ウルトラマントリガー×SSSS.GRIDKNIGHT   作:ライフォギア

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第2話 結ぶ同盟

 戦闘後、わざわざトリガーが空中に消えていくのはカモフラージュの意味もある。

 いきなりケンゴの姿で地上に戻れば誰にバレるか分かったものでは無いからだ。

 GUTS-SELECT含めてトリガーの正体を知る者は何人かいるが、用心に越したことはない。

 一定の注意を払った後、トリガーはケンゴの姿へと変身を解除し、アキトとユナの待つ地上へと戻った。

 ケンゴの姿を確認すると、2人が一目散に駆け寄ってきてくれた。

 

 

「ケンゴ! よかった、怪我はない?」

 

「大丈夫だよユナ。ありがとう」

 

「ケンゴ、さっきの巨人と竜はなんだったんだ? 何か話してたように見えたが」

 

「うん、それが……」

 

 

 真っ先にケンゴの身を案じるユナに微笑みで返しつつ、アキトのGUTS-SELECT全員の疑問であろう問いかけには困ったような表情を見せた。

 何せ名前は聞いたが名前以外何も分からないのだから。

 どう答えよう、と考える間も無く、3人に近づく気配があった。

 

 

「……誰かいる!?」

 

 

 ユナの言葉と近づいてくる足音に3人が振り向いた。

 周囲は怪獣出現に伴う避難によって一時的なゴーストタウンと化している。

 故にこそ他に人がいればそれはあまりにも目立つものだ。

 つかつかと歩いてきたのは、スーツに身を包み、長い銀髪で左目を隠した青年だった。

 スーツの青年といえば普通に聞こえるが、背中の腰の辺りには鞘に納められた刀を持っているものだから怪しさ満点である。

 青年はある程度3人に近づいたかと思えば、ケンゴにじっと目を向けた。

 

 

「お前がウルトラマントリガーか」

 

「「「!!?」」」

 

 

 鋭い目つきでケンゴを見やる青年はあろう事か正体を一撃で言い当てて見せた。

 トリガーの正体に近づいてくる第三者となれば最大に警戒すべき事柄であるのだが、それは他でもないケンゴの言葉で霧散する事になる。

 

 

「……あっ! その声! もしかしてグリッドナイトさん!?」

 

 

 青年は頷いた。

 それに対してケンゴは「やっぱり!」と笑顔を見せるが、アキトとユナはグリッドナイトなる謎の名詞と思わしき単語に頭にクエスチョンマークを浮かべたままだ。

 アキトはケンゴと青年を交互に見た後、ケンゴの肩をぐいっと掴む。

 

 

「おい、どういう事だ。説明しろケンゴ。なんだグリッドナイトって」

 

「あ、うん。この人がさっき助けてくれた紫の巨人、グリッドナイトさんみたいなんだ!」

 

 

 青年は険しい表情のまま無言を貫いている。

 アキトとユナはそんな青年を見て、驚くほど呆気なく「なるほど」と頷いて見せた。

 

 

「だったらウルトラマンと同じような事か」

 

「そういう事なんだ。リブットさんや、ハルキさんみたいな?」

 

「そうそう」

 

「……理解が早いな」

 

 

 言葉少なに、感情の起伏も少なに青年は言うが、実のところ少し驚いていた。

 人が巨人になる事も、突然現れた巨人の事も、他の世界では見られないほどあっさりと納得してしまっているからだ。

 

 

「マルゥルの話だと別次元から来てるんだったな」

 

「ああ〜……リブットさんや、ハルキさんみたいな?」

 

「そうそう」

 

「…………」

 

 

 無言の青年はこれでも結構驚いている。

 別世界から来たのは事実だし、それも伝えるつもりではあったのだが、完全に先読みされて簡単に納得されてしまった。

 話が早いのは助かるが、些か話が早すぎる気もする。

 

 勝手に話を進めて勝手に納得され、あまつさえそれが全部合ってるという状態の青年。

 と、そこに新たに1つの人影が迫っていた。

 

 

「……? また誰か……?」

 

 

 背後からやってくる足音に青年はちらりと顔を向けたかと思えば、すぐにケンゴ達に視線を戻すしながら呟く。

 

 

「お前も来たか、『レックス』」

 

「おう」

 

 

 男性の声と共に現れた人影は『レックス』と呼ばれ、これまたスーツに身を包んでいた。

 が、その姿は何とも厳つい出立である。

 見た目は細身だが髪の毛は赤に近いピンク色であちこちにツンツンしており、頬にはアルファベットの『S』を崩したような傷があり、サングラスをかけた強面の男性。

 初対面に大変失礼だが、ケンゴ達は3人揃って『カタギじゃない』という第一印象を同じにしていた。

 サングラスの男性はつかつかとケンゴに歩み寄り、ずいっと顔を近づける。

 仕事柄(ウルトラマンなので)、怪獣と顔を突き合わせることはあるものの、流石に変身もしていない時にそのテのお仕事をされてそうな人に迫られるのは怖かった。

 

 

「お前かぁ……? ウルトラマントリガーってのは……」

 

「え、えぇ……はいぃ……そうです……」

 

「それ本名か?」

 

「え?」

 

「他に名前あんのか? あぁん……?」

 

 

 凄く凄んでくる凄い怖い人にケンゴはちょっと腰が引けている。

 ユナとアキトもケンゴを気の毒そうに見つめる中で、たどたどしく自分の名前を答える事になるのだった。

 

 

「マ、マナカ ケンゴですっ!」

 

「…………」

 

 

 一瞬の沈黙。

 そしてサングラスがキラリと光った瞬間。

 

 

「良い名前だなァ!!」

 

「…………へ?」

 

 

 満面の笑みで名前を誉められた。

 スマイルスマイルが信条のケンゴだが、想定外の笑顔を向けられた事にポカンとしてしまっている。

 先程までの威圧感はどこへ──というかケンゴ達が勝手に感じていただけなのだが、レックスなる青年は笑顔のままつらつらと話を続けた。

 

 

「いやー助かったぜ! あの怪獣、前に戦った事あんだけどよ、まあスゲェ強かったんだよ!

 お前やお前の仲間の協力がなきゃ大苦戦だったぜ、ありがとな!!」

 

「え、あ、い、いえいえ! 僕は当然の事をしただけですから……!」

 

「んな事ねぇよ! それにそれが当たり前の事だったとしても、当たり前を当たり前に出来るのは十分……」

 

 

 褒めちぎってくるレックスに嘘はない。

 それがはっきりと分かるくらい、あまりにも明朗快活とした言葉だった。

 

 

「レックス」

 

「んあ?」

 

「話が長い」

 

「おぉ、いいじゃねぇか。実際助かったんだし」

 

「レックス」

 

「……へいへい」

 

 

 銀髪の青年の指摘に対し、レックスは言葉を引っ込めて仕切り直しと言わんばかりにスーツの襟元を正した。

 

 

「んじゃ、自己紹介だ。俺は『新世紀中学生』のレックス。さっきのダイナレックスは俺だ。

 んでこいつは、『グリッドナイト同盟』の『ナイト』。まあグリッドナイトだ」

 

 

 ともあれ自分達の事を説明しなければいけないと、レックスは一先ず自分達の素性を明かした。

 素性と言っても新世紀中学生にグリッドナイト同盟なる名前は全く聞き馴染みの無い言葉であるのだが。

 ナイトと呼ばれた青年は変わらず寡黙に、言葉を発しようとする様子は無い。

 ところで、アキトには今の説明に少々気になるところがあった。

 

 

「ダイナレックスっていうのは、あの赤い竜か? あれに乗っていたのか?」

 

「いや、アレが『俺』だ。俺自身がダイナレックスになってんだよ」

 

「……それもウルトラマンと同じなのか」

 

 

 腕を組むアキトも理解はした。

 ウルトラマンやグリッドナイトのように変身している、という事は今更驚くべき事項ではない。

 しかしながら今まで見てきたウルトラマンやそれに類する巨人、例えば闇の巨人等は全員人型から大きく外れている事は無かった。

 あんなメカメカしい竜に変身する人というのは少々意外だ。

 てっきりナースデッセイ号のように誰かパイロットでもいるものかと思っていたのだが。

 ────実はその想像は強ち間違ってもいないのだが、今のアキトが知る由もない。

 

 さて、ところでレックスも驚いている事が1つ。

 理由はナイトと同じく、相手の順応性が非常に高い事だ。

 

 

「なんつーか、驚かねーのなぁ。他の世界からーとか、巨人だ竜だ何だとか」

 

「何度か経験あるので……」

 

 

 ユナがたはは、と困ったような笑みを浮かべる。

 GUTS-SELECTという職業が怪獣や異星人関係のあれやこれやと非常に縁深いというのはあるが、思い返してみれば大分異常事態慣れをした気もする。

 ましてウルトラマンや別の世界という事柄も元は『信じられない事』の枠組みにいた筈なのだが、いつの間にか『前にもあった事』の枠だ。

 よくよくとんでもない事が色々起きていたなぁと回顧する。

 

 一方、レックスとナイトからすればケンゴ達が既に事態慣れしてくれているのは想定外だがありがたい。

 こちらの事情を伝えるにも、下地がそこまでしっかりしてるのなら色々と手間も省けるわけで。

 

 

「どーするよ、話は相当通じるみたいだぜ」

 

「サウンドラスにいる二代目も呼ぶ」

 

「ゴルドバーンも紹介すっか?」

 

「ああ」

 

 

 ナイトが上空に浮かぶナースデッセイ号を見上げた。

 あそこに彼等の仲間もいるのだろう。

 ならば、話をするならいっぺんにした方が効率も良い。

 ナイトが出した結論は、彼らしく非常に簡潔な言葉で伝えられた。

 

 

「全員で行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 グリッドナイト、ダイナレックスに変身していたと語る2人の事を通信で報告したケンゴ達。

 その彼等がナースデッセイ号に入場して諸々を説明したいと提案している事も。

 隊長の判断は『警戒は怠らずに入場を許す』というものだった。

 助けてくれたという事実はあるとはいえ、何者なのか、何が目的なのか、そもそも本当に紫の巨人と赤い竜に変身していたのか等、確証は無い。

 言葉だけで信じるわけにはいかないので警戒は緩められない、だからといって積極的に疑いたいわけでもない。

 過去、別世界からやってきたロボットに乗っていたナツカワ ハルキの例もある。

 その辺りは慎重に、それでも柔軟に対応するのが過去の経験則から得たGUTS-SELECTの在り方だ。

 

 というわけで司令室に通されたナイト、レックスの2人だが、実際にはもう1人女性が増えていた。

 ケンゴ、アキト、ユナの3人は司令室に入り、その後に続くように女性が1人増えたナイト達3人も入場した。

 ナイトの腰の剣が出入口の枠に当たって小気味の良い音を響かせたのはご愛敬。

 

 

「突然すみません、私達はグリッドナイト同盟です!

 改めまして自己紹介を。彼はナイト君、彼はレックスさん、私は『二代目』と申します」

 

「何のだよ……?」

 

 

 知的な印象を受けるキャリアウーマン風の、これまたスーツ姿で眼鏡をかけた女性は自分を指して『二代目』を名乗った。

 司令室に入り、ペコリと頭を下げたかと思えば丁寧にGUTS-SELECTメンバー全員を見渡して自己紹介。

 礼儀の正しい人、というのが第一印象だ。

 それはそれとしてマルゥルのツッコミにはGUTS-SELECTメンバー全員が頷くものであったが。

 

 

「あと、すみません。驚かせてしまうかもしれませんが、外の様子をご覧ください」

 

 

 二代目は面々にメインモニターを見る事を促した。

 一先ず従い、メインモニターをONにしたマルゥルと面々が見たのは、画面いっぱいに広がる赤い目をした金色の竜の顔だった。

 

 

「う、うおぉぉ!? 怪獣じゃねぇかぁ!?」

 

「彼は『ゴルドバーン』。怪獣ですが、私達の仲間です。

 先程は私が乗っていた戦艦、サウンドラスを護衛してもらっていました。

 誤解を受けてはいけないと思い、一緒にご紹介いたします」

 

 

 金色の竜、ゴルドバーン。

 ナースデッセイ号にかなり接近しながら飛行しているが、二代目の言葉を裏付けるように全く敵対する様子も無く並んで飛行を続けている。

 そして彼の姿は『あの戦い』の時のまま、ある『神様』の力を受けたビッグゴルドバーンと呼ぶべき姿のままだった。

 怪獣が仲間というのは驚くべき事ではあるが、敵対行為も全くしない大人しい怪獣というのならGUTS-SELECT側としてもどうこうする気はない。

 二代目の言葉に納得しつつ、改めてタツミが二代目の前に一歩踏み出た。

 

 

「私はGUTS-SELECT隊長、タツミ セイヤだ。まずは今回の件、助力に感謝する」

 

「いえ! 怪獣退治は、私達の使命でもありますから」

 

「こちらとしても色々と聞きたい事はあるが、まずはこちらも全員を紹介しよう」

 

 

 礼と共に頭を下げた後、タツミが隊員達を順に紹介していく。

 ケンゴ、アキト、ユナの3人は既に道中で名乗り終えていたが、彼等も含めて改めての紹介になった。

 全員の名前が伝えられたところで、レックスは自分が最も気になった事を口にした。

 

 

「……あのよぉ、そいつは怪獣なのか?」

 

「は? 俺様か? 失礼な! 俺様はメトロン星人マルゥル!

 怪獣じゃなくてメトロン星人、この星からすれば宇宙人だっての!」

 

「お、おぉ! すまねぇ!! 怪獣じゃなく宇宙人ってのは、あんまり馴染みが無くてな……」

 

 

 ごりごりに人語を介する人外が極自然に溶け込んでいるせいで自己紹介の瞬間まで気付けなかったが、マルゥルの存在は異質だ。

 人型ではあるが見た目は全く人間ではないし、レックスは宇宙人を相手にした事は実はほとんどない。

 宇宙人っぽい知り合いはナイト含めている事にはいるが、例えばレックスの『大将』であるハイパーワールドなる場所から来ている彼は『宇宙』人なのだろうか?

 ともあれ申し訳なさそうにレックスは全力で謝罪した。

 失礼や無礼、自分に非があれば謝罪する実直な性格をしているのは何となくGUTS-SELECTメンバーにも伝わる一幕だった。

 

 

「では、早速になるが聞かせてほしい。君達は何者なんだ?」

 

「はい! 私とナイト君はグリッドナイト同盟と言いまして、レックスさんは新世紀中学生に所属しています!

 別の世界を転々として、怪獣退治を行なっている者です!」

 

 グリッドナイト同盟は名前をそのまま受け取ればグリッドナイトと協力者、という事で意味が分かる。

 しかしレックスが属するという新世紀中学生。これは流石に意味が分からない。

 レックスもとてもではないが中学生には見えないのだが。

 先程もその名前を聞き疑問を抱いていたアキトが代表してその疑問に切り込んだ。

 

 

「グリッドナイト同盟は言葉通りに受け取るとして、新世紀中学生っていうのは?」

 

「あー、やってる事はほとんどグリッドナイト同盟とおんなじだな。怪獣退治とか、人助けとか」

 

「そうですね……分かり易く説明するなら、目的は同じの別グループみたいなものです。支部とか支店とかのイメージが近いかもしれません。

 なのでレックスさんには一時的にグリッドナイト同盟に同行してもらっているんです」

 

 

 レックス、二代目の順に自分達の関係性を答えていく。

 グリッドナイト同盟と新世紀中学生は協力関係にある別グループで、レックスは出向している状態、と考えれば分かり易いだろう。

 厳密にはちょっと違うんですけどね、と二代目が一言付け加えつつも、概ねの認識はそれで合っているらしい。

 だとしたらグループ名のネーミングセンスが、特に新世紀中学生は売れないバンドみたいな名前をしてるのは何なのだろうという別の疑問が湧いた。

 が、二代目という名前の謎も含めてGUTS-SELECTはそこには触れない事にした。GUTS-SELECTは空気を読んだのである。

 

 ところでグリッドナイト同盟としても聞きたい事は幾つかある。

 質問のターンは一旦、二代目の側に移る事となった。

 

 

「こちらからもお聞きしたいのですが、こちらでは怪獣は既知のものなのですか?」

 

「ああ。自然発生、何者かの策謀、発生原因は様々だが、怪獣自体は何度も現れている」

 

 

 タツミは続けてそもそも自分達が怪獣対策を主としたチームである事、怪獣自体の確認は既に何年も前からされている事などを説明した。

 こちらの世界の常識ではあるが、別次元出身の彼等からすればそれは初めての知識となる。

 怪獣の事をしばらく聞いていた二代目達は、何処か神妙な面持ちであった。

 

 

「成程……私達の知る怪獣とは、随分異なるんですね。

お話を伺う限り、この世界では怪獣は『生き物』なんですか?」

 

「……? それはその通りだ。生態はそれぞれ異なるが……」

 

 

 質問への回答を得た後、ふむ、と再び考え込むような姿勢を取る二代目。

 何とも奇妙な質問だとタツミは感じた。

 怪獣とは、大雑把な言い方をすれば『超弩級の生物』の総称である。

 例えば犬や猫でも50mクラスに巨大化すれば生活が脅かされるものになるが、怪獣とはつまりそういう事なのだ。

 メカ怪獣や何者かの悪意で生み出された怪獣など例外はいるものの、以前に現れたパゴスやオカグビラ等は野生の怪獣に該当する。

 と、そこでタツミは先程現れた怪獣に対して自身が感じた違和感を思い出した。

 

 

「もしかすると、君達の世界では怪獣は生物ではない。人工的、あるいはそれに近いモノなのか?」

 

 

 タツミの質問に、二代目とナイトは顔を見合わせていた。その顔には何処か陰が差している様にも見える。

 彼が感じた先の怪獣に感じた違和感、それは『あまり生物らしくない』というものだった。

 それこそパゴスやオカグビラに比べて無機質というか、見た目こそ生物らしいフォルムだが、機械的にも見えるというか。

 フォルムやデザインの違いというとりとめのない感覚から発生した違和感だが、タツミはどうにもそれが気にかかっていたのだ。

 そして、少しの間を空けて二代目はタツミの言葉にコクリと頷いた。

 

 

「その通りです。例外はありますが、私達が知っている怪獣の多くは人間が造り出したモノ、

 あるいは何らかの触媒に人間の情動、つまり感情の動きが反応して生み出された怪獣です」

 

「では先程の怪獣も?」

 

「はい。アレは以前にナイト君達が倒した事のある怪獣でした」

 

「俺の元いた世界で暴れまわってた怪獣だから、こっちの生まれじゃねぇはずだな」

 

 

 二代目の言葉に付け足す様にレックスが語る。

 どうやら怪獣という概念1つとっても世界が変われば捉え方が変わるらしいとタツミは思い知った。

 二代目の口振りから察するに、怪獣が生物ではない、というのが彼等にとっての通説なのだろう。

 一方でこちらの世界では怪獣も一種の生物として扱われる。

 この辺りの認識の差異は、今後別次元からの来訪者があれば気にしなければならない事だとタツミは1つ教訓を得た。

 

 さて、丁度先程現れたコードネームを『ブルバイン』とされた怪獣の話題も出た。

 ブルバインとレックス達が既に交戦経験があるわけだが、その件で二代目はさらに疑問を口にした。

 

 

「ただ、だからこそあの怪獣の出現は奇妙なんです。

 あの怪獣は何らかの触媒を基に人間の情動を吸収して発生した怪獣の筈……全くの同一個体が現れるのは、不自然です」

 

「というと?」

 

「人間の情動は当然ですが千差万別、人それぞれに異なりますし、一個人の感情も常に変化するものです。

 同じ怪獣が現れるという事は、その情動が全く同じ状態で育った怪獣だったという事を意味します。

 まして、此処は別の世界。普通なら有り得ない事です」

 

 

 人の感情を触媒にしているという事は、基となった感情の種類、その人間が何を想うかによって怪獣も姿形を変える筈だという。

 全く同じ怪獣が現れるという事はそれが寸分の違いも無く同じ事を考えた、という意味に他ならない。

 当たり前だが人はそれぞれ考え方も、物事に対してどう感じるかも違ってくる生き物だ。

 それが全く同じ感情を、都合良く怪獣の触媒がある場所で発生させるだろうか?

 絶対に不可能とは言い切れないかもしれないが、天文学的確率と言って差し支えないだろう。

 

 

「何者かが蘇らせた可能性もある」

 

 

 終始無言を貫いていたナイトが此処に来て口を開いた。

 彼も再生怪獣との交戦経験があるが故の一言だ。

 その時の事をナイトは詳しい事情として知っているわけではないが、怪獣を生み出していた人間が怪獣を造れなくなり、『黒幕』が『ありあわせ』で出現させた怪獣だった。

 同一個体が現れた理由付けとしては一番しっくりくる。

 しっくりくるのだが、その場合に出る問題が1つ。

 

 

「……誰が?」

 

 

 眼鏡をクイッと上げ、ヒマリが口に出したそれが問題だ。

 怪獣を再生させるという事は、必ず裏に『何者か』がいる。

 現状の話は全て可能性の中で語られているものに過ぎないが、何者かの策謀が裏にあると疑えるものであった。

 

 

「見つけ出せば分かる事だ」

 

 

 ナイト側としても見当はついていないが、シンプルな解決策を提示した。

 今しがたこの世界に来たばかりのナイト達も状況把握が完全ではない。

 が、自分達が戦って倒した筈の、この世界出身ではない怪獣が何故か出現しているとなれば、疑うのは黒幕の存在。

 どうやらグリッドナイト同盟の方針は既に決まっているらしかった。

 

 

「私達グリッドナイト同盟は、しばらくこの世界で異変の原因を調査しようと考えています。

 もしよろしければ、協力していただけないでしょうか?」

 

 

 代表する二代目の言葉に、GUTS-SELECT隊員達は顔を見合わせる。

 唯一隊長のタツミのみ、二代目から一瞬も目を背けずに彼女を見ていた。

 信頼に足るか分からない。状況も不明瞭。事態についての手掛かりが少なすぎる。

 だが、此処までに敵対行為が無い事、少なくとも自分達よりも事情に精通している事を鑑みれば、答えは火を見るよりも明らかだった。

 

 

「こちらこそ、お願いしたい。あの怪獣に何らかの意図があるのであれば、第二第三の怪獣出現が予測される。

 これの対処が我々GUTS-SELECTの任務だ。共に異変の調査をしてほしい」

 

 

 まずは信じる事だと、タツミは笑顔で彼等を迎え入れる選択をした。

 呼応するように二代目とレックスも笑みを見せ、それぞれに勢いよく頭を下げた。

 

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

「お願いしまっす!! ほら、ナイトも頭下げろ!」

 

「……お願いします」

 

 

 1人だけ仏頂面を貫くナイトのみ、二代目とレックスに頭を押さえつけられながら無理矢理頭を下げさせられていた。

 その姿は何処か、頭を下げるのが嫌というよりも、頭を下げるタイミングが分かっていないようにも見える。

 とにもかくにもそんな3人と船外で声を上げるゴルドバーンの姿に、どうやら悪い人達ではなさそうだとGUTS-SELECTはそれぞれに感じていた。

 

 

 

 

 はてさて、こうしてグリッドナイト同盟とGUTS-SELECTは協力関係を結び、今回の異変について調べる事となった。

 問題は何をどう調べるか、どう探すか、というところなのだが、それについては二代目の側から提案があるようで。

 

 

「私達の提案としては、あの街の周辺、特に人が多い地域の調査を考えています」

 

「裏に黒幕みてーな奴がいるなら、怪獣が現れた街の近く、つまり現場近くに犯人はまだ潜んでる……ってやつか!?」

 

 

 何故かミステリーめいた例えを持ち出すマルゥルに、二代目は意外なことに頷きで返す。

 

 

「概ねはその通りです。過去に怪獣を操るグループと戦った事がありますが、基本的に怪獣が眼で見える範囲にいる事が多かったですから。

 もし黒幕と呼べる何者かがいるのなら、まだ近くにいるかもしれません。

 それに、私達の世界の怪獣は人の情動によって出現する影響もあって、人がいないところには出現しませんでした。

 先程襲われた街は皆さん避難したばかりでしばらく人は戻ってこないでしょうから、そこを調べる理由は薄いです」

 

「怪獣を操るかぁ、まるで闇の巨人みてぇだな」

 

 

 テッシンが過去に戦った敵を想起するのは当然だった。

 実際、闇の巨人が使役していた怪獣はいたし、彼等にとって最も身近な怪獣を操る者と言えば闇の巨人だ。

 故にテッシンに悪気は一切ない。

 だから、カルミラ達の事を想うケンゴが僅かに顔を曇らせた事は誰のせいでもないのだ。

 

 

「…………」

 

 

 そんなケンゴの微細な変化を、表情を変えずにナイトだけが目撃していた。

 

 さて、実際に街を捜索するとなれば善は急げだ。

 タツミは早速調査を開始させようと隊員達に向き直るが、それを察知したアキトが先んじて声を出した。

 

 

「隊長、俺は少し調べたい事とやっておきたい事が」

 

 

 それきりアキトはタツミを見つめ、詳細は語らなかった。

 本来ならば詳しく事情を聞きたいところだが、アキトは聡明な人間だ。

 意味もなく沈黙を選ぶはずもない、何か言いづらい、あるいは今は言えない何かなのだろうという予測は簡単につく。

 長年培ってきた信頼故、深く掘り下げる事はなくタツミは頷いてみせた。

 

 

「分かった。ヒジリ隊員はナースデッセイ号に残れ。

 マナカ、シズマ両隊員はグリッドナイト同盟と協力して地上の捜索だ。

 何らかの敵が潜んでいる可能性を考慮して、必ず2人以上で行動するように。

 マルゥル隊員は先程現れたブルバインを詳しく分析、ナナセ隊員とサクマ隊員は私と一緒にナースデッセイ号で引き続き警戒態勢。

 いつ新たな怪獣が現れても戦えるように警戒は怠るな」

 

 

 迅速かつ的確な指示の下、GUTS-SELECTは声を揃えて「ラジャー」と口にした。

 ヒマリだけが「喜んで」と言っているのはいつもの事。

 統率された彼等彼女等に倣うように、グリッドナイト同盟も襟元を正した。

 

 

 

 異世界の誰かとこうして手を組むのは、両者共に初めてではない。

 故にこそ歩み寄れた奇跡的な出会いと、予感するのは新たな戦い。

 ともあれこうしてGUTS-SELECTとグリッドナイト同盟の間に、新たな『同盟』が組まれたのだった。




────次回予告────
手掛かりを求めて街を調査する事になった僕達。
ナイトさんやレックスさんと話している内に、僕達はお互いの過去の事を知る。
僕の過去、ナイトさんの過去、レックスさんの過去、みんなそれぞれに想いがあって……。

次回、ウルトラマントリガー×SSSS.GRIDKNIGHT『傷だらけの過去って、なに?』
スマイル、スマイル!
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