境界の外から来た者   作:最上 イズモ

2 / 18
2話 元凶

うどんげ「わかりました~」

永琳は薬棚の前で手を止め、表情をわずかに曇らせた。

永琳「あの人間についてなんだけど……」

うどんげ「なんです?」

永琳「実は彼、別の世界から来た人みたいなの」

うどんげ「へ~そうなんですね~」

永琳「驚かないの?」

うどんげ「前に一回ありましたし」

永琳「そうよね……。だから、しばらく彼の面倒を見てくれないかしら?」

うどんげ「分かりました~」

 

永遠亭の門前。

深い竹林を抜け、息を整えながらイズモは門を見上げた。

イズモ「やっと着いた」

うどんげ「お師匠さまのお薬、買ってきたウサか?」

イズモ「うん」

うどんげ「お師匠さまのお薬は高いから気をつけるウサよ」

イズモ「大丈夫。お金はあるから」

内心、日本円が通用して助かったと思いながら微笑む。

うどんげ「なら良かったウサ」

イズモ「それじゃあ俺はこれで失礼します」

うどんげ「また来るといいウサ」

イズモ「ああ。じゃあな」

 

永遠亭の中。

永琳「帰ったわよ」

輝夜「おかえりなさい」

永琳「お土産もあるのよ」

輝夜「本当?」

永琳「ええ」

てゐ「お帰りウサ」

永琳「てゐ、お客さんが来た時くらい、しっかり起きなさい」

てゐ「お兄さんウサね?わかってるウサ」

イズモ「こんにちは」

てゐ「いらっしゃいウサ」

永琳「早速だけど、彼にこの世界のことと能力のことを説明してあげて」

てゐ「了解したウサ」

イズモ「よろしく頼む」

 

てゐは座敷に腰を下ろし、いつもの軽い調子で話し始めた。

てゐ「まずこの世界のことから話すウサ」

イズモ「ああ」

てゐ「この世界は結界によって、外の世界とは隔離されているウサ」

イズモ「結界?どういうものなんだ?」

てゐ「妖怪や幽霊が外に出ないようにするための壁みたいなものウサ」

イズモ「なるほど。誰が作ってる?」

てゐ「神様が作ったって言われてるウサ。人間が簡単に入って来ないためでもあるウサよ」

イズモ「そうか……」

この世界が閉じた箱庭であることを、イズモは改めて実感した。

 

イズモ「じゃあ次は俺の能力について話す」

てゐ「どんな能力ウサ?」

イズモ「『創造の能力』だ」

てゐ「なにそれすごいウサ!」

イズモ「ありがとう。じゃあ逆に聞くけど、お前は?」

てゐ「私は『他人を幸せにする程度の能力』ウサ」

イズモ「なるほどな……」

イズモ「なら俺がお前の悩み、聞いてやるよ」

てゐ「え!?」

イズモ「何か抱えてるだろ」

てゐ「なんで分かったウサか?」

イズモ「さっきから無理して笑ってる」

てゐ「……やっぱり分かるウサか」

イズモ「話せば楽になる」

てゐ「実は……」

てゐ「私、友達がいないウサ……」

イズモ「そうだったのか」

てゐ「愛想よく振る舞ってたら、いつの間にか人気者になってただけウサ」

イズモ「本当の自分を隠すのは、辛くないか?」

てゐ「そんなことないウサ。私はこれでいいウサ」

イズモ「無理すんな」

てゐ「無理なんてしてないウサ」

イズモ「強がりだ」

てゐ「……お兄さんは分かってくれるけど、他の人は違うウサ」

イズモ「そうか」

てゐ「もう終わりウサ?」

イズモ「ああ。最後に一つだけ」

てゐ「なにウサ?」

イズモ「俺は、お前の味方だ」

てゐ「お兄さん……」

涙をこらえ、てゐは顔を伏せた。

てゐ「ありがとうお兄さん……お休みなさいウサ」

イズモ「おう。おやすみ」

 

翌朝。

てゐ「おはようございます~お兄さん」

イズモ「おはよー」

てゐ「昨日はよく眠れましたか?」

イズモ「ああ。ぐっすりだ」

てゐ「それは良かったウサ」

永琳「てゐ、目の下にクマが出来てるわよ」

てゐ「大丈夫ですよ~」

永琳「ダメよ」

てゐ「うぅ……わかりました……」

 

永琳「今日は何をする予定ですか?」

イズモ「この世界のことをもっと知りたい」

永琳「では朝食の後にしましょう」

イズモ「うどんげは?」

永琳「あの子は昼まで起きません」

イズモ「そうか」

 

朝食後。

イズモ「ごちそうさまでした」

永琳「お粗末さまでした」

 

永琳「幻想郷について説明しましょう」

イズモ「ああ」

永琳「ここは結界で隔離された土地で、妖怪や妖精など様々な種族が暮らしています」

イズモ「なるほど」

永琳「外の世界で忘れられたものが流れ着く場所でもあるのです」

イズモ「忘れられたら、ここに来る……」

永琳「そういうことです」

イズモ「じゃあ俺も、いずれ……」

永琳「可能性はありますね」

 

イズモ「この世界のルールは?」

永琳「基本は『人間は襲わない』です」

イズモ「妖怪でも?」

永琳「ええ。善悪は人間も妖怪も同じです」

 

イズモ「歴史は?」

永琳「約五百年前、異変が起きました」

イズモ「そんな昔に」

永琳「博麗の巫女が解決したと伝えられています」

イズモ「どんな人物だ?」

永琳「空を飛ぶ能力を持ち、スペルカードルールを作った初代の巫女です」

イズモ「一人だけ?」

永琳「ええ。それきりです」

イズモ「不思議だな」

 

イズモ「能力はどうやって手に入れる?」

永琳「自分の力を解放することです」

イズモ「ありがとう」

 

イズモ「最後に一つ。この世界線で異常な歪みを観測した。震源地は幻想郷だった。心当たりは?」

永琳「さぁ……私は知らないわ」

てゐ「私もわからないウサ」

イズモ「そうか……」

 

永琳「そろそろ行きますか?」

てゐ「また来て下さいウサ」

イズモ「ああ」

 

夜。

永琳「今日は楽しかったですか?」

イズモ「ああ。有意義だった」

永琳「それは良かったです」

 

翌朝。

輝夜「あら、やっと起きたのね」

妹紅「朝飯持ってきたぞー!」

イズモ「助かる」

 

食後。

輝夜「今日は何するの?」

イズモ「最近の異変を聞いて回る」

妹紅「私は竹林の見回りだ」

永琳「今日は月の民が来る日ですから」

イズモ「了解。行ってくる」

永琳「行ってらっしゃい」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。