境界の外から来た者   作:最上 イズモ

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4話 調査

人里の通りを歩き回り、数件ほど聞き込みをしたが、異変につながるような話は一つも得られなかった。

夕暮れが迫り、人々の視線には不安と警戒が混じり始めている。

 

イズモ「ダメだ。手がかりなしだ」

霊夢「仕方ないわよ。異変なんてそんな簡単にわかるものじゃないんだから」

霊夢は肩をすくめつつも、視線だけは周囲を鋭く探っている。

霊夢「魔理沙に聞いてみるかな」

イズモ「わかった」

 

少し間を置いて、イズモは霊夢の横顔を盗み見る。

巫女装束に身を包んだ彼女は、どこから見ても少女にしか見えなかった。

 

イズモ「ところで、霊夢って何歳?」

霊夢「レディの年齢を聞くのはタブーよ」

イズモ「そうか。ならいいや」

 

歩きながら、イズモはもう一つ気になっていたことを口にする。

イズモ「そういえばさっきから気になってたんだけど」

霊夢「なに?」

イズモ「そのお札はなんだ?」

 

霊夢の背中には、気づけば大量のお札が貼り付けられていた。

風に揺れるそれらから、微かな霊力が滲んでいる。

 

霊夢「これは御守りよ」

イズモ「ふーん。なんか能力でもあるのか?」

霊夢「え?う、うん。まぁそうだけど」

イズモ「そうか」

 

イズモは内心で確信する。

あれは博麗の巫女としての力、その一端なのだと。

 

イズモ「じゃあその御守の中身、見せてくれない?」

霊夢「嫌よ」

イズモ「どうしてだ?減るもんじゃないだろう」

霊夢「嫌よ。絶対に」

 

拒絶の声音に、イズモは苦笑する。

予想通りの反応だった。

 

霊夢「もうそろそろ行くわよ」

イズモ「そうだな」

霊夢「あ、あと一つだけ言いたいことがあるの」

イズモ「なんだ?」

霊夢「私を子供扱いしないでくれる?」

イズモ「だって見た目が幼いし」

霊夢「これでも二十歳だから!!」

イズモ「マジか!?見えねえ……」

霊夢「じゃあ行くわよ」

イズモ「おう」

 

二人は森を抜け、魔理沙の家へと向かった。

粗雑に建てられた家は、魔法の匂いと火薬の気配に満ちている。

 

イズモ「ここが魔理沙の家か」

霊夢「そうよ」

 

イズモがノックをすると、中から間延びした声が返ってきた。

???「はーい」

 

ドアを開けると、金髪に黒い服をまとった少女が現れた。

鋭い目つきと、自信に満ちた笑みが印象的だ。

 

???「どちら様ですか?」

イズモ「俺は最上イズモというものだ」

魔理沙「私は霧雨魔理沙だぜ」

イズモ「ちょっと聞きたいことがあってな」

魔理沙「なにを聞きたいんだ?」

イズモ「この辺で、空間が歪んでいたり、穴みたいなものはなかったか?」

魔理沙「ああ、あるぞ」

イズモ「それはどこに?」

魔理沙「ここから南の方角にある森だ」

イズモ「そうか。ありがとう」

 

家を後にし、二人は教えられた森へ急ぐ。

しかし、そこにはすでに何も残っていなかった。

 

イズモ「おかしい……ここには確かに何かがあったはずだけど」

霊夢「いないものは仕方がないわ。帰りましょう」

イズモ「そうだな」

 

二人は博麗神社へ戻った。

夜が深まり、境内には静寂が落ちている。

 

イズモは神社の一室、自分に割り当てられた部屋で考え込んでいた。

イズモ「なんだったんだろうな……」

 

その時、腕の端末から無機質な無線音声が響く。

ピースギア職員無線「さらに次元断層増大。幻想郷の半径数キロ間隔百メートルで五十」

イズモ「なんだ!?」

 

イズモは慌てて外へ飛び出した。

境内の空気が、明らかに歪んでいる。

 

イズモ「一体どうなってるんだよ!」

 

霊夢もすでに外に出ており、険しい表情で空を見上げていた。

霊夢「なにが起きてるのよ」

霊夢「とりあえず原因を探しに行くわよ」

イズモ「わかった。急ごう」

 

現場へ向かうと、そこでは幻想郷の住人たちが混乱しながら避難していた。

空間の一部が揺らぎ、今にも裂けそうになっている。

 

住民A「あ!イズモさん達が来たぞ!」

住民B「これで一安心だな」

住民C「そうですね」

 

期待と恐怖の入り混じった視線が二人に集まる。

 

イズモ「みんな無事か?」

住民D「はい!なんとか」

霊夢「あなたたち何者なの?」

住民E「私たちは人間です。ただの一般人ですよ」

霊夢「異変の原因って知ってるかしら?」

住民F「いえ。私は何も知りません」

 

霊夢は一瞬考え、決断する。

霊夢「幽々子なら何か知ってるかも」

イズモ「よし。今すぐ白玉楼へ向かおう」

 

白玉楼に到着すると、冷たい空気と死の気配が漂っていた。

イズモ「着いたな」

霊夢「ええ」

イズモ「幽々子って人はいるかな?」

霊夢「さあ?」

 

その時、背後から柔らかな声が響く。

??「あら?お客様かしら?」

 

振り返ると、幽霊のような女性がそこに立っていた。

微笑みの奥に、底知れぬ妖気が渦巻いている。

 

霊夢「幽々子じゃない」

幽々子「私は西行寺幽々子よ。よろしくね」

イズモ「俺は最上イズモと言う。よろしく」

霊夢「私は博麗霊夢よ。異変の調査に来たの」

幽々子「そうなの。じゃあお茶でも飲んで、ゆっくりしていってね」

霊夢「ありがたくもらうわ」

イズモ「ありがとうございます」

 

イズモは内心で警戒を強める。

この妖怪は、明らかに格が違う。

 

霊夢「なにぼーっとしてんのよ」

イズモ「あ、ごめん。考え事してた」

霊夢「そう。ならいいわ」

 

イズモ「今、緊急事態ですので手短に話します」

イズモ「空間の歪みについて、何か情報はありますか?」

幽々子「ああ、あれね」

イズモ「なにか知っているんですか?」

幽々子「ええ。まあ大体は予想がついているわ」

イズモ「教えてください」

 

幽々子は少し考える素振りを見せ、首を振る。

幽々子「そうねぇ」

幽々子「やっぱりダメよ」

イズモ「どうしてですか?なぜですか?」

幽々子「だって、まだ私の力じゃ倒せないもの」

 

霊夢の表情が引き締まる。

霊夢「そんなに強いの?」

幽々子「強いなんてもんじゃないわよ。私でも勝てないかも」

霊夢「それくらい強かったのね」

 

イズモは静かに頷く。

そして、覚悟を決めた声で言った。

 

イズモ「わかりました。では俺一人で行きます」

幽々子「死ぬわよ?」

イズモ「覚悟の上だ」

霊夢「イズモ、あんたバカなの!?死にたいわけ!?」

イズモ「ああ。もちろんだ」

霊夢「はぁ……もう勝手にしなさい」

イズモ「ああ。じゃあ行ってくる」

 

イズモはその場を飛び出していった。

残された二人は、彼の背中を見送る。

 

霊夢「大丈夫かしらね……」

幽々子「ふふ。彼ならきっと帰ってくると思うわ」

霊夢「そうね。あいつは簡単にくたばるタマじゃないわ」

 

イズモは空を飛び、歪みの中心へ向かっていた。

イズモ「ここが歪みが発生した場所か」

 

そこには、現実を引き裂くような空間の穴が口を開けていた。

 

イズモ「全魔法特化部隊及び魔法技術班に通達。幻想郷にて発生中の次元断層の急速な拡大を阻止するため、迅速な調査を開始。場合によっては殺害しない範囲での銃火器および非殺傷兵器の使用を許可する」

イズモ「以上だ」

 

イズモは深く息を吸う。

イズモ「行くぞ」

 

彼は躊躇なく、穴へと飛び込んだ。

 

そこは幻想郷ではなかった。

そこは何もない世界だった。

 

イズモ「なんだここは……」

イズモ「なんでこんなところに来ちまったんだろうな」

イズモ「まずは情報収集といこう」

イズモ「ピースギア本部に連絡をとろう」

イズモ「こちらイズモ。応答してくれ」

 

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