転生したら白狐だった件   作:仮面大佐

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第75話 それぞれの役割

 魔王就任の御披露目を兼ねた祭りを開催する事を決めた俺とリムルは、そのまま会議を進めていた。

 

リムル「さて。お祭りの件はいずれ検討するとして。」

エース「蒼影。魔物の生態系の変化はどうだった?」

 

 俺とリムルはそう聞く。

 ヴェルドラ達の復活で魔国連邦(テンペスト)周辺の魔素量が増えているので、蒼影に森の生態系の調査を頼んでいたのだ。

 俺たちに聞かれた蒼影は、口を開く。

 

蒼影「はい。分身体を各地に放ち調査していますが、大して問題は生じていませんでした。」

エース「そうか。」

蒼影「しいて言えば、北西の森にソードグリズリーが彷徨いていたので、排除しておきました。」

リムル「ふむ。特に問題なしか。」

 

 蒼影はその様に報告する。

 マジか。

 俺がそう考える中、蒼影とシャドーマンの報告を聞いてリムルはそう言う。

 俺はリムルに話しかける。

 

エース「いやリムル。これは問題じゃないのか?」

リムル「うん?」

エース「ソードグリズリーは、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)と同格の魔物だ。つまり、A-ランク相当だぞ。」

リムル「何だと⁉︎」

 

 俺はその様に話しかけると、リムルはスライムの状態で首を傾げる。

 俺がそう説明すると、この問題に気付いたのか、リムルは口を開く。

 

リムル「おいそれって…………普通の冒険者じゃ対処困難なレベルじゃねえか!」

蒼影「ええ。」

 

 リムルがそう言うと、蒼影は頷く。

 ソードグリズリーはA-ランクであり、人間の町に激甚な被害を出しかねない存在なのだ。

 因みに、冒険者ランクと魔物のランクは全くの別物であり、魔物のランクはその危険度を表したランクだ。

 だが、同じランクでも個体差がある。

 具体的には、Eランクで普通の大人より若干弱いと分類されるゴブリンも、ゴブタの様な槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を倒せる規格外の個体がいる可能性もあるのだ。

 まぁ白老達の修行によって鍛えられたゴブタ達の様な存在が他にいる可能性は、限りなくないのだが。

 それに対して、自由組合(ギルド)の冒険者のランクは、自由組合(ギルド)が策定した冒険者の実力を表したものであり、一定の条件を満たし、昇格試験に合格する事でランクが上がる。

 ただし、あくまで自由組合(ギルド)の試験基準で認められた冒険者としての実力を表したランクなので、ランクが同じ魔物でも勝てるわけではない。

 寧ろ、Aランク冒険者が数十人いてAランクの魔物に勝てるかどうかなのだ。

 ちなみに、これらについては、シズさんやフューズから聞いた。

 それを聞いたゴブタは口を開く。

 

ゴブタ「本当っすか⁉︎そんな奴がいるなら、新米を派遣するのは危険っすね。」

蒼影「問題なかろう。お前が甘やかし過ぎているのではないか?」

ゴブタ「オイラ達からすれば、油断出来ない魔物なんすよ!」

蒼影「ならば、もっと修行を厳しくしてもらえば良かろう。」

白老「その通り。」

 

 ゴブタがそんな風に言うと、蒼影はそう返す。

 まあ、甘やかしすぎは良くないが、状況を把握できているのは良いことではある。

 蒼影の言葉に白老も頷くと、ゴブタは口を開く。

 

ゴブタ「この鬼!」

白老「鬼じゃよ。」

黒兵衛「んだ。」

 

 ゴブタの鬼発言に、白老と黒兵衛が笑顔で答える。

 妖鬼(オニ)なのは紅丸、朱菜、蒼影、白老、黒兵衛、真眼であり、紫苑は一度死んで蘇った事もあり、悪鬼(オニ)となっている。

 すると、俺とリムルは口を開く。

 

リムル「けどまぁ。ゴブタ達を鍛えるのは良い事だよ。」

エース「それは確かに。まあでも、その話は今はそれくらいでいいだろう。」

リムル「そうだな。今の問題は魔物の発生だな。犠牲が出てからでは遅いし…………。何か対策を考えないとな。」

 

 リムルがそう言うと、俺はリムルの意見に肯定しつつ、話を本筋に戻す。

 ゴブタ達を鍛えるのはともかく、今は魔物の発生に対する対策を講じるべきだろう。

 すると、ベスターが口を開く。

 

ベスター「でしたら街道に対魔結界を施してはどうでしょうか?」

リムル「対魔結界?」

 

 ベスターがそう提案すると、リムルは首を傾げる。

 対魔結界とは、一定以上に妖気(オーラ)を放っている魔物の侵入を防ぐ結界の事であり、既に内側にいたり、常に妖気(オーラ)を制限している俺やリムル達ならば、問題なく通れるのだ。

 そして、ベスターに続く様にカイジンも口を開く。

 

カイジン「旦那、完成したぜ。結界を発動させる全自動魔法発動機の試作型がな。」

エース「何かコソコソ開発しているのは知っていたが…………全自動魔法発動機というのは?」

ベスター「登録しておいた魔法を、自動で維持してくれる画期的な魔法機器なのです。」

リムル「刻印魔法みたいなものなのか?」

ベスター「ええ。ですが性能と拡張性は段違いです。」

カイジン「俺らこの前の結界騒動の時に全然役に立てなかったからよ。それが悔しくってな。」

 

 カイジンがそんな風に言うと、俺はそう聞く。

 何かをしていたのは知っていたが、それを作ってたとはな。

 ベスターとカイジンは自信満々にそうリムルに語る。

 確かに、ファルムス王国の侵略の際、カイジンやベスター達は、何も出来なくて、歯痒い思いをしていただろうからな。

 

リムル「この短い期間で試作型を作るまでになるとは。(おっさん達凄過ぎるだろ!)」

エース「流石だな。」

 

 それを聞いて、俺とリムルはそう答える。

 流石はカイジンやベスター達だ。

 すると、他のメンツも口を開く。

 

ガビル「時間がある時は、吾輩と黒兵衛殿も協力していたのですよ!」

黒兵衛「んだ。」

朱菜「実は私も少しお手伝いを。」

 

 ガビルがそう言うと、黒兵衛と朱菜はそう言う。

 朱菜達も、ベスター達を手伝っていた。

 

リムル「おぉ!魔国連邦(テンペスト)の魔法技術と科学技術の集大成じゃないか!」

エース「なら、さっそく見せてもらうとするか。」

 

 それを聞いた俺たちはそう言う。

 そうして、俺とリムルは皆と共にベスターが街道に設置した全自動魔法発動機を見に向かった。

 ちなみに、俺は狐の姿で朱菜に抱えられていた。

 ベスターに案内され、街道に設置された全自動魔法発動機を見る。

 その魔法発動機は、中央に魔晶石が設置され魔法式が刻印された魔法盤が回っていて、まるでレコードプレーヤーの様な装置だった。

 

ベスター「魔物の国である魔国連邦(テンペスト)には、高い濃度の魔素が集まっています。これを利用しない手はないと常々考えていました。」

エース「そうして、この魔法発動機が完成したって事だな?」

ベスター「その通りです。この全自動魔法発動機は、大気中に漂う魔素を利用する仕組みになっているのです。」

リムル「これを使えば対魔結界が張れるのか?」

 

 ベスターは俺たちに全自動魔法発動機を見せながらそう説明する。

 リムルがそう聞くと、ベスターは口を開く。

 

ベスター「はい。ただ…利点はそれだけではないのです。」

カイジン「へへっ。」

リムル「対魔結界で魔物の侵入を防ぐのが目的だろ?」

エース「それ以外の利点って、何だ?」

 

 ベスターがそう言うと、カイジンと共に笑みを浮かべる。

 それを見て、俺とリムルはベスターにそう聞くと、カイジンが口を開く。

 

カイジン「フッフッフッ。リムルの旦那。エースの旦那。聞いて驚け。なんとこいつにはな、魔素集積装置が組み込まれているんだ。これを利用すれば、大気中の魔素濃度を低下させる効果もあるんだよ。」

リムル「おぉ〜!まさに今、俺達が抱えてる問題の解決策じゃないか!」

ベスター「その通りなのですよリムル様。ただし、この装置にも問題点はあります。ある程度の濃度がないと効率が悪過ぎて使えないのですよ。」

リムル「けど、この街ではそんな心配はいらんだろ。」

エース「寧ろ好都合だろうな。」

 

 カイジンがそう言うと、リムルはそう叫び、ベスターはそう言う。

 魔物の国故に、魔素の濃度が高く、強力な魔物が発生しやすい事に悩んでいた俺とリムルにとっては嬉しい利点だ。

 スライム姿のリムルは、紫苑の胸から飛び降りて全自動魔法発動機の前に立つ。

 

リムル「とすると。この全自動魔法発動機は、大気中から魔素を集めて自動で対魔結界を張り続けてくれるのか?」

カイジン「まっ、そういう使い方も出来るんだが、それだと魔素が無くなると魔法も消えちまう。なんで燃料は補充出来る様に設計しておいた。」

エース「燃料か………。何を使っているんだ?」

 

 リムルがそう聞くと、カイジンはそんな風に言う。

 俺がそう聞くと、カイジンは口を開く。

 

カイジン「大気中から集めた魔素の結晶。いわゆる魔晶石だ。」

 

 カイジンはそう言うと、魔法発動機の中央に装填している魔晶石を指差す。

 なるほどな………。

 となると、仕組みは大体理解できたな。

 

リムル「ん?魔石なら兎も角、魔晶石をそのまま燃料にするのは非効率過ぎるんじゃないのか?」

エース「リムルの言う通り、魔晶石は魔力とし変換しても九割は無駄になってしまうが………そこは考えているんだろう?」

カイジン「流石はエースの旦那だ。その通りだ。俺らには旦那達が編み出してくれた刻印魔法があるじゃねぇか。」

リムル「あぁ!」

エース「なるほどな。」

 

 リムルはそんな疑問を口にする。

 確かに、魔晶石をそのまま魔力として変換しても、9割は無駄になる。

 カイジンにベスターがそれを考えていないとは思えず、俺がそう聞くと、カイジンはそう言う。

 すると、ベスターが口を開く。

 

ベスター「無駄を極限まで減らせる刻印魔法であれば、1割でも十分な効果を期待出来るのです。」

カイジン「その無駄になった魔素だって消えて無くなるわけじゃねえ。」

エース「当然、再利用も可能だな。」

 

 ベスターとカイジンがそう説明して、俺がそう言うと、リムルは歓喜の表情を浮かべていた。

 これは、事実上の永久機関と言えるだろう。

 俺とリムルは口を開く。

 

エース「魔素濃度が低下すれば、魔物や妖魔の発生率が小さくなるからな。」

リムル「ゴブタ達には対処困難なモンスターが生まれる可能性はゼロに近づく訳だ。実に素晴らしい発明だな!この国の特性にマッチしていると思うよ。」

ガビル「うむ。」

 

 俺とリムルがそう言うと、ガビルも頷いた。

 すると、ベスターはこの発動機の更なる機能に関して口を開いた。

 

ベスター「しかも利用可能な魔法は対魔結界だけではないのです。」

リムル「ん?」

エース「まだ何かあるのか?」

ベスター「扱える魔法に制限はありますが…………。くっ…………!」

 

 ベスターがそう言うのに対して、俺とリムルはそう聞く。

 そう言って発動機を止めて魔法盤を外そうとするベスター。

 だが、魔法盤が重くて持ち上がらない。

 

ゲルド「手を貸そう。」

 

 それを見ていたゲルドが代わりに魔法盤を外して皆に見える様にする。

 

ベスター「この魔法式が刻印された魔法盤を入れ替える事で、様々な魔法効果を発動出来るのですよ。」

『おぉぉ!』

 

 ベスターはそんな風に言うと、ベスターの言葉に皆が驚いた声を上げる。

 魔法盤を入れ替えるだけで様々な魔法を発動出来ると聞いたのだから。

 

エース『レコードプレーヤーと殆ど変わらない機能だな。リムルと俺が様々な音楽を楽しめるものとしてベスター達に説明はしたが、それを元にこれほどの魔法装置を作り上げるとはな。もし小型化や大型化できれば、様々な用途で使えるだろうな。』

 

 俺はそれを見て、魔法発動機の運用について考えていた。

 様々な用途で使えるポテンシャルを秘めているからな。

 すると、ベスターが咳払いをしつつ、口を開く。

 

ベスター「オホン!…………では実際の運用について、私の発案を述べさせていただきます。まず街道の石畳に紛れて全自動魔法発動機を等間隔に設置。対魔結界を発動させます。魔素濃度が高ければ、燃料の補充も交換も必要ありません。日々の業務は結界に異常がないか見回るだけで済みます。」

エース「実に良く考えられている。流石はベスターだ。」

リムル「うん。使い勝手もいいし汎用性も高い!」

 

 ベスターはそう発表する。

 確かに、警備隊の業務もかなり楽になるだろうな。

 それを聞いた俺は、口を開く。

 

エース「それで、そう結界の魔法式の刻印はどうなっているんだ?」

カイジン「フッフッフッ。ドルドの奴が完成させてるよ。発動機の量産は黒兵衛さんに頼んであるし、旦那達の許可を待ってたのさ。」

黒兵衛「んだべ〜。」

リムル「そうか。なら現場の指揮はベスターに任せたいが構わないか?」

ベスター「授業の頻度も少なくなりましたし、是非とも私にお任せを。」

エース「よし。なら明日からでも頼む。」

ベスター「承知しました。」

 

 俺がそう聞くと、カイジンはそう答える。

 手回しがいいね。

 こうして、ベスター達が開発した全自動魔法発動機による対魔結界の発動設置が決まった。

 

ゲルド「ちと重いし、設置に関しては父王と俺達に任せてくれ。」

ベスター「それは助かります、ゲルド殿。」

 

 ベスターとゲルドはそう話す。

 すると、皆の背後から聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。

 

ヴェルドラ「クワ〜ハッハッハッハ!」

 

 皆が振り返ると、そこにはヴェルドラが立っていた。

 

ヴェルドラ「それが完成すれば、我も好き放題に妖気オーラを解放出来るのだな!」

 

 ヴェルドラはそんな風に言う。

 ヴェルドラの発言に、この場にいた皆が絶望的な表情を浮かべた。

 

リムル「出来ねぇよ、馬鹿野郎!そんな事したらこの国の大半が死んでしまうわ!」

カイジン「それは、流石に容量がパンパンっていうか……………。」

ベスター「パーンとなると言いますか。アハハ…………。」

 

 ヴェルドラの発言にリムルは怒鳴り、カイジンとベスターは冷や汗を流しながら苦笑いを浮かべていた。

 そりゃあ、ヴェルドラの妖気(オーラ)は凄まじいので、容量があっという間にパンパンになる。

 無理だな。

 

ヴェルドラ「いやしかし…………我もずっと妖気(オーラ)を抑え込んでおるので…………そろそろ疲れて…………。」

リムル「我慢しなさい。」

ヴェルドラ「ぴえん。」

 

 ヴェルドラがそんな風に言うと、リムルにそう切り捨てられ、ヴェルドラは項垂れた。

 すると、ヴェルドラは口を開く。

 

ヴェルドラ「そもそも、リムルとエースは妖気オーラを解放しなくても大丈夫なのか?」

リムル「俺?俺は全部胃袋に押し込んでるからな。なので、俺は妖気(オーラ)を解放したいとか、そんな欲求は一切ないんだ。」

エース「俺は、創世の力を使うのに、かなりの妖気(オーラ)を消費するからな。問題ない。」

 

 ヴェルドラがそう聞いてくると、俺とリムルはそう答える。

 実際、創世の力を使うのには、かなりの妖気(オーラ)を消費するわけだし。

 すると、ディアブロが口を開く。

 

ディアブロ「しかし、リムル様、エース様。ヴェルドラ様の様に、完璧に妖気(オーラ)を抑え込むのは至難の業です。紅丸殿達でさえ、僅かな妖気(オーラ)は漏れ出ているのですから。」

ヴェルドラ「うむ!ディアブロよ!お前は良く分かっておる様だな!」

ディアブロ「桁違いに膨大な魔素量を誇るヴェルドラ様達でございますから、それを維持するのは大変でございましょう。」

 

 ディアブロはそんな風に説明をする。

 なるほどな。

 すると、リムルはヴェルドラに話しかける。

 

リムル「そうなのか?ヴェルドラ。」

ヴェルドラ「うむ。故に、そろそろ何処かでドカ〜ンと発散させたいのだよ!」

エース『どこかでドカ〜ンって…………もしそうなったら、確実にその地は死の大地となるな。ヴェルドラの高濃度の魔素によって強力な魔物が大量発生し、魔素溜まりから暴風大妖渦(カリュブディス)級の化け物が生まれるだろうな。前世の世界でヴェルドラを例えるなら、まさに核兵器だな。歩く核兵器とか、やばいだろ。』

 

 リムルがそう聞くと、ヴェルドラはそんな物騒な事を口にする。

 俺はそう考えていた。

 すると、同じ様な事を思ったリムルが口を開いた。

 

リムル「なるほど…………確かに邪竜だわ。」

ヴェルドラ「あんまりではないか⁉︎」

 

 リムルの言葉にショックを受けるヴェルドラだった。

 

エース「まぁ、それについてはちゃんと考える。もう少し我慢してくれ。」

ヴェルドラ「よかろう!まだ我にも余裕があるが、なるべく早くに頼むぞ?」

 

 俺がそう言うと、ヴェルドラはそう言う。

 こうして、ベスター達が開発した全自動魔法発動機で街道に対魔結界を張る事が決まったのだが、ヴェルドラの妖気(オーラ)問題という新たな問題が出て、頭を悩ませるのだった。

 その頃、会議室では、椅子に座ったまま鼻提灯を出してイビキをかいて一人寝ているゴブタの姿があった。

 そんなゴブタを見て、俺とリムルが呆れて溜め息を吐いていると、白老は黒い笑みを浮かべながら凄まじい怒気を放っていた。

 そして、白老は鞘に納刀状態の刀でゴブタの頭に一撃を叩き込んだ。

 

ゴブタ「ぐっギャア!」

 

 その一撃でゴブタは目を覚まし、白老とシズさんに説教されたのだった。

 頭に大きなタンコブを生やして涙目で座るゴブタだった。

 そんなゴブタを余所に、俺たちは会議を再開する。

 

リムル「それじゃあ、報告も出揃った事だし。」

 

 そう言ってリムルは、スライムの姿のまま席から躍び跳ねて、何かのスクロールを取り出して、ゲルドの前に着地する。

 

リムル「はい。」

 

 リムルがゲルドにそのスクロールを渡すと、ゲルドはそれを広げてみる。

 

ゲルド「こ…これは。」

 

 それを見たゲルドは、そんな風に反応する。

 そこに描かれていたのは、中央に天まで届く様な摩天楼が聳え立つ自然と建物が見事に調和した都の図面だった。

 

エース「この建設をお前と猪八戒に任せたい。」

リムル「ああ。エースと一緒に考えてコツコツと描いてたミリム達の為の居城さ。」

エースお前達なら見事に完成させられると信じている。」

リムル「どうだ?引き受けてくれるか?」

ゲルド「リムル様……エース様…………。」

 

 俺とリムルはそう言う。

 ちょくちょく話し合い、この設計図を完成させたのだ。

 俺とリムルからの大きな仕事に、ゲルドは少し不安げな表情を浮かべていた。

 

エース『ボアやる気があるみたいだが、ゲルドは少しプレッシャーを感じている様だな。まぁ無理もないな。』

 

 俺はそんな風に感じた。

 ボアはやる気がある様だが、ゲルドは不安げに感じていた。

 俺がカイジンに目線を向けると、俺の意図を理解したカイジンは口を開いた。

 

カイジン「任せろよリムルの旦那。エースの旦那。俺も行ってボアさんとゲルドさんをフォローしよう。ミルドの野朗も連れて行くから、旦那達の案を基にした都市設計なんぞは任せられるだろうさ。」

エース『カイジン達が行ってくれるなら安心だ。これで大丈夫だろう。』

リムル「ゲルド、お前なら大丈夫だ。もちろん困った事があったら相談に乗るし、気楽な気持ちでやってみないか?」

エース『気楽に出来る事ではないが………リムルなりにゲルドの事を思って考えた事だ。小さな悩み事は、より大きな仕事で吹き飛ばすか…………。』

 

 カイジンがそう言うと、俺はそう考える。

 リムルの発言に対しても。

 クレイマン配下の魔人達との連携が上手くいかずに悩むゲルドの為に、大きな仕事を任せて気持ちを切り替えさせようしたのだろう。

 だが、ゲルドの顔はまだ晴れなかった。

 

ゲルド「し………しかしこの様な大仕事、万が一にでも失敗したら…………。」

リムル「いいっていいって。失敗しても人が死ぬ訳でもなし。」

エース「それに、失敗したとしても、それはゲルドの経験値になる。やって損はないと思うぞ。それに、金の損失なら、また稼げばいい。」

 

 ゲルドがそう言うと、リムルはそう言う。

 やはり、どうして失敗した事を考えてしまうのか、慎重になっていた。

 まあ何せ、ミリム達の住む居城だ。

 失敗したら、命はないと思ってしまうのも無理はない。

 すると、ゲルドは口を開く。

 

ゲルド「…………リムル様。エース様。猪人族(ハイオーク)の各村落へ人材集めに出向いても宜しいでしょうか?」

リムル「うん?」

エース「ほう…………。」

ゲルド「情けないですが、現状では力不足を否めません。魔導王朝サリオンとの間に新たな街道整備も必要です。まして、こんな大きな企画を前にしては…………。」

 

 ゲルドはそんな風に聞いてくる。

 まあ、気持ちは分かるけどな。

 絶対に失敗出来ないプレッシャーがあるから、確実に行えるようにする為に。

 それを聞いた俺とリムルは頷きあうと、口を開く。

 

リムル「ゲルド。猪人族(ハイオーク)の配下を多く使いたいという気持ちは良く分かるよ。」

エース「でも、労働力なら捕虜にした者達がいる。その者達を指導して、キッチリと鍛えるんだ。」

ゲルド「しかし………しかし彼らでは…………。」

 

 俺とリムルがそう言うと、ゲルドは捕虜達とではこの大仕事を熟せないという不安な気持ちになっていたのか、そんな風に言う。

 そんなゲルドの肩を、ボアが優しく手を乗せる。

 

ボア「ゲルドよ。リムル様とエース様はお前なら出来ると信じて下さっているのだ。」

ゲルド「父王………。」

エース「ボアの言う通りだ。他種族の指導にお前が苦労しているのは分かっている。猪人族(ハイオーク)なら、連携も確実だろう。だが、それだと捕虜達は何をすればいい?」

リムル「エースの言う通りだ。元はクレイマン軍の者達だが、この国での待遇は保証している。多種多様な種族の楽園を目指す俺達としては、出処による差別なんて断じて認めない。」

 

 ボアがそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 誰もが幸せになる世界を目指している俺としても、出処による差別は認めないからな。

 それを聞いたゲルドは。

 

ゲルド「そう…………ですね。俺達とて、かつては仇なす敵でありながら、リムル様とエース様に救われた身。余所の者を軽んじるなど…………。」

リムル「違うぞゲルド。お前はずっと引け目を感じている様だけど、その必要はないんだ。」

エース「リムルの言う通りだ。遠慮は要らん。身内にする様に厳しく接して構わない。お前は誰よりも責任感があるし努力家だ。決していい加減な指示は出さないし、厳しくても慕う者は多い。」

 

 ゲルドがそう言う中、俺とリムルは、ゲルドに近寄り、その腹に拳を当てる。

 

リムル「お前にはボアと同じ人を従える力がある。この建設で多種多様な魔人達を従える事で、その力はより研ぎ澄まされるだろう。」

エース「慌てる必要はない。今までの経験を生かして、お前の言葉で新しい仲間を従えて欲しい。」

 

 俺とリムルはそう言う。

 俺とリムルの言葉によって、吹っ切れたのか、ゲルドの迷いは完全になくなった。

 そして、ボアと一緒にその場で跪き手を合わせる

 

ゲルド「この大仕事。是非とも俺達にお任せくださいリムル様。エース様。」

ボア「俺も息子の成長の為、出来る限りの事を致します。」

リムル「うむ。頼んだぞ!」

エース「頑張れよ。」

 

 ゲルドとボアが跪きながらそう言うと、俺とリムルはそう答える。

 こうして、ボアとゲルドにミリム達の新たな居城の建設を任せる事にした。

 すると。

 

紫苑「ボアとゲルドばかりズルいです〜!」

 

 その様子見ていた紫苑は、そんな風に言う。

 やっぱり、言うと思った。

 

エース「適材適所だって。」

リムル「紫苑。お前にも立派な仕事があるだろ?」

紫苑「お料理ですね!」

リムル『違うっての!』

 

 俺とリムルが紫苑を落ち着かせる様にそう言うと、紫苑はそう言う。

 紫苑の発言に心の中で叫ぶリムルだった。

 すると、真眼と紅丸が口を開く。

 

真眼「紫苑。料理だけでなくお前には別の仕事もあるだろ。」

紅丸「そうだぞ、紫苑。俺が留守の間はしっかりとリムル様とエース様をお守りしてくれ。」

紫苑「もちろん!」

 

 真眼の言葉に続く様に、紫苑にそう頼む紅丸だった。

 紫苑がそう答える中、リムルは口を開く。

 

リムル「さて…………。今日の議題はこんなところか。」

エース「リムル。まだあるだろう。」

リムル「えっ?…………おっと、そうだった。」

 

 リムルが切り上げようとすると、俺はそう言う。

 俺にそう言われて、リムルはまだ確認しないといけない事があったと思い出して、ディアブロに話しかける。

 

リムル「ディアブロの作戦の進捗状況を聞いておかないと。」

ディアブロ「はい。それでは説明します。」

 

 リムルがそう言うと、ディアブロは俺とリムルに向かって臣下の礼をしてから、説明を始める。

 

ディアブロ「まずはヨウム殿ですが………。王侯貴族相手に交渉は厳しいでしょう。そこで、エドマリスから教育を受けさせています。」

ゴブタ「ヨウムさんも大変っすね………。」

ディアブロ「今後の状況次第では、エドマリスを仲間にしてみるのも面白いかもしれません。」

リムル「ほう………エドマリスをか…………。」

エース「それもありかもな。」

 

 ディアブロがそう言うと、ゴブタは同情するかの様にそう言う。

 まあ、元々ヨウムは平民だからな。

 貴族として相応しい振る舞いを知るべきだろう。

 ディアブロの提案には、俺とリムルも頷く。

 ちなみに、欲深い王だったエドマリスは俺とリムルの力を目の当たりにして、そこから紫苑とウルティマの拷問や尋問によって、すっかり大人しくなった。

 そして、去り際に見た魔国連邦(テンペスト)の美しくも穏やかな光景を見て色々と改めて人が変わった様に真面目になっていると報告は聞いている。

 それもありかもな。

 すると、ディアブロは口を開く。

 

ディアブロ「そして弟のエドワルド新王ですが、やはり裏でコソコソと動き出した様です。」

エース「予定通りだな。」

リムル「けど、軍を再編して動かすには数ヶ月は必要だろ?」

ディアブロ「クッフッフッ…………!早く終わらせたいので、急がせるよう手を回しております。」

リムル「は?って………それじゃあ俺達の準備が…………。」

 

 ディアブロはそう言う。

 やっぱり、動き出したか。

 リムルがそう聞くと、ディアブロはそう答える。

 私情が混じってるな。

 リムルがそう言うと、ディアブロは口を開く。

 

ディアブロ「問題ございません。部隊の編成は紅丸殿にお任せしておりますから。」

紅丸「ああ。準備万端だ。表立って動く部隊と、影で動く部隊と…………両方の準備が整っている。逆に皆が参加したがるので、選別が大変でしたよ。」

リムル「お…………おう…………。」

エース「そうか。」

 

 ディアブロはそう言いながら紅丸を見ると、紅丸はそう答える。

 仕事が早いな。

 すると、ディアブロが口を開く。

 

ディアブロ「それから…………問題という程ではないのですが…………。」

リムル「何だ?」

ディアブロ「まだレイヒムが戻ってきておりません。」

リムル「レイヒムが?」

エース「俺とリムルのメッセージを渡していただろう。」

リムル「もしかして、無事に届いていないのか?」

 

 ディアブロはそう言うと、リムルは続きを促す。

 ディアブロの言いたい事は、レイヒムが戻っていない事だった。

 俺とリムルがそう聞くと、ディアブロは口を開く。

 

ディアブロ「いえ。レイヒムには水晶球を持たせて、イングラシア王国の首都までは、手の者に護送させました。王都には結界が張られている為、手の者は侵入できませんが、レイヒムが中に入るところまでは確認できております。」

リムル「イングラシア?」

ディアブロ「イングラシアとルベリオスの間には、転移門と呼ばれる特殊な魔法回廊が存在しますので、レイヒムにはそれを使うよう命じております。」

 

 ディアブロはそんな風に報告する。

 転移門か…………。

 すると。

 

創世之神『告。転移門とは、特殊な次元を巡ることにより、二点間による行き来を一瞬で行える魔法陣の事です。』

 

 ディアブロの話に合わせる様に、創世之神(ギーツ)が転移門について説明してくれた。

 それがイングラシアとルベリオスの間にあるのか。

 すると、ディアブロは口を開く。

 

ディアブロ「レイヒムが戻れば報告が入る手筈なのです。」

エース「その報告がまた入らないという事か………。」

リムル「もしかして、口封じに殺されたとか?」

ディアブロ「いいえ。今のところその気配はありません。私のユニークスキル、誘惑者(オトスモノ)は支配した対象が死んだら、その魂を奪えますので。」

リムル「まだ生きているのは間違いないという事だな。」

エース「まぁ、生きているならいいんだけどな。口封じされて俺達が犯人扱いされなければだけど。」

 

 ディアブロがそう報告して、俺がそう呟く中、リムルがそう聞くと、ディアブロはそう答える。

 口封じに殺して、その罪を俺たちになすり付ける可能性は十分にあるからな。

 

リムル「だが、厄介だな…………。

エース「ああ。情報が少な過ぎて正確に状況を読み取れない。」

蒼影「申し訳ありません。ルベリオスへの潜入は流石に危険が大きく…………。」

 

 俺とリムルがそう言うと、蒼影は謝りながらそう言う。

 そんな事をしようとしてたのか。

 

エース「いや。無理をする必要はない。」

リムル「エースの言う通りだ。向こうにはヒナタがいるしな。無理をしてもろくな事にならないさ。」

シズ「ヒナタ…。」

 

 俺とリムルはフォローする様にそう言う。

 ヒナタの名を聞いたシズさんは、悲しげにヒナタの名を呟く。

 シズさんとしては、俺たちとヒナタが戦うことは望んでいないだろうからな。

 

紅丸「坂口日向(ヒナタ・サカグチ)………。」

リムル「俺は前回の事は水に流そう的なメッセージを込めておいた。敵対せずに共存する道を選んでくれるなら、それが一番理想的だ。」

エース「西方聖教会が動かなければ、ディアブロの作戦が失敗する事はないからな。」

 

 紅丸がヒナタの名前を口にする中、俺とリムルはそう言う。

 すると、紅丸達が口を開く。

 

紅丸「俺としてはここで蹂躙を決しておきたいところですが…………。」

朱菜「エース様とリムル様が聖人ヒナタと戦う中、(わたくし)達は襲撃を受けました。これは間違いなく連動しており、絵を描いた者がいると考えられます。そして、それを裏付ける様にクレイマンが黒幕の存在をほのめかした。」

エース「“あの方”だな。」

 

 紅丸がそう言う中、朱菜はそう言う。

 確かに、クレイマンは魔王達の宴(ワルプルギス)にて、ミリムが操られていない事を知った際、ある事を言った。

 

クレイマン『ふ、ふざけるな……………!()()()より授かった魔宝道具(アーティファクト)に私の全魔力を注いだ究極の操魔王支配(デモンマリオネット)だぞ?例え意図的であろうと、受けたなら最後、自らの意思を失い…………!?』

 

 と。

 つまり、クレイマンのバックに何者かが居る。

 そう考える中、白老は口を開く。

 

白老「左様ですな。其奴が動く事も視野に入れておかねばならぬじゃろう。」

朱菜「断じて見逃す事の出来ない敵です。」

ジーン「俺も朱菜の言う通りだと思うよ。その黒幕が、ファルムス王国の侵略の裏で糸を引いていた可能性が高いしね。」

 

 白老がそう言うと、朱菜とジーンもそう言う。

 それは一理ある。

 

リムル「そうだな…………。」

エース「朱菜達の言う通りだ。」

リムル「そいつが今回も関与してくるなら、ヒナタが動く可能性もあるのか。」

 

 俺とリムルはそんな風に言う。

 すると、ここでリムルはある事に気付いたのか、口を開く。

 

リムル「ヒナタってさ、自分の意思でなく誰かに頼まれたか命じられたかして俺達を狙ったのかな?」

『え?』

 

 リムルの言葉に皆は思わず、声を上げた。

 すると、代表して紅丸が口を開く。

 

紅丸「どういう意味です?」

リムル「う〜ん…ぶっちゃけて言うとさ、ヒナタが誰かに命じられて動くとは思えないんだよね。」

シズ「リムルさんの言う通りだと思うよ。ヒナタは自分が信じた通りに動く素直な子だから。」

エース「確かに…………。俺との戦闘でも、誰かに命じられて動いたと言う訳ではないというのは、あの時のヒナタとの会話でも感じる事が出来た。」

 

 紅丸がそう聞くと、リムルがそう言い、シズさんと俺はそう言う。

 ヒナタと直接戦った俺は分かる。

 ヒナタが誰かに命じられたのではなく、自分の意思で俺たちを潰しに来たのだと。

 すると、カイジンが口を開く。

 

カイジン「旦那達とシズさんの言う通りだな。聖騎士団長であるヒナタが言う事を聞く相手は神ルミナスだけだ。」

ヴェルドラ「神ルミナス…………。ルミナスだと?」

カイジン「あの女には法皇すらも口出しできねえってのは有名な話だぜ。」

 

 カイジンがそんな風に言うと、ヴェルドラが反応する。

 ルミナスか…………。

 という事は、可能性はあるかもな。

 

エース「そうか。ヒナタは、こっちの話を聞かなかったからな。」

紅丸「ヒナタに命令出来る存在はいないか………。」

朱菜「では、時期が重なったのは偶然だと?」

リムル「誰かに唆された可能性はある。だが…………。」

ディアブロ「その者がヒナタに命令できたとは思えないという事ですね。」

 

 俺はそう言う。

 仮面ライダーだと言っても、話を聞いてくれなかったし。

 紅丸と朱菜がそう呟く中、リムルがそう言うと、ディアブロはそう言う。

 

リムル「その通りだ。」

紅丸「”あの方”とやらはファルムス王国を動かし、魔王クレイマンをも操り、俺達の国を滅ぼそうとした。しかし、ヒナタを好きに動かせる訳ではないという事か。」

ディアブロ「ならば、今回は西方聖教会は動かないとリムル様とエース様はお考えなのですか?」

リムル「そこなんだよな………。」

 

 リムルが頷くと、紅丸とディアブロがそう言い、会話しながらリムルは口を開く

 

リムル「こちらからは敵対したくないと俺はハッキリ告げてるし。それを踏まえた上で、俺とエース………そして、ヴェルドラまでいる魔国連邦(テンペスト)に敵対するほどヒナタは馬鹿じゃないだろう。」

エース「ヒナタが俺達を邪魔だと言ったのは、それは、西方聖教会の…………ルミナス教の教義が魔物との共存を認めていないからだろうな。」

 

 リムルがそう言うと、俺はそう言う。

 流石のヒナタも、そんな無謀な真似をするとは思えないからな。

 

リムル『だが、それだけではないのかもな。』

 

 すると、リムルが念話で俺にそう語りかける。

 

創世之神『告。様々な思惑が関与している可能性が高まりました。一連の事象は、すべて関連しています。ですが、全てが一つの意思のもとに起きていないと推測されます。』

 

 創世之神(ギーツ)はそんな風に言う。

 だろうな。

 智慧之王(ラファエル)から同じ事を聞いていたリムルに、俺は話しかける。

 

エース『やっぱり、黒幕は一人じゃないんだろうな。』

リムル『そう考えれば、色々と納得がいくからな。』

 

 俺とリムルは思念伝達でそう話す。

 そこから、事態を整理していく。

 今回の一件は、クレイマン、ファルムス王国、ヒナタの思惑が一致した。

 クレイマンは俺たちが邪魔だったが、それと同時に利用しようと考えていた。

 だからこそ、ヒナタと俺たちが潰し合うのを歓迎していた。

 ファルムス王国は盟主である俺達が邪魔だった。

 俺達がヒナタに始末されると期待していた筈。

 ヒナタとしては、教義を順守する立場から魔物である俺達を見過ごす事は出来なかっただろうし。

 それぞれの思惑が一致し、状況が動いた。

 だが、結果は俺達はヒナタから逃れファルムスは敗退し、クレイマンは俺達に倒された。

 それに、三者の思惑が1人の意思によって動いていたと仮定したら、矛盾が生じる。

 俺とリムルが念話で会話を続けていると、ディアブロも俺たちと同じ考えに至ったのか、口を開く。

 

ディアブロ「複数の利害が絡み合うから、ヒナタだけの意思で決定されていないと考えるべき。そういう事でしょうか?」

リムル「流石だな、ディアブロ。」

エース「俺達は勘違いしていたのかもな。」

紅丸「と言いますと?」

 

 ディアブロがそう言うと、リムルはディアブロにそう言う。

 俺がそう言うと、紅丸がそう聞く。

 

エース「今、ディアブロが言った様に、黒幕は一人ではないという事だ。」

リムル「そいつらも利害が一致していないせいで、足並みが揃わないんじゃないかな?」

ゲルド「なるほど。」

リグルド「流石はリムル様とエース様。」

 

 俺とリムルがそう言うと、ゲルドとリグルドはそう言う。

 すると、紅丸が口を開く。

 

紅丸「そいつらとクレイマンの言う“あの方”とやらは結託していると?」

リムル「それは分からん。」

エース「だが、情報が足りないのに思い込みで行動するのは危険だ。」

カイジン「ヒナタが命令じゃなく何かのしがらみで動いていたとするなら、納得だな。」

黒兵衛「んだ。」

 

 俺とリムルがそう言うと、カイジンと黒兵衛はそう言い、皆も納得した。

 すると、ディアブロが口を開く。

 

ディアブロ「クッフフフ。では私はもう一度聞き込みを行うとしましょう。エドマリス達に情報をもたらしたのは商人だったそうですが、今考えれば、怪しい事この上なしですから。」

リムル「待てよ。商人か………。」

エース「なら、帝国の可能性があるな………。」

 

 ディアブロがそんな風に言うと、その可能性に行き着いた。

 それもあるな。

 すると、ディアブロが口を開く。

 

ディアブロ「どうかなさいましたか?」

リムル「戦ってのは金が動くものだし、戦争屋ってのは何処にでもいる。」

エース「そんな商人達が利益を求めて暗躍する可能性もあり、その商人達が帝国の回し者の可能性もあると言う事だ。」

 

 ディアブロがそう聞くと、俺とリムルはそう言う。

 実際、東の帝国に関しては、ガゼル王などから、話を聞いていた。

 帝国が動いている可能性も無きにしも非ずだ。

 

ディアブロ「なるほど…………。」

ウルティマ「確かに、その可能性はあるね。流石はエース様。」

 

 俺とリムルの話にディアブロとウルティマは納得した。

 俺たちは人間態に変わると。

 

エース「朱菜。クレイマンの城から回収した帳簿を調べて出入りの商人の記録を洗い出してくれ。」

朱菜「承知しました。」

リムル「ディアブロ。ファルムスと取引のある商人を全て調べ上げろ。」

ディアブロ「心得ました。我が王よ。」

エース「紅丸は、援軍を厳選し直して、何が起きても対応出来る様に部隊を編成しろ。」

紅丸「ああ。お任せを。」

リムル「リグルド。派手に祭りを開催するからその準備をしっかりと行ってくれ。」

リグルド「言われるまでもありませんぞ!」

エース「ゲルド。お前はボアと共に全力で仕事に励んでくれ。」

ゲルド「無論です。」

ボア「お任せを。」

リムル「白老は紅丸の補佐を頼む。」

白老「御意。」

エース「ガビルはリグルドに協力してくれ。」

ガビル「ははっ!」

リムル「そして、リグルは各種族の来訪に供えてこの街の警備体制の見直しを行え。」

リグル「任せてください。」

 

 俺たちはそんな風に指示を出していく。

 そして、リムルは紫苑に話しかける。

 

リムル「そして紫苑は…………。」

紫苑「フフっ。」

 

 リムルが紫苑に何かを言いかけると、紫苑はリムルに純粋な眼差しを向けていた。

 

リムル「え〜と紫苑は………あ〜…………。」

紫苑「ウフフ………。」

リムル「あれだ!嵐牙(ランガ)と共に俺達の護衛だな!うん!」

紫苑「はい!」

嵐牙「お任せください!我が主!」

 

 リムルがそう言うと、紫苑は明るく返事して、嵐牙(ランガ)も元気良く影から飛び出して来た。

 

エース「真眼もウルティマも俺の護衛を頼む。」

ウルティマ「任せてエース様!」

真眼「分かりました。」

 

 俺はそう言うと、ウルティマと真眼はそう答える。

 すると。

 

ヴェルドラ「我は?」

 

 ヴェルドラはそう話しかける。

 そういえば、ヴェルドラはどうしようかな。

 すると、リムルは口を開く。

 

リムル「ああ〜…………ヴェルドラは皆の邪魔をしない様に。」

ヴェルドラ「任せるが良い‼︎」

エース『不安だが…………。』

 

 リムルがそう言うと、ヴェルドラは胸を叩き、そう言う。

 そして、俺はジーンに話しかける。

 

エース「ジーンも、ギロリさんやニラムさんと連携して、事に当たってくれ。」

ジーン「分かった。俺に任せて。」

 

 俺がそう言うと、ジーンはそう答える。

 こうして、魔王となってもいつも変わらぬ感じで会議は終わったのだった。

 そんな中、神聖法皇国ルベリオスでは、会議室と思われる場所に人が集まっていた。

 すると、扉が開き、人たちの視線が扉の方へと向くと、そこからヒナタが入ってくる。

 ヒナタはコの字に配置されているテーブルのうち、二つのグループが座っていない場所の方に向かうと、口を開く。

 

ヒナタ「…………待たせたわね。それでは、法皇両翼合同会議を始めましょう。議題は暴風竜の復活……………そして、新たな2人の魔王の誕生について。」

 

 ヒナタはそんな風に言う。

 神聖法皇国ルベリオスでも、俺たちへの対処についての会議が始まろうとしていた。




今回はここまでです。
今回は、テンペストの会議の終了までと、ルベリオスの会議が始まるまでです。
ヴェルドラはオーラを抑えていますが、いつ暴発するのか。
暴発したら最後、テンペストが終わりますからね。
黒幕についても話し合う中、会議は終了した。
そして、ルベリオスでも会議が始まろうとしていた。
果たして、どうなるのか。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転スラの映画の第二弾が、蒼海の涙だというのが発表されましたね。
エルメシアも話に関わるみたいですし、どうなるのか楽しみです。
今後の展開などでリクエストがあれば、活動報告から承っております。
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