イズモは森の奥で立ち止まり、視線を巡らせた。
霧の向こうに、威圧するような赤い館が姿を現す。
イズモ「あれが紅魔館か」
紅魔館の門前まで歩み寄ると、門番の少女が立ちはだかった。
美鈴「お嬢様に何か御用ですか?」
イズモ「俺はイズモだ。ちょっと話がしたいだけだ」
美鈴「わかりました。ではこちらへどうぞ」
イズモ「ありがとう」
美鈴「いえいえ」
館内を進み、扉の前で美鈴が足を止める。
美鈴「着きました」
イズモ「そういえば今日は寝てないんだ」
美鈴「あなた初対面なのに、なぜそれを……」
イズモ「こっちの話」
美鈴は一瞬驚いた表情を浮かべる。
この人物は普通ではない。
そう直感し、考えるのをやめた。
美鈴が扉を開けた瞬間、鋭い気配が走る。
咲夜が現れ、無言でナイフを投げ放った。
イズモは反射的にかわす。
次の瞬間、世界が止まった。
咲夜は時を止め、背後に回り込み短剣を突き出す。
だが刃が届く前に、イズモの姿が消えていた。
咲夜が振り返る。
背後に立っていたのは、先ほどまで正面にいたはずのイズモだった。
咲夜は目を見開く。
再び時間を止めようとするが、身体が動かない。
異変に気づき、イズモを見る。
イズモの手には、黒い鎖のようなものが握られていた。
鎖の先は、いつの間にか咲夜の身体に絡みついている。
イズモが鎖を引く。
すると、咲夜の首元にはめられていたチョーカーが外れ、床に落ちた。
同時に、イズモの身体から力が抜け、その場に倒れ込む。
咲夜もよろめいたが、なんとか踏みとどまった。
咲夜は慌ててイズモに駆け寄り、その身体を抱え上げる。
そのまま部屋へ運び込んだ。
やがてイズモは目を覚ます。
視界に映るのは、見知らぬ天井。
イズモはゆっくり起き上がる。
イズモ「……何があったんだ?美鈴に紅魔館案内された瞬間以外の記憶がない」
立ち上がろうとしたとき、部屋の隅が目に入る。
咲夜が体育座りで俯いていた。
イズモ(なんであんなところで座ってるんだ?)
声をかけると、咲夜は顔を上げる。
そのまま、突然イズモに抱きついた。
イズモは戸惑い、離れようとするが力が抜けていてうまくいかない。
やがて抵抗をやめ、身を任せた。
そこへ別の声が響く。
レミリア「見つけたわ!」
レミリアはイズモに飛びつき、そのまま押し倒した。
すぐに離れ、泣きそうな表情で顔を覗き込む。
イズモは黙って頭を撫でる。
そこへフランとパチュリーが現れた。
フラン「お兄ちゃん大丈夫?」
イズモ「ああ」
パチュリー「ごめんなさいね」
イズモ「いや、気にしてないよ」
さらに霊夢と魔理沙が入ってくる。
霊夢「あんた本当に人間?」
イズモ「元な」
霊夢「それにしても強いのね」
イズモ「ピースギアの生体部品が高品質ってこった」
魔理沙「イズモはどんな能力を持ってるんだ?」
イズモ「俺の能力か?」
魔理沙「教えてくれよ!」
イズモ「いいぜ。俺の能力は『あらゆるものを創れる程度の能力』だ」
魔理沙「チートじゃないか」
霊夢「確かにね」
イズモ「ただ紫には負けたけどな」
魔理沙「まあ、紫は別格だろ」
イズモ「そういえば、なんで紅魔館のベッドで寝てるんだ?」
イズモ「咲夜が運んでくれたのか?」
咲夜「はい、私が運びました」
イズモ「ありがとな」
レミリア「咲夜だけじゃないわよ」
イズモ「?」
咲夜「私たち全員で運んだんですよ」
レミリア「ちなみに私は咲夜と一緒に運んだのよ」
イズモ「マジで?ありがとう」
レミリア「いえいえ」
レミリア「それより今日は泊まっていきなさい」
イズモ「いいのか?」
レミリア「もちろん」
イズモ「じゃあお言葉に甘えて」
イズモ「……で、美鈴に案内されたあと、何があったんだ?」
イズモ「俺、何をした?」
レミリア「あなた、咲夜の首輪を外したのよ」
イズモ「なるほど」
レミリア「咲夜、あなたのこと気に入ってるみたい」
イズモ「そうか」
イズモ(好かれるのは嬉しいけど)
イズモ「なんか咲夜が可哀想だな」
レミリア「あなた、咲夜の気持ちわかるの!?」
イズモ「だって首輪つけてたんだぞ」
イズモ「多分、無理やり命令されてたんだろう」
イズモ「俺は咲夜の本当の笑顔を見たい」
レミリアは言葉を失った。
レミリア「首輪を外すことはできるけど……」
レミリア「咲夜はきっと首を縦には振らないわ」
イズモ「そうか……」
イズモ「なら仕方ないな」
レミリア「そういえば明日は何するの?」
イズモ「支部で紫と協力体制と、ピースギアの戦力拡大案の会議だな」
イズモ「そのあと幻想郷の見回りに行くつもりだ」
レミリア「そうなのね」
レミリア「今日はゆっくり休みなさい」
イズモ「わかった。今日はもう寝るか」
その夜、イズモは紅魔館に泊まった。
イズモ「ふぁ〜、よく寝た」
翌朝、リビングへ向かうと咲夜が朝食を作っていた。
咲夜「おはようございます。ご飯もうすぐできますから、待っててくださいね」
イズモ「おう」
料理が並ぶ。
咲夜「どうぞ」
イズモ「おお、美味しそうだな」
咲夜「ありがとうございます」
イズモ「いただきます」
食事を終える。
イズモ「とても美味しいよ」
咲夜は照れたように微笑んだ。
咲夜「そう言っていただけて良かったです」
イズモ「ごちそうさまでした」
イズモ「今日の予定は?」
咲夜「特にありません」
イズモ「じゃあ用事ない人、全員支部に集めよう」
イズモ「レミリア、パチュリー、フラン、美鈴、小悪魔、咲夜、紫、霊夢、魔理沙、アリス、早苗、神奈子、諏訪子に伝えてくれ」
咲夜「わかりました」
数分後、イズモはVTOLで空を飛んでいた。
ピースギア幻想郷支部。
イズモ「よし、着いた」
支部長室には全員が揃っていた。
イズモ「お待たせ」
紫「あら、早かったわね」
紫「早速始めましょ」
紫「まずは幻想郷の状況についてね」
紫「今のところ平和よ」
イズモ「ならよかった」
紫「ただ最近、妖怪の動きが活発化してるわ」
イズモ「なるほどな」
イズモ「次に戦力拡大案だ」
イズモ「紫、霊夢、魔理沙には幻想郷で装備や機械人形の開発を頼みたい」
イズモ「その代わり、治安維持はピースギアが引き受ける」
イズモ「ここは第4基底世界として登録されたからな」
霊夢「わかったわ」
魔理沙「任せるんだぜ!」
紫「一ついいかしら?」
イズモ「いいよ」
紫「イズモの能力って、なんでも創れるのよね?」
イズモ「そうだよ」
紫は静かに微笑んだ。