境界の外から来た者   作:最上 イズモ

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12話 避難

大天狗「避難してくる住民の皆様の誘導をお願いします」

 

烏天狗たち「わかりました!」

 

一斉に翼音が響き、烏天狗たちは各地へ散っていった。

大天狗はその背を見送り、一瞬だけ不安を滲ませるが、すぐに表情を引き締める。

ピースギア職員と天狗たちの連携により、住民は次々と仮設幻想郷へと送り出されていった。

 

やがて、妖怪の山と人里の中間地点の上空にスキマが開く。

そこから大天狗と職員たちが姿を現した。

 

烏天狗「ふぅ……なんとか全員、避難させることができましたね……」

 

大天狗「ああ。

これでひとまずは安心だ」

 

二人は、静かに閉じていくスキマを見つめていた。

その奥に残された異変の気配を感じ取りながら。

 

一方その頃。

レム、ハルヒ、イズモの側では次の手が打たれようとしていた。

 

イズモ「避難は完了した。

これよりピースギアの現存兵力を、今回の戦闘に全面投入する」

 

レム・紫「了解」

 

残存兵力は妖怪の山と人里へと振り分けられ、同時に幻想郷支部の全メンバーへ緊急招集がかけられる。

 

ハルヒ「とりあえず、他の幻想郷メンバーに連絡を取るわ!」

レム「ええ、お願いします」

 

二人は端末を取り出し、次々と通信を繋いでいった。

 

八雲家では、阿求が落ち着きを失っていた。

 

阿求「幻想郷に異変が起きているって……避難しないと……」

 

そこへ、スキマが開き紫が現れる。

 

紫「安心して。

あなたの安全は、私たちが必ず守るわ」

 

その声に、周囲に集まり始めていた住民たちも、わずかに表情を緩めた。

 

妖怪の山では、住民たちが入口を固め、『歪みの空間』消滅作戦の支援に備えていた。

 

山頂の天狗の集落。

大天狗と烏天狗たちは輪になって状況を確認している。

 

烏天狗「幻想郷支部の援軍が来るそうです。

しばらくは任せて問題ないかと……」

 

別の烏天狗「ですが、相手は妖怪ですよ?

本当に大丈夫でしょうか……」

 

大天狗「……今は信じるしかあるまい」

 

幻想郷の各地で、住民たちの避難が続いていた。

 

その頃、とある場所では鬼たちの宴が開かれていた。

酒の香りと笑い声が響く中、酒呑童子が立ち上がる。

 

酒呑童子「おい、みんな聞いてくれ!」

 

場が静まり、視線が集まる。

 

酒呑童子「あのお方の話だ。

外の世界で『異変』が起きているらしい。

その影響で、俺たち妖怪もおかしくなっているそうだ」

 

鬼たち「なんだと!?」

「本当なのか?」

 

酒呑童子「ああ、間違いない。

だから今は力を蓄えるべき時だ」

 

納得したように頷く鬼もいれば、不安を隠せない者もいる。

 

鬼「その異変ってのは、結局なんなんだ?」

 

酒呑童子「詳しくはわからん。

だが、外の世界の人間たちが関係しているらしい」

 

鬼「なら、その人間を叩けばいいんじゃねえか?」

 

ざわめきが広がる。

 

酒呑童子「……だが、勝てる保証はない」

 

場は静まり返る。

 

別の鬼「妖怪の賢者や博麗の巫女と協力すべきじゃないか?」

 

酒呑童子「あいつらは信用できん。

なぜわざわざ奴らなんだ?」

 

鬼たち「そうだ」「信用ならねえ」

 

酒呑童子「それにだ。

外の世界には『科学』って力があるらしい。

それは、俺たちを倒せるほどの力だそうだ」

 

一瞬で、鬼たちは言葉を失った。

 

その頃、レムたちの端末に通信が入る。

紫からの緊急招集だった。

 

イズモ「幻想郷各地に連絡が回った。

これから緊急作戦会議だ」

 

イズモは各所に情報を伝達しながら動き出す。

 

レムたちは妖怪の山と人里の中間にある広場へ向かっていた。

そこで、大天狗たちと合流する。

 

大天狗「皆の者、よく集まってくれたな」

 

避難してきた住民たちは、不安と期待の入り混じった表情で耳を傾けていた。

 

紫はその様子を見渡し、静かに考える。

 

『歪みの空間』を消すには、幻想郷支部の総力が必要。

それ以外の選択肢はない。

 

紫はスキマを開く。

幻想郷支部の全メンバーを呼び寄せるために。

 

その時、イズモが低い声で問いかけた。

 

イズモ「全勢力を投入しても、勝てる保証はない。

こっちが持たない可能性もある。

それでも、やるか?」

 

紫は迷いなく頷いた。

 

紫「ええ。

たとえ負けるとしても、可能性があるなら賭けるべきよ」

 

イズモは一瞬黙り、そして微笑む。

 

イズモ「……そうだね。

やれるだけやろう」

 

二人は同時にスキマを開いた。

幻想郷支部、総力戦の幕が上がろうとしていた。

 

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