境界の外から来た者   作:最上 イズモ

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10話 休暇

数ヶ月後、幻想郷支部は久々の長期休暇に入っていた。

異変もなく、結界は安定し、空には穏やかな雲が流れている。

縁側に差し込む陽光と、遠くで鳴く鳥の声が、平和そのものを物語っていた。

 

イズモ「やっぱ幻想郷は平和が一番だねー」

 

幻想郷支部を訪れていたハルヒとレムは、のんびりとした午後を過ごしていた。

レムが丁寧に淹れたお茶の香りが漂い、三人は卓を囲んで腰を下ろしている。

その向かいには紫も座り、四人はトランプに興じていた。

遊んでいるのはババ抜きだった。

 

イズモはカードを引くたびに指先が強張り、視線が泳いでいた。

ジョーカーを引かないよう必死になればなるほど、その緊張は顔に出てしまう。

紫はその様子を横目で見て、口元をわずかに歪めていた。

 

結果は明白だった。

イズモは真っ先にババを掴み、最下位が確定する。

 

紫(絶対にジョーカーを引かせてあげるわ)

 

その後も三人はゲームを続けた。

やがてレムの手札が尽き、静かに勝ち抜けが決まる。

緊張が一段落し、卓上には雑談混じりの空気が流れ始めた。

 

紫(さて、ここからが本番ね)

 

その瞬間だった。

レムが紫の手札から一枚引き抜く。

そこにあったのは、紛れもなくジョーカーだった。

 

レム「よしっ。これで勝ったも同然ですね」

 

レムとイズモは顔を見合わせ、ほっと息をつく。

だが、その安堵は長く続かなかった。

 

紫は静かに笑った。

その笑みには、すべてを見通している余裕があった。

彼女は自分の手札をゆっくりと卓上に並べる。

 

そこに並んだカードは、すべてが揃っていた。

 

レムとイズモの表情から血の気が引く。

勝ったと思った瞬間に突き落とされた落差が、二人の胸を強く打った。

 

レム「……やっぱり、ババ抜きなんてつまらない遊びです」

イズモ「もうやめだ、やめ」

 

紫が最後までババを持っていたと知った途端、二人は一気に興味を失った。

そのまま部屋を後にし、それぞれ自室へと引き上げていく。

 

二人の背中が消えたのを確認すると、紫はレムに歩み寄った。

そして、耳元で囁く。

 

紫「私にイカサマをさせたのが悪いのよ?」

 

その後、紫は誰にも見られぬよう、こっそりとカードを入れ替えた。

実際には、レムが持っていた札はすべてジョーカーだった。

だが紫は途中で細工を施し、最後まで不正が露見しない形でゲームを終わらせていた。

勝敗すら演出の一部だったのだ。

 

紫「やっぱり幻想郷は面白いわ」

 

こうして幻想郷支部の面々は、何事もない平穏な日々を過ごしていた。

 

ある日、ハルヒとレムは幻想郷の大図書館を訪れていた。

天井まで積み上げられた書架には、魔法、歴史、異界理論まで、あらゆる書物が収められている。

二人はその中でも魔法関連の書籍を手に取っていた。

 

レムは最近読んだ小説の影響で、魔法を使いたい衝動を抑えきれずにいた。

知識を得るたび、胸の奥が静かに熱を帯びていく。

一方のハルヒは別の棚に座り込み、恋愛小説を読んでいる。

 

ハルヒ「私も少しくらい読もうかな」

 

二人は本を交換し、互いの好みを知ることになる。

レムは落ち着いた大人向けの恋愛小説を好み、ハルヒは可愛らしい物語に惹かれていた。

 

だが、それ以上に二人を結びつけたのは、魔法への情熱だった。

自分の魔法で何かを創り出すこと。

試行錯誤し、形にしていく過程そのものが、二人を高揚させていた。

 

レム「この魔法……試してみたいですね」

ハルヒ「私もやってみようかしら」

 

二人は同時に詠唱を始めた。

掌に浮かび上がる小さな魔法陣。

淡い光が重なり合い、空気が震える。

 

成功だと理解した瞬間、二人は思わず声を上げた。

互いの手を見せ合い、興奮を抑えきれない。

 

その様子を、少し離れた書架の影から紫が眺めていた。

 

紫「ふふっ、楽しそうね」

 

研究は続き、やがて一つの結論に辿り着く。

それは、二人の魔力波長を合わせる合成魔法だった。

協力することで、単独では不可能な出力を得られる。

 

試しに自身に作用させると、身体が軽くなり、感覚が研ぎ澄まされる。

見た目すら若返り、身体能力も飛躍的に向上していた。

 

レム「凄いですね、これは」

ハルヒ「最高だね!」

 

数日後。

エヴァパイロットたちと、現在幹部となっているミサトとリツコが、新支部の視察に訪れていた。

幻想郷支部の幹部たちとも顔を合わせ、挨拶が交わされる。

 

ミサト「こんにちは。久しぶりだね」

レム「お久しぶりです。今日はどのようなご用件で?」

紫「また新たな敵かしら?」

 

緊張が走る。

これまでの敵は外の世界からの存在だった。

だが今回は違う可能性があった。

 

ミサト「いいえ。今回は協力体制を整えるために来たの」

 

外の世界では、新たな敵が動き始めていた。

妖怪や神々を洗脳し、操る存在。

さらに能力を増幅させる怪しい魔具が出回っているという。

 

ハルヒ「つまり、協力すれば幻想郷を守りやすくなるってことね」

レム「理解しました」

 

話し合いは前向きに進み、やがて次の段階へと移る。

 

ある日、幻想郷支部の面々は、指定された場所に集められていた。

空間が歪み、裂け目が走る。

そこから、見知らぬ少女たちが姿を現した。

 

「初めまして。私たちは皆さんを案内する者です」

 

紫「まずは自己紹介をお願いするわ」

 

アリス「私の名前はアリス!」

パチュリー「パチュリーですわ」

小悪魔「私は小悪魔といいます!」

 

彼女たちは異世界から来た存在だった。

歪みの空間を通じ、この世界へ辿り着いたのだという。

彼女たちの世界では、妖怪が封印される異変が起きていた。

 

パチュリー「どうか、私たちと一緒に戦ってください」

 

紫「ええ。協力するわ」

ハルヒ「私たちはそのためにここにいるのよ」

レム「任せてください」

 

握手が交わされ、決意が共有される。

 

最後に、何気なく年齢を尋ねると、答えは意外なものだった。

 

アリス「私たちは十六歳よ」

パチュリー「私は十二歳ですわ」

 

幼さと覚悟のギャップに、ハルヒと紫は静かに息を呑んだ。

 

ハルヒ「改めて、よろしくね」

 

こうして幻想郷支部では、本格的な会議と調査が始まった。

新たな異変に備えるために。

 

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