イズモが紫の前に立ち、低い声で問いかけた。
イズモ「今回、全勢力を上げても勝てるとは限らない相手だ。こっちが持たない可能性もある。それでもやる?」
紫は一瞬だけ視線を伏せ、小さく頷いた。
その頃、妖怪の山と人里の中間地点にある広場へ、ハルヒとレムが到着していた。
二人は紫からの緊急招集を受け、最低限の準備だけを整えて駆けつけたのだった。
広場にはすでに天狗たちやピースギア支部の関係者が集まり、張り詰めた空気が漂っている。
大天狗が一歩前に出て、場を見渡しながら声を張り上げた。
大天狗「それではこれより、緊急作戦会議を行いたいと思います!」
合図に合わせ、周囲の天狗たちが声を揃え、ざわめいていた視線が一斉に大天狗へと集まった。
大天狗「まず、諸君を集めた理由は他でもない。各地に出現している『歪みの空間』を消滅させる作戦についてだ!」
その言葉に、広場がどよめく。
大天狗は翼を広げ、さらに声を強めた。
大天狗「皆の者、落ち着け!我々は幻想郷を守るために戦わねばならんのだ!!」
一瞬の静寂の後、大天狗は続けた。
大天狗「まずは妖怪の山と人里の住民の避難を最優先とする。その後、『歪みの空間』消滅作戦を実行する!」
その方針に、多くの者が頷き、張り詰めていた表情がわずかに和らいだ。
大天狗はハルヒとレムへ視線を向ける。
大天狗「君たちはどう考える?」
レムは迷いなく答えた。
レム「私たちも同意見です」
周囲に再びざわめきが走る。
ハルヒも力強く頷いていた。
それを確認した大天狗は満足げに息を吐き、話を進めた。
大天狗「では、それぞれが遭遇した『歪みの空間』の情報を共有してもらいたい!」
ハルヒが手を挙げ、一歩前に出る。
ハルヒ「私たちが戦った場所は、どこも同じ構造だったわ。迷路みたいで、出口が分からない」
一瞬言葉を切り、レムを見る。
ハルヒ「でも、一つだけ違いがあった。それは出口の位置よ」
レムが続ける。
レム「ええ。私とハルヒがいた場所だけ、出口の位置が明確に違っていました。だから脱出できたんです」
大天狗は顎に手を当て、考え込む。
大天狗「なるほど……その出口が核になっている可能性があるわけか」
その空気を切り裂くように、イズモが口を開いた。
イズモ「多分、そんなに単純じゃない」
全員の視線が集まる中、イズモは淡々と仮説を述べる。
イズモ「今回の空間は、『歪みの空間』から派生したものだと思う。空間内にいるボス級の妖怪を倒さない限り、消えない可能性が高い」
大天狗「うむ……確かに一理ある」
イズモ「だから、まずは空間を生み出した妖怪を叩く。それに全力を注ぐべきだ」
大天狗は眉をひそめる。
大天狗「だが、各地に出現している『歪みの空間』を放置するわけにもいかん」
イズモは頷いた。
イズモ「被害の規模も分からないし、数が増えれば手に負えなくなる。それに……」
イズモ「調査の時に案内してくれた妖怪が、本当に味方かどうかも分からない」
大天狗「それも気になる点だな……」
その時、空間に裂け目が走り、紫が姿を現した。
紫「その件について、少しいいかしら」
大天狗「おお、八雲殿。一体どうした?」
紫は静かに語り始める。
紫「案内役の妖怪たちとは協力関係にあるわ。でも、彼らの話では『歪みの空間』は外の世界から来たものだそうよ」
紫「もし嘘なら、私たちは騙されている可能性もある」
大天狗は腕を組み、沈黙する。
紫「ただ、少なくとも彼らが嘘をついているようには見えなかった。だから今は、協力して消滅させるしかないと思うの」
大天狗「……うむ」
イズモ「敵の目星はついてる。なら、攻めよう」
レム「そうですね……」
ハルヒ「じゃあ、今から『歪みの空間』が出現した場所に向かいましょう!」
その一声で、各自が動き出した。
同時に、妖怪の山や人里から次々と被害報告が届き始める。
天狗たちは出撃先を協議し、紫は少し離れた場所からその様子を見つめていた。
背後から声がかかる。
阿求「紫さん、これは一体何が起きているんですか?」
紫は振り返り、簡潔に説明した。
紫「外の世界から来た存在が、『歪みの空間』を生み出しているらしいの」
阿求は息を呑む。
阿求「……それで、これからどうするのですか?」
紫は一瞬迷い、それでも決意を固めた。
紫「私が率いるピースギアのメンバーと、妖怪の山へ向かうわ」
阿求は不安げに紫を見つめる。
紫「大丈夫よ。私たちに任せなさい」
その言葉に、阿求は小さく笑顔を浮かべた。
紫の周囲にスキマが広がり、幻想郷支部のメンバーが次々と呼び寄せられる。
そして各地の『歪みの空間』へ、それぞれが出撃していった。
ハルヒとレムが妖怪の山へ向かう途中、大天狗たちと合流し、状況を確認しながら進んでいた時だった。
突如、巨大な影が前方に立ちはだかる。
それは山の四天王の一人、天狗たちの頂点に立つ天魔だった。
レム「またお前か!」
即座に戦闘態勢に入る。
他のメンバーも一斉に構えた。
天魔は刀を抜き、冷たい視線を向ける。
天魔「今すぐ帰れ。これは我々の問題だ」
しかし、ハルヒたちは構わず攻撃を仕掛けた。
次の瞬間、鋭い斬撃が走り、全員が吹き飛ばされる。
何度挑んでも、攻撃は通らない。
圧倒的な実力差に、場の空気が重く沈む。
そこへ、イズモが前に出た。
イズモ「協力させてくれないか」
天魔は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに不敵な笑みに戻る。
天魔「いいだろう。ただし条件がある……」
その直後、妖怪の山一帯に黒い霧が立ち込めた。
次の瞬間、一斉に『歪みの空間』が発生する。
その場にいた者たちは、全員巻き込まれていった。
天魔はニヤリと笑い、言い放つ。
天魔「この『歪みの空間』、お前たちに任せてやろう……」
そう言い残し、姿を消した。
直後、ハルヒたちは天狗たちに拘束されていた。
その頃、山の麓で待機していたイズモとレムは、黒い霧に覆われた妖怪の山を見上げていた。
視界は悪く、異変の中心は見えない。
二人は先行して調査に向かい、やがて戻ってくる。
イズモ「やはり、この山だ……」
全員が険しい表情になる。
すぐに作戦会議が始まった。
一方、妖怪の山では混乱が広がっていた。
天魔は『歪みの空間』の発生を確認すると、山全体に避難命令を出す。
そして、待機していたイズモとレムの前に姿を現した。
天魔「お前たちに頼みがある!」
突然の言葉に二人は戸惑うが、話を聞くため構えを解いた。
天魔は静かに語り始めた。