テナタスという宇宙人が何を考えているのかは全く分からない。
少なくとも穏やかに友好関係を結ぼうと思っていない事だけは確かである。
Xioの方針としてはテナタスの行方を追うという方向に決まった。
しかしながら隊員達は戦闘直後だ。
そこで隊員達には一旦休養の時間を与え、他のXio職員による捜査と各所警察等に情報提供を呼びかける等の措置を取る事となった。
ある程度の休息を取ったら隊員達も足を使っての捜査となるだろう。
さて、他次元からやってきたレイとミカヅキの処遇だが、当然と言えば当然だがXioで預かるという事で話は落ち着いた。
問題は2人が元の次元に戻れるのか、という話だったのだが、これに関してはグルマン博士の提言で思いのほか早く片が付きそうで。
「レイを元の世界に戻すのは簡単だ。ウルトラマンゼロと同郷なら、その世界に飛べばいい。次元座標も既に分かっているしな。
問題はミカヅキだが……こちらも恐らく大丈夫だ。
話を聞く限り、テナタスが次元移動に使っている物は以前にナックル星人が使っていた銃と似たような物、あるいは同じ物だろう」
「あ……私があの変な星に連れていかれた時の? あんまり思い出したくなーい……。
あ、でもゼロ様と会えたからプラマイゼロ!? むしろプラス?」
『なぁルイ。あの時も言ったが私や大地も結構頑張ったんだぞ?』
調子の良いルイとその時助けに行っているのにスルーされているエックスを見て皆が笑うが、これが笑いで済ませられる状況なのは本当に奇跡だった。
テナタスが使っている次元移動の銃はナックル星人バンデロが使用していた物と同じ銃であり、そのバンデロの被害を一番被ったのがルイなのだ。
別次元の惑星ギレルモに飛ばされ、実際問題冗談抜きでウルトラマンゼロがいなければ今頃この場にルイはいなかっただろう。
「あの事件の後、ルイのような事がもう起きないよう次元移動の痕跡を追うくらいの事はできるようにしてあるぞ。
ミカヅキの元いた宇宙までの道のりも、少し時間をくれれば見つかるだろう。
少し急げば今日中にでも2人を元の世界に戻す事はできるが……」
つまるところ、ルイを助けに行けたのはウルトラマンゼロという『奇跡』が起きたから。
その『奇跡』を『必然』にまで引き上げ、今後自分達でも対応可能なレベルにまで消化してあったのだ。
次元の『位置』とでもいえるべきものが分かれば、後はゼロの次元移動能力と同じ『ウルティメイトゼロアーマー』も所有している。
即ち、2人を元いた次元に戻そうと思えばいつでも戻せる状態という事だった。
しかし、レイとミカヅキはその提案に首を振った。
「いや、気持ちは嬉しいが、テナタスの事件が終わるまでは俺はこの次元に残りたい。
レイブラッドの力を悪用するような奴を放っておきたくないんだ」
「あの、私も! このまま戻ってもずーっとモヤモヤしたまま終わっちゃいそうですし!
それに今戻ってアギちゃん……後輩の前で『追ってみたけど何もなかったよ、あはは~』は……ちょっと、先輩として情けなくて!」
確固たる決意のレイと、やや微笑ましい理由のミカヅキ。
レイはともかくミカヅキは返してやるべきだと皆も思いもしたのだが、意外にもミカヅキの残りたい想いは本物だった。
幾らか戻る事を促してはみたものの、ミカヅキは残る意思を揺らがせる事は無い。
「私が知ってる戦いが、知らないところで終わってて、何も知れずに終わるの、嫌なので!」
ミカヅキは友達と何かをする事が大好きで、何かを楽しむ時には必ず『他者』を勘定に入れる。
故に彼女が何かをする時は必ず誰かを巻き込むのだが、だからこそ蚊帳の外になるのを嫌ったのだ。
今日に知り合った大地やレイが戦っているのに、自分は何も知らずに終われと言うのか。
自分が首を突っ込んだ事なのだから最後まで見届けたい。
簡潔に纏めればミカヅキの言論はそういう事であった。
というわけで、レイとミカヅキは少なくともテナタスの件が終わるまではこの世界に残留する事になった。
そんな2人は今、Xio内部を大地に案内してもらっている。
Xioは国際的な組織とはいえ内部にはいわゆる社外秘とも言えるような情報が満載だ。
勝手に立ち入ってはいけない場所等の案内は重要である。
が、それはそれとして大地は2人を是非とも案内したい場所があったのだ。
「どうぞ入ってください。此処が見せたかった、俺達のラボです」
大地に促されてレイとミカヅキが入室したのはスパークドールズが置かれた研究室だった。
スパークドールズ状態の怪獣達が、元いた生息地を再現したケージの中に入れられているその様はさながら精巧なジオラマである。
だが、ここに居る全ての人形が本来の姿を取り戻せば50m大にもなる怪獣だ。
「これがスパークドールズ……生きているんだな、この怪獣達は」
「はい。ここに来るまでの間の説明の通り、みんな生きています。
怪獣達が元いた環境を再現する事で心を落ち着けさせているんです。
……ジオラマとか人形遊びにしか見えないかもしれませんが、ちゃんと研究の成果なんですよ」
レイの言葉に大地が付け加えた説明を行なった。
2人には道中でスパークドールズがどういう物なのかの説明はしてある。
大地自身、これが一見すると人形遊びにしか見えない事は理解しているが、真剣であるということは念押しして伝えておきたかった。
以前の密着取材での取り扱われ方が未だに不満なのであろう。
さて、まず3人が近づいたのは、湖を模した環境の中に入れられたエレキングのケージ。
「エレキング……!」
「ほえー、これがエレちゃんのご先祖様かぁ〜」
2人共に何かしら意味深な反応を見せている。
ミカヅキは右手の手の平をエレキングに向けて、中指と薬指の間を開きその間からエレキングを見つめるという独特なポーズをしているが、何かのおまじないか、あるいはえらく独創的な双眼鏡の代わりであろうか。
ともかく、少なくとも初見の反応ではない事を見抜いた大地は興味津々で2人に問いかけた。
「2人とも、エレキングの事を知ってるんですね」
「……ああ、かつて一緒に戦ってくれた。ゴモラ、リトラと同じ俺の相棒だった」
まず答えたのはレイ。
笑みこそ浮かべてはいるが、目は何処か寂しそうな、まるで『もう会えない人』を思い出しているような複雑な表情をしていた。
「かつて、って……」
「俺の命を庇ったんだ。俺が今もここにいるのは、エレキングのお陰だ。
……暗い話になってすまない。だが、俺にとっては大切な想い出、大切な怪獣なんだ」
「そう、だったんですね……」
怪獣が人を庇う。
大地も自分のゴモラがダークサンダーエナジーで暴走した際に、自らザナディウム光線を望むような姿勢を取った事を覚えている。
悲しい記憶、辛い記憶、だけどそれは『心を通わせられていた』という確かな記憶。
きっとレイのエレキングへの想いも同じようなものなのだろうと、大地は感じた。
レイ自身の言葉通り、どうしてもこういう話には暗い雰囲気が流れてしまう。
茶化すのは御法度。さりとてこのままにしておきたくないと気遣いの声を出したのはミカヅキだった。
「私も! というか私達GIRLSもエレちゃんにはそれはもうお世話になってるんですよ〜!」
ミカヅキは自分のソウルライザーの写真フォルダを漁り始めて、「これこれ!」と声をあげて2人に写真を見せた。
写真には複数名が写っていたのだが、ミカヅキが指差しているのはその内の1人。
組織の制服──ミカヅキの言う『GIRLS』の制服に身を包んだ眼鏡を掛けた女性だった。
外見年齢的にミカヅキと同じく学生なのだろうが幾分か大人っぽく、美女と呼んで差し支えない印象を受ける。
目線はカメラの方を向いていないので隠し撮りか、あるいは気まぐれにミカヅキが取ったのだろうというのは分かった。
「この子が、もしかしてミカヅキちゃんと同じで?」
「はい! エレキングの怪獣娘こと本名『湖上 ラン』! あだ名はエレちゃんです!」
レイも思わず写真の女性を見つめてしまった。
決してやましい意味ではなく、ゴモラの時にも感じた衝撃がある。
「君にしてもこの子にしても、ゴモラやエレキングが女の子になるとこうなるんだな……正直驚きすぎて全く理解が追いついていない」
「俺もですよレイさん。……あだ名は怪獣の名前の方からなんだね」
「基本怪獣娘は怪獣の名前からつける事が多いですね〜。
私もゴモたんって呼ばれてます!」
ゴモラを相棒にする成人男性2人。
レイは思わずバトルナイザーを、大地は奥のケージにいるゴモラのスパークドールズを見つめてしまった。
ゴモたん。「流石にそう呼んだ事はないなぁ……」と。
と、ここでミカヅキはぴくりと何かに反応し、再びエレキングのスパークドールズの方へ視線を向けた。
「あー、友達というか、今日知り合ったばかりの迷子なんだよ私達。
よろしくね〜、エレちゃん!
……え? ああ、ルイさんもそう呼んでるんだね〜」
そしてあろう事か、まるでエレキングと『会話』するかのように声をかけているではないか。
まさかの行動に大地も驚きを隠せない。
「ちょちょ、待って!? ミカヅキちゃん、今、エレキングと話してた!?」
「えっ? あ、あれ!? 確かに……いやなんか、なんとな〜く言葉が分かるなぁ〜って思って……」
『怪獣娘の力だろうか……?』
エックスの言葉に全員が、それこそミカヅキも含めて首を傾げた。
恐らくエックスの言う通り、というかそれ以外の原因が考えられない。
が、いかんせんミカヅキの元いた世界に怪獣は既に存在していないので、ミカヅキも確かめようがないというのが本音だ。
さて、ミカヅキの凄い特性が発覚したのもそこそこに、ケージにいる怪獣は何も1体ではない。
別の怪獣を見せる為に次のケージへ場所を移すと、またしてもレイもミカヅキも見た事があるようで。
「ゼットン……! この怪獣までいるのか」
「おぉ〜ゼットンちゃんのご先祖様! やっぱ強そ〜……無口なのもそっくりだぁ」
反応からしてエレキングと同様、レイは何かしらでゼットンそのものと邂逅した経験があり、ミカヅキは怪獣娘としてのゼットンを知っているようだ。
ついでにミカヅキはゼットンとも対話が可能なようであり、無口な性格であるらしい。
話の流れはエレキングの時と同じく、レイの想い出から語られる。
「俺の知るゼットンは……過去に戦ったレイオニクスがパートナーにしていたんだ。
信じられないくらいに強いゼットンでな。俺が戦ったレイオニクスの中でも、指折りに強かった」
「俺達が戦ったゼットンもかなり強かったですが……そんなに強かったんですか?」
「当時はまだエレキングもいた頃なんだが……。ゴモラとリトラも含めた3体でかかって、まるで歯が立たなかった」
流石にその言葉には戦慄した。
レイのゴモラは先程のロボット怪獣達との戦闘を見る限り、ゴモラどころか今まで大地が見てきた怪獣の中でもトップクラスに強かった。
『虚空怪獣 グリーザ』のような最早生物とすら呼べないような特殊な例外を除けば1位2位を争う程と言ってもいいだろう。
そのゴモラが他2体の怪獣の力を借りても敵わない程のゼットン、どれ程の強さであったのだろうか。
一方でレイが語るゼットンとの過去は、そのまま彼の『姉』との想い出に繋がる。
既に死別し、時に精神体となって自分を助けてくれた『ケイト』という自らの肉親との。
エレキングに引き続いて暗い話になる事を危惧して多くを語らなかったが、エレキングであれゼットンであれ、レイにとっては悲しい、けれど忘れたいとは思えない大切な記憶だった。
「私の方のゼットンちゃんも、それはもう強いんですよ~!」
語りこそしないもののどうしても心に暗いものが立ち込める時、ミカヅキの明るい声はそれを吹き飛ばしてくれる。
レイはそんな彼女の天真爛漫さに感謝しつつ、彼女がソウルライザーに取り出した写真を見つめた。
大地も共に見やるその写真には、何かぐったりしている黒いウネウネした物を積み上げ、それを背景に自撮りをする無表情の女性が映されていた。
話の流れからしてもこの女性が『ゼットンちゃん』である事は想像に難くない。
なお、特に語る理由もないがこの写真は元々いつかの戦いの際にエレちゃん宛に送られていたものだが、ゼットンちゃんの写真が少なすぎてミカヅキも欲しいと強請ったものである。
「この後ろの黒いのがシャドウなんですけど、この時は大きな巣を作ってたんです。
私や他の皆は別のシャドウと戦ってて手が回らなかったんですけど、ゼットンちゃんが1人でぶっ壊してきちゃって!」
「それは……どの程度凄いんだ?」
シャドウというものの強さが分からない為、レイにはいまいちイメージがついていない。
ミカヅキも腕を組んで「うーん」と腕を組んで考えた後、自分がもてる最大限の分かり易さで説明を始めた。
「普通なら何人かのチームで突撃する様なところです!
あと、さっき話したシャドウビーストっていうのも1人じゃ大苦戦なんですけど、ゼットンちゃんは大抵1人で何とかできちゃうんですよ!」
「どの世界でもゼットンは強いんだなぁ……」
大地達も知らない事だが、初代ウルトラマンを始め多くのウルトラ戦士が、例えば大地とレイの共通の知り合いであるウルトラマンゼロもゼットンないしゼットンから派生した種族に大層苦しめられている。
エックスと大地もゼットンの力とスラン星人の策略にはかなり苦しめられたものだ。
はてさてエレキング、ゼットンと立て続けに3人が共通の話題で話せる怪獣だった。
ゴモラの件も加えればこれで3体。こうなってくると何処まで3人の間に共通の怪獣がいるのか知りたくもなるわけで。
「あのあの! じゃあこの子達、知ってますか!?」
まず手を挙げたのはミカヅキ。
ソウルライザーに表示した写真には、ちょっと眠たそうな女の子、アイスを頬張る快活な女の子、眼鏡をかけた理知的な女の子の3人が映されていた。
「今私が気に入ってる後輩達なんですよ~!
この子はアギラのアギちゃん、この子はミクラスのミクちゃん、この子はウインダムのダム子!」
何処か遠いところから『ダム子!?』という声が聞こえてきた気もしたが、恐らく幻聴だろう。
ミカヅキの後輩である3名を写真越しに紹介した時、誰よりも強くその名前に反応したのはレイだ。
「ウルトラセブンのカプセル怪獣か!」
「ウルトラセブン……? って、あのウルトラセブン!?
じゃあヒカルさんが言ってたカプセル怪獣って、その3体の事だったんだ……」
「……? 大地はウルトラセブンも知っているのか?」
『ムルナウという敵との戦いの時に、我々を助けてくれたんだ』
かつて大地とエックスはこの世界ではない場所、強いて言うなら『ウルトラマンオーブの世界』とでも言うべき場所に飛ばされた。
幾人ものウルトラマンと共闘して『ムルナウ』と対峙したのだが、その時に助けてくれた戦士こそがウルトラセブンだったのだ。
それに『ウルトラセブンにはカプセル怪獣という相棒がいる』という話は『ウルトラマンギンガ』こと『礼堂 ヒカル』から聞き及んでいた事でもある。
エックスの『我々を助けてくれたんだ』という言葉にレイは自身の胸の辺りを撫でながら微笑んだ。
「俺も、セブンには大きな恩があるんだ。それにミクラスは一時期セブンから貸してもらって、一緒に旅をしていた事がある。
そうか、ミクラス達もそっちの世界では怪獣娘なんだな……」
「はい! いやぁ~、それにしてもこんなに共通の知人? 知怪獣? がいるものなんですねぇ」
やはりというべきなのかは分からないが、この3人の間にはかなり多くの共通項が見られるらしい。
そんなわけでミカヅキの言葉を皮切りに3人は怪獣談議に花を咲かせ始めていた。
例えば、『レッドキング』の話。
「この子はレッドキングのレッドちゃんって言って、大怪獣ファイトっていう怪獣娘の格闘技があるんですけどそこの選手なんです!
ホントすっごいパワーで、敵もぶんぶん振り回しちゃうんですよ~!」
「レッドキングか。かつて俺と一緒に戦ってくれたレイオニクス・グランデの相棒で、とても強かったな……」
「ミカヅキちゃんも、その大怪獣ファイトっていうのには出てるの?」
「出てます! でも、恥ずかしながら一度もレッドちゃんに勝てた事は無くて……。
レイさんはその、ぐらんで、さん? のレッドキングとは勝負した事あるんですか?」
「ある。ギリギリだったが、俺とゴモラが勝ったぞ」
「ホントですか! それじゃあ私に出来ない筈がないですねッ!
元の世界に戻ったらがんばりまーす!」
例えば、『キングジョー』の話。
「キングジョーの怪獣娘までいるのか……。
ロボットにもカイジューソウルはあるのか?」
『地球で言う、付喪神みたいなものなんじゃないか?
物にも魂は宿るという』
「キンちゃんは写真集なんかも出してるGIRLSの広告塔みたいな怪獣娘なんですよ!
ほら、この写真もファンとの交流をしてるんですけど……」
(何だろう、キングジョーちゃんと握手してる男性の人に凄い見覚えがある……)
時にラボのスパークドールズを見ながら、時にミカヅキの写真を見ながら、時にレイの旅の話を交えながら。
共通の話題があるとやはり話も弾むもので、各々が知る怪獣、ミカヅキだけは怪獣『娘』だが、語る事は尽きないようだ。
そんな中で話は遂に3人にとって最大の共通項、『ゴモラ』に移る。
3人はゴモラのスパークドールズが収納されたケージを前にしていた。
一歩前に出たミカヅキはケージの中を、エレキングにしていたように右手の中指と薬指の間を開きその間から見つめた。
「ゴモラ……私のご先祖様、なんだねぇ……」
「ミカヅキちゃん、さっきからそのポーズは何……?」
「え、いやぁ、なんかこうすると怪獣ともっと強く繋がれる……気がします!」
怪獣娘特有の直感か何かだろうか。大地とレイが同じポーズをしてみても特に何の成果も無かったので気のせいかも知れない。
ともあれレイもミカヅキも『ゴモラ』となれば色々な想いがある。
レイにとって自分の相棒以外のゴモラを見る事は稀だし、その上人間と心を通わせているとなればより一層に希少だ。
ミカヅキにとっては文字通りのご先祖様、自分のルーツ、カイジューソウルの根源、言ってしまえばほぼ自分自身なのだから。
「これが大地のゴモラか。よく大地に懐いているんだな」
と、レイから思いもよらぬ言葉が飛んだ。
先程のミカヅキ同様、まるで怪獣の思いを汲んでいるような。
「レイさんも、怪獣の言葉が分かるんですか!? さっきまでは全然……」
「ん? ああ、いや……相手がゴモラだからかな。なんとなくそう感じたんだ。
大地が近づいてきて喜んでいるような、そんな気がして」
「実際喜んでますよ! よろしくねゴモラ! まぁ私もゴモラなんだけど……」
レイオニクスといえど怪獣の言葉がわかるようになるわけでもなければ、思いを完全に察することができるようになるわけでもない。
だが、長年連れ添ったパートナーと同種だからなのか、ゴモラにだけはレイは『勘』のようなものが働いたらしい。
一方でミカヅキはさも当たり前のようにゴモラと会話をしている様子だ。
「……凄いですね、2人とも」
ポツリと、何処か自嘲にも似た呟きのように感じる声色。
エクスデバイザーを見つめる大地の顔は2人を褒める言葉とは裏腹に、あまり明るいとは言えない。
「俺もゴモラとは長く一緒にいます。でも、言葉や想いは全然汲み取れてない……。羨ましいです」
大地にとって怪獣との共存は『夢』である。
その夢のために努力してきたし、数々の試行錯誤を行ってきた。
だが、その夢を叶えるために一番手っ取り早い方法を2人は持っている。
言葉が通じるという意味で対話ができるということ、少なくとも考えていることを汲み取れる力。
怪獣娘であれレイオニクスであれ、大地からすれば喉から手が出るほどの力だった。
ウルトラマンエックスという人智を超えた助力を得られている中でこれ以上の贅沢は高望みだと理解していながらも、自分もゴモラと話してみたい、想いを汲んであげたいという気持ちが先走る。
「何を言ってるんだ? 大地こそ凄いじゃないか」
しかしレイは、そんな大地の言葉に首を傾げていた。
「え……」
「大地のゴモラが、キチンと大地に懐いているという事はそれだけゴモラと心を通わせている証拠だ。
俺はレイオニクスというきっかけが無ければ、ゴモラの意思を感じ取るなんてできなかっただろう。
それも無しに怪獣と思いを繋げている……凄くないはずがない」
「確かに! それにゴモラだけじゃないですよ〜。
今まで見てきたみんな、大地さんのこと凄く『好き〜』って感じしましたし!
それだけ色んな怪獣から慕われてるって、凄いじゃないですか!」
レイの言葉に賛同しつつ、ミカヅキは興奮気味に大地を褒めちぎる。
そんな言葉が貰えるとは思っておらず怯んでいる大地に、ここぞとばかりにレイもミカヅキも畳み掛けた。
「それに、前の戦いの時に見ていたが、そのデバイスで俺のゴモラの感情を読み取っていたじゃないか」
「ガオディクションですか? 脳波から大まかな感情くらいなら……」
「十分凄い。それにサイバーゴモラもだ。まさかレイオニクスやレイブラッドの関与も抜きにあんな事ができるなんて、驚いたぞ」
「そうですよ! 私達の力って……まあ、ちょっとズルですもんね?」
悪戯っぽく笑うミカヅキにレイも苦笑いで肯定する。
彼らの力のルーツはレイブラッド星人や怪獣の魂そのものと、これまた通常の人類では得ることのできない超が付く程の特殊事例だ。
それら一切を用いること無く、レイオニクスや怪獣娘で無ければ本来できない領域に辿り着いている。
これが凄く無くてなんなのか、という話だ。
『彼らの言う通りだ大地』
レイ達の言葉を引き継ぐように、ゴモラと同じく大地をずっと見てきた相棒が電子音を発した。
『怪獣をスパークドールズに変える力が私の力とはいえ、怪獣と実際に心を通わせたのは大地、君が直向きに怪獣達と向き合ったからだ。
サイバーゴモラにせよ、グリーザとの戦いで怪獣達が力を貸してくれた事にせよ、君の想いが、怪獣と人間を繋げた。
それは君が誇っていい、誇るべき夢への成果だ』
「エックス……」
エクスデバイザーに向けていた顔を上げてみれば、レイもミカヅキも笑顔で頷いていた。
大地は少し紅潮した頬を掻くと、2人に向けて軽く頭を下げて見せる。
「ありがとうございます。レイさん、ミカヅキちゃん、エックスも。
嫌味みたいに聞こえてたらすみません。ホントに、羨ましかったんです」
「分かっている。気にしていないさ」
「ですです! っていうか逆に、私的には大地さんが羨ましいですね〜!
私もウルトラマンになってみたいでーす!!」
『是非とも!!』
「こらエックス」
何だか気の抜けるやり取りに破顔するレイ。
ミカヅキの持ち前の明るさは、彼の仲間で言えばオキ辺りが近いだろうか?
スペースペンドラゴンでの仲間との屈託の無い会話を思い出しつつ、ミカヅキや大地と笑い合うレイの顔は穏やかなものだった。
「2人とも、他に気になる怪獣はいますか?
もしここにいる怪獣なら案内しますよ」
「うーん……じゃあ、ピグちゃ、じゃなくてピグモンっていますか! 大地先生!」
「先生……? 残念だけどピグモンはここにはいないかな。
でも世界各地で目撃例があるし、日本でも共存してる事例を俺達が取り扱ったこともあるよ」
「俺はゴモラの生態についてもっと詳しく知りたいな。大地先生」
「レイさん、そういうのノってくるタイプなんですね……」
クールだと思っていたレイの意外な一面に驚く大地。
そんな一幕もありつつ、3人はゴモラと怪獣を通じて絆を育むのであった。
────大地の怪獣ラボ────
「『大地の怪獣ラボ!』」
「今回の怪獣はこれだ!」
────『ウインダム』、解析中────
「ウインダムはウルトラセブンと一緒に戦い続けた仲間で、レイさんやミカヅキちゃんにとっても馴染みのある怪獣。
額から発射するレーザーショットが得意技だ」
『そして今回紹介するサイバーカードは、同じく共通して知っていた『エレキング』。
エレキングアーマーだけで無く、エナジーシールドの強化やスラン星人の策略を打ち破る鍵になるなど、頼もしい仲間だ』
「次回も」
「『見てくれよな!』」