御三家に生まれたので生存戦略を遂行する   作:超甘味

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妄想と捏造の産物とご理解ください〜
では行ってらっしゃいませ。





僕、皆曰くクズで努力家で相棒。

 

 

 どうも自称モブをやめた禪院征哉だよ。新入生の伊地知を揶揄うのが最近のマイブームの高専3年生です。

 いやー、時の流れって早いね……。まぁ、僕らの青春は番外編で見てくれよな!ここじゃ枠に収まりきれねぇから。

 

 

「おい、起きろバカ」

「んー?……しょーこ」

「クマすごいぞ。大丈夫か?」

「うん、ヘーキ」

 

 

 さて、最近は呪術総監になるための手続きだったり、禪院家27代目当主の引き継ぎで疲労が絶えない僕である。

 

 

 色んなところに笑顔で訪ね回り(媚び売り)、山のような書類を書いたりだとかが一段落したのであとは僕がその籍に座るだけとなった。

 まさか学生の内に終わらない書類地獄を味わうとは思わなかった……。

 

 

 八つ当たりも込めて、時期が来たら現呪術総監にはさっさと退席してもらおうと思う。

 顔合わせしたらあのジジイ(総監)がカスだって分かったし、僕もみんなと過ごす時間が減って癒しがないからね!ジジイにはゴミ箱がお似合いだオラァ!!

 

 

「高慢バカ、保身バカ、世襲バカ、ただのバカ……。この界隈、色んなジジイがいて見てて飽きないよ」

「ハッ、大層な嫌味だね」

「ストレートに言ってないだけマシだろ」

 

 

 総監就任への承認を得るのに、特にジジイの中でも五条家の判定が厳しかった。

 

 

 五条のジジイ共もうち(禪院)とタメ張るくらいバカでゴミでクズだったから、『僕は悪い禪院じゃないですよ〜』ってアピールするのに貴重な数ヶ月間をゴリゴリ削られた。

 ったく!俺も暇じゃねーんだよ!!おっと、一人称が戻ってしまった。

 

 

「ジジイ共の相手するのはストレス溜まるよ」

「弱い奴らに気を使うのも〜〜??」

「疲れる〜〜!!」

「ふっ、だろうね。いっそ同情するよ」

 

 

 はぁ……、こんな毎日じゃあ心は疲れるし肉体も疲れる。

 おかげで皮肉も嫌味も出るわ出るわで困っちゃう。一人称の『僕』ですら今は放棄したいよ。

 

 

 下の人たちはいい人なのにね?どこもかしこも、なーんで上の人間って使えない愚物が多いんだろう。真面目にやってるお爺様方とか絶滅危惧種だろ。いや、太古の昔に絶滅しててもおかしくない。

 

 

「精神的苦痛で訴えられるかな?……無理か」

「ここまで来ればお前が忙しくない日の方が稀じゃない?」

「言われてみればね……。上層部以外にも家の方でも色々とやってるしなぁ」

「へー、上層部だったの?」

「………ハハ、空耳だろ。忘れろ」

「無理」

 

 

 ……う''う''ん!!!サマー以外に上層部ってこと話してないんだった。

 僕のバカ!疲れてるからって気を抜きすぎた。

 

 

 でもサマーが僕との秘密を守ってくれてるってことが確認できたからセーフ?硝子も言いふらすような人じゃないし……。

 それに意外と反応が薄い。これはもしかしなくてもってヤツか。

 

 

「……知ってた?」

「たまにコソコソしてるなーとは思ってたね。上層部なのは予想外」

「知ってるんかい!悟には言うなよ。面倒なことになる」

「じゃ、貸し1つね」

 

 

 うっす、ありがたいです硝子様。お互いの立場が鉄壁のようにガチガチになったら言うつもりだから!……多分ね。

 

 

「そういえばさっき、五条が見せたいものあるからグラウンドに来いって」

 

 

 硝子はヤニカスだけど話の分かるヤツだ。話題を逸らしてくれるとかいい心を持ってて僕感動だよ。ヤニカスだけど。

 

 

 上層部については僕自身も公表するか悩んでるし、公表したらでデメリットが多く着いてくるから気が引ける。

 やっぱりバレずに暗躍するのが1番なんだよ。足を引っ張るのは自分の行動と判断だけで、他から降りかかる(しがらみ)とか無いし。

 

 

「へー。丁度いい、みんな集まるならサマーに反転術式教えれば?」

「私が感覚派なの知ってるでしょ。説明したって分からないよ」

「まぁまぁ、そんな事言わずにね?会得したばっかりだから覚束(おぼつか)無いでしょ。説明無いより全然イイ」

 

 

 さぁさぁ、硝子の心遣いに感謝して僕の上層部バレは水に流すとして、実はつい先日予想外な事にサマーが死にかけた。

 仮想の質量を押し出す僕の『比礼【(ともしび)】』でどこまでの威力と範囲の術を展開できるか試したら巻き添え食らっちゃったみたい。ご愁傷様(物理)でめちゃくちゃ焦った。

 

 

 好奇心で最大出力とか出しちゃダメだな……いや、それよりサマーがボロボロ(死にかけ)、しかも僕のせいで!!と、反省と混乱が入り交じった言動をした気がする。

 

 

 幸いにも僕のように肉体が欠損したわけじゃないし、悟のように滅多刺しで脳天ぶち抜かれたわけじゃないから良かった。

 強い衝撃で圧迫死の1歩手前って感じね。僕達3人の中で言えば1番軽傷な死にかけだったと思う。なんだ、改めて振り返ると平気そうじゃん。

 

 

 そしてなんと!これが1番驚いた。

 僕が拡張術式の【反転】でアウトプットの反転術式をサマーに施そうとしたところ、観戦していた悟の六眼で性能はカスだけど反転術式をチラッと確認できたらしい。

 習得するまで1年ちょっと、……いや早いな?あいつセンスあるね??

 

 

「やっと僕達に追いついたかな」

「お前らが今以上に強くなったら追いつくもクソもないでしょ。アイツは必死に食らいついてるみたいだけど」

「正しく努力の天才だね。今は僕らより劣っていても傑なら絶対に並んでくれるって信じてる」

「……まぁ、反転術式の性能は今後上げてけばいいし?4人とも使えるとか異常だよ」

「歴史に名を残すかもね。偉人として祭り上げられるなら誇り高いけど」

 

 

 半年くらい前だったか、僕がサマーの術式について助言したあの日からサマーはちゃんと解釈を広げて強くなった。

 悟もそんなサマーに感化されたのか自分を高める為に頑張っているし僕もそうだ。

 

 

 あと数年で領域展開ができそうな予感がビンビンだし式神の見直しもした。

 空間、世界に干渉する解釈も考案した。ホント僕達って頑張ってるよね。

 

 

 サマーの反転術式についても、今の性能がかすり傷を治すくらいのカスでも今後の呪力操作次第で大怪我を瞬時に治療くらいは出来るようにはなりそうだ。

 なんたってあのサマーだし。一般家系出身のくせに僕達に並ぶ変態前髪クズ野郎だし。

 

 

「心配は杞憂だね。むしろサマーには失礼か」

「お前らは向上心の塊だろ」

「ハハッ、言えてる」

 

 

 なんか話がズレたね。続きを語れば、さっき硝子が言っていた悟からの呼び出し、これは100%原作にあったオートマ無限バリアシーンのことだ。

 

 

 僕的にはちょっとサマーのメンタルが心配だけど……、流石に大丈夫だよな?

 『呪術界&呪術師のクソなところ愚痴大会』も何回か開催したから甘ったれた信条の件は解決してるはずだ。

 

 

 ンでも精神は成熟しきってないから、悟と僕が強くなったことで少し揺らぐかも。

 ……とりあえず近い内に起こる九十九由基との接触と、1年の土地神任務は割り込もう。うん、そうしよう。特にあの人(九十九)とは喋らせない方がいい。

 

 

「……やっぱ心配になってきたわ」

「ウケる」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 家入硝子side

 

 

 禪院征哉はクズだ。無自覚で人を見下し、なのに自己評価は低い変なクズ。

 まぁ、それも最近は改善されたようだから1つ前進したのかな。……誤差程度には。

 

 

「お前は強い。だから最強の自覚を持て」

「……なんて言った?」

 

 

 前に私が指摘した時、征哉は呆けた顔をしていた。

 は?と言いたいのは私の方だね。誰もコイツに言ってやらなかったのかよ。こんなにも歪なのに周りにそれを自覚させてやる人が居なかったの?あのクズ2人は何やってんだか……。

 

 

 少し怒った。いや、怒ったというより不快感があった。

 自分が認めていなくとも、確実に周囲からの評価は『最強』になっていた。それでも自分を下げている征哉を見ると他が惨めに思えてくる。

 

 

 自分を見る目が変わったのに気づいているのかいないのか、それとも無関心なだけなのか。自分に対する視野の狭さを考えたらため息が出てくるね。

 

 

「……抵抗があったのかもしれない。僕が僕としての存在に、強者との格の差を縛り付けていた。周りがバケモン揃いだから基準がないんだよ」

 

 

 ……ほらみろ。私が初めて指摘したことでようやく自覚しやがった。

 というよりこいつは自分が思うより自分を理解していなさすぎる。

 

 

 あの日は説教とはまでは言わないけど長話をした。

 あいつは決心がついたらしくあれから自分を下げることは無くなった。逆に人に対して冷酷になった気もするけどね。はぁ……、クズの度合いが増したな。

 

 

「この際言っちゃうけど、僕1週間くらい外すからアイツらに誤魔化してくれない?」

「はー?そんなに休暇取って何すんの」

 

 

 私達は3年生になった。蒸し暑い夏で蝉が五月蝿い時期、クズ1号(五条)からのグラウンドへの招集に向かっているところだ。

 廊下を歩いてる時に征哉は私に言った。1週間休み?夏の繁忙期だっていうのに羨ましいねコイツ。

 

 

「何、と言われてもね。早めに始末する為の小細工かな」

「始末……?」

「愚物の掃除だよ」

 

 

 その言葉に「僕上層部なんだよね〜(イメージ)」と、先程までの会話を思い出した。

 そして今コイツは()()と言った。つまり上や禪院のジジイを掃除と称して殺すってことだ。思わず頭を抱えたね。

 

 

「それはダメだ。考え直せ!」

 

 

 ホントなんてこと言い出すんだこのバカタレクズが!私だって上がゴミなのは認めるし、死ねと中指を立てて悪態もくつ。

 

 

 でも殺しはダメでしょ!死刑は免れないし、第一にお前が今まで築き上げてきモノとお前によって繋がれてる命と縁がパーになるってことだ。共犯として身近な人の処罰も考えられる。

 

 

「僕は常に考えてるよ。考えた結果でこれが1番いいと思ったんだ」

「……チッ」

「悟のように時間をかけてジワジワ革新もいいけど、できるだけ後世に引き摺りたくないんだ」

 

 

 お前頭沸いたのか?上層部で上手くやれてるんだろ。引き摺る前にお前がそのまま牛取ればいい話じゃないか。

 と、言おうとしたけど止めた。コイツの苦労は知ってる。裏で動きながら色んな人を擁護してるのも知ってる。もちろん、私とあのクズ共もそれに含まれる。

 

 

 だからこそバッサリとジジイを断ち切るのかと考えた。

 いつまでもふんぞり返っていられると征哉にとっても、私たちにとっても弊害しかない。

 

 

 肯定はしたくないけど征哉が言う事は現実的だった。

 悟のように仲間を増やして形勢を反転させるのが1番の良策だけど、それをするのは膨大の時間と労力が必要だ。進度によっては革新終了が数十年〜何百年先ってこともあるし、何より仲間の死による妨害を受けやすい。

 

 

「私は殺しが正解とは思わない。確かに手っ取り早いけど、それじゃあ邪魔者を排除する上と同じだ」

「別に僕の手で送るわけじゃない。緩やかに、確実に死に向かわせるだけだ。そのための小細工を仕掛けに行く」

「それでも間接的にも殺してるのは変わらないでしょ。治癒者()の前でそれ言う?」

 

 

 酷い奴だよ、お前。命を救うことが仕事の私に、これから僕は人を殺しますって言ってんの。泣けるよホント。

 

 

「……手本は残すよ。例えこれから数十年がクリーンでも、時代が重なればクリーンだったヤツらが自覚無しに真っ黒になってるかもしれないから」

「否定しないってことは少しは負い目を感じてるってこと?」

「ノーコメント。でもゴミを全て抹消するのはバカがやる事だ。反面教師で学ぶことは沢山ある」

 

 

 ハッ、簡単に言うね。思ってても行動に移せないから現状のクソが誕生したっていうのに。

 あー、でも征哉の条件的に可能なのがイラつく。私達は何も出来ないのに。

 

 

 ……そうだ、私達は何も出来ないんだ。だから今言った内容は、征哉が呪術界の業を全て背負うと言ってるようなものだ。マジで泣かせに来るね、こいつ。

 

 

 ここだけの話、征哉は裏が似合う。4人の中でも唯一影の水面下で動くのが得意なヤツだ。私達とは正反対、私達が表で輝くほど征哉は動きやすくなる。

 だから征哉に手を貸すことも出来ないし単独で暗躍しているのを表立って応援することすら出来ない。……ンなの納得出来ないよね?でもこれが事実だよ。

 

 

「誰かがやらなきゃこの界隈は変わらない。それが僕だったってだけだ。適所適材だよ」

「……五条が知ったら怒るよ」

「だろうね。僕がやろうとしてるのは深淵が見えてる綱渡りだよ。失敗したらアウトのヤツ」

 

 

 そこまでして呪術界を変えようとしてる信念に驚く。……いや、違うな。

 人の価値を己の評価で線引きしてるコイツは、仲間(大事)の為に体を張ってる。なんなら自分と他者の生死がかかったギリギリを進んでる。

 

 

「上手くやるさ。僕最強だもん」

「お前の背中に守られるのは癪だね。少しは後ろも振り返りなよ」

「ふふ、頑張るよ」

 

 

 コイツの隣に立ってやれるのは私じゃない。征哉の隣は……まぁ、100%あのクズ共だろうしな。

 だから事の傍観者でしかない私は背中を思いっきりぶっ叩いてやるんだ。前ばっかり見てないで後ろも気にしろってね。

 

 

「いい?五条に言う時、絶っっ対に誤解されるような言い方をするんじゃないよ」

「何それ。僕が口下手だって言いたいの?」

「ちげーよチビ「あ''?」全員がお前の考えを理解できる訳じゃないんだから、自分基準で端折るなって言ってんの」

「……そんなに端折ってるか?」

 

 

 首をブンブン振って肯定してやった。

 お前面倒くさがりじゃん。所々言葉が抜けてるんだよ。特に術式とか自分の話をする時。

 

 

 今だって私が予想出来たから会話が成り立ったのであって、他のやつ(五条)とかだったら勘違いする言い回しだった。

 本人がそれを分かってないんだから頭も痛くなるわ。今だけ先生の気持ちが理解出来た。

 

 

「途中で悟がキレても最後まで話しな。0から100までね!」

「わぁーったよ。僕の目的も、その為の手段も言う。OK?」

「宣言だけじゃ意味ないから!省くなよ」

「ハイハイ」

 

 

 本当に分かってんのかコイツ……。と、グラウンドにいた悟と傑に駆け寄る征哉にため息をついた。

 こんな奴らの紅一点してる私スゴイ。それを抱えてる先生も偶には褒めてあげよって思った。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 夏油傑side

 

 

 1年前のあの夏、悟と征哉は()()になった。

 征哉に関してはこの1年で2級から特級に大幅な飛び級昇格をしていた。

 「上のジジイが善意で昇級を止めてたけど、流石に抑えきれないから特級なれって言われた」らしい。死んだ目で語ってきたのは笑えたよね。

 

 

 変わった2人を見て、置いていかれたと思ったんだ。私に背を向けて歩く姿をただ唖然とすることしか出来なかった。

 

 

 星漿体の任務終了後も悟と征哉は理子ちゃんと黒井さんを助けるために動いていた。

 新たな戸籍だったり、逃亡の手助けだったり……。一方の私は対してなんの役にも立てずにいた。後ろ盾もない、2人と違って立場も権力もない私は無力感に(さいな)まれていた。

 

 

「何も出来なくてごめん?何言ってんのサマー……。ヤガ先から天内達の話し相手になってるって聞いてるよ。メンタル面の不安とか拭ってるんでしょ?」

「そんな凄い事じゃないよ。私はただ……」

弱者()に寄り添うのは大変なんだよ。特に僕と悟はそう感じてる。でもサマーはそれを得意としてるでしょ。凄いことなんだから胸張れよ」

 

 

 私が自分を下げても、征哉は私を上げる。あの時はそのすれ違いに戸惑って、私を真っ直ぐ見つめる金色の目を逸らしてしまった。

 

 

「でも征哉、私にはそれしか出来ないんだ」

「はぁ……。そう、それだよそれ!!お前にしか出来ない事だ」

「………え」

「僕達は逃亡の準備で忙しいし、往々として人との線引きがあるからそんな事出来ないんだよ。寄り添うとか支え合って共感とかができない。よくて同情だ」

「でも君達は突出した得意があるじゃないか。戦闘とかさ」

「あーあー!!分かってねーな!!!お前は色んな事が出来る器用サンなの。僕達とはまた違った凄いやつなんだよ。お互い足りないとこを補い合ってると僕は思ってる。だから僕達は3人で最強。ここまでOK?」

 

 

 思わず泣きそうになってしまった。私は気が滅入っていたのに、征哉はまだそんな事(最強)を思っていてくれたのかと嬉しくなった。

 

 

 征哉の言葉は私の心によく響いた。あの時に1番欲しかったモノを征哉は軽々と言ってみせたんだ。

 本人は決して気遣いとかじゃなくて素で言ってるのだから「この無自覚人たらしめ」って言って頭を撫でたのを覚えてる。

 

 

「……頑張るよ」

「おう」

 

 

 何を、とは言わずとも通じた。たった3年、されど3年の仲でも私達の間には深く繋がれた縁があった。

 それからは、覚醒しても尚努力する2人に追いつけるように私も負けずと鍛えた。征哉は私に反転術式を覚えさせようと意気込んでいるようで何度か命の危機に晒されて冷や汗をかいたな。

 

 

 彼、マジで容赦ないよ。実際にこの間圧迫死しかけたし、御先祖様が河岸に見えたもの。

 その時に何かが体に入っていくような感覚がして、目覚めたら満面の笑みの2人がいて失神しかけたのも体験談だ。

 

 

「こってり絞ってあげるぜぇ?」

「スタートラインに立ったからには覚悟しろよサマー?」

「………今、会得した事を猛烈に後悔してるよ」

「「ふははは!!Don't mind!!!」」

 

 

 悟と征哉に術式指導をされる毎日。

 おかげで解釈は広まったし反転術式も会得して強くなった。……あぁ、強くと言うより()()になったと言うべきか。

 

 

 生憎、性能やらの課題は残っているがまだ時間はある。2人が気長に付き合ってくれるそうで私も少し安心した。

 それはそれとして2人の指導は地獄だったが。おかげで少しやつれてしまったよ。

 

 

「お、サマーはもう来てたのか」

「あぁ、征哉か。悟からの呼び出しが五月蝿くてね」

「5分前行動ウケる。にしてもグラウンドで何するんだよって話だね。硝子も真夏の炎天下でアタオカって文句言ってた」

「ふふ、確かに。気になるところではあるね」

 

 

 グラウンドに呼び出された同期達。悟から事前に聞いた話では術式のお披露目とかナントカ言っていた気がする。

 確かに何かに励んでいる様子はあったし、最近は浮き足立っていたのも見た。

 

 

「よし、集まったな!俺から嬉しい御報告があるぜ〜」

「見ろ、ようやくクズ()が堂々登場だぜ」

「ヒーローは遅れてってか」

「それを言うなら呪術師でしょ」

「ブハッ、言えてるサマー」

 

 

 テンションが高めの悟に文句を言う私達。こういうくだらない話ってすごく面白いよね。私は案外好きだ。

 

 

 笑いあった後にそれぞれに消しゴムと鉛筆、定規を渡された。どうやらこれを自分に向かって投げて欲しいらしい。

 

 

「いっくよ〜」

「フンッ!!!」

「いや、征哉めっちゃガチで投げるじゃん」

 

 

 硝子と征哉が投げた鉛筆と定規は空中に停滞し、私が投げた消しゴムは悟の頭部に当たった。これが悟の見せたかったやつか……。

 

 

「うん、いけるね」

「げっ、何?今の」

「マジかよ悟。僕でも出来ないのに」

「術式対象の自動選択か?」

「そっ!正確に言うと術式対象は俺だけど、今までマニュアルでやってたのをオートマにした」

 

 

 そこからペラペラと語られる詳細。

 曰く、呪力の強弱・質量・速度・形状からも物体の危険度を選別できるらしい。何れは毒物も選別したいとか。

 

 

 ……こりゃ征哉は出来ないワケだ。彼、呪力探知が苦手だから呪力での選別は出来ないし。

 物体は空間にある影で探知すれば或いは……あ、でもそれだと太陽の影(夜間)はいいけど昼間とかがマニュアル操作になるから厳しいのか?

 解釈を反転させたらいけなくもないけど、まだ切り替えに慣れてないらしいし……。兎に角、常時オートマを目標にしてた2人だけど1歩悟がリードした感じかな?

 

 

「これなら最小限のリソースで無下限呪術をほぼ出しっぱにできる。征哉はアレだろ?対象の選別とかできねーから全てを拒む影だろ?」

「あ''?喧嘩売ってんのか。常時絶対防御こそ至高だろ」

「2人とも……、出しっぱなんて脳が焼き切れるよ?」

「自己補完の範疇で反転術式も回し続ける。征哉は言わずもがな、無限の呪力があるからモーマンタイ!いつでも新鮮な脳をお届けだ」

 

 

 ……あー、なるほど。征哉は征哉でゴリ押しでオートマを完成させたのね。選別は諦めた(捨てた)のか。理解理解。

 時々脳筋になるのなんだろうね?さっきまで私が色々考えてたのが馬鹿らしいじゃないか。

 

 

「前からやってた掌印の省略は完璧。赫と蒼、それぞれの複数同時もぼちぼち」

「僕はそもそも掌印とか無いし、後は領域展開かなー。つっても後もうちょいなんだよね」

「そうそう!俺は領域展開(それ)にプラス、長距離の瞬間移動だな」

「そうか、征哉は結界術が得意だから領域展開もアドバンテージがあるのか」

「そーゆーこと!分かってんじゃんサマー」

 

 

 領域展開はそれぞれの術師の中にある生得領域を『結界』という形で体外に創り出して敵を閉じ込め、その結界に術師本人の生得術式を付与する事で術式に基づく攻撃を必中とする結界術の一種だ。

 

 

 難易度は違えど、領域展開は征哉の得意分野に分類される。

 それ故順調に会得への道を辿っているらしい。領域のイメージも必中も考えてあるんだってさ。

 

 

 私も最強にはなったが、こうして見るとまだまだ2人との差は大きい。

 指導や稽古をつけてはくれるが、如何せん3人とも特級だから忙しいから、そう頻繁に時間を取れないんだ。

 

 

 もちろん今の私達の等級じゃあ合同任務なんてものも無い。必然的に1人になることが増えた。

 

 

 ……呪術師としての在り方や、非術師と呪術師&呪術界のクソな部分は征哉から耳にタコができるほど聞かされたし、元の私の信条も叩き直された。

 だから1人で孤立してもブレてはいない。

 

 

 でもそれはあくまで呪術的にだ。私の人間性は変えられない。

 よって、人の愚かな所も死にゆく有様も私の心にこびり付いている。同時に、僅かに引っかかる2人との格の差で少し疲れるのは仕方が無いのかもしれない。

 

 

「傑ちょっと痩せた?大丈夫か?」

「ただの夏バテ……とでも言うと思ったか?90%君らの扱きのせいだよ」

「アハハ!闇堕ちしてないようで僕安心だわ!なんかあったら僕にいいなね?」

「はっ、クズ2号が闇落ち?ないね」

 

 

 私がやつれているのは90%同期(特に男2人)のせいだ。残りの10%は私が煩う()()の良心。呪術師にしてはマトモすぎる感性と性格だ。

 こればっかりは自分でも悩み所だね。呪術のセンスはあるのに向いてないってやつかな。

 

 

「傑」

「……ん?」

 

 

 声をかけられて気がついた。色々考えているうちに悟のお披露目会は終わったらしい。

 珍しく私の名を読んだ征哉の声は少し優しかった。私の考えが読めているかのように、私の隣を歩いてくれた。

 

 

「傑は優しすぎるから、折れちゃう時が心配だよ。1人で抱え込んで限界を迎えそう」

「そう思うかい……?君のおかげでメンタルは大分鍛え上げられたと思うんだけど」

「自惚れんなよー。純呪術界産の僕に比べたらまだ危ういラインだ」

 

 

 分かってるんだろうな。最強になったとしても上を目指す、努力家の征哉は周りもよく見ている。

 

 

 ……でもね、危ういのは君もだろ?自分が置かれる状況より周りに気をやりすぎだと思う。

 だから上層部なんかやってるし、次期呪術総監への就任、次期当主、プラス上層部による無駄な死を減らすために振り分けられる全ての任務の確認……。危ない任務は全て自分に回して休む暇すらない。

 

 

「先に倒れそうなのは征哉だと思うけど」

「……そう?じゃ、倒れたら後のことはみんなに引き継いで貰おっかな〜」

 

 

 はは、これが支え合う……か。征哉が言ってた最強の意味がわかった気がするよ。

 私も早く2人に追いついかなきゃね。2人は私を支えてくれるけど、待ってはくれないし。……領域展開、頑張るか!

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 五条悟side

 

 

 征哉は俺の相棒だと思う。あ、もちろん傑も相棒だぜ?……まぁ、細かいことはいいや。征哉は俺が思うに運命なわけ。

 

 

「なぁ、お前最近疲れてね?」

「そう?やっぱ寝不足だからクマの跡着いちゃったかな」

 

 

 いつからか征哉は目の下にうっすらとクマをつけるようになった。多分、1年前の殺し合ったあの日からだ。

 

 

 いつ見ても何かに追われてるような……、なんて言うんだろ。めっちゃ忙しそうで、4人で夜中に集まって菓子パとか徹夜ゲーム、食テロもできてねぇ。

 征哉抜きの集りとかつまらねーんだよな。ま、いつ途中参加してもいいように開催はしてるけど、4人が集まった回数は片手で数える程度だった。

 

 

「今日新作ゲームするんだけど来れそう?」

「あ''ー、……行きたいけど無理そう。眠いから」

 

 

 ごめんね、と言って征哉は頬を指でかいた。

 ……腑に落ちねぇ。いつも眠いって言ってんじゃん。クマまでつけるとか何してんの?季節の変わり目だから夏バテとか?

 

 

「疲れすぎて寝付きが悪いんだよ。式神の解釈を更新したし、新しい子も作ったからさ」

「……ふーん?」

 

 

 まぁ、征哉がそう言うならそうなのかもな。そう言えば、式神の解釈更新で征哉の顔が死人になってたんだった。

 

 

 なんだっけかな……。今まで現実にある影を媒体にして式神の体を作ってたけど、概念中にある影に変更したんだっけ。

 だから防御面の心配が取り払われて……?あ、そうそう。維持の問題が無くなったんだ!

 前のやり方はわざわざ現実で固定した感じだったけど、元々概念の影を操るのが本質である『幻影法術』で式神を作れば無理やりの維持も必要ないんだな。

 

 

 もっと単純に言えば、現実にあるそこら辺の影=式神ボディ(ただの影だから呪力を流して維持が必修!)だったのに対し、概念の影=式神ボディ(術式による産物のため術者以外干渉不可能+ボディが術式の影響で生成される(呪力流れてる)=維持が必要ない!)ってことだ。

 

 

「見せてよ、新しい子!」

「え〜?やだぁ。楽しみは後に取っておきたいじゃん?」

「せめて役割!な?」

「まぁそれくらいなら……」

 

 

 征哉の想像力と思考力は凄いと思う。呪力関連だけだけど、俺でも思いつかないような凄いことを軽々やってのける。天才だ。禪院の麒麟児って噂は本当だ。

 俺は数少ない術で火力一点集中、傑は圧倒的手数の多さ、征哉は拡張メインの応用技。みーんな術の使い方が違うけど、それぞれで伸ばして最強を名乗ってる。やっぱ俺の相棒達すげーだろ!!

 

 

「1つ、蝶は反転術式。2つ、鷹+雷獣はエネルギー。3つ、2対の鹿は拡張術式【順転】と【反転】。4つ、白ライオンは軍隊。以上!!」

「は?ヒント少なくね?」

「十分言ったじゃん……。まぁ、戦闘面が強い子ばっかりだよ。防御問題は解釈更新で無くなったし、攻撃力全振り。今までの子も全部性能更新したし」

「……へぇ。あ、自立と呪力供給はどうなった?」

「自立は相変わらず場数で育成。供給は術式発動でオート」

「うぇ、もうお前式神使いで良くね?」

「フッ、分かる!!相伝が霞むよね。十種も俺の術式が元だったりして〜」

「だったら禪院家が腰抜かすぞ。ン、まァ有り得るけど」

 

 

 ほら見てよ。これが俺の相棒。マジすごくね?シンプルに尊敬するし俺の誇りだわ!

 

 

「……げっ、お呼び出しだわ」

「実家?」

「うん、……従姉妹がピンチらしい。チッ、扇おじさんめ」

「マジか。早く行ってやれば?」

「すぐ終わらせてくるよ。やっぱりストレス発散!今日の新作ゲームは参加するわ」

「おっけー!待ってる」

 

 

 鳴ったガラケーを見た瞬間、征哉が真顔になった。あはは!こりゃ征哉が可哀想に思えてくるわ。

 お前が言う『扇オジサン』の対応が終わったら、気分転換にでも徹夜ゲームしような!ん?徹夜は体にくるって?だいじょーぶ!!俺たちまだ若いもん!!!

 

 

「それは無理」

「ダメ、徹夜は確定」

「……チッ」

 

 

 舌打ちしながら瞬間移動した征哉にしばらくツボったのは内緒な。ククッ!動画撮ったし傑と硝子にも見せてやろっと。

 

 

 

 

 





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