ハリーポッターとまどろみの逆行 作:ユフィ
あっという間に試験期間が来た。
ハリーは図書館で本を読んでいた。
ロンとハーマイオニーが来る前に今読んでいる本を調べきっておきたかった。
大人のハリーは一年生の内容なら勉強しなくても、程ほどの点数は取れる。
そのため、自分の体から分霊箱を追い出す方法を探していた。
閲覧禁止の棚の本もスネイプの許可証で読むことができた。
「一体なんの勉強をしている」
「魔法薬学だよ」
ハリーはそう言って、のぞき込んできたマルフォイに向かって本の表紙を見せた。
魔法をかけておいたので、禁書も教科書に見えるようになっている。
「君はいつもスネイプ先生に絞られているから苦労するな」
「はは。ドラコも勉強しに来たの?」
「本を返しに来ただけだ。すぐ寮に戻ってクラッブとゴイルに勉強を教えないといけない」
「えっあいつらに教わるだけの脳はあるの」
「かろうじてな」
「ドラコって案外面倒見がいいんだね」
「案外は余計だ。身の回りの者への気遣いも一族の長には必要なことだ」
マルフォイが皮肉っぽく口をゆがめた。
その笑顔は父親には似ていなく、以前の世界の大人になったマルフォイを思い出させるものだった。
「父上は僕が一位をとることをお望みだから、自分の成績の心配を一番にしないといけない。そうだ、ハリー。どちらが良い成績を取るか勝負をしよう」
「えっ、だって君は一位狙いだろう。ハーマイオニーとの方がいい勝負になるよ」
「グレンジャーか。あいつは一体なんなんだ。マグル生まれで大した教育を受けて来ていないのにあの知識量。一々授業でひけらかすのが気に食わない」
「それがハーマイオニーの良いところでもあるよ。少なくとも、君とハーマイオニーに肩を並べることは僕にはできないよ」
「勇敢なグリフィンドールが始めてもない勝負から逃げるのか。僕らはライバルだろ」
ハリーはどうやら自分は「ライバル」の言葉に弱いと自覚した。
「分かったよ。けど、全教科は無理だから科目を絞って勝負しよう」
「いいだろう。君は闇の魔術に対する防衛術が得意で、魔法薬学が苦手だろう?僕は丁度逆だ。だからこの二つの合計点で勝負しよう」
「オーケー。負けた方は一つ言うことを聞くってことで」
「よし。逃げるなよ」
「そっちこそ。ハーマイオニーは加点をいくらでも勝ち取るから気を付けて」
歩き出したマルフォイはヒラヒラ手を振って応えた。
そして、向こうの方で誰かに挨拶しているのが見えた。
マルフォイは教育をきちんと受けているおかげもあってか、礼儀正しい面がある。
入れ違いに、ロンとハーマイオニーがやって来たので、ハリーは本を閉じた。
「ああ、なんであんな回答にしちゃったのかしら。スペルを間違えた気がするわ」
「その程度、大した違いにはならないよ」
試験が終わった三人は、未だに解答を気にするハーマイオニーをいなしながらハグリッドの小屋へ向かった。
「おお、お前さんたち。もう試験は終わったのか」
ハグリッドは三人にお茶をふるまってくれた。
イタチの挟まったサンドイッチも進められたが誰も手を付けなかった。
四人は今年の寮杯がどこになるかで盛り上がった。
グリフィンドールはハリーたちによる大量失点を食らっていないため、どの寮も良い勝負だった。
今のところ、授業内での加点が多いレイブンクローとスリザリンが一位争いをしていた。
クィディッチの優勝争いはグリフィンドールとスリザリンでしていた。
明後日にあるグリフィンドール対レイブンクロー戦で、グリフィンドールが勝てばそのまま優勝、レイブンクローが勝てばスリザリンが優勝する。
ハリーは今度こそ気絶しないで試合に出ると意気込んだ。
そんな話をしながら時間を過ごしていたら、カレンダーに目をやったハグリッドが急に立ち上がった。
「おっと、今日は水曜日か。悪いが支度せんといかん」
「何かあるの?」
「ああ。今年から先生たちは定期的に身体検査をしとるんだ。魔法省からの通達でな。ハリーも入学してきたし、物騒なことも多いしこういう事は必要だろう」
クィレル対策ではあるものの、不審に思われないために全教員に実地している。
もっとも、ハグリッドの場合身体検査よりも小屋と森に違法生物がいないか検査した方が効果はあるような気もする。
ハリーがそんなことを思っていたらハグリッドが急に動きを止めた。
もしかして心の声がそのまま口に出していたのかと思ってハリーはたじろいだ。
「そうか。ダンブルドア先生がいねえから今日は無くなったんだっけ」
「ダンブルドアがいない?」
そんなわけがあるはずない。ハリーは声を荒げた。
「そうだ。急に魔法省から呼び出されたらしくてな」
「そんな。なんで?」
「なんでも、ホグワーツの理事会がらみらしいが詳しい事は俺もよく知らん。明日には帰ってくるだろうよ」
「ねえ、ダンブルドアがいないってことは賢者の石が危ないんじゃない?」
ハーマイオニーが真っ青な顔をしながら言った。ロンもそれに同調する。
「スネイプに奪われちゃうよ!ハリー、止めないと!」
「だから、スネイプ先生はそんなことしないって」
「お前さんたち、まだスネイプ先生を疑っちょったのか」
「だって私、スネイプがクィレル先生を脅しているところを見たのよ!この間クィレル先生に質問しようと思って部屋に行ったら二人がいて、どちらに忠誠を誓うのか決めておけって言ってたわ」
「スネイプはクィレルも手下にしようとしてたんだ!このままじゃ賢者の石は二人に取られちゃうよ」
ホグワーツの教員は生徒に話を聞こえなくする呪文を開発した方が良いとハリーは思った。
ハグリッドがロンたちに言った。
「ダンブルドア先生はスネイプ先生を特別信用している。それはどの先生たちも一番よく分かっとることだ」
「スネイプはダンブルドアも騙してるんだ!」
ハリーは口を挟んだ。
「仮にそうだとしても、賢者の石はとれないよ。だってフラッフィーの出し抜き方を知らないじゃないか。ハグリットだって誰にも教えてないでしょ?」
「ああ、勿論だ。うっかり漏らすなんてことは誰にもしてない。口が緩みそうなのはパブだけど、ダンブルドア先生に酒は飲むなと言われたから俺はこの一年、パブには行ってない」
ダンブルドアはきちんとハグリッドのうっかり対策をしていたようだった。
「ほら。だから大丈夫だよ。それに先生たちが知恵をこらして作った仕掛けに守られているみたいだし。そんなに心配ならマクゴナガル先生のところに行こう。ダンブルドアと連絡する手段を見つけてくれるかもしれない」
ハリーはできたらマクゴナガルが厳重に二人を注意して、今日は外に出られないようにしてほしいと思った。
その期待通り、マクゴナガルは賢者の石のことを言い出した三人(ハリーも頭数に入っていた)を叱り、四階に近づいたら五十点減点すると言った。
「けど、もしもスネイプが犬の出し抜き方をどうにか編み出したら?」
「犬を出し抜くより難しいダンブルドアの仕掛けが待っている」
二人は夕飯を食べていてもなお、ずっとその話をしていた。
ハリーはどうにか二人を諦めさせようと努力した。
教員席を見ると、ダンブルドアだけでなくスネイプもいなかったことが気がかりだった。
ロン達と大広間で別れたハリーは大慌てでスネイプの部屋へ行った。
だが部屋の主はいない。
こんな大事な時に!
ハリーは腹立たしく思いながら足踏みをした。
仕方なく、梟塔へ行き、ヘドウィグにスネイプ宛の手紙を持たせた。
ダンブルドアもスネイプもいない今、クィレルは賢者の石を取りに行った可能性はある。
こうなったらハリーが四階へ確認に行かないといけない。
寮に戻るとさらに最悪なことに、ロンのベッドはすっからかんだった。
ハリーは慌てて談話室へ行くと、ネビルが石になって固まっていた。
呪文を解くと、ロンとハーマイオニーが禁じられていた四階へ行く相談が聞こえたため、ネビルが止めたらしい。
あそこにフラッフィーがいることはネビルも知っていて、あんなところへもう一度行けば二人が死んでしまうと思ったからだ。
だが、ハーマイオニーに石にされてしまい、止めることはできなかった。
ネビルはべそをかきながらハリーに説明した。
ハリーは二人を止めてくるから、ネビルはもう部屋に戻るように伝えた。
ネビルも行くと言ったが、ハリーは上手く言いくるめてあきらめさせた。
四階の部屋にたどり着くと、
フラッフィーは死んでいた。クィレルがやったのだろうか。
床に仕掛けてあった扉の蓋は開いていた。
ロン達はもう先に行ったみたいだ。
扉から落ちて行って、悪魔の罠をすり抜けたあとに入った部屋で二人を見つけた。
「さあ、二人とも。今すぐ戻るんだ!」
ハリーは怒気をはらませながら叫んだ。
「ハリー! なんで来たんだ!」
「なんで来ただと? 君もハーマイオニーもベッドを抜け出してこんな危険なところに来ているからだ! どうして、そうやって危険なことばかりするんだ」
「ハリー、賢者の石が危ないのよ」
「賢者の石なんてスネイプにでも誰にでもくれてやれ! 僕らには関係ない!」
「何言ってるの! ハリー、どうしてスネイプが賢者の石を欲しがっているのか考えたことはないの? ねえ、きっと例のあの人のためよ」
ハリーは今年一年、ヴォルデモートの話は二人の前でしないようにしてきた。
それなのにどうしてハーマイオニーたちがこの結論に至ったのか不思議だった。
「今年から始まった教職員の検査ってあなたのためなんじゃないからしら。だってハリーが入学したから始まったってハグリットがさっき言ってたわ」
「つまり、ハリーの命を狙っている奴がホグワーツにいるってことさ」
「ええ、それで賢者の石って不老不死になれる命の水も生み出せるの。きっとスネイプは不老不死になったあとあなたのことを殺すわ」
「どうして?」
「どうしてですって?スネイプってあなたに対するあたりが特別強いじゃない?理由もなくあんな恐ろしい目で見る事ないわ」
「スネイプはスリザリンだ。そして例のあの人もスリザリンだ。知らないのか?あいつ、クリスマスにマルフォイの父親の所に行ったんだ。この前図書館でマルフォイがそのことをスネイプと話しているのを聞いちゃってさ。マルフォイの父親ってスリザリンだし元死喰人だ。きっと、スリザリン同士で手を組んで例のあの人を崇拝してるんだ」
「だから、例のあの人を打ち砕いたあなたをスネイプは許さないわ」
ハリーはあまりのことに頭がクラクラした。
スネイプはトムリドルの日記を手に入れるために、ルシウス・マルフォイの所へ行っていたのだろう。
それがこんな形で裏目に出るとは。
なんでこう、この二人は聞いてほしくないことを見事に聞いてしまうのだろう。
ロンとハーマイオニーの話は、断片的な情報を継ぎ合わせた激しい思い込みなのだが、あながち間違っていないのが悩ましかった。
かつては自分もこんな感じだったのかと思うと、以前の世界のスネイプの苦悩も分かるような気がした。
「君らは、僕のことを思ってここまで来てくれたの?」
「そうだよ。本当はハリーに知られないでいたかったんだけどさ。誰だって自分の命が狙われているなんて知りたくないもん」
「ハリーは私たちが危険なことをするのが嫌いみたいだけど、友達が危険なのに見過ごすことなんてできないわ」
ロンとハーマイオニーがまっすぐにハリーを見つめてきた。このまなざしには覚えがある。
ハリーに危険があるといつだって二人はこうやって見つめてくれたのだ。
今の二人も同じように見てくる。
自分の世界の二人とは少しずつ違う人生を歩んでいるはずの二人が。
--今生きている友と向き合うのじゃ。対等に。大人の目線で子ども扱いするでない
唐突にダンブルドアに言われた言葉を思い出した。
目の前の二人が自分の知っている二人より年下であっても、どの世界にいようとも、二人はハリーを思っている。ハリーに危険が迫れば助けてくれる。
この二人が、今のハリーの親友なんだ。
そう思うと、マルフォイに「ライバルになれ」と言われたときと同じような温もりが胸中に広がった。
「自分の命は自分で守る。だから、賢者の石を守るのを手伝ってくれない?」
ハリーの言葉に二人は嬉しそうに頷いた。
どれだけ二人を危険から遠ざけようとしても、なんの運命のいたずらか、危険の方が二人に近づいて来た。
それならもういっそ、三人で困難を乗り越えた方がいい。
ハリーは箒を手に取り、飛んでいるカギを取った。
このまま先に進んでいけば、クィレルとヴォルデモートが待っている。
彼らに賢者の石が取り出せるはずはないが、もし鏡ごと持ち帰られて、どうにかして取り出されたら大変なことになる。
ハリーの本能が進めと命令していた。
「二人はそこに立って。僕はナイトになる」
前の世界の時と同じようにロンは見事にチェスを進め、そして身代わりとなった。
チェスの駒がロンに殴り掛かる。
ハリーは衝撃を減らすため、こっそりクッション呪文をかけた。
チェックメイトしたあとも、ロンに回復呪文をかけたため苦しそうな表情が和らいでいた。
「君はロンと一緒に戻って。僕は先に進む」
ハーマイオニーの謎解きのおかげでスネイプの仕掛けも解くことができた。
複数の薬が並んでいる中から正解を選んで飲めば先に進むことが出来る。
そして元の道へ戻ることができる薬もあった。
そのためハリーは先へ進める薬を選び、ハーマイオニーには戻れる薬を渡した。
「ハリー」
ハーマイオニーがハリーを強く抱きしめ、
「気を付けて」
と勇気づけた。
そうして二人は各々が進むべき方へ別れた。
すでにハリーは一度、前の世界で経験していることだ。
だけどそれでも、自分の想像通りでなければいいのにと思っていた。
だが、先の部屋ではクィレルが一人で待っていた。
「待っていたぞ」
クィレルが指を鳴らすと炎が部屋中を囲んだ。
ハリーが時間稼ぎの心配をする前に、クィレル本人がこの一年どれだけ苦労したか、スネイプがどれだけ邪魔をしたのか語り出した。
残念なことにクィレルがターバンを外せば、後頭部にヴォルデモートがいた。
きっと今晩憑りついたのだろう。
「ダンブルドアは常に俺様を警戒していた。どうやらあいつは俺様が何かに寄生しないと生きていけないことを知っていたらしい。あのバカげた身体検査は正にクィレルに寄生するのを防ぐようなものだった。そのせいで、俺様はそこらの森の生物に寄生して命をつなぐしかなかった。本当ならもっと早くクィレルの中から貴様を見て、殺してやりたかったのに」
ヴォルデモートが楽しげに笑った。
「だが、今ならそれもできる」
クィレルがゆらりとハリーに近づいた。
「クィレルから出ていけ!ヴォルデモート!」
「出ていけ?何を言っているのだ、ハリー。こやつは自分から俺様を探し、忠誠を誓ったのだ。偉大なるヴォルデモート卿をその身に宿すことはこいつにとっても名誉なことなのだ」
ハリーはとっさに鏡を倒した。割れた破片が周囲に散らばった。
「そうか。そこまでして俺様に石を渡したくないか。なら、殺すしかないな」
クィレルが杖を振るのが見えた。
ハリーは思わず避けた。
このままクィレルに触れば砂になってしまう。
ならば、クィレルを戦闘不能にするしかない。
一年生が使える呪文ではないけれど、失神呪文を使えばクィレルも倒れるはずだ。
ハリーは意を決して杖を構えた。
その時。
「ステューピファイ!」
クィレルが吹っ飛び動かなくなった。
振り向けば、燃え盛る炎の中を歩くスネイプがいた。
「先生、なんでここに?!」
「それはこちらのセリフだ」
スネイプが杖を振ると、鉄の縄がクィレルを縛り上げた。
「ダンブルドアがすぐに来る」
「おのれ、セブルス・スネイプ。この裏切り者め」
ハリーはクィレルから黒い霞が湧き出ているのに気付いた。
それがスネイプに向かってきたのを見て、何も考えずにスネイプを突き飛ばし、その霞に対峙した。
「うわああああああ!」
黒い霞がハリーを通り過ぎていった。
ハリーとヴォルデモートの叫び声が重なった。
ハリーは医務室で目が覚めた。
何か金色のものがきらりと光るのが見えた。
メガネだ。
「やあ、ハリー」
ハリーはすぐさまダンブルドアに尋ねた。
「先生。ヴォルデモートは…」
「君とスネイプ先生が退けた。ユニコーンの血を飲んでいなかったあやつは元々弱っていたのだろう。君の中を通り過ぎたことによってさらに大きなダメージを受けたようじゃ」
「クィレルは」
「あの者は間違いなく君が守った。彼は法の下に裁かれて受けるべき罰を受けるであろう」
「僕…結局なんにもなりませんでした。賢者の石は壊れて、ヴォルデモートもまたどこかへ行ってしまいました」
「なんにもならなかったじゃと?ハリー。クィレルという哀れな男を一人救い、ヴォルデモートを弱体化させることに成功したのじゃ。今の世界の君が成し遂げた大きな成果じゃ。それと石は元々壊す予定であった。フラメルはこの一年で死を受け入れる十分な準備ができたようじゃ」
「けど、ヴォルデモートにスネイプ先生と僕らのつながりを知られてしまいました」
「ふむ。君にとってはむしろ好都合であろう。セブルスをヴォルデモートの下に送るのを君はずっと拒んでいたからの」
「先生の危険が増しました」
「スネイプ先生はその未来を受け入れる覚悟があったからこそ君を助けたのじゃ。のう?」
ダンブルドアが後ろを振り向くとスネイプが立っていた。
横たわっていたハリーが体を起こさないと見えない場所に彼はいた。
「いつからそこに?」
「初めから」
「さて、あとはお若いのに任せて年寄りは退散しようかの。ハリー、君の信奉者からお菓子が届いておる。スネイプ先生とお食べ」
ダンブルドアと入れ替わってスネイプがベッドに近づいた。
けど、お菓子の山には近づこうとすらしない。
「なぜ我々が来るまで待たなかった」
「賢者の石を鏡ごと持ち帰られると思って。それにクィレルをもしかしたら助けられるかもと」
「あんな奴の為に君がどれほどの危険にさらされたのか分かっているのか!」
「でも、どうにかなりましたよ」
スネイプが憎々しげににらんだ。
こんな目をするからロン達に誤解されるんだとハリーは思った。
「そもそも、どうして二人ともホグワーツにいなかったんですか」
「吾輩はルシウスに呼ばれていた。ダンブルドアは魔法省を騙って検査をしていたのがバレて呼び出されていた」
「トムリドルの日記は……」
「それについてはあとで話す。貴様はもう少し休め」
スネイプが杖を振ると、ハリーのベッドの上にあったクッションが増えた。
ふわふわの手触りで、これならよく眠れそうだった。
「僕を助けてくれてありがとうございます」
「今後についてはもう一度話し合おう」
スネイプが扉を開けるとロンとハーマイオニーがいた。
「あの、先生のローブを燃やしたのは私です。ごめんなさい。弁償します」
「僕もずっと先生のこと疑ってました。ごめんなさい」
ハーマイオニーたちが素直に謝る声がハリーに聞こえた。
「そのツケはポッター君が払った。グリフィンドールの諸君は気にしなくて良い」
扉が閉まる音がして、二人はベッドに駆け寄った。
ロンの怪我は治っていたのでハリーはホッとした。
三人はお互いに何があったのか話し、それぞれの無事を祝って抱きつき合った。
扉の外でこっそり三人の様子を伺っていたスネイプが微かにほほ笑んだのを、マダム・ポンフリーだけは見てしまった。
寮杯は結局、スリザリンがとった。
寝込んでいたハリーがクィディッチに出られなくてぼろ負けしたからだ。
ダンブルドアは一番の功労者であるスネイプの顔を立てて、駆け込みの点数での逆転劇もしなかった。
スネイプはたいそう満足そうに寮杯を握っていた。
「さっきスネイプが言ってたツケって、君が試合に出なかったことだよきっと」
ロンは不満そうに言っていたものの、そんなに気にしていないようだった。
それはハリーもハーマイオニーも同じであった。
グリフィンドール生たちも、寮杯のことよりハリーたちが賢者の石を守った話をする方が楽しいようだった。
パーシーとウッドは一生の不覚という顔をして座っていた。
この後、ハリーはこの二人に来年は全ての試合に出ることを誓わされた。
素晴らしい宴だった。