御三家に生まれたので生存戦略を遂行する   作:超甘味

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妄想と捏造の産物とご理解ください〜
では行ってらっしゃいませ。

アンケートの結果待ち&作者が執筆中の長期休載ってみんな暇だろ?って事でオマケ。




そうだな、自慢の息子だ。

 

 

 禪院直毘人side

 

 ガキが生まれた。1990年1月3日、未だ新年の騒ぎが収まらない冬の日だった。

 何番目のガキかは覚えておらん。ただ俺の血を継ぐ末っ子程度の認識で十分だった。

 

 

「無事に産まれたそうだな。男か?」

 

 

 初めてあのガキと会った時に発した言葉はこれだ。

 俺は別に爺さん共のように、男尊女卑ではない。だが、禪院家で女は生きづらい。術式の件は置いておくにしても、せめて性別は男であれというちょっとした懇願だった。

 

 

「…!直毘人様、此度は誠にお慶び申し上げます。宿願のご子息様です」

 

 

 男と聞いた時は少し息を吐いた。きっと誰にもバレてはおらんだろう。当主が子供なんぞに一喜一憂しておったら笑いものになることじゃて。まぁ、俺は気にせんがな。

 

 

「ハッハッハッ!そうかそうか、なら今度こそ禪院家を継ぐ者かもしれんな」

「えぇ、我々と致しましても術式に期待で御座います」

 

 

 言うなればこれはお世辞だろう。とりあえず言っときゃどうにかなる、と加茂の当主も言っておったわい。

 

 

 俺の跡(禪院)を継ぐということは相伝でなければならんのだ。

 相伝を発現する確率は非常に低い。歴代当主に相伝以外も居たには居たが、彼らの扱いは酷かったことよ。家臣の傀儡である当主なんぞ居ない方が良かったのになぁ……。

 

 

 子供に対して「今度こそは」と、口から零れるのも何度目か……、少なくとも今回で3回目であることは間違いない。幾年か前にもこのガキの腹違いの兄達に同じような言葉をかけた。

 だが誰一人として相伝を発現することは無かった。まぁ、相伝なんぞ当たればラッキーという程度の認識よ。

 

 

「初の出産ながら良くやった」

「ありがとうございます」

 

 

 ガキを産んだのは何人目かの妻だ。

 禪院の属家、かつては名家だった家から嫁いできた女だ。黒髪で金色の目を持つこの女は緩く微笑む姿がよく似合っていた。

 出会った当初は感情が抜け落ちたように無表情だったから驚いたものよ。ここまで人は変わるのかと少し感心したぞ。

 

 

「それで直毘人様、この子の名前はどうします?」

「そうだな……、俺の子には何れ呪術界を掌握してもらいたい」

 

 

 1度は夢見るであろう?己が最上位に立つのを。

 俺はもういい歳をしているから無理だが、俺の子にはそれが出来る可能性がある。これは一種の運試しだ。

 

 

 それに、つい1ヶ月前には五条家に相伝と六眼の合わせ持ちが生まれたと聞いた。これは時代が変わるだろう。

 これから生まれる子たちは総じて桁違いに強くなると俺は思っている。つまりだ、今回生まれたガキには期待しているんだ。これはお世辞でもなんでもないぞ。

 

 

「……征哉だ、こいつの名は禪院征哉」

 

 

 だから名付けた。征服の征を取って『征哉』と。我ながらいい名だと自惚れる。響きも良いしな!

 

 

「むう、んぅ……」

 

 

 1歳になればガキは母音をよく発するようになった。というのも使用人からの報告で聞いたぐらいだ。

 俺は立場もあるから遠目からしか見ておらん。上の兄たちと同様、まともに顔を合わせたのは生まれた時くらいだった。

 

 

 だがよく覚えている事が2つある。あのガキ、使用人がおしめを変えようとすると嫌そうに顔を歪めるんだ。随分と感情豊かだと笑ったことよ。

 それからもう1つ、弟ができたと使用人から聞いた時に赤ちゃん用の椅子からズッコケたのを見た。あの時は頭を打ってないかヒヤヒヤしたのう。

 

 

「……クソおやじ、じゃなかった。パパ、お酒のみすぎ!」

「のみしゅぎ!」

 

 

 ガキが生まれて3年経ったか。そろそろ術式が発現する年になった。後、少し生意気にもなった。この俺をクソ親父とは……、パパと呼べ!パパと!!

 

 

 発現する際に暴走する子もいると聞く。暴走具合もわからんのでな、もしもの為に俺がしばらくの間付き添うことになった。五条の子のこともあり少し術式が気になったというのもある。

 

 

「おいで、なおや」

「ん!」

 

 

 ガキの後ろを着くのは弟である直哉。これも俺が名付けたガキだ。

 兄の真似をする弟。この兄弟は同じ腹から生まれたせいか特段仲がいい。

 

 

 征哉と直哉、名前も似ている事だし弟が少し兄に似てきたのもとても兄弟らしいと思った。

 ただし顔はあまり似ていない。髪と目の色合い以外、全くもって似ていない。断言しよう。本当に血が繋がっているのか不思議じゃ。

 

 

 最近よく接するようになって分かったことだが、征哉は弟の方にベッタリだ。直哉も兄の方にベッタリだし、これは兄弟愛というものだろう。俺や扇、俺の兄にはあまり無かったモノだ。

 

 

 征哉が3歳の中盤に差し掛かったある日、どんな術式か問うた事があった。

 やつは強力で唯一無二、自傷系は嫌だと言っておった。幼くしてもこの呪術界の厳しさを理解したのだろう。よく回る頭じゃと驚いたのを覚えている。

 

 

「相伝じゃないってことは、家での立場はクソってことだ」

「おう」

「命を守るためには人間関係も大事だ」

「そうだな」

 

 

 術式が発現し4年程経った。7歳くらいだろうか、あいつは脈絡もない言葉を発し、立場の確立のために動くと宣言した。

 上層部オキニだと……?と思考が一瞬停止したのは言うまでもない。まぁ、上手くやるなら文句は言わん。

 

 

 征哉の術式に関しては俺も少し思うところがあった。相伝ではなかったことに消沈したが、それ以上に征哉の解釈に衝撃を受けた。

 まさか相伝を模倣するとは思わんだろ。全く……、俺の息子はすごいと五条にマウントを取りたい程だ。

 

 

「パパ!ジジイ共がまた俺の事相伝掠った出来損ないって文句言ってくるんだけど!?」

 

 

 征哉は10を超えた。いや、既に14、15くらいまでいったか?反抗期故に口が悪くなってきた時期じゃ。ほぼ毎日、弟と一緒に愚痴を零しているのを見るといい酒のツマミになる。

 

 

 何度も言うが、家の者が期待していた術式は相伝ではなかった。純粋な影を操る影法術。相伝に惜しい術式だった。まぁ、それが爺さん共を余計煽る要因となるのは想定の範囲内だ。

 

 

 事あれば征哉に突っかかり、まるであの子が鬱憤の受容体のように嫌がらせが多発していた。時には命を狙われることもあったそうだ。本人から愚痴としてよく聞いていた。

 

 

 話を聞く内に少々気の毒になり、頭を撫でてやったら手を叩かれたな。

 甚爾というガキに体術の稽古をつけてもらっているそうだから、意外と力が篭っておって痛かったわい。

 征哉が言うに「なんか可哀想なガキって感じがしてイラついた」だと。お前最近パパに厳しいなぁ?少し泣いたぞ。

 

 

「勝手に期待して、勝手に失望してるんじゃねぇよ」

 

 

 よく聞く言葉だ。過度な期待は時に呪縛となって他者を蝕む。

 

 

 征哉は蝕まれる側だった。五条悟の件で焦った輩共が子供1人に重責を背負わせたんだ。

 憐れな爺さん共よ。所詮他人事として傍観するくせに俺の息子1人に全ての責任を押し付けおった。少々怒りが沸いてヤケ酒をしたわい。

 

 

「ふん、出来損ない?勝手に言ってろ。俺の価値は俺が決める」

 

 

 強い子だ。幼い頃から現在まで続く罵声と罵倒に屈しない精神は誰に似たのか……。

 ハッハッ、もしかすると俺かもしれんな!だが、泣いたところを見たことが無いのは少し心配した。

 

 

 征哉自身も発現当初こそ失望していたがすぐに立て直していた。征哉の異常によく回る頭はこのためにあったのだと思う。

 発現した3歳から十数年もかけて解釈を大いに広げ、現実と幻を影で表現し、実用レベルまで己と術式を鍛え上げた。

 

 

 正直、既に並の術師を超えているだろう。俺にはまだ届かんが、あと数年もしたら……、それこそ高専を卒業するくらいになったら俺も負けを認めるレベルになるだろうさ。

 

 

羽虫(モブ)の命は軽い!だから全力で保険をかけるし生存戦略を遂行する」

「……兄ちゃん急に何言っとんの?」

「兄ちゃん個人の話だから気にしないで」

「……まぁ、ええわ。それよか領域について兄ちゃんの知恵貸してや!」

「おー、いいよ〜」

 

 

 そりゃあ、俺でもびっくりする解釈も多かった。簡単に人を殺せてしまい、呪霊を玩具のように扱ってしまう解釈の数々は考え付くのが末恐ろしいと震える程だ。

 

 

 家に縛られており、実戦をまだ経験していない征哉はこのことを自覚していないだろう。

 直哉は薄々気がついているだろうが、兄に教えてやらんのかと言ったら「そら兄ちゃんが自分で自覚せなあかんことや」と言っていた。よく出来た弟だな。これも征哉の教育の賜物か。

 

 

「征哉!少しは直哉に考えさせるのだぞ。あと、やりすぎるなよ」

「はいはーい、わかってるって!」

「……。(絶対分かってないじゃろ……)」

 

 

 この子の解釈の真の恐ろしさを知らない爺さん共は今も呑気に征哉を見下している。

 出来損ないだと罵って、我らこそがお前の上に立つのだと対抗心を燃やして意地を張っている。幼稚か貴様ら……。

 

 

 あの子にとって爺さん共の存在は邪魔でしかない。それでも征哉はまともな理性と思考を持っているから、弊害である爺さん共を生かしておる。

 生死の境界も征哉の気分次第だと言うのに、それにすら気づかない老害とは……、これを憐れと言わずしてなんと表現すればいい?無知とはこうなるから恐ろしいのじゃ。

 

 

「もしもの時は……そうだね、迷わずジジイ共は殺すよ」

「呪詛師と認知されてもいいのか?」

「まぁ、もしもの時って俺が離反する時とかだしね。大層な理由がなきゃそんな地獄なギャンブルはしないと思うよ」

「ハッハッ!そうかそうか」

 

 

 そんな会話をしたのは高専入学の数ヶ月前だった。過去にも何度も思ったことはあった。こいつが敵になった時、その時は文字通り世界が終わるんだろうなと。

 

 

 それ程征哉の存在は均衡を崩し、鏖殺を可能にする。考えたくはないが征哉が呪詛師になった時、誰がこの子を止めてくれるだろうか。俺ではきっと無理だろう。

 

 

『俺は無意味な殺しを楽しむ快楽殺人鬼でもなければ、理想だけを語る夢見がちなバカでもない。俺がやる事にはきっと意味があって目的があるんだと思う』

「仮に裏切りや離反する未来を選択した場合、お前は何を考える?」

『んー……。多分、仲間や家族のためにかな。それ以外なら俺は所謂闇堕ちってヤツをしたんだと思う。その時は皆様に多大なるご迷惑をお掛けするかなぁ』

 

 

 そして現在、あの小さくて弱っちぃガキは立派に生意気で年相応に育ったのだ。上のセリフは東京校に入学してから半年後、今まさに電話越しに交わしている会話だ。

 

 

 征哉から「上層部から『可能な範囲の五条悟と夏油傑の監視』の命令が下った。(クソだろあのジジイ共!)」と、愚痴を聞いていた。

 命令が下った後に同期に、自分が裏切ったらどうする?と聞いたそうだ。その話から派生して上記の俺との会話になった。

 

 

「はぁ、お前相手にどう勝てと……」

『え?悟とか引っ張ってくればいいんじゃね。知らんけど』

「五条の坊かぁ……、最低でも総力戦だな」

『は?俺1人にオーバーキルすぎでは?』

 

 

 オーバーキル?俺は至って真面目に言っているんだぞ?正直、五条の坊1人では心許無い。理由は単純、俺の息子がヤバいからだ。

 

 

 以前俺に公表した解釈の中で、無限をも障害としない必中効果がある技があった。

 『距離関係なく、対象の影を歪めて捻じる』。これが使用された場合、例え無限の距離が存在したとしても肉体と直に繋がっている影への攻撃は防ぐことは出来ん。

 

 

 つまりだ、いくら最強と言われ始めた抱き合わせの五条悟とてその技を使われたら終いだ。

 ……恐ろしいな。考えただけで一方的に殺られるのが目に見えている。まぁ、全ては征哉にその気があればの話だが。

 

 

『あ、そうそう!なんか呪霊に対してあんまり手応えがないんだよね』

「お前の等級は4じゃろ?そりゃ雑魚に決まっとる」

『いや、この間祓ったのは準2くらい。前に特級になりそうな1級も祓ったんだけどさ……』

「は?聞いとらんぞ。無事だったか?」

『まぁ、言ってねぇしな。普通に無傷だったよ。んで、質問なんだけど呪霊ってこんなモンなの?』

「いや、お前がヤバいだけだ」

『え?』

 

 

 征哉が操るのが己の影だけなら対抗策は沢山あったのだ。むしろ、その状態であれば先程の技は発動出来ない。

 『術式効果範囲が術者に縛られない』。これがあの子の術式の要であり、心臓部だ。はっきり言ってチートじゃろ。むしろ征哉がヤバくなった真の原因はソレじゃろ。これに気づいた時には盛大に頭を抱えたわい。イテテ、思い出したら急に頭痛が……。

 

 

『でも決めたよ、あいつらの情報は流す』

 

 

 上層部に取り込まれた日から警戒はしていたらしい。

 「どこで耳と目が動いているか分からないから、本音は言えない。俺のパパで、尚且つ日本人なら察しろ」らしい、ちょっと強引すぎるのう?パパに厳しいな、お前。

 

 

 この前提があるから真意は伝わっておる。つまりこうじゃろ?「上層部に下手に逆らうと信用が削れるから、同期に問題ない範囲でちょっと情報を流す」。俺はあいつのパパだからな!このくらいお手の物よ。

 

 

「上層部に籍を置いて、お前は何がしたい?」

『期待されてるようだし、とりあえず昇進して俺が上層・総監部を引っ張っていく』

 

 

 これはこうだ。「今までの呪術界は汚物をぐちゃぐちゃにして沼に放って放置したくらいにクソだから、俺がトップになってクソ界隈を変えてやる。オキニポジで信用もあるし徐々にジジイ共を蹴落として殺るよ」って意味だろう。……俺の息子ヤバいな?

 

 

『俺って強いらしいし、守りたいものくらい守れるようになりたい』

 

 

 昔も言っていた言葉だ。まぁ、征哉なら闇堕ちなどはせんだろう。はっきりとした守るべきものがある限り、アイツは闇に折れないだろうさ。

 

 

「はぁ、全くこのガキは……」

『そう?こんなによく出来た息子って早々いないぜ』

 

 

 最初の認識は何番目かのガキという程度だった。腹違いの兄たちは沢山いる。その中でも唯一、俺が面倒を見続けている子だ。

 相伝でないにしても、いい意味で期待を裏切ってくれたヤバい息子だ。そこが気に入っているし、世間で言う父としての感情を植え付けやがった子供でもある。

 

 

 本人の実力も、上層部という立場を知るものも数少ない。勿体ないといつも思う。だが征哉を取り巻く事情を考えれば仕方がないのかもしれん。

 もしあの子が表立って全てを公表する日が来たら、俺は酒を片手に自慢話をするだろう。

 

 

「ハイハイ、明日も任務じゃろ?出来のいい息子なら年寄りを引き止めずにさっさと寝ろ」

『えー、じゃあおやすみ』

「おう」

 

 

 征哉の存在が周知された時、きっと多くの人間が俺に対してこう質問を投げてくる。「ご子息殿の実力を知っておられたか?」と、それに俺は首を縦に振るだろう。

 そして次は「ご子息殿をどう思われる?」と問うのだ。それに俺は「そうだな、自慢の息子だ」と答えるんじゃ。

 

 

 あぁ、楽しみで仕方がないわい。そんな未来を想像して、俺は湧き出る笑いを抑えずに酒を煽った。

 

 

 

 







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