大天狗「避難してくる住民の皆様の誘導をお願いします」
烏天狗たち「わかりました!」
一斉に翼音が響き、烏天狗たちは各地へ散っていった。
大天狗はその背を見送り、一瞬だけ不安を滲ませるが、すぐに表情を引き締める。
ピースギア職員と天狗たちの連携により、住民は次々と仮設幻想郷へと送り出されていった。
やがて、妖怪の山と人里の中間地点の上空にスキマが開く。
そこから大天狗と職員たちが姿を現した。
烏天狗「ふぅ……なんとか全員、避難させることができましたね……」
大天狗「ああ。
これでひとまずは安心だ」
二人は、静かに閉じていくスキマを見つめていた。
その奥に残された異変の気配を感じ取りながら。
一方その頃。
レム、ハルヒ、イズモの側では次の手が打たれようとしていた。
イズモ「避難は完了した。
これよりピースギアの現存兵力を、今回の戦闘に全面投入する」
レム・紫「了解」
残存兵力は妖怪の山と人里へと振り分けられ、同時に幻想郷支部の全メンバーへ緊急招集がかけられる。
ハルヒ「とりあえず、他の幻想郷メンバーに連絡を取るわ!」
レム「ええ、お願いします」
二人は端末を取り出し、次々と通信を繋いでいった。
八雲家では、阿求が落ち着きを失っていた。
阿求「幻想郷に異変が起きているって……避難しないと……」
そこへ、スキマが開き紫が現れる。
紫「安心して。
あなたの安全は、私たちが必ず守るわ」
その声に、周囲に集まり始めていた住民たちも、わずかに表情を緩めた。
妖怪の山では、住民たちが入口を固め、『歪みの空間』消滅作戦の支援に備えていた。
山頂の天狗の集落。
大天狗と烏天狗たちは輪になって状況を確認している。
烏天狗「幻想郷支部の援軍が来るそうです。
しばらくは任せて問題ないかと……」
別の烏天狗「ですが、相手は妖怪ですよ?
本当に大丈夫でしょうか……」
大天狗「……今は信じるしかあるまい」
幻想郷の各地で、住民たちの避難が続いていた。
その頃、とある場所では鬼たちの宴が開かれていた。
酒の香りと笑い声が響く中、酒呑童子が立ち上がる。
酒呑童子「おい、みんな聞いてくれ!」
場が静まり、視線が集まる。
酒呑童子「あのお方の話だ。
外の世界で『異変』が起きているらしい。
その影響で、俺たち妖怪もおかしくなっているそうだ」
鬼たち「なんだと!?」
「本当なのか?」
酒呑童子「ああ、間違いない。
だから今は力を蓄えるべき時だ」
納得したように頷く鬼もいれば、不安を隠せない者もいる。
鬼「その異変ってのは、結局なんなんだ?」
酒呑童子「詳しくはわからん。
だが、外の世界の人間たちが関係しているらしい」
鬼「なら、その人間を叩けばいいんじゃねえか?」
ざわめきが広がる。
酒呑童子「……だが、勝てる保証はない」
場は静まり返る。
別の鬼「妖怪の賢者や博麗の巫女と協力すべきじゃないか?」
酒呑童子「あいつらは信用できん。
なぜわざわざ奴らなんだ?」
鬼たち「そうだ」「信用ならねえ」
酒呑童子「それにだ。
外の世界には『科学』って力があるらしい。
それは、俺たちを倒せるほどの力だそうだ」
一瞬で、鬼たちは言葉を失った。
その頃、レムたちの端末に通信が入る。
紫からの緊急招集だった。
イズモ「幻想郷各地に連絡が回った。
これから緊急作戦会議だ」
イズモは各所に情報を伝達しながら動き出す。
レムたちは妖怪の山と人里の中間にある広場へ向かっていた。
そこで、大天狗たちと合流する。
大天狗「皆の者、よく集まってくれたな」
避難してきた住民たちは、不安と期待の入り混じった表情で耳を傾けていた。
紫はその様子を見渡し、静かに考える。
『歪みの空間』を消すには、幻想郷支部の総力が必要。
それ以外の選択肢はない。
紫はスキマを開く。
幻想郷支部の全メンバーを呼び寄せるために。
その時、イズモが低い声で問いかけた。
イズモ「全勢力を投入しても、勝てる保証はない。
こっちが持たない可能性もある。
それでも、やるか?」
紫は迷いなく頷いた。
紫「ええ。
たとえ負けるとしても、可能性があるなら賭けるべきよ」
イズモは一瞬黙り、そして微笑む。
イズモ「……そうだね。
やれるだけやろう」
二人は同時にスキマを開いた。
幻想郷支部、総力戦の幕が上がろうとしていた。