われずに済む。なぜかって? 悪夢を覚えているほどの記憶力もなくなっているからじゃ」

 

 ハリーはクスリと笑った。

 ダンブルドアも同様だった。

 ハリーはなんだか幼いころに戻ったような気分だった。

 

「僕、フィッグさんにああ言ったけどダンブルドア先生が来るかどうか正直不安でした。前の世界では放っておかれたことが何度かあったので」

「別の世界のわしのした事ではあるが、これからのわしがしようとしていたことでもある。済まなかったの。実を言うと、初めはスネイプ先生に頼んだのじゃ。君の傷跡のことを教えられる人は限られているからの」

「それも予想はしていました」

 

 ハリーのその言葉にダンブルドアは少し驚いたようだった。

 

「そうか。じゃが、スネイプ先生はどうしても行きたくないと言っての。恐らくペチュニア・ダーズリーと再会することを恐れていたのであろう。彼は彼女の姉の命を奪い、甥すらも危険の元に連れて行くことになるからの。とてつもない反対ぶりで、流石にわしも折れるしかなかった」

 

 スネイプがダンブルドアにそこまで逆らうことも、その原因がペチュニアにあることも意外だった。

 

「先生も折れることがあるんですね」

「それに、もう気づいておるだろうが、君がペチュニアに話しておった奇妙な夢のことも気がかりじゃった。そして、君の急な落ち着きぶりも。実は、すでに君の中にヴォルデモートが乗り移って少しずつ操っている可能性も考えていた。その場合わしが直接行った方が良いと思っての。そしてそれは正しい選択であったようだ」

「ええ」

 

 ハリーは大きく頷いた。ダンブルドアもそれに応えた。

 

「もしよければ、どうしてスネイプ先生が来ることを予想していたのか教えてくれんか?」

「それは、校長が僕と個人的な付き合いを避けるだろうと思ったからです。前の世界ではハグリットが迎えに来ました。ともかく先生はできるだけ来ないようにするだろうと思いました」

 

 ダンブルドアは興味深そうに目を細めた。

 

「ふむ。君には全てがわかっているようだ」

「ヴォルデモートが僕と校長先生に個人的なつながりがあると思ってしまえば、僕を利用するだろうと前の世界の先生も憂慮していました。……それに先生は僕に愛着を持つ事を恐れていたようでしたので」

 

 ダンブルドアは手で顔を覆いながら言った。

 

「ああ、ハリー。どうやら前の世界のわしは本当に、全てを包み隠さず明かしたようじゃ」

「先生は初め、ヴォルデモートを倒す運命から。僕を遠ざけようとしていました。その、僕を愛した結果、僕に本当のことを教えるのを恐れていました。けれど、それではいけないと分かってからは全てを教えてくれました」

 

 ダンブルドアはなおも手で顔を覆っている。

 

「それを知ったときは苦しかったであろう。まだ若かった君にそんな重荷を背負わせるとは」

「でも、先生も苦しんで、悩んでいました。けどそんなことも理解していなかった僕は先生に何度か癇癪を起しました」

「当然の権利じゃ。君の苦しみに比べればわしのなんて軽いものだろう」

 

 ダンブルドアは深くため息をついた。

 まるで今の彼が、ハリーの時代のダンブルドアの責すらも負おうとしているようだった。

 ハリーはそんなこと望んではいない。

 

「だけど、三人の子どもを持ってから子を諭して動かすことがどれだけ大変で、どれだけ苦しいか分かりました。子どもの代わりに全ての苦しみを引き受けたいのに、それもできないもどかしさも」

「君の子供たちは君に多くの事を教えてくれたようだ」 

 

 ハリーに子どもがいると知って、ダンブルドアは嬉しそうにハリーを見つめた。

 

「僕は良い父親とは言えませんでしたけどね」

「いや、ハリー。君が親としてどれほど苦心してきたか、子どもたちは分かっておろう」

「そう願います。特にアルバスは……僕の次男ですが、彼は特に父親として不十分な僕を受け入れてくれました」

 

 ダンブルドアは目をますます輝かせた。

 

「なんと!君の子はアルバスと言うのか!それはとても光栄なことじゃ」

「アルバス・セブルス・ポッターです。二人の勇敢な校長の名を付けました」

「そうか、そうか。セブルスもさぞかし喜ぶだろう」

 

 ハリーはスネイプの名前を聞いて、彼もこれからの計画に必要なことを思い出した。 

 

「あの、ダンブルドア先生。一度スネイプ先生と二人っきりで話をさせてくれませんか。できればスネイプ先生にも手伝ってもらいたいんです」

「良かろう、ハリー。スネイプ先生はちょうど新学期の準備のために、今もホグワーツにおる。さらに言うと賢者の石を守る装置を作りに来ておる。今なら地下におるじゃろう。君の話が済み次第、スネイプ先生と一緒にここまで来ておくれ。なに、急ぐ必要はない。わしは百味ビーンズの食べ比べで忙しいからの」

「はい、先生」

 

 昔と変わらず茶目っ気に溢れたダンブルドアに懐かしさを感じながらハリーは部屋を出た。

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