イズモスピーカー「ピースギア情報管理課長二佐、最上イズモだ。
クデュックの諸君。
トップであるゼーレおよび中枢メンバーは排除された。
ここで降伏する者は、一般職員として受け入れる。
ただし反抗的な者、なお戦闘を継続する者には容赦しない。
以上だ」
イズモの声が、クデュック本部全域に響き渡る。
直後、本拠地内部は騒然となった。
ゼーレの死は確認されていたが、それ以外の情報は錯綜していた。
指示系統は崩壊し、誰が次に動くのか誰にも分からない。
恐怖と疑念が組織全体を覆い始める。
その混乱の中心で、一人の女性が前へ出た。
サマンサ「私が、これからこの組織のトップです」
静まり返る空間。
彼女は洗脳されているふりをしていただけだった。
理由は一つ。
ピースギアのメンバーを、そして幻想郷を守るため。
サマンサ「我々は降伏します」
迷いのない宣言だった。
その言葉を皮切りに、職員たちは次々と武器を下ろす。
こうして、クデュック本部は完全に制圧された。
幻想郷に、ひとまずの平和が訪れた。
その頃、レムは独房で意識を取り戻していた。
混濁していた記憶が、少しずつ繋がっていく。
すぐにピースギアへ通信を繋ぎ、状況を説明する。
レム「……お願いがあります。
私がクデュックにいたことは、秘密にしてください」
イズモたちは短い沈黙の後、了承した。
レムは深く頭を下げる。
レム「では、失礼します」
通信は切れた。
だがその時すでに、彼女の体には異変が起き始めていた。
視界が歪む。
言葉が頭の中で形を失い始める。
レム「私は……クデュックに洗脳されていました」
告白する頃には、思考も言語も、確実に削られていた。
自分が誰なのか、その輪郭すら曖昧になっていく。
それでも、彼女は必死に言葉を紡ぐ。
レム「……私の代わりに……皆さんを……守ってください……」
通信を切ろうとした瞬間、イズモが割って入る。
イズモ「君が良ければだが、記憶のバックアップを移植したAIを作れる」
イズモ「ただし、君自身がAIになるかもしれない。
ならない可能性もある」
イズモ「だから……考え直してほしい」
レムは静かに考える。
だが答えは、すでに決まっていた。
レム「私はもう、自分が誰なのかわかりません。
この体では何もできない。
記憶も曖昧で……何も残っていない。
それでも……私を救ってくれた組織と、仲間たちに恩返しがしたい。
このまま終わったら、きっと後悔します。
だから……お願いします」
通信は、そこで切れた。
イズモたちは、レムの記憶移植作業のため幻想郷へ向かう準備を進める。
一方レムは、クデュックに関する記憶をすべて失っていた。
過去も、立場も、自分の名前さえも分からない。
それでも、生きる意志だけは残っていた。
最後に残った手がかりを求め、自分の名前を調べ始める。
だが、何も分からないまま時間だけが過ぎていく。
そんなある日、クデュックの残党が幻想郷を襲撃した。
ピースギアのメンバーたちは迎撃に出る。
戦闘の気配が広がる中、レムの中に違和感が生じる。
レム「……私の名前は……レム……だった気がする……」
だが、その名に確信はなかった。
次の瞬間、急激な変化が訪れる。
失われていた記憶、言語、思考能力が一気に蘇った。
レム「……私は、レムだった……」
自分が何者かを、完全に思い出した。
同時に、体の異変も収まっていく。
レムは仲間たちと合流し、再び戦場へ立った。
数日後、幻想郷を襲う敵の数は激減する。
それは、イズモたちの徹底した制圧によるものだった。
イズモ「もう大丈夫か?」
心配そうに尋ねる。
レムは笑顔で頷いた。
やがて、ピースギアは正式に勝利を宣言する。
幻想郷には、確かな平和が戻った。
後日、幻想郷では宴が開かれた。
クデュック壊滅を祝うためのものだ。
壇上に立ったレムは、深く息を吸い、語り始める。
感謝。
記憶を失っていた日々の不安。
仲間たちと築いた絆。
そして、洗脳されていたという真実。
隠していた事実を、すべて打ち明けた。
最後に、彼女はこう締めくくった。
レム「私は、自分が誰なのかを知ることができました。
それが、何より嬉しいです」
その言葉に、会場は温かな拍手に包まれる。
以降、クデュックの残党が現れることはあっても、ピースギアの敵ではなかった。
数週間後。
イズモは司令室で異世界資料をまとめていた。
イズモ「資料整理完了。
使えるな……それにクデュックの件で各支部も動き出した」
満足そうに呟く。
その頃レムは、穏やかな日常を取り戻していた。
ある日、散歩の途中でカエデと出会う。
互いに驚きながらも事情を話し、すぐに打ち解けた。
それから二人は、よく談笑するようになる。
レムはカエデから幻想郷について多くを学んでいった。
そしてある日。
イズモは司令室に入り、短く報告する。
イズモ「異世界の新情報を入手した」