数ヶ月後、幻想郷支部は久々の長期休暇に入っていた。
異変もなく、結界は安定し、空には穏やかな雲が流れている。
縁側に差し込む陽光と、遠くで鳴く鳥の声が、平和そのものを物語っていた。
イズモ「やっぱ幻想郷は平和が一番だねー」
幻想郷支部を訪れていたハルヒとレムは、のんびりとした午後を過ごしていた。
レムが丁寧に淹れたお茶の香りが漂い、三人は卓を囲んで腰を下ろしている。
その向かいには紫も座り、四人はトランプに興じていた。
遊んでいるのはババ抜きだった。
イズモはカードを引くたびに指先が強張り、視線が泳いでいた。
ジョーカーを引かないよう必死になればなるほど、その緊張は顔に出てしまう。
紫はその様子を横目で見て、口元をわずかに歪めていた。
結果は明白だった。
イズモは真っ先にババを掴み、最下位が確定する。
紫(絶対にジョーカーを引かせてあげるわ)
その後も三人はゲームを続けた。
やがてレムの手札が尽き、静かに勝ち抜けが決まる。
緊張が一段落し、卓上には雑談混じりの空気が流れ始めた。
紫(さて、ここからが本番ね)
その瞬間だった。
レムが紫の手札から一枚引き抜く。
そこにあったのは、紛れもなくジョーカーだった。
レム「よしっ。これで勝ったも同然ですね」
レムとイズモは顔を見合わせ、ほっと息をつく。
だが、その安堵は長く続かなかった。
紫は静かに笑った。
その笑みには、すべてを見通している余裕があった。
彼女は自分の手札をゆっくりと卓上に並べる。
そこに並んだカードは、すべてが揃っていた。
レムとイズモの表情から血の気が引く。
勝ったと思った瞬間に突き落とされた落差が、二人の胸を強く打った。
レム「……やっぱり、ババ抜きなんてつまらない遊びです」
イズモ「もうやめだ、やめ」
紫が最後までババを持っていたと知った途端、二人は一気に興味を失った。
そのまま部屋を後にし、それぞれ自室へと引き上げていく。
二人の背中が消えたのを確認すると、紫はレムに歩み寄った。
そして、耳元で囁く。
紫「私にイカサマをさせたのが悪いのよ?」
その後、紫は誰にも見られぬよう、こっそりとカードを入れ替えた。
実際には、レムが持っていた札はすべてジョーカーだった。
だが紫は途中で細工を施し、最後まで不正が露見しない形でゲームを終わらせていた。
勝敗すら演出の一部だったのだ。
紫「やっぱり幻想郷は面白いわ」
こうして幻想郷支部の面々は、何事もない平穏な日々を過ごしていた。
ある日、ハルヒとレムは幻想郷の大図書館を訪れていた。
天井まで積み上げられた書架には、魔法、歴史、異界理論まで、あらゆる書物が収められている。
二人はその中でも魔法関連の書籍を手に取っていた。
レムは最近読んだ小説の影響で、魔法を使いたい衝動を抑えきれずにいた。
知識を得るたび、胸の奥が静かに熱を帯びていく。
一方のハルヒは別の棚に座り込み、恋愛小説を読んでいる。
ハルヒ「私も少しくらい読もうかな」
二人は本を交換し、互いの好みを知ることになる。
レムは落ち着いた大人向けの恋愛小説を好み、ハルヒは可愛らしい物語に惹かれていた。
だが、それ以上に二人を結びつけたのは、魔法への情熱だった。
自分の魔法で何かを創り出すこと。
試行錯誤し、形にしていく過程そのものが、二人を高揚させていた。
レム「この魔法……試してみたいですね」
ハルヒ「私もやってみようかしら」
二人は同時に詠唱を始めた。
掌に浮かび上がる小さな魔法陣。
淡い光が重なり合い、空気が震える。
成功だと理解した瞬間、二人は思わず声を上げた。
互いの手を見せ合い、興奮を抑えきれない。
その様子を、少し離れた書架の影から紫が眺めていた。
紫「ふふっ、楽しそうね」
研究は続き、やがて一つの結論に辿り着く。
それは、二人の魔力波長を合わせる合成魔法だった。
協力することで、単独では不可能な出力を得られる。
試しに自身に作用させると、身体が軽くなり、感覚が研ぎ澄まされる。
見た目すら若返り、身体能力も飛躍的に向上していた。
レム「凄いですね、これは」
ハルヒ「最高だね!」
数日後。
エヴァパイロットたちと、現在幹部となっているミサトとリツコが、新支部の視察に訪れていた。
幻想郷支部の幹部たちとも顔を合わせ、挨拶が交わされる。
ミサト「こんにちは。久しぶりだね」
レム「お久しぶりです。今日はどのようなご用件で?」
紫「また新たな敵かしら?」
緊張が走る。
これまでの敵は外の世界からの存在だった。
だが今回は違う可能性があった。
ミサト「いいえ。今回は協力体制を整えるために来たの」
外の世界では、新たな敵が動き始めていた。
妖怪や神々を洗脳し、操る存在。
さらに能力を増幅させる怪しい魔具が出回っているという。
ハルヒ「つまり、協力すれば幻想郷を守りやすくなるってことね」
レム「理解しました」
話し合いは前向きに進み、やがて次の段階へと移る。
ある日、幻想郷支部の面々は、指定された場所に集められていた。
空間が歪み、裂け目が走る。
そこから、見知らぬ少女たちが姿を現した。
「初めまして。私たちは皆さんを案内する者です」
紫「まずは自己紹介をお願いするわ」
アリス「私の名前はアリス!」
パチュリー「パチュリーですわ」
小悪魔「私は小悪魔といいます!」
彼女たちは異世界から来た存在だった。
歪みの空間を通じ、この世界へ辿り着いたのだという。
彼女たちの世界では、妖怪が封印される異変が起きていた。
パチュリー「どうか、私たちと一緒に戦ってください」
紫「ええ。協力するわ」
ハルヒ「私たちはそのためにここにいるのよ」
レム「任せてください」
握手が交わされ、決意が共有される。
最後に、何気なく年齢を尋ねると、答えは意外なものだった。
アリス「私たちは十六歳よ」
パチュリー「私は十二歳ですわ」
幼さと覚悟のギャップに、ハルヒと紫は静かに息を呑んだ。
ハルヒ「改めて、よろしくね」
こうして幻想郷支部では、本格的な会議と調査が始まった。
新たな異変に備えるために。