転生したら白狐だった件   作:仮面大佐

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第43話 希望と決意

 ミュウランという人物は、魔王クレイマンの配下と語った。

 魔王クレイマンという名は、初めて聞いたわけじゃない。

 ミリムが言っていたのだ。

 

ミリム『もしかすると、ゲルミュッドではなく、クレイマンの奴が、何か企んでいたのかもしれないな。内緒で………。』

リムル『クレイマン?』

エース『確か、魔王の一人だったか?』

ミリム『そうだぞ。奴は、そういう企みが大好きなのだ。』

 

 その企みの一環か?

 だとしたら、傍迷惑だな。

 そう思う中、ミュウランは語る。

 

ミュウラン「魔王クレイマンは、人形傀儡師(マリオネットマスター)の二つ名の通り、意のままに配下を操ります。私もその中の1人…………。私に与えられた任務は、テンペストの内偵でした。ヨウムを利用し、この街に潜入したのです。そして、指示に従い、大魔法、魔法不能領域(アンチマジックエリア)を発動しました。」

エース「なるほどな……………。ところで、何でクレイマンに従っているんだ?従うメリットなんて無いだろ?」

 

 ミュウランがそう言う中、俺は気になり、そう聞く。

 それを聞いたミュウランは。

 

ミュウラン「……………あの時の私もそう気づくことが出来れば良かったのですが、私は元々人間の魔女でした。人々から迫害を受け逃げ延びた森で幾百年。家族もなく友もなく魔法の研究に没頭する日々でした。そんな永劫のような日々が終焉に近づいた頃……………あの男が現れたのです。」

エース「クレイマンか。」

ミュウラン「はい。クレイマンは私にこう言ったのです。」

 

 ミュウランがそう言うと、俺はそう言い、ミュウランは説明する。

 クレイマンは、ミュウランに対して、こう言ったそうだ。

 

クレイマン『貴女に永遠の時と老いることのない若き肉体を差し上げましょう。その代わり、私に忠誠を誓い仕えなさい。』

 

 ……………と。

 それを聞いて、俺はミュウランに聞く。

 

エース「それに応じたのか?」

ミュウラン「森に引きこもる世間知らずなど、笑えるほど御し易い相手だったのでしょうね。私の心臓は、クレイマンの秘術、支配の心臓(マリオネットハート)によって、奪われました。それ以来、彼に従う他に、生きる道はありませんでした。」

リムル「なるほど……………。」

 

 俺がそう聞くと、ミュウランはそう答える。

 そういう事か。

 

エース「文字通り、生殺与奪の権利を握られているって事か。」

リムル「それで、クレイマンがうちにちょっかいを出す理由はなんだ?」

ミュウラン「彼は、このように話していました。『これから面白くなる。予想外の展開になりましたが、大戦争が起きますよ』と。」

 

 それを聞いた皆は、どよめく。

 大戦争ね……………。

 

ミュウラン「最初は、魔王ミリムとカリオンの事だと思っていましたが、テンペストとファルムス王国の間で、戦争を起こさせる事。これを意味していたようです。」

エース「…………………。」

 

 クレイマン。

 自分の手を汚すことなく、手駒を思うがままに操る。

 厄介な奴だな。

 魔導師(ウィザード)である彼女は、例え、魔法の実力があろうと、魔法不能領域(アンチマジックエリア)内では、普通の人間となんら変わらない。

 捨て駒にされたか。

 すると、ヨウムとグルーシスが叫ぶ。

 

ヨウム「リムルの旦那にエースの旦那!ミュウランを許してやってくれ!」

グルーシス「俺からもお願いします!彼女は、魔王クレイマンに逆らえなかっただけなんですよ!」

 

 そう叫んで、俺たちを見てくる。

 まあ、情状酌量の余地はあるか。

 だが、すぐに許す訳には行かない。

 俺とリムルは、お互いの顔を見合わせ、答えを出す。

 

リムル「ミュウランの処遇については、ひとまず保留だ。それまで、迎賓館で軟禁させてもらう。」

リグルド「分かりました。見張りをつけておきます。」

ヨウム「旦那方…………。」

エース「すまん。今は、俺たちも混乱してる。心配なら、一緒に居ても構わない。」

 

 そうして、ミュウラン、ヨウム、グルーシスの3人は、迎賓館の方に移動する事に。

 リムルは、紅丸に聞く。

 

リムル「ひとまず、報告は以上か?」

紅丸「はい。」

エース「よし。次は人間達だ。」

 

 リムルがそう聞くと、俺たちはミョルマイル達の元へと向かう。

 あの後、ブルムンドを拠点にする冒険者達は、俺たちに加勢すると言ってくれたのだ。

 だが、もし、万が一の事があったら、それこそ、ファルムス王国の思う壺だ。

 そういう事で、人間達を転移魔法を使って転移していく。

 ミョルマイルも転移し終えて、俺たちは一息吐く。

 

リムル「よし。次は怪我人だな。」

エース「リムル。俺は、ジーンが捕獲した異世界人と会ってくる。」

リムル「……………分かった。」

 

 リムルが怪我人の方に向かう中、俺はジーンが捕らえた異世界人の方へと向かう。

 ジーンは、レーザーレイズライザーのクラッシュモードを使って捕獲したそうだ。

 ちなみに、本来、クラッシュモードは、プレミアム形態にならなければ使えないが、調整を施して、プレミアム形態にならなくても使える様にした。

 その部屋に向かうと、ジーンと警備隊ライダーが居た。

 警備隊ライダーは作っている最中だったGMライダーと同じく、ラミリスが居た精霊の棲家にいた精霊の守護像(エレメンタルコロッサス)を参考にして作ったゴーレムが変身している。

 

エース「ジーン、その異世界人は?」

ジーン「女性で、朱菜の話によると、発した声で対象を操る能力を持ってるみたいだね。」

エース「なるほど……………大丈夫なのか?」

ジーン「問題ないよ。朱菜の話を聞いて、レーザーレイズライザーを使って、この部屋をスキルが使えない感じにしたから。」

エース「分かった。念の為に気をつける。」

 

 ジーンにそう聞くと、ジーンはそう答える。

 ミョルマイルが言っていたのだが、こちら側が先に仕掛けてきたという事にする為の工作員との事なので、その能力はうってつけと言えるだろう。

 俺は部屋に入る。

 その子は、俺に気づくと、俺の事を見てくる。

 

???「……誰あんた?」

エース「この町の主の一人の、エース=テンペストだ。」

???「主?主はスライムじゃないの?」

エース「俺とリムル。俺たち二人でこの森の盟主を務めている。」

???「そう……それでウチに何か用?もうどうでもいい……殺すならさっさとやって。」

 

 その子がそう聞いてくると、俺はそう答える。

 すると、その子は絶望した表情……………というよりは投げやりな表情でそう言う。

 まあ、無理もないが。

 死ぬ可能性が高いと思ったから。

 

エース「……………君は異世界人…………いや、日本人と言うべきかな?」

???「っ!?何で分かったの?」

エース「やっぱりか。という事は、ファルムスに召喚された召喚者か。」

 

 俺がそう言うと、その少女は驚いた。

 ヴェルドラは言っていたな。

 召喚者とは、召喚された際に、召喚した人に逆らえない様に呪いが刻まれると。

 なら、創世の力で解除出来るかもしれないな。

 

エース「なら願え。支配の呪言が解除されるというのを。」

???「いきなり何?」

エース「良いから。」

???「う、うん……………。」

 

 俺がそう言うと、怪しい物を見る様な目になる。

 そんな目で見るな。

 一応、半信半疑で願っていく。

 すると。

 

創始者『願いを確認しました。ユニークスキル創世者で、創世の力を発動しますか?』

エース『ああ。』

 

 創始者の問いに、俺はそう答える。

 すると、荘厳な鐘の音が鳴り、創世の力が発動する。

 俺の魔素が消費された様な感覚がする。

 すると、創始者が報告する。

 

創始者『告。創世の力が発動され、個体名水谷希星にかけられた支配の呪言が解除されました。』

エース『分かった。ありがとう。』

 

 創始者はそう報告する。

 俺は水谷希星に話しかける。

 

エース「俺の力で、君にかけられた支配の呪言は解除された。これでお前は自由の身だ。」

希星「えっ!?本当…………本当に解除できたの!?あのジジイの支配を!」

エース「ああ。」

 

 俺がそう言うと、希星は一瞬呆気に取られるが、そう聞いてくる。

 俺がそう言うと、安堵した表情を浮かべる。

 

希星「でも、どうしてウチを助けたの?」

エース「まあ、お前は誰も殺害していないし、情状酌量の余地はある。それに、元日本人として、放って置けなかったからな。」

希星「えっ!?元日本人!?まさか…………!?」

エース「そう。俺もリムルも日本人だ。まあ、君たちと違うのは、転生者としてこの世界に来た事だがな。」

希星「ええっ!?」

 

 希星がそう聞くと、俺はそう答える。

 その答えに、希星は驚いた様だった。

 まあ、無理もないが。

 落ち着いた後、俺は事情を聞いた。

 希星は、この世界にファルムスによって召喚された後、橘恭弥と田口省吾と違い、大したスキルを持っていないと判断され、雑に扱われていた。

 そんなある日、待遇にキレて、『死んじまえ』と叫んだ次の瞬間、自分のユニークスキルである狂言師(マドワスモノ)の効果で、周囲の人が自殺をする。

 それを知った召喚者によって、スキルを封印されて、彼女を呪言で縛り、今度はその力を利用され続ける日々となった。

 そりゃあ、そんな日々を送ったら、あんな性格になるわな。

 話し終えると、希星は口を開く。

 

希星「助けてくれてありがとう。でも…………これからどうしたらいいのかな……………。」

エース「………………本当なら、元の世界に戻してやりたいが、あいにく、その方法はまだ分からない。」

希星「そう……………だよね。」

エース「なら、テンペストに住むか?」

希星「………………えっ?」

 

 希星はそう言う中、俺はそう言うと、落ちこむ。

 代案を立てると、希星は鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべる。

 

エース「行く宛も無いだろう?まあ勿論、ちゃんと働いてもらうけどな。経験を積む事は、これからを生きていくのにも大切だからな。」

希星「……………いいの?この街をこんな風に追い詰めたウチに、その資格はあるの…………?」

エース「ああ。俺の理想の世界は、誰もが幸せになれる世界だ。勿論、謝罪の機会は設けるさ。」

 

 俺がそう言う中、希星は罪悪感に押し潰されそうな表情を浮かべていた。

 そう思えるだけでも、十分だと思うがな。

 すると。

 

エース「どうぞ。」

ギロリ「頼まれた通り、持ってきたぞ。」

 

 そこに入ってきたのは、ギロリさんだった。

 予め、ギロリさんに頼んでおいたのだ。

 美味い飯を食べさせる様に。

 ギロリさんが置いたのは、ご飯、豚汁、焼き魚という定食だった。

 

ギロリ「思う存分食べてくれ。」

エース「そんな訳だ。まあ、食べながらでも考えてくれ。それじゃあ。」

 

 ギロリさんと俺がそう言うと、俺は部屋から出ていく。

 希星は出された食べ物を食べていく。

 食べていく中、次第に涙が出てきて、口を開く。

 

希星「………………ありがとう。」

 

 希星はただ一言、そう呟くと、食事を食べていく。

 ちなみに、白米に関しては、俺の創世の力で作り替えた物で、まだ品種改良は進められている。

 俺が迎賓館から出ると、リムルが紅丸達に連れられていた。

 恐らく、紫苑の死を知る事になるだろう。

 遺体の安置場所に到着すると、ゴブタは周囲を見る。

 すると、ある場所に目が止まる。

 

ゴブタ「あ……………ゴブゾウ?ゴブゾウ!」

 

 そこには、ゴブゾウが居た。

 それを見たゴブタは、目に涙を浮かべ、泣き出す。

 

ゴブタ「うわああああっ!!」

 

 ゴブタが悲しみに暮れて絶叫する中、紅丸は俺たちの目の前の遺体を覆っていた布を取る。

 その遺体は……………紫苑だった。

 それを見て、リムルは呆然とする。

 

紅丸「……………紫苑は、襲撃者が狙った子供を庇って……………。結界による弱体化で、思うように動けず……………。」

朱菜「…………ゴブゾウは、私を守って下さいました。それを、襲撃者は笑いながら…………。」

 

 紅丸と朱菜は、悔しそうにそう言う。

 リムルの気持ちは痛いほど分かる。

 すると、押さえ込んでいたオーラが漏れ、リグルドが声をかける。

 

紅丸「あっ……………!」

リグルド「リムル様!」

エース「リムル……………。」

 

 俺とリグルドがそう言うと、リムルはオーラを抑える。

 しばらくの静寂の末、声を絞り出す。

 

リムル「………………すまん。しばらく、1人にしてくれ。」

リグルド「……………分かりました。」

 

 俺とリムルの言葉に、リグルドは頷き、白老はゴブタを連れていく。

 シズさんも、リムルの気持ちを汲み取り、離れる事にした。

 朱菜は、リムルを優しく抱きしめる。

 

朱菜「……………いつでもお呼び下さい。すぐに参ります。」

 

 朱菜はそう言うと、リムルから離れる。

 その場に残ったのは、俺だけだった。

 俺も、

 すると、朱菜が話しかける。

 

朱菜「エース様……………ご自分をお責めにならないで下さい。」

エース「………………ありがとう。」

 

 朱菜がそう言うと、俺はそう答える。

 朱菜達が去っていく中、俺は考えていた。

 

エース『創始者。今の俺の創世の力で、紫苑達全員を蘇らせる事はできないか?』

創始者『解。現在のマスターの創世の力では、個体名紫苑を含む全員を蘇らせる事は出来ません。』

エース『………………そうか。』

 

 俺が創始者にそう聞くと、創始者はそう答える。

 やはり、今の俺の力では無理か。

 俺はそう思いながら、ブーストマークIXレイズバックルを取り出す。

 鍵を握るのは、このレイズバックルを使って変身する、ギーツの最強の姿だけだ。

 

エース『……………創始者。今の俺の力で、ギーツIXに変身する事は出来るか?』

創始者『解。今のマスターの力では、ギーツIXに変身することは叶いません。』

エース『……………今の俺なら……………か。』

 

 俺がそう聞くと、創始者はそう答える。

 今の俺では、ギーツIXになるのは、不可能という事か。

 だとしたら、一つだけ可能性がある方法がある。

 それは……………。

 そう考える中、エレン達が近寄る気配を感じた。

 

エース「……………よく来れたな。」

 

 俺はそう呟き、エレン達の方へと向かう。

 到着すると、カバル達が馬車から降りてきて、リグルが対応していた。

 

リグル「カバル殿!」

カバル「商人達から事情は聞いた。何と言っていいかわからねぇが……………俺達で力になれることがあれば言って欲しい。」

リグル「お心遣いに感謝を……………。」

 

 リグルが寄る中、カバルはそう言う。

 すると、エレンが口を開く。

 

エレン「リムルさん!リムルさんはどこぉ!?」

リグル「エレン殿!」

エース「リムルなら広場に居る。だが、リムルは1人にして欲しいって言っている。」

 

 エレンがそう言う中、俺はそう言いながら現れる。

 

カバル「リムルの旦那がそう言ったのか?」

リグル「ええ。エース様を含めて、皆今はお側を離れています。」

 

 カバルがそう聞くと、リグルはそう答える。

 シズさんさえも離れていると知り、エレン達は顔を見合わせる。

 

カバル「…………分かった。しばらく町の外で野宿してるから、人手が入り用ならいつでも声を掛けてくれ。」

リグル「ありがとうございます。」

 

 カバルとリグルはそう話す。

 だが、エレンは強い決意を目に宿し、俺に話しかける。

 

エレン「エースさん、お願い。今すぐリムルさんに会わせて欲しいの。どうしても伝えたいことがあるから。」

エース「エレン……………!?」

ギド「(あね)さん、それはちょっと…………。」

カバル「そうだぜエレン。エースの旦那達も遠慮してるってのに……………。」

 

 エレンがそう言うのに俺が驚く中、2人は宥め様とする。

 だが、エレンの顔を見たのか、カバル達も口を開く。

 

カバル「エースの旦那。俺からも頼む。」

ギド「あっしからもお頼みしやす。」

エレン「無理言ってごめんなさい。でも、今のリムルさんにはきっと必要な話だから…………。」

エース「お前ら……………。」

 

 カバル達も頭を下げながらそう言い、エレンはそう言う。

 そこまで言われたなら、仕方ないか。

 

エース「……………リグル。エレン達は俺が連れていく。」

リグル「えっ!?しかし……………!?」

エース「全責任は俺が取る。リグルは警戒を続けてくれ。」

リグル「……………分かりました。」

 

 俺は根負けして、リグルにそう言う。

 リグルがそう言う中、俺はそう言う。

 俺はエレン達を連れて、リムルの元へと向かう。

 リムルは、暴食者(グラトニー)で、紫苑達の遺体を取り込もうとしていた。

 

リムル「来てくれたのか。少し待ってくれ。そろそろ、皆を眠らせてやらないと。」

エース「リムル……………。」

 

 リムルの声は、深い悲しみを感じさせた。

 紫苑も亡くなっているのを見て、エレンは口に両手を当てて、カバル達は視線を逸らす。

 すると、エレナは口を開く。

 

エレン「あっ、あのね…………可能性は低いけど、ううん、殆ど無いかもしれないんだけど、でも、あるの!死者が蘇生したと言う御伽話が!」

エース「えっ!?」

 

 エレンの言葉に、俺は耳を疑う。

 そんな話があるのか!?

 

エレン「所詮は、作り話だと思うけど、でもこれは、史実に基づいた…………!」

リムル「ハハハハッ…………!」

エレン達「あ…………。」

エース「リムル…………。」

リムル「いや、悪いな。つい、嬉しくて。死者の蘇生か……………。まるで夢物語だな。可能性がゼロでないなら、十分だ。詳しく聞かせてくれ、エレン。」

 

 俺たちは、エレンからその話を聞く事にした。

 すると、リムルが蒼影からの報告を聞いていた。

 

エース「どうした?」

リムル「蒼影からだ。街の四方に西方聖教会の集団が陣取ってて、魔法装置なる物を守ってるってさ。それが、結界を作り出してるみたいだ。」

エース「分かった。…………それより、聞かせてくれ。その死者蘇生の御伽話を。」

エレン「うん。」

 

 エレンがそう言うと、突然、両手を自分の耳にやって、何かの魔法を解除するかのようにする。

 すると、耳の形が変化する。

 

「「あっ…………。」」

エレン「良いの。…………これは、魔導王朝サリオンに伝わる、御伽話。」

 

 そこから、エレンは語った。

 ある少女とドラゴンの物語を。

 竜と人との間に生まれ、竜皇女(りゅうこうじょ)として育つ少女。

 ある日、竜である父から、自身の分身体とも言える子竜を、友として授かる。

 しかし、竜皇女を支配しようとした国王は、子竜を殺してしまった。

 その少女は嘆き、悲しみ、怒り狂った。

 父より受け継いだ、その力で、その国王と十数万人の国人諸共、一国を滅ぼしてしまう。

 その怒りはやがて、世界へと向いてしまう。

 ある魔王が、止めようとするが、七日間も戦い続ける。

 その少女は、精霊女王が仲裁した事で、正気を取り戻し、魔王へと開花し、それに伴い、子竜は奇跡の復活を果たす。

 だが、死と同時に魂を失った子竜は、破壊の限りを尽くす意思なき邪悪な魔物、混沌竜(カオスドラゴン)へと変貌していた。

 少女は嘆きつつも、かつて友であった混沌竜(カオスドラゴン)を封印し、これが、魔王となった竜皇女の最初の偉業となった。

 エレンはその話を終える。

 

エレン「…………物語は、これでおしまい。」

 

 その話は、かなり壮大だった。

 そして、その話がミリムが魔王になった際の話である事を確信した。

 人と竜のハーフは、ミリムしかいないからだ。

 魔王に進化する事で、可能かもしれない。

 ギーツIXへの変身が。

 そうすれば、助けられる可能性は上がる。

 だが……………。

 

リムル「……………しかし、意思の無い怪物になられても意味がない。」

エース「そうなんだよな……………。」

 

 そう。

 その話で、復活したミリムの友のドラゴンは、魂を失っていた事で、意思なき化物と化した。

 すると、エレンが空を指差す。

 

エレン「この街は今、結界に覆われているでしょう?」

 

 そう言うと、ある可能性が浮かぶ。

 

エース(そうか!結界によって、死んだ人たちの魂が留まっていれば!)

創始者『告。絶命した者の魂は本来、拡散、消滅しますが、2種の結界に阻まれ、残存している可能性があります。その確率は、3.14%。』

エース(円周率並みか…………。)

 

 いや、裏を返せば、蘇生できる可能性が3%以上あるのだ。

 俺は、思念伝達で伝える。

 

エース『リムル。』

リムル『ああ。俺とお前、考えている事は一緒みたいだな。』

 

 俺たちは、魔王になる事を決意する。

 そうすれば、皆を甦らせる事ができるかもしれない!

 

リムル「エレン、ありがとうな。」

エレン「ううん。」

エース「でも、良いのか?それは、俺たちに魔王になれって言ったのと同義だぞ。」

エレン「うん。私ね…………本名はエリューン・グリムワルトって言うの。魔導王朝サリオンの王家に連なる家系なんだ。」

エース「えっ?お嬢様…………!?」

 

 リムルがエレンに礼を言う中、俺はそう聞く。

 すると、エレンはそう答える。

 それには、俺、リムルは驚く。

 お嬢様なのかよ!?

 すると、カバルとギド達も口を開く。

 

カバル「俺たちは、エレンお嬢様の護衛として、一緒に国を出てきたんです。」

リムル「そうだったのかよ…………。」

エース「護衛が務まったのか?」

ギド「黙ってて、すいやせん。」

エレン「自由な冒険者に憧れて、国を出てきちゃったんだ!…………でもね、さっきの御伽話は、サリオンでも一部の人しか知らないの。リムルさんとエースさんが魔王になったら、私が関与したのがいずれバレると思う。」

 

 え?

 それって、まずい事なんじゃないのか?

 サリオンの王家に連なる家系の出身が、魔王誕生に関与した事は、かなりまずいだろ。

 

エース「良いのか?」

エレン「良いの!この街の皆を、私も助けてあげたい!それに、ファルムス王国も、西方聖教会のやり方も、許せないの!」

カバル「お嬢様がそう仰るのなら、護衛として異論はありませんよ。」

ギド「勿論でやす!」

 

 俺がそう聞くと、エレン達はそう答える。

 良い奴らだな。

 

エース「最高だな。」

エレン「私たちにできる事があったら、何でも言ってね。」

カバル「いつも世話になってるんだし。」

ギド「今度は、あっしらが頑張る番でやんすよ。」

リムル「ありがとう。」

 

 俺たちはそう話す。

 リムルは念の為に、第三の結界を張る。

 さて、どうやって魔王になるんだ?

 すると。

 

創始者『解。マスターとリムル=テンペストは、既に魔王種を獲得しています。』

エース『え?どういう事?』

創始者『解。魔王種の有無は、魔素量、保有スキルなどが、真なる魔王として、覚醒するに足るか否かを指します。マスターの場合は、ブーストフォームマークIIIに変身した時点で、魔王種を獲得しました。条件を満たせば、真なる魔王へと進化が可能です。』

エース『マジか!条件は何だ?』

創始者『御伽話から推測するに、種を発芽させるには、養分が必要です。養分となるのは、人間の魂。必要となるのは、1万名分以上。』

 

 俺の問いに、創始者は答える。

 ブーストフォームマークIIIを獲得した際に、魔王種が目覚めたって訳か。

 ただ、1万名か……………。

 問題は、どうやってその魂を手に入れるかだよな。

 すると、リムルが蒼影からの報告を聞いていた。

 しばらくして、俺たちの方を見る。

 

リムル「その魂の件は、どうにかなりそうだぞ。」

エース「本当か!」

リムル「ああ。ファルムスと西方聖教会の連合軍。合計四万が、ここに向かってるんだと。」

エース「そうか。都合が良いな。」

 

 リムルがそう言うと、俺もそう答える。

 やるか。

 今後、俺たちに迷いを生ませない為にも。

 俺たちは、紅丸と真眼を連れて、ミュウランの元へと向かう。

 

リムル「ミュウラン。処罰を決めた。」

エース「君には死んでもらう。」

ヨウム「リムルの旦那にエースの旦那!待ってくれ!ミュウランは本当に…………!」

 

 俺たちの言葉に、ヨウムがそう叫ぶと、獣身化したグルーシスが、俺とリムルに攻撃しようとするが、紅丸と真眼が立ちはだかる。

 

ヨウム「グルーシス…………!」

グルーシス「何してるヨウム!ミュウランを連れてさっさと逃げやがれ!」

ヨウム「はっ!ミュウラン!行こう!はやっ…………!」

 

 ヨウムは、ミュウランにそう声をかけるが、ミュウランにキスをされて、口を塞がれる。

 そして、ミュウランはヨウムに言う。

 

ミュウラン「好きだったわ。ヨウム。私が生きてきた中で、初めて惚れた男。今度は、悪い女に騙されないようにね。…………さようなら。」

ヨウム「ミュウラン!」

 

 ヨウムは、俺たちの方に行くミュウランを止めようとするが、リムルの糸で動けなくなり、そこから俺が抑える。

 グルーシスも、紅丸と真眼に抑えられる。

 

ヨウム「うっ!ミュウラン!旦那方!頼む!やめてくれ!俺も一緒に償う!何でも言う事を聞くよ!」

エース「良い覚悟だ。リムル。」

ヨウム「一生かけて償うよ!だから!」

 

 ヨウムは必死にそう言うが、リムルは手にオーラを集める。

 それを見て、ヨウムは俺に向かって叫ぶ。

 

ヨウム「ああっ!そんな!エースの旦那!リムルの旦那を止めてくれ!」

エース「……………悪く思うな。」

 

 ヨウムの静止も虚しく、リムルの手が、ミュウランを貫く。

 

グルーシス「ぐっ…………!」

ヨウム「あっ、ああ……………ああああ!」

 

 それを見たグルーシスとヨウムは、そう呻く。

 だが、心配はないさ。

 

エース「……………よし、上手くいったな。」

ミュウラン「あれ?なんで私、生きて……………?」

「「あっ……………!」」

リムル「3秒くらいは死んでたかな。まっ、俺とエースも、死んでもらうとは言ったが、殺すつもりなんて無かったし。」

 

 俺とリムルは、狙い通りに行って、笑みを浮かべる。

 すると、創始者が報告する。

 

創始者『告。個体名ミュウランの擬似心臓は正常に作動しています。』

エース『分かった。』

 

 上手くいったようだな。

 俺とリムルは、どういう理由なのかを伝える。

 

リムル「さっき、三つ目の結界を張った時に分かったんだが、クレイマンがミュウランに仕込んだこの仮初の心臓は、盗聴に使われていたんだ。」

ミュウラン「盗聴?」

 

 そう。

 それを聞いて、俺も驚いた。

 まあ、用心深いクレイマンの事だから、そんな事をするだろうとは思ったが。

 なので、俺も協力したのだ。

 

エース「ああ。どうやら、暗号化された電気信号を発信させ、クレイマンの元へと届けられていたみたいだ。」

リムル「欺く為に、ミュウランは死んだと思わせたかったんだ。怖い思いさせてすまんな。」

ミュウラン「いえ…………あの、では、この鼓動は?」

エース「仮初の心臓を参考に、俺とリムルの2人で作った擬似心臓だ。無論、盗聴機能はない。これで、ミュウランは自由だよ。」

リムル「ああ。クレイマンは、あなたに何も出来ない。」

 

 ミュウランは、これで自由の身になったのだ。

 ミュウランが安堵の表情を浮かべる中、ヨウムが話しかける。

 

ヨウム「ハハっ!やったじゃねえか、ミュウラン!お前を縛るもんは、もう何も無くなったってよ!」

ミュウラン「ええ…………!リムルさん、エースさん…………いえ、リムル様、エース様。どんなに言葉を尽くしても、感謝を伝えきれません。忠誠がお望みであれば、私はそれに従います。」

リムル「いや、それは良い。」

エース「だが、少し、手伝ってほしいことがあるんだ。」

 

 俺とリムルは語ることにした。

 何故、ミュウランの力も必要なのか。

 

ミュウラン「何でしょう?」

リムル「今、お前が死んで生き返ったように、紫苑達も生き返る可能性がある。」

真眼「本当…………何ですか?」

ミュウラン「できる…………のですか?」

エース「あくまで可能性の話だ。だが、少しでも成功率を上げる為、できる事は全てやる。手伝って欲しい。」

ミュウラン「分かりました。協力は惜しみません。」

真眼「良かった…………。」

 

 それを聞いたミュウランは快諾して、真眼はホッとする。

 真眼にも、吉報なのは間違い無いだろう。

 

リムル「ありがとう。」

エース「ところで、それが無事終わったら、それからはどうするんだ?」

 

 俺の質問に、ミュウランは少し考える素振りを見せて、口を開く。

 

ミュウラン「私…………せっかく自由になれた身ですけど、人間の短い一生分くらいなら、束縛されても良いと思っています。」

ヨウム「えっ、それって……………。」

 

 つまり、ヨウムと付き合うって事だな。

 それを聞いたヨウムは、顔を赤くして、2人とも、照れる。

 それを聞いたグルーシスは。

 

グルーシス「はっ?えっ?えっ?えっ?えっ?ええっ!?」

 

 グルーシスがそう叫ぶ中、紅丸と真眼がグルーシスの肩に手を置く。

 

グルーシス「慰めはいらねえよ!それに、どうせヨウムは人間だから、100年かそこらの寿命だ。その後は、俺の番って事で。」

ヨウム「何言ってやがる!?そんな事考えてやがったか!クソ狼が!」

グルーシス「あ?今なんつったクソ人間!」

ヨウム「クソ狼って言ってんだよ!」

 

 前向きだねえ…………。

 そう言って、2人は取っ組み合いを始める。

 俺たちは苦笑するが、要件を伝える。

 

エース「ところで、ヨウム。お前にも頼みたい事がある。」

ヨウム「あ…………ああ。旦那達の頼みなら、何でも…………。」

リムル「ファルムス王国の新しい国王になってくれ。」

ヨウム「おう、任せろ!……………って、え?王?」

 

 俺とリムルの言葉を聞いたヨウムは、驚いて、聞き返す。

 どういう理由なのかを、俺たちはヨウムに伝えた。

 

リムル「……………つまりだ。今こちらに向かっているファルムス王国の軍勢を、国王とその幹部諸共殲滅する。」

エース「すると、残された国民が困るだろ?だからこそ、ヨウムの出番だ。新たな王として、ファルムス王国を統治して、俺たちと国交を結んで欲しい。」

ヨウム「簡単に言ってくれるな…………。俺が王だと?」

リムル「良いだろ?俺たちだって魔王になるんだ。お前も付き合えよ。」

ミュウラン「リムル様とエース様は、あなただからお願いしてるのよ。私も応援するから、波乱万丈に生きてみたら?」

ヨウム「う〜ん…………。」

 

 ヨウムは悩んでいた。

 まあ、無理もないか。

 いきなり王になれと言われても、困惑するだけか。

 すると、グルーシスが声をかける。

 

グルーシス「俺も付き合ってやるぜ。そばでお前が死ぬのを待ってやる。」

ヨウム「何い!?」

グルーシス「ハハハッ!」

ヨウム「……………分かった、やるよ。任せてくれ。」

エース「よし。」

 

 そう言って、俺たちは握手をする。

 その後、会議室に皆を集める。

 

リムル「皆、待たせたな。これより、会議を行う。」

エース「議題は、今後の人間への対応と、紫苑達の蘇生に関してだ。」

 

 俺たちはそう切り出す。

 そして、俺たちは話していたのだ。

 ある秘密を、エレン達だけでなく、皆にも明かそうと。

 いつまでも、隠す訳にはいかないからな。




今回はここまでです。
今回は、今後の対応を決める会議の直前までです。
水谷希星は、エースの創世の力によって、支配から解放されました。
やはり、可哀想でしたし。
そして、紫苑の死を知るリムル。
このシーンは、本当に苦しくなりますよね。
エレンが齎した情報を聞いて、2人は魔王になる決意を決める。
エースとしては、ギーツIXになる事で、確実に助ける為に。
ミュウランも救い、いよいよ、会議が始まる。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
いよいよ、ファルムスへの反撃の時が近付いています。
エースに関しては、ファルムスの兵士を蹂躙する際には、ブーストフォームマークIIIを使わせる予定です。
エースが獲得する究極能力などでリクエストがあれば受け付けています。
考えているのは、創世者は、ブーストフォームマークIIIを獲得した際に手に入れた破壊者というスキルと組み合わせて、創世之神になって、創始者は、スエルという読み方ですが、英寿がスエルを乗っ取ったみたいに、ギーツという名前のスキルにしようかなと思いますが、どんな感じにして欲しいとかがあれば、受け付けています。
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