境界の外から来た者   作:最上 イズモ

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11話 最大の敵

「どうかしら、現状は?」

紫は『歪みの空間』に設えられた会議場で、静かに問いかけた。

 

ハルヒ「ええ、だいたい把握できたわ」

レム「こちらもです」

 

二人は異変解決に向けた情報を整理し、頭の中でいくつもの可能性を組み立てていた。

会議は一旦区切りとなり、幻想郷支部のメンバーはそれぞれの拠点へ戻っていく。

静まり返った空間で、紫は一人考え込む。

 

この選択は本当に正しいのか。

幻想郷全体を巻き込む覚悟は、すでにできているのか。

 

翌日。

幻想郷支部の主要メンバーは再び『歪みの空間』に集結していた。

空間は不安定に揺らぎ、空気そのものが緊張を孕んでいる。

 

紫「じゃあ、異変解決に向けた具体策を詰めましょう」

 

ハルヒ「まず、私たちは何から手を付けるべきかしら?」

レム「優先すべきは、妖怪や神々への洗脳解除ですね」

 

紫は顎に手を当て、少しだけ視線を伏せる。

 

紫「そうね……でも、どこか引っかかるのよ」

 

ハルヒはその違和感に頷いた。

 

紫「本来の目的は『歪みの空間』の破壊よ。

でも、幻想郷支部の総力をもってしても完全破壊はできなかった」

 

レム「……だから霊夢さん、ですか?」

 

レムははっとしたように顔を上げる。

 

レム「博麗神社なら、何か手がかりがあるかもしれません」

ハルヒ「確かに。異変といえば、まずはあそこよね」

 

紫は小さく笑みを浮かべた。

 

紫「ええ。博麗神社に向かう価値はあるわ」

 

だが、すぐに表情を引き締める。

 

紫「ただし、その前にやるべきことがある」

 

空気が一段、重くなる。

 

紫「これから私たちがやろうとしていることは、幻想郷全体に危険を及ぼす可能性があるわ。

だからまず、住民の避難が最優先よ」

 

ハルヒ「妖怪たちが暴走したら、被害は避けられないわね。

でも、幻想郷の全住民をどうやって?」

 

紫は即答する。

 

紫「外の世界へ避難させるわ」

 

その瞬間、イズモが口を挟んだ。

 

イズモ「緊急避難マニュアルは整ってる。

避難したくない人向けに、環境を九十九パーセント再現した専用エリアも急ピッチで用意してる」

 

ハルヒ「……いつの間にそんなものを?」

イズモ「異世界に関わる以上、技術水準の調査は必須だからね。事前に研究してた」

 

レムと紫は思わず顔を見合わせる。

 

用意周到という言葉が、これほど似合う人物もいない。

 

だが問題は別にあった。

幻想郷の住民が、果たして素直に避難に応じるのか。

 

その疑問に答えるかのように、空がざわめいた。

 

妖怪の山から、大天狗が姿を現す。

 

大天狗「緊急事態です。

幻想郷各地で異変が発生しています。

この『歪みの空間』内にも、妖怪が大量に出現しています」

 

イズモ「ピースギア内部の内乱に、外部組織が関与している可能性が高い。

その戦闘に幻想郷が巻き込まれる恐れがあるため、避難を計画していました」

 

大天狗は即座に頷いた。

 

大天狗「ならば私も同行させてください。

妖怪の山も幻想郷の一部です」

 

紫「もちろんよ。

では、全住民を安全な場所へ避難させましょう。

『歪みの空間』の処理は、その後で」

 

大天狗は深く一礼し、空へと飛び立った。

 

ほどなくして、幻想郷の住民が一か所に集められる。

 

紫「これで全員かしら?」

大天狗「ええ……間違いありません」

 

不満げな声が漏れる。

 

妖怪「避難生活なんて、退屈で敵わんぞ……」

 

イズモ「大丈夫。

環境は幻想郷とほぼ同じにしてある」

 

大天狗「専用エリア、食料、生活物資はすべて揃えています。

安心してください」

 

ハルヒ「それなら……大丈夫そうね」

 

準備は整った。

紫は『歪みの空間』消滅作戦のメンバーを選定する。

 

イズモ、レム、紫。

紫の護衛として魔理沙。

妖怪の山から大天狗と烏天狗。

八雲藍と橙。

さらに、鬼の四天王や酒呑童子。

 

幻想郷屈指の実力者が揃っていた。

 

紫はスキマを開きながら言う。

 

紫「それじゃあ、行きましょうか」

 

『歪みの空間』消滅作戦が始動した。

スキマの中を進みながら、紫は状況を説明する。

 

一度は洗脳から解放された妖怪たち。

だが、一部が再び暴走し、リーダー格となって空間を支配している。

そいつを抑えなければ、異変は終わらない。

 

やがて、一行は黒い渦の前に辿り着く。

中からは、禍々しい気配が溢れ出していた。

 

紫「覚悟はいい?」

 

全員が無言で頷く。

 

次の瞬間、彼らは渦の中へと飛び込んだ。

 

『歪みの空間』内部。

景色は幻想郷と酷似している。

山も森も、見慣れた風景のはずだった。

 

だが、そこにいる妖怪たちの目は虚ろだった。

正気を失い、操られている。

 

紫「やはり……洗脳されているわね」

レム「ええ。

しかも相当強引です。意志を完全に捻じ曲げています」

 

ハルヒ「なら話は早いわ。

拠点を叩きに行くわよ」

 

紫は首を横に振る。

 

紫「その前に、援軍が必要よ。

私たちだけじゃ、この空間は消せない」

 

ハルヒは納得する。

 

レム「では、幻想郷支部の全員に連絡を」

 

紫「ええ。始めましょう」

 

スキマが開き、連絡が飛ばされていく。

その間も他のメンバーは妖怪たちを抑え続けていた。

 

戦いは、ここからが本番だった。

 

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