御三家に生まれたので生存戦略を遂行する   作:超甘味

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妄想と捏造の産物とご理解ください〜
では、行ってらっしゃいませ。




俺、やられたらやり返すのがモットー。

 

 

 やぁ、どうも。無事半社畜を乗り越え、同期と青春を歩み、上層部でちょっと昇級して、最強コンビがトリオに変わり、等級は2級固定で、ゴリラの子供が相伝発現しちゃった禪院征哉です。モブクンって呼んでくれ。

 はは、前置きが長くてウケる。

 

 

 さて、話は変わるよ。1年生の間は様子見として大きく動かなかった俺だが、2年生になった(1歳老けた)のでそろそろ行動を起こそうと決めた。

 今まで禪院のジジイ関係はスルーして逃げ続けた訳だけど、いい加減向き合おうと思う。悟にも急かされたしな。

 と言っても、俺が一方的に脅すだけ……あわよくば縛りを締結したいなぁ〜なので比較的簡単なタスクではあるね。

 

 

 俺のスタンスは思いついたら即行動!!なので名ばかりの春休みを利用して禪院家に帰省したよ!

 俺に振り分けられた任務は悟とサマーに押付けてきた。無断なのできっと帰ったら詰められるにきまってるね。おー、コワイコワイ。

 

 

「ただいま(クソな)我が家!!!俺の妹ちゃんたちは!?」

「お帰りなさいませ、征哉様。双子は庭で遊んでおりますよ」

「そっか。あ、女中さん、これ土産ね。使用人のみんなで食べて」

「わ、ありがとうございます!」

「いえいえ〜」

 

 

 出迎えてくれた女中に東京のお土産を渡し、無駄に広い日本庭園に向かう。

 なっげぇ廊下を渡る中、禪院革命派の仲間が増えた事で心做しか家の空気が美味しく感じた。

 あとは残った耄碌(もうろく)ジジイを掃除したらもっと最高だね。

 

 

「お姉ちゃん、足早いってば!」

「なんだよ真衣、もう限界なのか?」

「1時間も鬼ごっこなんて、できないでしょ……!?」

 

 

 遠目に見えた真希と真衣。直哉の保護下にいるためか、ちゃんと子供らしい日々を送れているらしい。

 

 

 原作のように仲が悪い訳でもないし、お互いを晒しあってていい姉妹だ。まだ子供だから仲がいいってのもあるかもしれないけど。

 扇叔父さんとは接触しないように使用人達には配慮させてるので今のところグングンと健やかに育ってる。お兄ちゃんは嬉しい。すごく嬉しいよ。これぞ姉妹愛。

 

 

「(可愛い妹達も見れたし、今夜は頑張れそう)」

 

 

 もし交渉(脅し)が失敗した場合でも俺が暴れる予定だし、この際ジジイ共を掃除するんだから実力を出してもあまり問題は無いはず。

 それに、俺の実力を知って保身本能(笑)を発揮して大人しくなってくれたら話も通しやすい。俺に利益しかないね。

 

 

 でも完全に舐め腐って気を抜くことはできない。手強いのは外堀だから、上層・総監のジジイ共の耳には入らないように手を回さないと。

 上層での俺の立場も1年間で末席から昇級したとはいえ、まだまだ中堅レベルじゃないしバレたらどんな罰則があるか分かったものじゃない。

 事前準備と事後処理が面倒で意欲が削がれるが……あ、いっその事屋敷全体にデカい結界でも張ればいいか。そうだね、時には脳筋にならなきゃやってらんないよな。

 

 

「真希、真衣」

「きゃあ!……お、お兄ちゃん帰ってたの」

「お!兄貴、久しぶり」

「うん、久しぶり。少し見ない間に2人とも身長伸びたね?」

「そうなの!お姉ちゃんも伸びたのよ!」

「兄貴は……あんまり変わってないな」

「あー?気のせい気のせい」

 

 

 俺ってさ、伸びたとしても最大5cmトークのあの日から1、2cmしか伸びてないんだよね。

 既に半年くらい前の話なのにね?絶賛成長期中のはずなのに俺の身体機能おかしいよね?

 あ、そうそう!後、長身2人に挟まれるのは誠に不愉快でございます。俺の身長を弄るのはやめやがれください、特にあのサマーと白髪(しらが)

 

 

「兄貴が帰るって聞いてねーんだけど?」

「だって言ってないし」

「え?じゃあ学校はどうしたの?」

「無断外出」

「へー、やるじゃん兄貴」

「お兄ちゃん性格変わったね……」

「……そう?」

 

 

 確かに長身クソガキッズに感化されて変わった気はするけど、そこまでか?真衣がちょっと引いた目で見てくるんだけど。ヤダー、お兄ちゃん悲しい!

 

 

「で、なんでいきなり帰ってきたんだよ」

「実家に帰るのに理由が必要?それとも真希は嬉しくない?」

「あぁ、全く」

「え、何それ泣いちゃう(これがイヤイヤ気か……)」

「違うよ、真希の照れ隠しよ」

 

 

 お兄ちゃんモテるから、って真衣が耳打ちしてくれた。

 ……ふーん、へー、ほーん。ハー、ツンツンな妹が可愛い。お前らまだ4、5歳だろ?その歳でその発言は可愛い。流石俺の家族。愛しきかな。

 

 

「そっかそっか、兄ちゃんが取られそうで心配になったんだね?」

「うわ、お兄ちゃんすっごいニコニコしてる!」

「バ、バーカ!誰が心配なんかするかよ!!!」

「ハイハイ、可愛いねお前ら」

 

 

 パコポコと殴られたが痛くは無い。あー、俺の家族ってなんでこんなに可愛い子ばっかりなんだろう。直哉に始まり、双子と恵、あと分家の子(蘭太とか)……、俺の家族最高じゃね?

 

 

「で?」

「うん?」

 

 

 家族の偉大さやら可愛さやらを全力で噛み締んでいたら、「まじで何しに来たんだ」って聞かれたのでジジイ共とオハナシするんだよと答えた。でも2人はあんまりピンと来ていないらしい。

 

 

 使用人からは双子のことを悪く言っている様だと報告を受けたからてっきり心当たりがあるのかと思ってた。

 もしかして使用人達が守ってくれたのかな。やはり禪院革命派様々だな。子供に汚点を見せない心持ちがありがたい……。

 

 

「えっと……、喧嘩するの?」

「まぁ、大体似たようなものだね」

「心配すんなよ真衣。兄貴なら勝つだろ」

「……そうね。私たちのお兄ちゃんだし!」

「あらヤダ、妹ちゃん達からの信頼がお厚い……」

 

 

 顔面を手で覆いましたね。小さい子って素直に思ったこと言うからマジ照れる。

 そんな嬉しいことを言ってくれた2人には兄ちゃんからプレゼントあげちゃうよ!ん?チョロいって?ハッ、妹に勝てる兄はいねぇんだよ。これ常識。

 

 

「また図鑑?今度は銃ね、この間は刀剣だったのに」

「お、新しい呪具か。丁度この間ぶっ壊したんだよな」

「お馴染みの武倶さんが真希用の子供サイズを作ってくれたんだよ。真衣は術式上、知識と想像力が必修だから養うためね」

 

 

 真衣の術式は原作通りで『構築術式』だった。でも呪力量は1日1個の弾丸を創るのが限界。ただでさえコスパ最悪で呪力総量が勝負の術式なのに、体質との相性が良くないから困ったものだ。

 

 

 でも俺は諦めないよ。

 話によると構築術式で一度生成されたものは術式解除後も消えることはないらしい。ってことはだ、いくつか対策を練ったけど今のところ有効なのが、ちょっとずつ生成していくって手段。

 できるかどうかは別として、俺の式神と同じ感じで時間をかけてコツコツ構築していく。

 

 

 その為の学習材料としての図鑑だ。色々載ってるからとりあえず知識を蓄えさせる。

 真衣の地頭はいい方だし、幼いのにスルスル吸収していってくれてお兄ちゃんは感激のあまり泣きながら笑ってゲボも吐けちゃうよ。……嘘、そこまでは無理。

 

 

「コレすごく分厚いんだけど……」

「それは拳銃、小銃を初めとしてスナイパーライフルまで載ってる特別総集編。各種、構造から使用方法まで書いてある逸品だよ」

「どんくらいかかったんだ?」

「ざっと6、700万。専門家たち(武倶さんの友達)に協力してもらって世界に一つしかない完全オーダーメイドな図鑑」

 

 

 真衣は近距離ができない。いや、できないってことは無いんだけどあんまりセンスがない。逆に遠距離からの狙撃とかは群を抜いている。

 なので原作でも使っていた銃を中心に中・遠距離のサポート特化に育成していく予定だ。真希は言わずもがな、第2のゴリラにさせるために俺が体術と呪具の扱いを教えている。

 

 

「あ、ちょ……痛い!痛いって真希!足踏まないで!!」

「ぜってー失礼なこと思ったろ」

「い、いや?」

 

 

 でもね、真希さんよォ……。来たる原作の地獄っぷりは冗談抜きでヤバいから強化できるだけ強化させたいんだよ。お前たちに死んで欲しくないからね。

 

 

 お忘れかもしれないが俺の座右の銘は『命は大事に!』である。

 仲間のために命張るって綺麗事も良いけど、俺としては不格好にもがいて生きて顔合わせして欲しい。まぁ、俺の我儘だけど。

 

 

 その為にできることはやろうって思ってるけど、原作にあった真希の覚醒はなぁ……、真衣がなぁ……。

 とりあえずどっちかが一瞬死んでもらって、すぐ生き返って貰うしかない。そうしたらどっちも覚醒っていうか本来の姿に戻るわけだし。

 でも俺反転術式できねぇーんだよな。現状は詰んでるし将来の俺に賭けるしかねぇか。あー、クソすぎるぜこの世界。

 

 

「お兄ちゃん、険しい顔してどうしたの?」

「ん〜?なんでも無いよ」

「そうか?じゃ、爺さんたちの相手頑張れよ」

「うん、任せておけ」

 

 

 双子と別れたあとは私服から袴に着替えて飯を食った。ジジイ共との話し合いまであと数時間。よし、頑張れ俺!

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 夜蛾正道side

 

 俺が受け持つ生徒の中で禪院征哉という奴がいる。

 同期が桁違いな実力を持つ猛者ばかりで、一見大人しく目立たない……、と思いきや隠された実力を持つ奴だ。

 

 

 本人は上手く調整しているようだが、目が鋭いものには分かりやすい。

 徹底して隠し通したいという訳では無いんだろう。事情も詳しくは知らない身の上、その件で俺が言うべきことは何も無い。

 

 

「おい、アイツはどうした?」

 

 

 世間では春休みだなんだと騒ぐ時期のある日、午後5時を回った頃。学生寮の廊下の向こう側から問題児(悟と傑)が歩いてくるのが見えた。

 普段は征哉、悟、傑の3人でいるのをよく見かけるが、今日は征哉がいないらしい。あの3人組でも珍しい事があるんだな、と思った。

 

 

「アッ、夜蛾セン!せーやが無断外出してまーす。後でゲンコツの刑に処そうぜ」

「こんにちは夜蛾先生。実は朝からいなくて……、メールで任務の代替わりを頼まれたので行ってきたところなんです」

 

 

 そう言われたら2人の制服に若干土埃が着いているのに気がついた。顔には疲労の表情が濃く写っている。余程の激闘だったらしい。

 

 

「ったく……、俺と傑でもめっちゃ手こずったんだけど!?あの任務重すぎるだろ!任務振り分けたの誰だよ!!」

「まぁまぁ、落ち着いて。せっかくの休日が潰れたのは後で痛い目見てもらうとして……。先生、いくらなんでも2級術師に特級レベルの1級は酷いんじゃないですか?征哉はなんて事ないって対応してますけど」

 

 

 あ?等級違いの任務だと……?

 あぁ……、確か前に「センセー、俺の専属補助監督がクロで等級違いヤバいんですけど〜?」と愚痴っていたな。あれから何かしたようで、今では等級間違いの話も聞かなくなったが……。

 ん?でも待てよ、今日征哉に任務なんて入ってたか?高専からは振り当てて無いはずだが。

 

 

「任務詳細は?依頼はどこからだ」

「え?高専からじゃねぇの?」

「てっきり夜蛾先生が確認済みかと……。個人当てに依頼?いや、でもそれは流石に無いか」

「………調べてこよう。悟と傑は征哉を連れ戻してこい、どうせ禪院家にいる」

「えーー、今から京都ォ??」

「悟、征哉が和菓子奢ってくれるって」

「何してんだ傑!早く行くぞ!!!!」

 

 

 きっと俺の予想は正しい。アイツは間違いなく禪院家にいる。

 ただの勘だが、最近は少し意気込んでいたようだったから何かやらかすに違いない。

 

 

 征哉はとんだ問題児だ。一見大人しそうな普通の生徒に見えて、実はヤバかった。

 補助監督を置いて次の任務地に瞬間移動するわ、報告書は書かないで口頭説明だわ、報連相しないわ、悟と傑が喧嘩するのを笑いながら傍観するわ、ブラコンの行き過ぎで京都校に突撃するわ、今日みたいに無断で何処かに行くわ、料理を失敗して寮の共同キッチン爆発炎上させるわ、術式にガチになったら部屋に籠って出てこないわ、……と問題行動の数々。

 

 

 悟と傑に隠れてはいるがこいつも大概クソガキだ。こいつに善性というものはないのか?1人行動が過ぎるせいで胃薬何箱を消費したことか……。

 

 

「…禪院家からの依頼だと……?」

「先生何か分かったんですか?」

「あぁ、表向きは窓からの情報での任務成立とされてるが、禪院家が関わっているらしい」

「はぁー?絶対ジジイ共じゃん」

「またか……、征哉が可哀想に思えてきたよ」

 

 

 嫌がらせ?いや、それにしては可笑しい。なんだ、何か裏があるはずだ。

 

 

「ひとつ言えるのは、征哉が任務を放棄したことで禪院家の思惑は達成されてないという事だ」

「自由奔放な性格で良かったと言うべきか……」

「……嫌な予感がする。早く迎えに行こうーぜ」

 

 

 悟に共感だ。俺も嫌な予感がする。

 禪院家は何がしたい。悟と傑が手こずるような呪霊を征哉に向けて……、あぁ、そうか。

 

 

「時間稼ぎか」

「あ?時間稼ぎぃ?」

「前に弟が術式を発現したと言って飛び回っていただろ」

「その弟を攫うって?弟ってもアイツは、直哉はそんな歳じゃねぇだろ」

「いや、親族関係でなら年下のことを弟や妹と言うのはよくある話だよ」

 

 

 アイツの親族……。確か卒業生の禪院甚爾、いや、今は伏黒甚爾か、そいつの子供がそろそろ(3歳)だった気もする。

 まさかその子が目的か?早めだが術式が発現……、もし禪院が求める術式だったとしたらこうなったのも辻褄が合う。

 

 

 だが、それを征哉が知っている確率は低いな。

 征哉は今禪院家にいるはずだから家のことはあいつ自身でどうにかするだろう。となれば問題は甚爾の子供の方だ。

 

 

「……征哉はあとだ。お前達、今から言う住所の元へ行け」

 

 

 これであいつの問題行動記録に1つ追加だな。巻き込まれ体質、いや、面倒事製造機だな。はぁ……、胃が痛い。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 禪院征哉side

 

 

 俺は怒っている。いつかの弟ちゃん罵倒の件でガチギレした時レベル……、いやそれ以上にキレている。

 なぁ、ジジイ共殺していい?いいよな?気を抜いたらマジで殺しそう。

 

 

「……で、言い訳はあるか?」

 

 

 何故こうもキレているかというと、恵が狙われたからだ。恵はつい数ヶ月前に早めの術式発現を迎えたばかりだった。

 

 

 発現したのは禪院家相伝術式『十種影法術』。

 これが知れ渡ったら狙われるのは確実。だから俺だってジジイ共の耳に入らないように手を回していた。伏黒家にも結界を張って対策していた。でもバレた。……クソったれ。

 

 

「これだからジジイは嫌いなんだよ」

 

 

 ジジイ共とオハナシするまで1時間切った頃だった。

 もちろん、あのゴミ共には事前に脅す事も帰省してることも伝えていない。運良くジジイ共と顔合わせもしなかったから、驚かしも兼ねられると気分が浮いていた。

 

 

 ─────チリン。

 

 

 夕暮れ時、午後5時半だ。

 やけに耳に通る鈴が鳴った。俺にしか聞こえない、特別製のあの鈴音だ。

 

 

 ─────チリン。

 

 

 2回目が鳴った。俺は動揺した。今まで音沙汰もなかった呪具が突然発動したんだ。音の出先は伏黒家。

 恵のことがバレたのだと俺の脳はすぐに理解した。鈴音は奥さんと恵が持つものから1回ずつ。これはマズイ。非常にマズイ。

 

 

「来い、【大海蛇(おおうみへび)】【戒鯨(かいきょう)】!!!!」

 

 

 式神を顕現させ、各自に命令を飛ばす。式神の説明?そんなの後ででいいだろ。今はまず奥さんと恵の安否確認が最優先だ。

 

 

 ─────チリン。

 

 

「大海蛇は戒鯨を送ったあとバカ共を撃退しろ、無理なら捕縛。余裕があれば恵と奥さんを俺の元へ。戒鯨、恵達を死守しろ」

 

 

 独特な鳴き声を発して了解の意を称した2匹を見送った俺はジジイ共の元へ。

 十中八九じゃなくて十中一千レベルでジジイ共がやったと断言出来る。クソが、一々俺の邪魔してくるの故意だろ。巫山戯た嫌がらせにしても度が過ぎる。

 

 

「よォ、お前らはつくづく俺を怒らせるのが好きらしいね」

「ぁ、ガッ…!」

 

 

 ジジイ共がよく集まる一室に突入した。

 ついでに影でギチギチに縛っておく。話し合いはって?止めだ止め。する気も失せた。言葉を交わす価値すらない。

 

 

 目にも入れたくないこの愚物共は飽きもせず、学習もせずに俺の機嫌を逆なでしてくる。はぁ……、ウザ。いっぺん死んでくる?赤ちゃんからやり直そうか。絶対その方がいいよジジイ共。

 

 

 鈴音はもう鳴らない。式神達がちゃんと仕事をこなしているようだ。なら俺がすべき事はジジイを再起不能にさせること。

 まぁ、殺しはしないさ。呪術規定に背く行為だからな。でも多少手足が不自由になってもいいよね?どうせ呪霊狩りなんて自殺行為しないで引き篭ってばっかりなんだ。汚い口から唾吐くだけの役ただずはさっさとあの世に逝けばいいのに……、殺せないのが惜しいよ。

 

 

「俺が優しい奴で良かったな」

「な、なにを……」

「安心しろよ。死にやしない」

「あぁ、ぁああ……」

 

 

 無様。愚鈍なクソジジイが調子乗ってんじゃねぇよ。

 俺がどれだけ禪院家で革命を起こそうと頑張っても、上に立ってるゴミが変わらなきゃ根本的な解決にはなりはしない。マジくそ。ジジイのせいで俺の努力が帳消しになるのは認めねぇぞ。

 

 

「我らは間違ったことなどしておらん!!」

「そも、相伝が門外におることが可笑しいのだ……!!!」

「へー、そんなに十種をお望みか?」

「何十年、何百年振りだと思っている!!最強の式神を持つのだ、手中に置かぬ道は無い」

 

 

 あ''ー、うるせぇー。術式術式術式。もう術式と愛し合えよコイツら。

 人は道具じゃねぇって何度言っても分かりやしねぇ。そのでかい頭には何が詰まってんだよ。ドブかな?

 

 

「はは、そんなに相伝が欲しいなら……。いいよ、とっておきをやるよ」

 

 

 知った瞬間、畏れ崇めればいい。十種の上位互換とも言えるのが俺の術式だ。否定は言わせない。その身でたっぷり()()()あげるよ。

 ……認めるさ、俺は強い。だから式神を開示したとて不利になることもない。ましてや老いぼれた脆弱(ぜいじゃく)ジジイに負けるほど雑魚でもない。

 

 

「なっ、何をッ!」

「こーら、ジジイ逃げるな。……夜は、まだまだこれからだよ」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 夏油傑side

 

 午後5時40分。夜蛾先生から教えられた住所の元にすぐさま(それでも20分は掛かったが)移動した。

 どう見たってただの住宅街。ただ、少し破壊されている様子がある。どうやら先生の予想は当たっているらしい。

 

 

「うぅ……うわぁぁん!!!!!」

「ほんと誰ですかあなた達!」

 

 

 ショートヘアの母親らしき人がツンツンの男の子を腕に抱えている。2人は結界の中にいて、その傍には結界を維持しているらしい鯨型の式神。

 黒服集団を睨むのはヒレと(たてがみ)を持った龍のような蛇型の式神。どちらも異様に大きいが……あれらは征哉の式神だな。彼もこの現状を知っているのだろうか。

 

 

「あれだ、あの2人。前に征哉から写真見せてもらったことあんだろ」

「なら早く助けに行くよ」

「おう!」

 

 

 まぁ、制圧なんぞ一瞬で片がついた。というのも、蛇型の式神が動きを封じていてくれたおかげでもある。

 式神【大海蛇(おおうみへび)】は純粋な影の行使を付与した、蛇のような式神だと征哉は言っていた。単純だから色々できるんだよ、とは本人のセリフだ。

 

 

 例えば瞬間移動(影中を泳ぐ)だったり、影で拘束、攻撃なんかをする。防御……はあんまりらしいが、大体は何でもできる要領の良さで準レギュラー入りしてるらしい。

 影を泳ぐのは仲間や他の式神を送ることが出来るから便利、防御は捨ててるけどその分攻撃特化でクソ強いと言っていた。見た目も龍っぽくてかっこいいから使ってる、だってさ。面白い理由だよね。

 

 

「えーと……こいつらは大海蛇に引き渡せばいいんだっけ?」

「そうだね、あとは勝手に征哉の元へ輸送してくれるさ」

「ンじゃ、よろしくなヘビちゃん」

『シャウゥ……』

 

 

 大海蛇はヘビのような怪物のような鳴き声をあげ、口に黒服共を含んで影に潜った。

 残るは2人を結界で守っていた式神だが、まだ結界を解く気はないらしい。征哉(主人)の命令かな。

 

 

「お〜、この鯨いいな」

「ん?何がだい?」

「絶対領域の結界。縛りでセーフポイントを作った上に、簡易領域……じゃねぇな。御三家秘伝の【落花の情】を上乗せしてる」

「え、あの対領域の術って言っていたあれかい?」

「師事は禪院の当主だろうな。っつーことはたぶん簡易領域も征哉は会得済みじゃね?」

「ウワ、まじか」

 

 

 えぐいな。どんどん吸収し(パクっ)ていくじゃないか。

 私の呪霊操術だって式神化呪霊とかいうノーリスクで使い捨てのコスパがいい戦力になってるし、瞬間移動とか絶影は悟のヤツをパクったって本人が言ってたし……。

 

 

 いや、そもそもなんでパクれるんだよ。征哉の技量に勝てる奴なんて、この世界にいないんじゃないのか?呪術全盛期の1000年前でも稀に見ないだろ。

 

 

「じゃあ、あの鯨は守備特化って訳か」

「アハッ、性能知らなかったのかよ」

「生憎よく見える眼を持っていなくてね!!!」

 

 

 悟の眼で見た情報によると、式神【戒鯨(かいきょう)】は『不可侵・不侵攻』の縛りを持って結界術の底上げ+秘伝【落花の情】の効果を上乗せした護りの式神らしい。

 

 

 戒鯨が1mサイズだった場合、結界は式神の半径約3.14mを基準に展開される。

 ちなみに式神のサイズと結界の大きさは比例するらしい。基準を円周率にしたのは適当だろ、多分。

 

 

 デメリットは主に3つ。

 1つ、一度結界を張ると自身を含めて出入り不可能になる。

 2つ、帳のような簡単な結界術のように他の効果を相乗させることは出来ない。

 3つ、結界の大きさは体のサイズに左右されるため、原則顕現後に変更不可。

 

 

 でも、そのデメリットのおかげでほぼ割れることのない最高硬度を持つ特殊結界を張ることができている。

 簡易領域の効果があるから領域対策にもなるって……。はぁ、なんだよソレ。普通に強いじゃないか。私も一体欲しいな。

 

 

「それで……結界内の2人はどうする?戒鯨はまだ命令を遂行してるみたいだけど」

「まだ判断能力が足りてないんだろ。命令第一のコマ。こりゃ征哉が来るまで待つしかねぇな」

 

 

 ここ住宅街のど真ん中だよ?帳……は、降りてるみたいだからそれは助かったな。はぁ、とりあえず征哉に電話しなきゃ。

 

 

「悟は2人と話してきて、何が何だかわかってないみたいだし」

「傑は?」

「先生と征哉に連絡。あと、少し崩壊してる建物の後始末」

「リョーかいっ」

 

 

 普段なら「めんどくせぇー」とか言っていたダルそうにするのに、征哉が関わると丸くなるのはなんなんだコイツ。素直すぎてたまに気持ち悪いぞ。

 

 

 プルルル……プル、

 

 

「(1,5コールは早すぎじゃないか?)もしもし征哉、君の家族が狙われてたから保護したよ」

『あ''?なんで知ってる?』

 

 

 うーん、機嫌最悪だね。それもそうか、家族を狙われたら私でもそうなる。

 ところで電話越しでも叫喚(きょうかん)がすごいんだが……もしやお前、暴れてる最中だね?

 

 

「先生の推測だよ。それより送った黒服見たかい?」

『アレお前らか。もう一匹はどうした』

「命令待ちだよ」

『……あぁ、そういう事ね。声を聞かせたい、近くに寄れるか?』

「任せて」

 

 

 ちょうど悟も母親の方へ話をつけ終わったらしい。お礼を言われたので首を振っておいた。やったのはほぼ征哉ですよ。私たちは殴って蹴っただけです。

 

 

『【戒鯨】』

『キゥ……クゥン』

『結界はもういい、戻っておいで』

「その声は……征哉くん?」

『奥さん、怪我は?恵は無事?』

「うん、鈴は壊れちゃったけど平気だよ。傷一つない」

『ならいいです。今は少し手が離せないのでそこにいるタッパがデカい奴らに任せてください。奥さんは甚爾に征哉が呼んでたって伝えて』

「分かったよ。征哉くんも、お家の人とあんまり喧嘩しちゃダメだからね?」

『……善処します』

 

 

 あ、これもう手遅れなパターンだな、と悟と私は思った。棒読み感凄かったし、何より電話の背後に響く声色と破壊音が完全に手遅れ。

 

 

『もう切りますね、ゴリラには()()伝えてください』

「う、うん」

白髪(しらが)とサマー。あとは頼んだ』

「あぁ、任せろ」

「口悪ッ……。加減は間違えるなよ」

 

 

 わかってるし!と言って通話は終了した。はぁ……、苦労が絶えないね、征哉って。ほんと同情するよ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 Noside

 

 ブチッ、と電話を切った張本人はガラケーの画面を眺めた。

 辺りを見渡し、汚物共に冷ややかな視線を突き刺す。因みにこの時点で禪院屋敷の3分の1が崩壊している。

 

 

「俺はいいけど、家族には手を出すなって言ったばずだ」

「い、いってな「あ''?誰が喋れって?」……」

 

 

 はぁ……、と呆れたような態度で髪をかきあげる。滲み出る濃い呪力は通常の術師に比べて他者にかかる圧力が桁違いだ。

 前にもこんなことあった気が……、とタワシハゲ量産事件を経験した1部のジジイは白目を向いた。

 

 

「どうだ、俺の式神はお気に召したかな?だーいすきな相伝より強力だぜ?」

 

 

 どこか自虐的な笑みを浮かべ、畳に転がるジジイ共を見下す征哉ははっきり言って怖い。しかも目が死んだ魚みたいな目で怖すぎる。

 征哉がやったことを端的に言えば、出払っている【大海蛇】【戒鯨】を除いた、現在持ちうる全ての式神を顕現させて約10分間暴れまくった。

 

 

 これで屋敷は3分の1が吹っ飛び、ジジイ共は意識が飛ばないレベルで調整して痛めつけられた。なお、人的被害は汚物限定で収めるように配慮もしている。

 

 

「見てたよな?見せるために意識を保たせてるんだから見てないとは言わせねぇぞ」

「見た、見たとも!だから早う、式神を戻さんか!!」

「そうだお前を当主に立ててやろう!それで不問にせんか」

「あ''ぁん?お前達は俺に命令できる立場じゃねぇんだよ。分かれよ能無し」

 

 

 ジジイ共が喋れば喋るほど、征哉の機嫌は氷点下をぶっちぎる。既に殺しそうではあるが、疼く右腕を抑えるので手一杯だ。

 だが理性だけはまともであり、征哉は誰よりも自制心が強かった。

 

 

「俺が優しくて良かったな。じゃなきゃ今頃式神達のエサになってたぞ」

「ヒィッ……。誰だ、誰がこやつを出来損ないの括りに縛ったのだ!!」

「その他の力など優に超している……。わ、我々は見誤ったのだ」

「誰も知りえなかったのか。えぇい!そもそも、言い始めはお主ではないか!?」

「何を言う!!賛同したのもお前であろう!!!」

 

 

 急に仲間割れをし始めたジジイを横目に征哉はため息を吐いた。

 「(こいつらバカすぎて頭痛が痛い……)」と思っていることだろう。それならまだ上層部のジジイを相手してる方がよっぽどマシなはずだ。

 

 

 式神の件が知り渡った今、今後の征哉への認識は十種影法術『亜種』として再認知されるだろう。

 実の所パクっただけだが勘違いされても征哉は構わない。だがやはり問題は腐った根(ジジイ共)。一端のしょぼくれた立場では牽制することも易々と出来ない。

 

 

「……お前達、俺が当主になるって言ったらどうする?」

 

 

 当主とは、一族での絶対的な権力を持つ地位である。まぁ、摂政政治のような例外はあるが、それは置いておこう。

 

 

 つまり、もし自分が当主になったらクソも一件落着じゃね?と征哉は思ったのだ。

 自身より下だと勘違いしていた相手が、実は己の命を握る影の支配者だったとは、なんとも皮肉で面白い話か。

 

 

 ……征哉の問いかけに、どうやら異論はないらしい。皆一様に首を縦に降っている。

 ここで顔色が真っ青で冷や汗がダラダラ、鼻水ジジイじゃなかったら下がりきった機嫌も多少は戻ると言うのに……。これらを見た征哉の目は鋭い刃のようだ。

 

 

「用事がある。床は拭いておけ」

「なっ……!!」

「返事は?」

「……御意」

 

 

 ここに居るのはもはや出来損ないで才能を吸われた兄では無い。当主に見合う実力を持つ相伝亜種の御方───。

 今日、この夜。確実にジジイ共の偏見は裏返った。人を見る目とは大事なモノである。もとより禪院の者が、長らく欲していた十種影法術を持っていたなんて誰も気が付かなかっただろう。

 

 

 さて、ジジイ共を置いて禪院屋敷を出た征哉は、影に潜りある場所へ移動した。場所は東京某所のパチンコ屋。とある人物に施したマーキングを使用し、瞬時にトんだのだ。

 

 

 そのとあるゴリラの後ろ側にトんだ征哉は周りを見渡し、ここがパチンコ屋だということに気がつくとしわくちゃピカチュウ(激おこバージョン)の顔をした。だが、それも一瞬なので征哉のブッサイク顔を知るものはいない。

 

 

「おい、パチカス」

「誰がパチカスだ!!……って征哉かよ、どうした」

「どうしたもこうしたもない。お前何してた」

「何って、賭けだよ賭け」

「そういうんじゃない。奥さんと恵が危機だった時に何やってたんだっつってんだよ!!!」

「は?」

 

 

 ゴリラの胸ぐらをつかみながら叫ぶ。他の客への気遣いなんてする余裕はなかった。ただただ伏黒甚爾への怒り。どこふらついてやがったと、八つ当たりをしている。

 本人もわかっているのだ。これは甚爾のせいじゃない。恵のせいでもない。……悪いのは、全て禪院家だと。

 

 

 「場所、変えようぜ」と怒りが収まらない征哉の手を引くゴリラは、とても癪だが大人の対応というものだった。すぐそこの公園のベンチに座り、柄にもなくココアを奢った。

 隣に座る甚爾から見て、目線を地面に向けて猫背でいる征哉の顔は全く見えない。ポツポツと話し出す先程の出来事を聞くうちに甚爾は顔を顰めた。

 

 

「これを見ろ。式神に回収させたモノだ」

「鈴……、発動後に爆散した呪具か」

「そうだ、壊れ具合に差があるだろ?壊れたのは全部で3つ、1つは恵。残りは奥さんのヤツだ」

 

 

 征哉の手のひらには2種類の鈴。種類分けの基準は術式発動後の壊れ具合にある。

 軽い、と言ってもトラックがぶつかるくらいの衝撃やあまり害のない術式効果なら鈴の表面が凹むぐらいで済む。これが恵が持っていた壊れた鈴。

 

 

 逆に、発動した時に即死級の衝撃や強力な術式効果だった場合は鈴が爆ぜる。

 爆ぜ具合にもよるが、1つは4分の1が爆ぜ、もう1つは原型が無いほど粉々になっていた。実際に当たった場合、前者なら生死を彷徨い、後者なら肉片となる程度の即死だ。そしてこれらの2つはどちらも奥さんの分。

 

 

「……俺に言わせるなよ」

「あぁ……。恵さえ回収出来ればいいってか」

「禪院は相伝至上主義だから」

「……クソ共が、殺す」

「やめろ。善悪を置いても追われるのは殺したお前の方だ。それに、もう制裁は加えた」

 

 

 30cm程で顕現した【大海蛇】が征哉の首に巻きついた。慰めているのか顔をスリスリと擦っている。

 

 

「さっき、怒鳴ってごめん」

「いいさ、実際あの場にいなかったのは俺だ。アイツらを守ってくれてありがとな」

「………うん」

 

 

 優しい手つきで甚爾は征哉の頭を撫でた。征哉自身も激怒と同時に恐怖したのだ。家族である2人を失う欠落の恐怖。

 

 

 ある最強が言っていた。自分一人が強くなってもダメなのだと。

 込められた意味合いは違う。だがこの件で征哉は心底理解した。周りも強くなくてはならない。でもそのフィールドを作るための土台が必要だ。禪院家にも呪術界にも。

 

 

「決めたよ。俺、当主になる」

 

 

 率いるは禪院征哉、同期他2人に並ぶ最強の一人。ここに改革の華が咲き始めたのは言うまでもない。

 

 

 

 






主人公は2年生!


(補足)
真希真衣は今のところ家の汚い部分に触れずに育ってるので、本作では仲がそこまで険悪にはなりません。主人公が手配してるのでね。だから真希も真衣の術式を知ってるヨ!仲がいいので。

今回の話を作ったのは単純な理由。伏黒ママの命の危機をもっと深く書きたかったから。癌だけでぽっくり逝く&定期検診でそれを回避は詰まんないし、1回くらい他殺未遂を経験させとこうって思った。生きてるので結果オーライ。



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