仮面ライダー ハーメルンジェンレーションズ アクト×デイナ Almost Human   作:志村琴音

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第4話です。
かなり怒涛の展開だと思います。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。


CHAPTER.04

2022.05.31 13:02 東京都 江戸川区

 翌日、春樹と碧がそれぞれ運転するバイクに同乗した仁と亜矢は、二人に連れられてとあるファミレスの前に来た。

 

 その前に立った時、仁は思わず首を傾げてしまった。

 昨日春樹が言っていた、彼らの敵というのがこの中にいるということがどうも信じられない。

 

 先導されて入った中は至って普通のファミレスであった。先程まで雨が降り注いでいた中であったが、昼休憩中の会社員やランチをしに来たママ友たちで席が埋め尽くされている。

 

「あの……。本当にここに、いるんですか……?」

 

 室内を見た亜矢はますます懐疑していた。

 今までこのような場所に敵が現れたことなど無かったのだ。もし本当にいるのだとすれば、一体どんな敵なのか想像もつかない。

 

「うん、いるよ。ほらあそこ」

 

 碧が指差したのは、ガラスで外が見えるソファ席の一つであった。入り口側のソファの奥には、茶色いスーツを着た男が座っている。

 そこへ向かった春樹が男に声をかけた。

 

「よう」

「あ、どうも」

 

 振り返って会釈をする男、アール。

 顔の大きな小太りの彼を見たその時、仁と真矢は思わず声を出して驚いてしまった。

 

「こ、この人! 私たちを連れて来た人だよね、仁君!?」

「う、うん……。まさか春樹さんたちの敵だったとはね……」

 

 二人の言葉で、春樹と碧の様子が変わった。

 戦いが一段落し羽を休めていた彼らを、こんな物騒なところに連れて来て再び戦禍に巻き込もうとしていることに、何とも言えない怒りに似た感触を覚えた。

 

 アールの隣に春樹が座り、さらにその隣に碧が座る。春樹の無表情と碧の笑顔は変わらないが、そこから新たに生み出されるドス黒いものを感じながら、仁がもう片方のソファの奥に座って、亜矢はその隣に座った。

 

「おい。今言ったことは本当か?」

「ほ、本当ですけど……」

「へぇ〜。そうなんだ〜」

 

 いきなりアールの表情が曇り始める。二人の形相に恐れ慄いているのもそうだが、それだけではない。

 碧がナイフを持って身構えて、完全なる戦闘態勢になっていたのだ。さらに、仁と亜矢は気が付かなかったが、アールの腰の右側には春樹がこっそり取り出したフォークが突き立てられている。

 失言でもしてみれば真っ先に自分は襲われる。たかがナイフやフォークで彼が死ぬことは無いのだが、襲って来るであろう相手と痛みに震え上がっているのだ。

 

「それで、あの人たちは一体何者なんですか?」

 

 亜矢が訊くと、アールは恐る恐る答えた。

 

「……結論から言うと、あれはフォルクローです」

「「は?」」

「同時に彼らは、貴方方と同じ新人類でもあります」

「「【え?】」」

 

 頓珍漢な発言に、全員が困惑する。

 

「どういう意味? それ」

「全く意味が理解出来ないんだけど……」

 

 仁と真矢がそう言った時、春樹と碧の凶器が着々とアールに近付いて来る。

 さらにアールは恐怖に駆られた。

 

「い、いや、別に何かを誤魔化そうとしているわけじゃなくて──」

「じゃあ納得のいく説明をしてもらおうか」

「じゃないともう2センチは近付けるよ」

 

 ここまでの脅しをされては仕方がない。

 観念したアールは溜息を一つ吐くと、事の顛末を話し始めた──。

 

 

 

────────────

 

 

 

 事の発端はですね、今から2年前に遡ります。

 

 全165体のフォルクロー、そして春樹さんと碧さんの改造を終えた常田(ときた)海斗(かいと)さん、つまり碧さんのお父さんはあることを考えていました。

 

 もっと強いフォルクローを作ろうとしていたのです。

 

 フォルクローには人間の姿を捨てた一般的なものと、人間の姿を捨てること無くさらに強力な力を持つ上級のものが存在します。

 能力はものによって違い、上の方々でもその強さはピンキリです。

 上級のピンに負けず劣らずの実力を持ったフォルクローを実現させる。それは()()()()にとっては何の意味も無いことでしたが、彼の遺伝子の識者としての血が騒いだんでしょうね。

 

 けれどもそんなことが出来る器はこの世界には無かった……。

 

 そこで海斗さんは、私にこんなことをお願いして来ました。

 並行世界に行って器になれそうな人材を持って来てくれ、と。

 この世に多数存在する並行世界には、特殊な力や肉体を持った者たちが大量にいる筈。そう考えていらっしゃったわけです。

 

 まさかとは思いましたよ。

 けど試しに行ってみたら、いたんですよ……!

 

 勿論、全ての世界からサンプルを採りに行ったわけではありませんよ。けど色んな世界を見に行けたのはすごく良い経験でした。

 私たちが元いた世界のように鏡の中で仮面ライダーが戦っていたり、人の穢れに呪いの力で立ち向かっていたり、後いくつかは皆さんみたいに他の仮面ライダーの力を使っていましたね。

 

 数え切れない程の世界を回って、最後に辿り着いたのが仁さんたちのいる世界でした。

 あそこでは確か、傘木社という企業が暗躍を行っていましたよね。違法な人体実験をし、新人類を作ろうとしていた。

 

 その実験体の中に、あの三人がいたんですよ。

 彼らは傘木社の株主でしてね。その株主優待として特別に人体実験を受けていたんですねぇ。

 

 超万能細胞を定期的に投与されることによって、身体が徐々に新人類に近付いていった。いや、あの時はもうすでに新人類になっていたんです。

 

 そして傘木雄成がレトロウイルスの実験に伊福部さんたちを使おうとした寸前で、お持ち帰りさせていただきました。

 

 

 

 我々の世界に連れて行った三人を、海斗さんはあの白い棺桶の中に入れ改造し、そしていつか目覚める時が来るまで凍結しておきました。

 

 が、管理していた海斗さんが春樹さんに倒されたその時、凍結されていて彼ら三人は突如として目覚め、ライダーシステムのデータを盗み取って姿を消した──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──以上が、この事件の発端というわけです」

 

 アールが報告したその全てに、全員が驚愕していた。

 

「まさか私たち以外に新人類がいただなんて……」

「それにフォルクローも……」

 

 現段階で新人類は、仁と亜矢の二人だけだ。

 繰り返し実験をされてきた希望にリリィ、レックスの三人が新人類として覚醒する可能性は無きにしも非ずと言ったところだが、それでもレトロウイルス等で覚醒された者たちは実験に全て使用されて処分されたため、新たな種は僅か1組しか存在しない筈であったのに──。

 

 一方のフォルクローも、春樹に碧にアール、そしてその元となったパラレインを含めれば4体だけ。それ以外に個体が存在することなど知らなかったし、ありえないと思っていた。

 

 自分たち以外はいなくて良い。

 そう思っていた筈なのに──。

 

「仁さんと亜矢さんをお呼びしたのは、伊福部さんたちの処理をお願いしたかったからです。はっきり言って、新人類の要素を併せ持つ彼らにどう対処して良いのか検討がつかないんです」

「それだったらそっちが勝手にやれば良いじゃん」

「そうよ。どうせ対抗出来る(すべ)はあるんでしょ?」

 

 抗議する仁と真矢であるが、アールの表情を見る限り、事はそんな単純なことではないらしい。

 

「実は()()()()()()が現在体調を崩しておりまして……」

 

 即戦力。それは彼、と言うよりフォルクロー全体の長であるパラレインのことだ。

 彼奴の体調不良というのは、カードを吸収したことにより、それに体が馴染むのを待っている段階、ということである。こうなると殆ど活動が出来なくなってしまうため、全くの足手纏いになるのだ。

 そう考えると、仁と亜矢を連れて来たのは英断と言えるだろう。

 

「で、そっちが握っている情報はそれだけか?」

「はい。目的も何も分からないので……」

 

 春樹の言葉に黙って頷くアール。

 様々な事実に驚愕をした一同であったが、やることははっきりとした。

 彼らを倒せば良い。

 ただそれだけのことである。

 

 全員の中で共通の目的が生まれたその時、春樹と碧のトランスフォンが振動を始めた。

 まさか、と思い画面を確認すると、案の定そうであった。

 

「奴らが現れた。行くぞ」

 

 全員が席を立ち、その場を後にしようとする。

 けれども碧だけは立ち上がると、アールに背中を向けたまま立ち竦んでいた。

 決して表情を見せないようにして言葉をかける。

 

「──あの二人の命を奪ったこと……私は絶対に許さないから……」

「……それは、あの御方に直接お申し付けください」

 

 肩を震わせる碧に対し、アールは笑顔で言い放つ。

 互いの表情は見えることもなく、そのまま碧は店を出た。

 

 残されたアールは独り、目の前のコーヒーに口を付ける。

 いつも以上の苦味を感じた彼はそれを一気に飲み干し、伝票を持って席を立った。

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.05.31 13:16 東京都 江戸川区

 そこは都が管理している広大な空き地であった。茶色い土と僅かに生えた草が曇天と異様な程に似合っている。

 その上に、伊福部たち三人はソルダートBの大群を従えて立っていた。人を待っているのだ。いずれ来るであろう獲物とも呼ぶべき人を。

 

 目の前からコンクリートや砂をタイヤが擦って出来る音が聞こえてきた。

 2台のバイクが止まり、4人の人物が姿を現す。

 無論、春樹に碧、仁と亜矢だ。仁と亜矢の腹部にのみ、それぞれデイナドライバーが装着されている。

 

「来たねぇ……! 待っていたよ。そろそろ()()()()()()を貰うよ」

 

 伊福部は興奮した面持ちだ。

 けれども一体何を欲しているのか判らない四人は、ただ伊福部たちの方を睨んでいる。

 

「一体アンタは何を狙っているの?」

 

 仁が訊く。

 

「それは、奪ってからのお楽しみってことだな。な? 玲奈」

「気安く、名前を、呼ばないで。……でも、仰る通り」

 

 山田と和泉が左腕に付けたネクスチェンジャーにカードを装填する。

 

「「変身!」」

『『Let's go!』』

 

 薔薇に烏。各々が装着者と共に枠の中に閉じ込められると煙が中に充満する。

 枠が壊れて白煙が無くなり、仮面ライダーコーゾと仮面ライダーコールヴォの姿が顕になった。

 

 それを見た春樹たちは、各々がアイテムを取り出した。

 

「パワー系はお前らに任せる。スピード系は任せろ」

「え? 何か手があるんですか?」

「うん。私たちにはこれがあるから」

 

 亜矢の疑問に碧が自信満々に答えると、春樹は黒い四角い物質──クラックボックスにトランスフォンをかざした。

 

『CONNECTING US』

 

 するとクラックボックスが消え、春樹と碧の腹部にドライバーが装着される。けれども戦士のプレートが配置されている部分には、先程まで春樹の手の中にあったクラックボックスが置かれていた。

 さらに目の前に現れた、上部に銀色のパーツが付いた透明なカードを手に取る。

 

「だったらお望み通り、あの薔薇の奴は任せてください」

「そう言うからには、何か手はあるんでしょ?」

「はい。これがありますから」

 

 仁が見せたのは、ベージュと銀色のベクターカートリッジであった。

 何の変哲も無いものなのだが、直感的に得体の知れない感覚を味わってしまう。

 

 春樹と碧はカードをトランスフォンに挿し込む。

 仁はベクターカートリッジを、亜矢はベクターカートリッジを挿したユナイトキャットをドライバーに装填した。

 

『『"REVE-ED'N'ACT" LOADING』』

『QUETZALCOATLUS + SPINOSAURUS Reborn』

『CAT Unite』

 

 春樹と碧は電源ボタンを押した。

 

『『Let's "UNITE"!』』

 

 すると、

 

「「【ん?】」」

 

 碧を水色の直方体が、春樹を内部に大量のパイプが付いた横に長い緑色の直方体が覆う。

 銀色の鎧が浮かぶ下でその二つが1本のパイプで繋がれている様子は、仁たちには馴染みの無い光景であったがために戸惑ったが、春樹と碧が何事も無かったかのようにポーズを決めているため、それに従うことにした。

 

「「「「変身!」」」」

『『Here we go!』』

『Open the door』

 

 亜矢はいつも通り、ドライバーから飛び出して来た二重螺旋を優しく抱いて、その姿を仮面ライダールーナ・ユナイトに変える。

 

 仁の方はと言うと、全身を眩い光が覆い隠してまるで卵のようなものとなる。

 その卵は罅を広げて遂に割れ、異様なその姿を見せた。銀色のアンダースーツの上からベージュの鎧を付けているのは普通なのだが、通常のデイナとは一味違い、仮面には鶏冠が、背中には大きな翼が生えている。

 

『Amazing! Revelation of the legend, DRAGON. Open the door』

 

 この世で最も強力な魔物の力を得た形態──ドラゴンライフである。

 

 一方、碧はリベードの素体に、春樹は全身が黒い化け物に姿を変える。

 すると次の瞬間、何とリベードの身体が液状になり、パイプを伝ってアクトの中へと入って行く。

 そして緑色と青色の戦士へとなった彼に、銀色の鎧が装着された。

 

『Release all and unite us! We’re KAMEN RIDER REVE-ED’N’A-CT!! It’s just the two of us.』

 

 仮面ライダーリベードンアクトの登場である。

 

 互いの姿を見合うデイナとリベードンアクト。

 全く違う形態になったことに興味深々であった。

 

「へー。翼の形状とか変わるんだ〜」

「鶏冠とか滅茶苦茶格好良いな……」

「合体した……。 こういうの一応出来るんだ……」

 

 好奇心を最大限活用して観察を続ける2体の戦士。

 だが、

 

「ちょっと! 驚いてる場合じゃないって!」

 

 ルーナの言う通りだ。

 コーゾとコールヴォが、コンバットナイフを握り締めるソルダートBと共に走って来た。

 それを見た戦士たちも、彼らに対抗をすべく戦闘を開始した。

 

 デイナは翼を広げると物凄い勢いで前進。あまりの勢いにソルダートBたちは弾き飛ばされ消滅する。

 

 そしてコーゾに向かって右足で強烈なキックを食らわせた。

 それを両腕の刃で防いだコーゾであるが、やはり威力は凄まじいらしく、勢いに押されて後ずさる。

 

 ルーナはデイナの右肩を踏み台にして跳躍。2本の銃剣の刃でコーゾに斬りつけた。

 

「ハァッ!」

 

 火花を散らして後退する。そこにさらに、ダメ押しで何発かの銃弾を浴びせた。

 

「結構余裕ね、仁君。──やっぱり相性なんでしょうかね?」

「そうだろうね。このまま押し切るよ……!」

 

 反撃を繰り出そうとコーゾが刃を振り回して迫り、振り下ろされて出来た斬撃がデイナとルーナを襲う。

 何度も何度も攻撃が襲い、身体から火花が散っていくが、体勢を崩さなかった二人は一瞬の隙をついてコーゾを蹴り飛ばし、そしてデイナは右の拳を、ルーナは左手に握った銃剣の刃を食らわせた。

 

「「ハァッ!」」

「グッ……!」

 

 

 

 一方のコールヴォとリベードンアクトはと言うと、彼らは目にも留まらぬ速さで戦闘を行っていた。

 猛スピードでパンチやキックを繰り出し、それを互いに丁度良く避け流していく。

 

 コールヴォが跳んで連続で飛び蹴りを食らわせて来る。胸部に襲う絶え間無い痛みに耐えていたリベードンアクトは、彼女の左脚を右手で掴んで振り落とす。

 右手でパンチを食らわせようとしたが避けられる。それでも立ち上がった彼女に左足をお見舞いした。

 結果として彼女はコーゾのところへと吹き飛ばされてしまう。

 

「ッ……!」

 

 一列に並ぶリベードンアクトにデイナ、ルーナ。

 立ち上がるコーゾとコールヴォの様子を見て、彼らは何処か勝利を確信していた。

 と言うより、慢心していた、という表現の方が適切であろうか。

 

「一気に決めるぞ……!」

 

 

 

 

 

 だが、

 

「そこまでだ」

 

 突如として声をかけたのは、伊福部であった。

 

「何? 今結構良いところなのに」

「まぁ待ってよ。ここからもっと面白くなるから」

 

 デイナに対する答えの意味が解らず、頭の中で疑問符が浮かんでいる彼らは、完全に油断をしていた。

 その刹那、

 

「「ガッ……!」」

 

 リベードンアクトが突如として変身を解除されて、春樹と碧の状態に戻った二人が吹き飛ばされて転がった。

 一体何が起こったのかを目を凝らして見ると、二人のドライバーに装填されていた筈のクラックボックスが無く、今はコールヴォが握っていた。

 

「まぁ、あくまで()()()()()()面白いって話だけれどね」

 

 クラックボックスを左手で受け取った伊福部はポケットから何かを取り出した。

 それは、春樹と碧が使っているのと同じトランスフォンであった。

 呆然とその様を見る戦士たちに、伊福部は語り始めた。

 

「太古の時代から、動物は権力や力の象徴だった。貴族は動物を飼い、その力を見せつける。その名残が、君たちの使っているベクターカートリッジだ」

 

 デイナとルーナの方を、左手の人差し指で差す。

 

「──だが、今の時代ではそんなものなど何の意味も無い。現代で圧倒的な力を表せるのは、兵器だ。君たちの使っているようなね」

 

 けれども目線は春樹と碧の方を向いていた。

 そんな彼に対し、真矢は質問を投げかける。

 

「貴方……一体何が目的なの……?」

 

 

 

「──究極の生物になることさ。フォルクローには自分や何かのエネルギーを利用して新しいものを精製する力を持っている。それを利用してこの世界を破壊し、そのエネルギーを利用して新人類もフォルクローも超えた究極の生命体になるんだ……!」

 

 満面の笑みを浮かべる伊福部。

 多くの戦いを繰り広げてきたデイナたちにとっても、類稀なるタイプの人間であったがために、何とも言えない恐怖を感じてしまう。

 

 目の前の彼らを無視し、伊福部はクラックボックスにトランスフォンをかざした。

 

『CONNECTING US』

 

 腹部には先程まで春樹と碧が付けていたのと同じ、クラックボックスが付いたドライバーが装着される。

 

 同時に彼は、銃弾や戦闘機が並べられた絵と「KAMEN RIDER KIRASO」の文字があるカードを取り出し、それをトランスフォンのスロットに挿し込んだ。

 

『"KIRASO" LOADING』

 

 電源ボタンを押すと、イーゴリ・ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」の一節「ロシアの踊り」をサンプリングした音源が流れ始めるのと同時に、上空から現れたゲートから小さな黒い戦車が大量に飛び出し、伊福部の周りを走行する。

 

 そして伊福部はニヤリと笑みを浮かべながら、言葉を放った。

 自らの野望を達成するための言葉を──。

 

 

 

「変身!」

 

 端末をドライバーに装填した。

 

『Here we go!』

 

 次の瞬間、伊福部の身体が黒い素体へと変わる。

 そこに戦車たちが分解して出来た鎧が全身に装着された。

 

 全身に身に纏っている迷彩柄の鎧。

 両腕と両脚に付いた魚の鰭のようなカッター。

 深緑の楕円形の複眼がある頭部には透明な黒い仮面が付けられ、額か ら3本の角が伸びている。

 

『Snatch away, Manipulate, Influence! This KAMEN RIDER is cracked! You are mine.』

 

 仮面ライダーキラーソへと変身を遂げた伊福部に、デイナたちは驚愕する。

 これで戦わなくてはならない敵は、3人になったわけだ。

 

「それじゃあ。仕上げといこうか」

 

 するとキラーソは1枚のカードを取り出した。

 荒廃した街の様子が描かれ、下部には「DESTOROY THE WORLD」と白く印字されている。

 そのカードを、ドライバーに装填された端末の裏側にかざした。

 

『DESTROY THE WORLD』

 

 その時だった。

 いきなり目の前に広がる景色の雰囲気が変わったような気がした。

 

 この違和感は何なのだろうかとふと上を見上げると、この世界にある巨大な屋根──ヒュージルーフに赤く「01:23:59:45」と大きく書かれていた。

 

「何だ……あれ……?」

「このカードには世界を崩壊させる力を持っているんだ。僕を倒さなければ、後48時間でこの世界は完全に崩壊する……! これで僕は、究極の生命体になることが出来るんだ……!」

 

 衝撃的なことを言われたとしても、意外とデイナたちは冷静であった。

 要はこの男を倒せば事態は終息する。とすれば話は簡単だ。

 全員が臨戦態勢に入った──

 

 が、

 

「じゃあ。邪魔だから君たちには消えてもらおうかな」

 

 するとキラーソが左手を前に出すと、突如として展開される。見える幾つかの穴から、大量の小さなミサイルが飛び出して来た。一発が発射されたとしても同じ穴からすぐに新しいものが放たれる。

 

 ──これは不味い……!

 危機を察知したデイナは両翼を伸ばし、ルーナたちを守ろうとする。

 

 けれどもミサイルはその翼を乗り越えて攻撃を仕掛け、盾となるデイナだけではなく、その後ろにいるルーナや春樹に碧を攻撃した。

 

「「「「グァァァァァッ!」」」」

 

 強制的に変身を解除されて、体勢を崩し立膝の状態になる仁と亜矢。

 ふと後ろを見ると、爆発や爆風にやられて深傷を負ってしまった春樹と碧が倒れていた。服は焼け焦げ、身体から血が出ている。

 

「春樹さん!」

「碧さん!」

 

 だが二人が返事に応えることは無い。

 その様子を見たキラーソたちはほくそ笑んで姿を消した。




【参考】
東京の過去の天気 2022年5月 - goo天気
https://weather.goo.ne.jp/past/662/20220500/
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