環境が人を変える。
お金が人を変える。
出会いが人を変える。
異物は世界を変える。
東京都立呪術高等専門学校。 日本に2校しかない呪術教育期間の一校。 (表向きには私立の宗教系学校とされている) 多くの呪術師が卒業後もここを起点に活動しており教育のみならず、任務の斡旋・サポートも行っている呪術会の要である場所。 その施設内での校庭の真ん中で二人の男子高専生が寝っ転がっていた。
一人は白髪の身長が190cmもあり普通では前が見えないほど黒く塗りつぶされたサングラスをした高専生が一人、呪術会御三家の一つで五条家現当主である五条悟。
もう一人は黒髪に長髪で特徴的な前髪、大きめな耳に大きなピアスをつけている。 彼も五条悟よりは低いが185cmと高い身長を持ち、一般家庭からの呪術師である。
「なぁ…傑」
「なんだい? 悟」
「俺達って最強だったよな?」
「そうだね…そうだったね」
晴れた青空の下で意気消沈した二人が空を眺めながら話していた。 それを校舎の中から机に肘をつき手に顎を乗せて眺めている女子高専生が一人、黒髪のショートカットで右目の下に泣きぼくろを持ち気怠げな雰囲気をもった女子が家入硝子。 彼女は先の任務では、彼らと星漿体である天内理子を反転術式で治療して伏黒甚爾から受けた傷を消していた。
しかし、反転術式には死者には使えず生者にしか使えないのである。 天内理子は伏黒甚爾に拳銃で後頭部に発砲され死んでいてもおかしくはないが…彼女は生きていた。 本来、ヘッドショットされた人間は生存確率が5%と言われている。 その5%を引いたと言えば奇跡と言えるだろう。
だが、伏黒甚爾は天内理子を撃った拳銃は口径を小さな物を選び身体の中心線をなぞり眉間の裏側である後頭部に着弾。
人の脳は右脳と左脳と分かれており中心には隙間が存在しており、それが大脳縦列と言われる。 そこには重要な神経や血管が無い小さな銃弾が一発分の隙間がある。 その隙間を意図的に伏黒甚爾は狙い、天内理子の命を奪わずに盤星教『時の器の会』と呪詛師集団『Q』に偽の殺害写真を送り表向きでは天内理子は死んでいる事になっている。
そして、五条悟は先の任務で意識を失ってから目を覚ませば先に起きていた夏油傑から事情を聞き天内理子は天元との同化は拒否をして新たな道を歩もうとした所を伏黒甚爾に発砲され死んだと聞いた。 しかし、その後彼らが寝ていた治療室に頭に包帯を巻いた死んだと思われていた天内理子が五条悟と夏油傑と家入硝子である2年担任教師である夜蛾正道と一緒に入ってきた。
聞けばフリーランスである伏黒甚爾が、天内理子の立場を考えて本人の意思が同化したいかしたくないかの選択を与えさせる為に偽装の死を用意していた。 そのため、今回の天内理子の死で余計なしがらみが無くなり世間では居なくなった存在になった。
そこに五条悟は自分の家の力を使い、天内理子から他の名前を与え彼女の家族とも言える黒井美里も同じ処置をしていた。
「俺らはまんまとアイツの掌に転がされていたんだな…」
「あぁ…手も足も出せなかったのが現実だね」
今までが自分達に敵うものは無く、足を向ければ遮る物も無く解決させてきた。 だが、一人の非術師によって彼らの支えていたプライドを曲げてしまった。 それにより新たな任務に駆り出された二人は現場では危なげなく処理をしていたが、先の件以前の威勢は微塵も感じないほど覇気がなくなっていた。
「お前ら…こんな所にいたのか」
「…ヤガセン」
「……」
1級術師であり呪術高専の教師である夜蛾正道が彼らを探していたのか、寝っ転がっている二人に近づいていく。 年は三十代半ばで見た目は髪型は坊主刈りで両側の米神からラインが入っており強面な彼らの担当教師である。 夜蛾が近づいてきたので彼らは身体を起こし胡座をかき、夜蛾の顔に視線を送る。
「なに? 俺ら別に悪い事してねぇよ」
「俺が来たからって叱りに来たわけでは無いぞ。 そう思うなら日頃から改めてくれ。 いやな…お前らが目に見えるほど覇気が感じられないほどに落ち込んでいるからな。 心配してな」
「「っ!」」
夜蛾の言葉に二人は息を詰まらせる。 本人達も自覚はしている。 だが、いざ実際他の人間に言われると図星の為に言葉を出せないでいた。 それを見た夜蛾は深い溜息を吐き、彼らと目線を合わせる為に彼もその場に座り込み目線の高さを下げる。
「俺はな…星漿体の件では、お前らが一度負けたのは良い経験だと思っている」
「「!?」」
夜蛾の言葉に二人は驚いてしまった。
「先生、それは私情でのお言葉ですか?」
「そうだ! 俺らが生意気と思ってるから、良い気味とか思ってるんだろ!!」
当然夜蛾の発言に納得できず、思わず立ち上がり夜蛾を見下ろす。 見下ろされる夜蛾は一つ両手を広げて手を合わせ音を鳴らした。
「落ち着けお前ら。 別に貶す意味で言ってるんでは無い。 座れ座れ」
「「……」」
まだ納得ができない二人は、渋々と再び座り込み夜蛾に顔を向ける。
「いやなに、お前らは強い。 今までは任務に駆り出され、様々な呪霊など祓ってきただろう。
悟は術式も六眼をもって呪術師としてはハイスペックだ。
傑は呪霊操術を持って戦闘センスが高い。
今までがお前らを支えてきたものだ。 しかし、どんな人間も完璧では無い。 失敗あっての人生だ。 何もかも成功した人生など成長など無いからな。 だから、お前らには失敗と言う経験を得て欲しかった。 そうすればお前らはより強くなれる。 日頃言っているだろ? 二人で最強だと」
二人は夜蛾の話を聞きながら、今まで確かに手こずる事も失敗した経験がなかったと思い返していた。
「誰もが一人では全ての事は出来ない。 傑、呪霊操術で呪霊を完全に独立行動できないのだろう。 だから、一度命令が挟み呪霊を動かしてから本人が動ける手順だろ。 その時に悟を前線で戦わせれば様々な呪霊を取り出して、搦手として呪霊を設置するなりすれば効率的に相手を翻弄できるだろう。 悟にしても六眼と無下限の多様で消耗してしまうなら、傑の援護を任せるのも手だろう。
ただ一人で解決せずに信じた人間に背中を預けても損はないだろう。
そして、お前達が後の人間達を引っ張れば…より可能性は広がるだろう。 自分の知識を人に教えられるのはしっかりと理解できている証拠だ。 試しにやってみてはどうだ? 無理にとは言わんが」
夜蛾は二人に伝えたいものを言えたのか、立ち上がり校舎の方に向かっていく。 その後ろ姿を眺めて夜蛾の姿が見えなくなると、二人はお互いの顔を合わせると笑い合った。
「やるしかねぇよな、傑?」
「あぁ、やってやろう。 悟」
その日から彼らは変わっていく。 二人で任務に向かった際は、打ち合わせを移動中にして現場で現れる呪霊を事前に仕入れていた情報を元に完全に封殺するほどに二人はお互いの長所を活かしあっていた。 他にも高専の後輩である二人である七海健人や灰原雄などを、任務に連れ込み実践の中で自分が持つ知識を最初は不器用ながらも教えていた。
そんな先輩である二人を見て彼らは、今までスタンドプレーな行動からは考えられない二人に驚愕していた。 しかし彼らは先輩の熱が籠った瞳に何処か人として皮が剥けたんだと思えた。
任務以外のプライベートの際は前と変わらず人にちょっかいはかけてくる。
それからは少しずつと東京の高専では、あの二人が生み出した波紋は広がり呪術師や補助監督など窓の死者数は減少していく様子が見られた。 それを聞いた彼らの先輩にあたる2級術師である庵歌姫からはこんなコメントが一つ。
「あの二人がそんな事を? えっ、頭でもうったの?」
それを何処かで聞きつけたのか、二人は後日に朝食を食べていた庵歌姫の所に押しかけて彼女の身体を無理矢理上下に力一杯引っ張り痛がって涙目になっている彼女を見て笑顔で帰って行ったのは別のお話。
そんなこんなで二人はいつか、自分達をコケにした伏黒甚爾に心の底からリベンジすると。
今度は俺達が勝つと心に決めて。
これが一つの世界線。
本来は伏黒甚爾が星漿体を殺害して、呪詛師である羂索が成し得なかった循環を壊し五条悟を覚醒させるのが原作のストーリー上の出来事。
だが、この世界では一つのイレギュラーの存在が一人の人間を変えてしまい本来の出来事を覆してしまった。 原作では存在しない娘と早い死を迎える筈だった嫁と息子に父である彼は、家族としての暖かさを与え幼少期で植え付けられた氷を溶かされていた。
その為…原作とは違う結果を生み出した。
この先は誰も知らない世界の流れ。
彼女の行動一つで様々な事が起きるだろう。
それを可能性と呼ぶ。
どうも、短めですが少しでも投稿していこう精神で書き上げました。
一人の存在によって原作とは違う世界。
作者である自分が思い描くストーリー。
仕事やプライベートの合間に書き進めては消しての繰り返し。
待ってくれている読者に考察などさせたい気持ち。
色々思いながらこの作品を進ませていますが、いかんせん文章を考えるセンスがない…。
だけど投稿したい。
こんな作者ですが…また次回作で!
ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌( ̄◇ ̄)┘