転生したら白狐だった件   作:仮面大佐

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第17話 ジュラの夏

 梅雨が明け、夏が始まった。

 まあ、梅雨が始まった頃は、ゴブタがトレイニーさんに対して、失言をしたからな。

 蝉の鳴き声が辺りに響き渡る。

 俺たちが家に戻っていると、朱菜と真眼の2人が、ひまわりに水をあげていた。

 

朱菜「ふぅ……………。」

真眼「暑いな………………。」

 

 2人はそう話しながら水をあげる。

 そこに俺たちがやってくると、2人は俺たちに話しかける。

 

朱菜「あっ、エース様、リムル様!」

リムル「おお!ひまわりか〜。夏っぽいな。」

真眼「はい。エース様とリムル様のお話を参考にして、似た花を植えてみました。」

エース「ありがとう。」

 

 やっぱり、夏といったら、ひまわりだよな。

 まあ、ひまわりというよりは、ひまわり擬きだがな。

 風鈴の音が響く中、俺たちは麦茶を飲む。

 すると、背後から視線を感じて、振り返る。

 そこには、ひまわりがあっただけだった。

 

リムル「あ……………?」

エース「ん……………?」

 

 俺たちは再び前を向く。

 すると、ひまわり擬きが、俺たちを見てくる気がする。

 

リムル「ああっ………………。」

エース「見られている………………?」

 

 地味に怖えな。

 何で花が俺たちを見てくるんだよ。

 怖くなった俺たちは、リグルドの方へと向かう。

 街の様子を見ると、皆、暑さにまいっている感じだった。

 俺たちはというと、熱変動耐性があるので、大丈夫だが。

 リグルドの元に着くと、リグルドはヴェルドラを祀っている祠に手を合わせ拝んでいた。

 

リムル「ジュラの夏って……………あっついんだなぁ………………。」

エース「なあ、リグルド。」

リグルド「ぬぅおっ……………ぬぅ……………。」

エース「なんか、皆参ってるみたいなんだけど。」

リグルド「う〜ん……………ええ。私どもの記憶でも、こんなに暑い夏は……………アハッ、初めてです。」

 

 リグルド、体から汗が蒸気になって出てるぞ。

 すると、嫌な予感がした。

 

リムル「あっ、あれ?もしかして……………。」

エース「森を切り拓いて、街を作ったから、自然環境に変化が出たのか……………?」

 

 森が切り拓いて、街を作った事で、日光が当たりやすくなったからな。

 そうなってもおかしくはない。

 まあ、無理もないか。

 すると、リグルドが慌てて言う。

 

リグルド「い……………いえ!きっとこれは、暴風竜様が姿を消された為かと!」

エース「そ、そっか……………?」

 

 いや、それだとどの道、俺らのせいになるんだよなぁ………………。

 すると、リグルドは俺たちに視線を合わせて、小声で言う。

 

リグルド「んん……………なんせ、神様のなされた事ですから。リムル様とエース様には……………。」

エース「う〜ん………………。」

リグルド「暴風竜様ですし。セーフです、セーフ。うん。」

リムル「ヴェルドラだもんな!ヴェルドラじゃあ、しょうがないよなぁ!」

 

 リグルドはそう言う。

 でも、結局は俺らが原因なんだよな。

 俺らがヴェルドラと接触して、リムルの中に取り込んだから。

 すると、リムルが思念伝達で胃袋の中のヴェルドラに謝る。

 

リムル『ごめんな、ヴェルドラ!』

 

 リムルの謝罪は、イフリートと将棋をしていたヴェルドラに届いており、ヴェルドラは答える。

 

ヴェルドラ『構わん、構わん!細かい事は気にするな!アーハッハッハッハッ!!』

イフリート『……………そこ、指し間違えてますが。』

ヴェルドラ『…………………え?』

 

 ヴェルドラがそう答える中、イフリートの指摘に、ヴェルドラは固まる。

 その後、執務室に向かい、朱菜、紫苑、真眼と共に、事務作業を行う。

 その際、創始者に頼む。

 

エース『創始者。森林開拓の自然への影響を調べておいてくれ。』

創始者『了。』

 

 ヒートアイランド現象とかが起こって、倒れるのはあまりよろしくないしな。

 まあ、テンペストにエアコンの類は無いのだが。

 ところで、さっきから、ペンギンみたいな大王の、『環境破壊は気持ちいいぞい!』という声が聞こえてくるのは、何故だろうか。

 とはいえ、調べておく必要性はあるだろう。

 そんな中、真眼たちに話しかける。

 

リムル「なあ、お前たち。」

「「「ん……………?」」」

エース「その格好で暑くないのか?」

 

 そう。

 紫苑はスーツ、朱菜は和服、真眼はギロリさんが着ていた服を着ていた。

 暑くないのか、心配になったのだ。

 

紫苑「へっちゃらです。夏好きなんで。」

朱菜「私どもは、仮にも役職を頂いておりますので。」

真眼「いつ如何なる時も、恥ずかしくない姿で働いておりまするので。」

リムル「気にしすぎて、倒れないでね。」

エース「適度に水分補給をしてくれよ。」

紫苑「ご心配なく!どうしても暑い時は、見えない所から一枚抜きますから。今日みたいに!」

リムル「ああ?」

エース「うわぁ………………。」

「「はっ!?」」

 

 そんな事を堂々と言うんじゃないよ。

 すると、朱菜と真眼は、紫苑を部屋から追い出す。

 

紫苑「えっ、あ…………ちょっ…………えっ?」

朱菜「エース様、リムル様!ちょーっと失礼します!」

真眼「そんな事を堂々と言うんじゃない!」

紫苑「リムル様、エース様!これ、スースーして快適ですよ!」

 

 まだ言うか。

 そう思う中、紫苑は朱菜と真眼の2人に連行されていった。

 そんな中、俺はリムルに話しかける。

 

エース「そうだ。そろそろ冷えてる頃だと思うから、回収しようぜ。」

リムル「お、良いね!」

 

 俺たちはそう話して、井戸がある場所へと向かう。

 そこで、カットしたスイカを食べる。

 

リムル「はぁ〜……………美味い!」

エース「夏といったらスイカだよな!」

 

 スイカを食べ終え、井戸の方へと向かう。

 そこには、井戸水で冷やした麦茶、スイカ、トマト、胡瓜があった。

 それを回収して、ゴブタ達の方へと向かう。

 

ゴブタ「おぉ〜!リムル様、エース様!感謝感激っす!」

 

 ゴブタはそう言って、麦茶を飲む。

 

ゴブタ「んぐっんぐっんぐっ……………プハーッ!生き返るっす〜!」

リムル「うんうん!」

ゴブテ「リムル様、エース様!冷たくてすっごく美味しいです!」

エース「皆、暑い中頑張ってくれてるからな。差し入れだ。」

リムル「だろ〜?夏といえば色々あるけど、これは外せないよな!」

ゴブタ「そういうもんなんすかね〜。他には、何があるんすか?」

 

 ゴブタ達は、頑張っているからな。

 脱水症で倒れるのは避けて欲しい。

 だからこそ、差し入れを渡しに来たのだ。

 ちなみに、俺はこっそり、ソルティライチを再現できないか、挑戦している。

 ソルティライチは、結構好きだからな。

 ゴブタがそう質問すると、リムルは答える。

 

リムル「そうだな〜……………子供の頃は、よく虫捕りしたな!」

ゴブタ「えっ?スライムって、子供の時は虫捕るんすか?」

エース「…………………。」

 

 ここは異世界なんだから、そんな風に答えるなよ。

 俺はそう思いながら、肘打ちをする。

 

リムル「ああ……………う〜……………えっと……………これこれ!こういう奴が好きだったんだぁ!」

ゴブタ「えっ……………?」

エース「どうした?」

ゴブタ「ああ、いや……………こいつなら、この近くにも居るっすけど……………。」

リムル「おっ!まじ〜?ちょうど良いから、虫捕りに行こうぜ!」

ゴブタ達「うう………………。」

 

 なんか、ゴブタ達、あんまりテンションが高くないな。

 むしろ、下がっている。

 なんか嫌な予感がするのは、気のせいか?

 そんな中、森の中を歩く。

 

リムル「良いねえ、虫捕り!夏だねぇ!」

エース「楽しそうだな。」

ゴブタ「自分、あまり気乗りしないっす。」

リムル「あ?何お前、クワガタ派?」

エース「クワガタも良いよな。」

ゴブタ「いやあ…………そういう事じゃ…………あっ!」

 

 俺、リムル、ゴブタがそう話していると、虫の羽音が聞こえてくる。

 そっちを見ると、ものすごくデカいカブトムシが、こっちに向かって来ていた。

 なるほど、これが理由か。

 

ゴブゾウ達「ああっ…………!」

リムル「あっ…………!」

エース「デカっ。」

ゴブタ「ああ………………!」

 

 それを見て、俺たちはすぐに避ける。

 だが、ゴブタは逃げ切れずに、カブトムシの角にぶつかる。

 

ゴブタ「ギャアアアアアア!!」

 

 カブトムシの角にぶつかったゴブタは、そのまま星となる。

 その後、無事に生還したゴブタと共に、水鉄砲対決をやる事に。

 ゴブタ達ゴブリンライダーと俺とリムルの戦いだ。

 

ゴブタ「油断したっすねえ、リムル様、エース様。皆、準備は良いっすか?」

ゴブテ「ええ!」

ゴブゾウ「ダス!」

ゴブタ「作戦開始っす!」

 

 ゴブタ達がそう話す中、俺とリムルは、二手に分かれて、水鉄砲を撃っていく。

 ゴブテ達のデカい水鉄砲でリムルの水鉄砲が吹き飛ばされる中、俺はゴブタの水鉄砲を吹っ飛ばす。

 リムルが別の水鉄砲を撃とうとしたが、栓が抜かれていて、空砲となってしまった。

 

リムル「うっ……………!」

エース「リムル!」

ゴブタ「今っす!」

 

 俺がリムルに気を取られていると、ゴブタが俺の予備の水鉄砲を吹っ飛ばす。

 してやられたな。

 すると、ゴブタ達が俺とリムルの前に現れる。

 

ゴブタ「チャ〜ンス。弾切れに在庫切れっすねえ、リムル様、エース様。」

エース「やってくれたな……………。」

ゴブタ「全身くまなくビッチャビチャにしてやるっすよ。ビッチャビチャに……………!皆!一斉放火っす!」

 

 ゴブタ達はそう言って、水鉄砲を一斉に撃ってくる。

 俺は、それを躱す。

 だが、リムルには当たっている。

 ある程度当たると、リムルはゴブタ達に言う。

 

リムル「汚ねえぞ、お前ら!」

ゴブタ「悔しかったら、反撃してみると良いっすよ。フハハハハハ……………!やっぱり、エース様には当たらないっすね。」

エース「甘く見るな。」

 

 それくらい、躱してやるさ。

 まあ、当たった方が涼めるのだろうが。

 だからといって、ゴブタの水鉄砲に当たるのは、なんか嫌だからな。

 

ゴブタ「ああ……………自分たちがあのリムル様とエース様を翻弄してるっす……………。何すか、この湧き上がる気持ち……………。」

 

 ゴブタは、ご満悦だった。

 なら、そろそろ反撃といこう。

 俺はマグナムシューターを取り出して、皆の水鉄砲を破壊する。

 

ゴブタ「えっ!?水鉄砲が!?」

 

 ゴブタ達が戸惑う中、俺は退避する。

 理由は、リムルから放たれた水ビームが迫っていたからだ。

 水ビームは、しばらく進んでいって、凄い衝撃音を放つ。

 しばらくすると、水ビームが放たれた場所は、木が倒れ、地形が少し抉れていた。

 すると、ゴブタが呻く。

 

ゴブタ「口から出すのは……………ずるいっす………………。」

リムル「ふぅ……………すまん、思わず。」

エース「反撃してみろって言ったんだから、反撃しただけだ。」

 

 ゴブタの抗議に、俺とリムルはそう言う。

 一方、嵐牙はため息を吐いていた。

 

嵐牙「ああうぅ……………。」

 

 そこに、紫苑と真眼がやってくる。

 2人は、嵐牙に話しかける。

 

紫苑「どうしたのです、嵐牙。」

真眼「そんな所でため息を吐いて。」

嵐牙「うん?実は最近、リムル様とエース様が遊………………いや、お呼びが掛からぬのだ。」

紫苑「ほう。」

真眼「今、遊ぶって言いかけませんでした?」

嵐牙「くぅん……………かつては、どこへ行くにも、背に乗ってくれて……………。」

 

 嵐牙の言葉に、真眼が突っ込みながらも、嵐牙は思い返す。

 俺たちがよく遊んだ頃を。

 

嵐牙「その後には、ナデナデとか……………。」

真眼「ナデナデ………………。」

嵐牙「スリスリとか……………。」

紫苑「スリスリ……………!」

嵐牙「ペロペロした仲なのに……………。」

真眼「ペ、ペロペロ………………!?」

紫苑「私だって、まだなのに!」

 

 嵐牙の独白に、真眼と紫苑はそんな風に反応する。

 それを聞いた嵐牙は、鼻で笑う。

 

嵐牙「ハッ……………。」

紫苑「むっ!」

嵐牙「もしや、知らぬ間に、リムル様とエース様の不興を買ってしまったのでは……………。」

 

 嵐牙が鼻で笑い、そう言う。

 すると、紫苑が反論をする。

 

紫苑「知りませんよ、この犬!」

嵐牙「ん?」

紫苑「どうせ、タテガミが暑苦しいとかの理由では?夏だし。」

嵐牙「四六時中ベタベタしてるお前達の方が暑苦しいわ!粗忽女!」

紫苑「ぎっ………………!」

 

 紫苑の言葉に反論する嵐牙。

 だが、言い方があれだったからか、紫苑はキレて、臨戦態勢に入る。

 そして、紫苑と嵐牙は戦う。

 それを見ていたひまわり擬きは、花の部分を葉っぱで隠していた。

 

紫苑「第一秘書である私が、いつもおそばにいるのは当然でしょ……………!」

嵐牙「我こそは……………従者として如何なる時も、お供せねば!」

 

 2人はそう言って、再び争いだす。

 それを見ていた真眼と裂牙は。

 

真眼「喧嘩するほど仲がいいと言いますよね。」

裂牙「そうであるな。」

 

 そんな風に話していた。

 それを、俺たちは見ていた。

 

紫苑「私だって、せめてスリスリ…………!」

嵐牙「我が主達に不埒な真似は……………!不埒な真似は………………!」

 

 紫苑達は、そう言い争っていた。

 それを見ていた俺たちは。

 

エース「このクソ暑い中、よくやるよな。」

リムル「今度組ませてみるか。」

 

 そんな風に話す。

 その後、洗濯物を干している紅丸達の方へと向かう。

 

リムル「おっ、居た、居た。」

紅丸「ん?」

エース「紅丸、ちょっと良いか?」

紅丸「何ですか?また悪巧みじゃないでしょうね?」

リムル「いやーねぇ。すげー暑いし、もうこうなったら、暑さを生かして、我慢大会でもやろうかなと思って。」

 

 そう。

 紅丸に声をかけた理由は、我慢大会に参加するかどうかを聞きに来たのだ。

 まあ、悪くないと思い、俺も了承した。

 

紅丸「転んでもただでは起きない辺りはさすがですが、我慢大会って何ですか?」

エース「我慢大会ってのは、炎天下に暖房を焚いて、厚着をして、その上で鍋を食う。そして、最後までギブアップしなかった人が優勝って感じだ。」

リムル「そういう感じ。」

 

 俺とリムルは、紅丸に我慢大会の概要を言う。

 ちなみに、俺とリムルは参加しない。

 熱変動耐性があるから、試合にならないからだ。

 それを聞いたアキナは、ゴブタに話しかける。

 

アキナ「出れば良いじゃん。ふふ…………。」

ゴブタ「う〜ん……………。(ここで目立ちたいっすけど……………これ、なんか嫌な予感がするっす。)」

 

 アキナにそう言われるが、ゴブタは参加を渋っていた。

 そんな中、リムルは紅丸に話しかける。

 

リムル「紅丸。お前のように強い男は、暑さなんかに負けないだろ?」

紅丸「んっ……………ふむ。なら、ここは一つ、俺の我慢強さを知らしめてやりましょう。」

エース「頑張れよ。」

 

 リムルがそう言うと、紅丸は満更でもない様子を見せる。

 それを見ていた紫苑と真眼は。

 

真眼「良いじゃないですか。最近、良い所が全く無かったですしね。」

紅丸「うるさいぞ、そこ!」

紫苑「だって事実ですし〜。」

紅丸「おのれ……………!見てろ、残念秘書に天然秘書!炎の戦士の生き様をな!」

 

 真眼と紫苑の言葉に、紅丸はそう叫ぶ。

 まあ、真眼って、ちょっと天然な所があるしな。

 時折、何もないところで転ぶし。

 そうして、我慢大会が始まった。

 だが、紅丸、ガビルを始めとする参加者は、全員撃沈していた。

 

蒼華「おぉ〜っと!鍋の前に出場者全員がダウンだ〜!」

蒼樹「これは、大変な事になりましたね。」

リムル「まさか、紅丸が負けた!?」

紫苑「どうしたんでしょうか?」

真眼「紫苑、あなたが作ったんですね………………。」

エース「やっぱり………………。」

 

 そう。

 出場者が食べた鍋は、紫苑が作ったのだ。

 それを見ていたゴブタは。

 

ゴブタ(出なくて良かったっす……………!)

 

 ゴブタは、不参加だった。

 その為、命の危険は免れた。

 その後、紅丸達を始めとする参加者達は、救護所に運ばれた。

 一方、ゴブタは、黒兵衛の工房へと向かっていた。

 中に入ると、熱気がゴブタを襲う。

 

ゴブタ「うわっ、あっつい!何すかこれ!?」

 

 ゴブタがそう叫ぶ中、黒兵衛は作業をしていた。

 ひと段落すると、ゴブタは黒兵衛に話しかける。

 

ゴブタ「リアル我慢大会じゃないっすか!」

黒兵衛「はっはっは!鍛治工房なんだから、当たり前だべ。」

ゴブタ「黒兵衛さん、すごい汗っすよ!大丈夫なんすか?」

黒兵衛「んん?ああ、おら鈍いから、平気なんだべ。あっ、そうそう。ゴブタ君の武器、武器。散々待たせて、ごめんだべ。」

 

 ゴブタがそう言う中、黒兵衛は笑って、汗を拭う。

 そして、黒兵衛は、ゴブタの武器を取り出そうとする。

 それを見ていたゴブタは。

 

ゴブタ(黒兵衛さん……………真夏に何日も篭りっぱなしなのに、笑っていられるなんて………………。)

 

 ゴブタは、黒兵衛に対して、そう思っていた。

 すると、黒兵衛は武器を取り出す。

 

黒兵衛「いやあ…………なんか気づいたら、鍛え上がってたんだけど……………。フフフフフフフフ……………フフフフフフフフ……………!」

剣「マギー!マギー!マギー!」

 

 黒兵衛が取り出したのは、剣の柄の部分が、生きている様に蠢き、奇声を発する剣だった。

 それを、黒兵衛は目を赤く光らせながら笑う。

 それを見ていたゴブタは。

 

ゴブタ「うぅ……………やっぱり、ちょっと涼んだ方が良くないっすか………………?」

剣「マギー!」

 

 ゴブタはそれを見ながら、ドン引きしつつも、黒兵衛にそう言う。

 そんな剣の奇声は、俺たちの方にも届いていた。

 

エース「ん?なんか、やばい奇声がしたような気がしたのは、気のせいか?」

朱菜「気のせいでは?」

 

 気のせい……………かな?

 明らかにやばい声が聞こえた気がするんだが。

 すると、朱菜が話しかける。

 

朱菜「エース様。水饅頭というのを作ってみたので、食べてみませんか?」

エース「良いのか?なら、お言葉に甘えて。」

 

 朱菜は水饅頭を作ったそうで、俺はそれを食べる。

 美味い。

 

エース「美味しいよ。」

朱菜「ありがとうございます!」

 

 俺はそう言うと、朱菜は嬉しそうにそう言う。

 水饅頭を食べていると、リムルが口を開く。

 

リムル「………………それを見てると、俺が食われている様な気分になるよ。」

エース「そうか?」

 

 リムルがそういう中、紫苑はリムルを抱いていた。

 朱菜は、俺を抱いてはいないが、撫でていた。

 俺としては、朱菜になでなでされるのは、悪くないと感じていた。

 そんな中、紫苑が口を開く。

 

紫苑「あっ。何だか、ぬるくなってきましたね。リムル様。もう少し冷たくなりませんか?」

リムル「きっ…………!」

 

 紫苑がそういうと、リムルは青筋(?)を浮かべる。

 よし、リムルを揶揄うか。

 そう思い、思念伝達でリムルを揶揄う。

 

エース『お、照れてんのか?紫苑の水枕さん?』

リムル『お黙り!』

 

 俺がそう言うと、リムルはそう言ってくる。

 一方、畑の方では、リリナさんとボアとゲルドの2人がいた。

 

リリナ「猛暑が続く毎日でしたし、この日差しに加え、うまくこの土に馴染めなかったようで。色々と、試行錯誤してみたのですが……………。」

ゲルド「そうですか……………。」

ボア「ふむ…………………。」

 

 リリナの言葉に、ゲルドとセルドはそう反応する。

 すると、リリナはすぐに口を開く。

 

リリナ「あっ、でも、数株は生き残ったので、希望はあります。どうぞ。せっかくだから、食べてみてください。」

 

 どうやら、生き残ったのもあったそうだ。

 ボアとゲルドは、トマトを一つずつ手に取って、見つめる。

 すると、ちょんまげのゴブリンの子供がそれを見ていた。

 ボアとゲルドは、頷き合い、トマトをもぎ取って、その子供に渡す。

 

ボア「ほら。」

ゲルド「ん。」

ココブ「わ〜!はむっ。んぐんぐ……………はぁ〜。」

 

 ココブというゴブリンの女の子は、セルドとゲルドから受け取ったトマトを食べる。

 それを見て、ココブの頭を撫でて、2人は去ろうとすると、リリナが話しかける。

 

リリナ「よろしいのですか?」

 

 リリナの質問に、ボアとゲルドは、ただ手を振って答えた。

 その後ろ姿は、逞しかった。

 その夜、俺とリムルは、スナック樹羅に赴いていた。

 トレイニーさんは、ドリンクを出す。

 

トレイニー「はい、テンペストブルー。」

リムル「おお〜!涼しげ!」

トレイニー「うふふ……………どうぞ、冷たいうちに。」

エース「ん…………ん……………あっ、これ、ハッカみたいだな。」

トレイニー「アルコールの代わりに、涼しげなハーブを入れてみました。」

 

 なるほどな。

 確かに、この猛暑にはちょうど良いかもしれないな。

 

リムル「俺は子供じゃないって〜。」

エース「涼しげで、猛暑の今年には、ピッタリだな。」

シズ「確かに、今年の夏は結構暑いよね。」

トレイニー「ですが、長い目で見れば、揺らぎのような物です。振り始めか……………振り戻しか……………。」

 

 まあ、そういうもんか。

 年によって、暑さとかは違うからな。

 リムルは、トレイニーさんの言葉に答える。

 

リムル「生憎、俺はそんな長い目は持ってないんだ。」

トレイニー「ウッフフフフ……………リムル様とエース様の力添えで、この森は大きく変わって来ています。そして、この街の皆さんは、その予期せぬ変化にもしっかり対応してます。」

シズ「大丈夫だよ。きっと上手くいくよ。」

エース「ありがとう。トレイニーさん、シズさん。」

トレイニー「お客様の心をほぐすのも、スナック樹羅の役割ですから。」

 

 まあ、頑張っていくか。

 色々と、注目されているがな。

 すると、ドアが開く音がして、カイジンとミルドの2人がやって来る。

 

ハルナ「いらっしゃいませ!」

カイジン「おっ。今日はママさんがいるぞい。」

トレイニー「あらっ、カイジンさん。お帰りなさい。」

リムル「予期せぬといえば……………。」

エース「このお店って、元々トレイニーさんのお店じゃ無かったですよね?」

トレイニー「あらあら。ウフフ……………。」

リムル「店名も、”ゴブリナ”の予定だった筈だけど……………。」

トレイニー「うふふふ……………皆さん、対応してますよ。」

シズ「アハハハ………………。」

 

 トレイニーさんは、しれっと店をゲットしてるよな。

 森の管理はしなくて良いんすか?

 そう思っていると、ゴブタが入ってくる。

 

ゴブタ「あっ、リムル様、エース様。こんな所に居たんすか?蛍が群れで出てるっすよ!見に行きましょうよ!」

リムル「こらこら、ゴブタ君。お静かに……………。」

ゴブタ「早く早く!こんな群れ、もう見れないかもしれないっす!」

エース「やれやれ。シズさんも行くか?」

シズ「ええ。」

 

 そうして、俺、リムル、シズさんは、ゴブタ達と共に、蛍の群れを見に行く事に。

 紫苑や真眼、朱菜といった人たちと合流して、明かりを消す。

 すると、蛍の群れが光りだす。

 小学生の頃、夏休みは全力だった。

 予定がなくても早起きして、寝落ちするまで夜更かしをした。

 ラジオ体操もやったよな。

 見る物全てが新鮮で、やりたい放題した物だ。

 そんな俺を、父さんは笑いながら見ていた。

 母さんは、俺が物心がつく前に亡くなってしまった。

 すると、シズさんが口を開く。

 

シズ「懐かしいな……………。」

エース「シズさん?」

シズ「昔はこうして、お母さんと一緒に蛍を見に行ってたんだ。」

エース「そうなんだ……………。」

 

 俺も、蛍を見たのは久しぶりだ。

 小学生の夏休みの頃、田舎の爺ちゃんと婆ちゃんの家に父さんと一緒に行って、爺ちゃんと婆ちゃんと一緒に蛍を見た。

 それはもう、見る事が出来ない光景だが。

 すると、シズさんが口を開く。

 

シズ「……………リムルさんとエース君のおかげだね。毎日が凄く楽しい。昔の私に言っても、信じられなかったんだろうな…………。」

エース「そっか……………そう言ってくれて、嬉しいよ。」

 

 俺とシズさんは、そう話す。

 こうして、夏の1日が終わる。

 その翌日の早朝、ジュラの森の夏の恒例の出来事が起こる。

 それは、野良スライムの大量発生だった。

 その野良スライムの一団は、テンペストの近くにやってくる。

 俺とシズさんと朱菜が家の方でそれを見ていると、リムルは野良スライムと一緒に遊んでいた。

 ちなみに、朱菜は俺を膝に置いていた。

 Aの形、手の形、考える人の形になった。

 野良スライムの方は、Aの形と手の形はギリギリ出来たが、考える人の形には出来なかった。

 すると、野良スライムは仲間達の方へと去っていく。

 それを、リムルは寂しげな雰囲気で見送る。

 すると。

 

紫苑「リムル様〜!」

リムル「ああ?」

リグルド達「リムル様〜!!」

紫苑「群れに帰っちゃやだ〜!!」

リムル「俺の群れはお前らだろ。」

エース「賑やかだな。」

シズ「そうだね。」

朱菜「ふふふ……………。」

 

 リムルが野良スライムの一団に向かおうとした風に見えたのか、リグルド達は、必死に止めようとする。

 これもまた、夏の出来事。




今回はここまでです。
今回は、テンペストの夏の日常の話です。
朱菜がエースに好意を向ける事で、リムルを巡る争いは自然と無くなりました。
ちなみに、エースが食べていた水饅頭は、エースが食べたいと朱菜に言ったからです。
次回は、とある避暑地候補での話です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
エースの魔王への進化の際の話や、子供達を救う時のリクエストは、活動報告にて受け付けています。
ちなみに、ヒナタと戦うのは、エースの分身体で、エースが魔王に進化した際に、エースを糾弾する存在を出そうかなと思っています。

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