仮面ライダー ハーメルンジェンレーションズ アクト×デイナ Almost Human   作:志村琴音

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第3話です。
戦闘シーンが一切無い日常回(風の何か)です。でもって短いです。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いします。


CHAPTER.03

2022.05.30 16:20 東京都 新宿区 SOUP

 未確認物質解析班(Special Office for Unknown Phenomenon)。通称「SOUP」の拠点は四谷の地下50メートル付近にある。

 外敵からの侵略を受けないことと、同じく地下で発見された四谷遺跡を守るためだ。

 

 その一角にあるオフィスの中で、主要メンバーたち、さらに仁と亜矢がいた。

 メンバーたちは自身の席に座り、室長である岩田はいつも通り、森田の席の左側に立っている。

 そして仁と亜矢は入り口付近にて、椅子ごと鎖で縛られた状態で座っている。

 

 これが春樹の考えた策だ。

 もし変身する得体の知れないものとして連行をすれば、実験だの何だのやられるかもしれない。

 そのため、こうして人間として現行犯逮捕をすることによって事無きを得たのだ。

 

 室内では仁と亜矢の方を、他の全員が何やら懐疑的な目で見ていた。

 

「──つまり、君たちは別の世界から来た人間だと」

「しかも企業絡みの戦いに巻き込まれて──」

「おまけに人間じゃない存在になったって……」

「後、MIT(私の母校)に留学することになっている」

 

 森田、深月、圭吾、薫が各々呟く。

 仁と亜矢、真矢から彼らのいた世界についてのことを聞き、心底驚いているのだ。

 

「正直、もう何が来ても驚かないけどな」

 

 確かに、日本有数の製薬会社が人体実験を繰り返し、世界に誤った方向性を指し示そうとした。その産物として彼らが人ならざる者となった事実は、常人には理解し難いものである。

 だが春樹の言う通り、此方の世界でも同じようなことが何度か起こっている。別に何を言われても疑うこと無く信じられてしまうのだ。

 

「そう言えば義兄さんは?」

「お兄ちゃんならネクスチェンジャーの修理中」

 

 そう。

 今この場にいない八雲は、少し離れた研究員たちの部屋にて、自身のネクスチェンジャーの修理をしていた。

 異世界から来た彼らのことよりも自身の装備を気にするところは、彼らしいと言えば彼らしい。

 

「一応警察庁上層部の了解は得て、君たちの行動はある程度自由になった。……が、その代わりこれを付けてもらう」

 

 すると岩田は入り口前に座る仁と亜矢のところへ行くと、二人の首元に銀色のチョーカーを付けた。前部にある赤色のランプがほんのりと光っているその様子を見て、全員に嫌な予感が走った。

 

「これは……何ですか?」

 

 恐る恐る亜矢が訊いた。

 

「端的に言えば、此方の世界で使っている神経断裂弾の技術を応用した爆弾だ。もし何か手荒な真似をしようとすれば、爆発する」

「!? ちょっ、なんて物付けてくれてるの!」

「でも仕方ないよ真矢さん。一応はそこまで信頼無いわけだし」

「そうだよ。今はこの人たちの指示に従おう?」

 

 信頼が無い、というのは春樹たちのことを指しているわけではない。こんな物を付けなければならないとの判断を出した上層部だ。理由に関しては三人とも重々承知しているのだが、それでもやはりと言ったところだろう。

 

 そんな中で話を次の展開に進めたのは、春樹であった。

 

「で? あの三人は何者なんだ?」

 

 深月が自身の席でパソコンを動かすと、森田のデスクの右隣にあるモニターに3人の男女の顔写真が映し出された。彼らは全員、春樹たちが戦った謎の人物たちだ。

 

「身元は割れました。まずタンクトップの男が山田(やまだ)左千夫(さちお)、29歳。大手スポーツクラブ、ワンアップジムの代表取締役社長です。次に、ワンピースを着た女が和泉(いずみ)玲奈(れいな)、21歳。城西大学の3学生です。で最後に、真ん中にいたスーツの男が伊福部(いふくべ)中也(ちゅうや)、39歳。杉並区で学習塾のバイトをやっています」

 

「顔見知りか?」

 

 森田が訊くが、仁と亜矢は首を横に振るだけだ。

 

「ただ、三人ともアリバイがあって、あの時間あの場所にいるのは不可能なんですよね……」

 

 じゃあ、あの三人は一体……?

 全員が考えを巡らせようとしたその時、

 

「あの、お二人は今日何処に宿泊される予定なんですか?」

 

 圭吾の発言で、仁と亜矢は考え始めた。こんな異世界にいきなり放り込まれても、何処にも行く宛てなど無い。かと言って野宿をするわけにも行かないから、結局は何処かのホテルに泊まるしか無い。

 

「例えば、ここの仮眠室で寝るとか──」

「圭吾さん、お客さんにそれは不味いですって……!」

 

 薫が待ったをかけた。

 SOUPのオフィスの内部にある仮眠室は、広くて設備こそ充実しているがあまり寝心地は良くない。要請があった時にすぐ対応出来るようにするためだが、客人を招くにはあまりにも失礼だ。

 

「大丈夫だよ。俺たち野宿するし」

「え!? ちょっと仁くんそれは──」

 

「だったらウチ来る?」

「良い、んですか……?」

 

 碧の提案に仁と真矢は驚く。

 異世界から来たと言う正体不明の自分達を招き入れるなど、かなりの度量が無ければ考えも出来ないだろう。

 

「うん。ね? 良いよね、春樹?」

「ああ。一応()()()()()()()()()()()()()()から、それで良いならな」

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.05.30 20:13 東京都 中野区 トキワヒルズA 601号室

「──まさか、その()()()()()()っていうのが、娘さんだったとはねぇ……」

【──うん。しかもそれが高校生ってびっくりだよね……】

 

 食卓に座って真矢と会話をする亜矢が見つめる先にいたのは、ソファに座りながらユナイトキャットと戯れる少女──筒井(つつい)あまねだった。

 本物の猫のような仕草をする機械にふやけながら笑みを浮かべて、一緒にボールで遊んだりテレビを観たりしている。

 

「……私たちに娘が出来たらあんな感じなのかな……? ──そうかもね。でも……」

 

 言葉に詰まる真矢。

 理由が分かった亜矢も俯いてしまう。

 産まれて来る子供は確実に何かの厄介ごとに巻き込まれる。勿論、そんなことはさせないし、万が一そうなったとしても自分達と仁で守る。だがもしも、もしも彼女の歳まで守り抜くことが出来なかったら──。

 

 すると、

 

(なん)か分からないけど、まぁ大丈夫でしょ。私もこうして生きているし」

 

 あまねがユナイトキャットと戯れながら言った。

 自分よりも年下の小娘にそんなことを言われたとしても、何故だかその言葉には説得力を持っているように感じていた。

 

 亜矢と真矢は知らなかったが、本名を石川(いしかわ)(ゆい)と言うあまねは、嘗て大きな脅威に晒され怯える日々を過ごしていた。

 だからこそ、彼女らが何を思い、何に怯えているのかが何処となく理解出来るのかもしれない。

 だからこそ、その言葉には重みがあるのかもしれない。

 

 それ以上は何も言わないようにした。

 ユナイトキャットを笑顔で愛でるあまねを見ていると、もうこれ以上迷うことは野暮なように思えてきた。

 

「あ、そうだ。もし子供作るとしたら実家でやるのは気を付けた方が良いですよ」

「!? いきなり何を言うの!? ──そ、そうですよ!」

 

 あまねが突然言ったことに動揺する亜矢と真矢。

 

「いや。何となく察して……」

「『察して』って……一体何をどう察したんですか!?」

「あまねちゃんは前科があるからね〜。はーい、ご飯でーす」

 

 そこへ碧が透明な皿を持ってやって来た。

 亜矢の前に出されたそれの上には、サイコロ切りにされたトマトがふんだんに入ったパスタがあり、霜の出た皿にバジルが添えられている。

 

「わーい! ママの新作だー!」

「そうよ。お代わりもあるからね!」

 

 嬉しそうな顔をしてユナイトキャットと共に食卓に来たあまね。

 自分とあまねの席にも同じものを置いて座る碧。

 二人の笑顔を見ると、これまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように思えてしまう。

 

 何故だか亜矢と真矢は、あまねを見つめる碧に自身を重ねてしまった。

 自分達の行く末がこうであって欲しい。彼女らがこんな顔を出来るのは、それ以上に辛いことを乗り越えて来たからだ。例え何があっても、仁や子供達と笑い合える日が来て欲しい。

 

 想像と決意に心を固めた亜矢は、碧やあまねと一緒に皿の前で手を合わせた。

 

「「「いただきます」」」

 

 これから、女子たちの優雅な夜が始まる。

 

 

 

 

 

 一方で八雲が住んでいる、隣の602号室では──

 

「で、義兄さんが総力を結集して作り上げたのが、この素麺(そうめん)ってわけか……」

 

 食卓の真ん中にある大量の素麺が入った透明なボウルを見ながら、春樹は落胆していた。

 いつも碧が作ってくれるこの上無い美味しさの料理を食べている彼にとっては、実に嫌なことであった。

 

「仕方ねぇだろ。これしか冷蔵庫の中に入ってなかったんだから」

 

 八雲は料理がかなり苦手だ。なので冷蔵庫の中は作るのが簡単なものだけで埋め尽くされている。

 先程見たところ、茹でて水に通すだけで食べられる素麺しか無かった。それしか無かったために、麺つゆやチューブに入った生姜は春樹が自分の部屋から取って来るしか無かった。

 

「折角の来客なのに……」

「俺は大丈夫だよ。別にこれだけでも腹は膨れるから」

 

 奇跡的なことに、仁は食に対する興味が皆無であった。

 なので品数が足りないだとかの文句を言うことは無く、ただ目の前のボウルを眺めている。

 

「え? これだけで良いのか?」

「うん。早く食べようよ」

「よっしゃぁ!」

 

 食卓に着いた三人は手を合わせてボウルに手を伸ばした。

 端で掴んだ素麺を箸で麺つゆが入ったカップに持っていき、口の中へと運ぶ。その時に感じる冷たさは、蒸し暑い今の気候にピッタリであった。

 

「ところで、これからどうするの? あの三人は俺も亜矢さんも真矢さんも知らないし、そっちもまるで手がかりが無いんでしょ?」

「ああ。だから、アイツに会うことにした」

()()()? ……ああ。()()()ね」

 

 素麺を啜りながら織り成される会話の中で、考えが伝達出来た春樹と八雲に対し、仁は首を傾げた。

 

「? アイツって?」

 

 春樹は咀嚼していた素麺を呑み込み、仁に答えを告げた。

 

 

 

 

 

「俺らの世界の敵、っていうことになる奴だ」




【参考】
東京の過去の天気 2022年5月 - goo天気
https://weather.goo.ne.jp/past/662/20220500/
暑い夏におすすめの夕飯レシピ27選!さっぱり系からスタミナ系まで - macaroni
https://macaro-ni.jp/76245
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