妄想と捏造の産物とご理解ください〜。
では行ってらっしゃいませ。
アンケ結果より、ちゃんと悟に伝えるぞ!けど今までで1番長い。
先に小話まとめ2を見ることを推奨します。
僕、クリスマス出勤なう。
Noside
──記録 2016年11月 東京
同級生による執拗な嫌がらせが誘因となり、首謀者含む4名の男子生徒が重症を負う。
「完全秘匿での死刑執行。ありえないでしょ」
総監部が集う重要会議。本日の議題は上記の件についてだった。
『しかし本人が了承した』
「未成年……、16歳の子供ですよ?逆に何人呪い殺されるか分かりません。現に2級術師が3人、1級術師が1人返り討ちにあってるんです」
『……』
「だから僕にお鉢を回した。それをお忘れですか?」
『むぅ……』
『ではやはり……』
「えぇ、乙骨憂太は呪術高専で預かります。……総監も、それでよろしいですね?」
周りより豪華な障子に向けて五条悟は言葉を放つ。
その奥に居るのは呪術で映し出された呪術総監の姿。……1人退学して姿を消した悟の親友である。
『構わない。責任を背負うならな』
「勿論そのつもりですよ」
『……では、審議の結果により乙骨憂太は呪術高専に引き渡す。これについての全権は五条悟が有する。以上、これにて会議を終了とする』
総監の言葉で会議に参加していたジジイ共は姿を消す。そしてその場に残るは総監と五条のみ。
「……征哉」
10年前、結局征哉は自分の立ち位置や思考を悟に伝えず、上層部がピカピカになるまで悟への報告を先延ばしにしてしまった。
これは正しく『そこは言えよ!言わなきゃ不味いだろ!!』案件である。
自分がいなくなった時の仲間の心情を考えなかったのが征哉のバッドポイントだった。
故に当時の悟がどう思っていたかを知らないし、お互いに違う立場になって再会した時に悟がガチギレしていたことにびっくりしたのだ。自業自得である。
『……ちゃんと面倒を見ることだ。乙骨憂太がお痛したら無効になった死刑執行がぶり返す』
「征哉、聞いて」
『早く行け。話に付き合っている暇は無い』
「征哉!!!」
悟がガチギレしていた事を知った征哉は気まずさで悟を避けた。後、キレた悟がめちゃめちゃに怖かったので。
……いや何してんの?ホント何しちゃってんの?避けないで仲直りしろよ!である。
そんな素っ気ない態度の征哉を見た悟は「あぁ、ほんとに上層部になったのか。
サマーや硝子が事情を説明しても当時の悟からしたら下手な慰めにしか聞こえなかったのだ。
つまり、悟には征哉の本音が伝わってない。ギスギスした関係の出来上がりである。マジさっさと仲直りして欲しい。
『済まないが、まだ君と話そうとは思わない』
「まだって毎回言うじゃん。いつならいいの」
『……次、生身で会う時には決心しておくよ』
「分かった。……待ってるから」
呪術総監が生身の姿を晒すことは滅多にない。再会したのだってホログラムだった。悟が最後に征哉を見たのは退学の前日、つまり10年前である。
次がいつ来るかも分からないのに、次を待つと言った悟は哀れだ。
このようにして二人はすれ違う。それを知っているサマーと硝子は深い吐息を吐いた。
◇◇◇
禪院征哉side
はい、どうも。禪院家27代目当主兼、現呪術総監やってる禪院征哉だよ。
年中働いてて早死しそうです。ま、分身に仕事やって貰ってるからいいんだけどね!!!
「いや〜原作かぁ。知らない内に呪術0始まってんのかよ〜」
僕知らなかった。
海外出張行ってる間に乙骨憂太が呪った祈本里香が4人をロッカーの肉詰めにしてたとか知らなかった。
日本に帰った瞬間に僕抜きの会議が始まってたから焦ったよね。
秘匿死刑?僕が許すわけねーだろジジイ!勝手に話進めんな!!
これは余談だけど、10年前に仕掛けた小細工で僕が手を出したジジイ共は既に死去した。
あと残るは反面教師の手本となる腐ったミカンだけだ。だから僕を抜きに会議を開催してたジジイは残ったソレのことだね。
彼らの手綱はちゃんと握れているので僕が見てる範囲じゃ好き勝手はさせてない。言っちゃうなら僕の駒みたいなものかな。総監になった今じゃ、ジジイに対しても色々と命令できるしね。
ただ報連相はして欲しいし、僕の目が無いと暴れ出すのはやめてくれ。急な乙骨憂太は心臓に悪すぎる……。
「ハハハ!ナヨナヨしてるから早速真希に責められてやんの!!さすが僕の妹だ」
少しズレたので話を戻そう。
僕は今、顕現してる【
新入生も見れたし満足!あんなに可愛い子供だった狗巻家の棘くんも確認できたので良かった。まぁ、僕と棘の馴れ初めは今度話すとするよ。
「あ、任務かな?……悟もいるし」
八咫に飛んでもらい、真希と乙骨+悟の動向を追跡してもらう。
ん?ストーカーみたいだって?……ハハ。嫌だなぁ、そんなこと言ったら冥さんの方が重度でしょ。
んで、式神が追跡して辿り着いた先は小学校だった。帳の範囲外の電柱に八咫が止まったという事は目的地はそこらしい。
八咫の近くにも悟がいるし、式神を通じて僕が視てる事も気がついてるんじゃないかな。実際
『ィ''ア''ア''ア''!!!!』
『た''ァれぇえ?』
『う''う''うるさい!』
んー怖い。呪霊の頭掴んで潰すとか怖い。
祈本里香……思ったより凶暴だな。これは特級判定しといて良かった。
あの強さで4級とかにしてたら昔の僕みたいに詐欺呼ばわりだよ。
「凄まじいね。征哉もそう思うだろ?」
『かァー』
「……八咫、征哉に変わってくれる?」
ウンウン、普通ここで僕に話振る?しかも僕が八咫で喋れること知ってんのかよ。
あ、昔言ったかも……いや、言ったことねーよ。なんで知ってんだよ。
『特級にして正解だった』
「あれが特級過呪怨霊、祈本里香の全容か。特級認定したのは征哉だろ?」
『そうだよ。あんなのが憑いてるんじゃ上層部も引け腰だね』
「ククク……、怖い怖い」
それどっちの意味で怖いっつってんだ。僕の権力と支配力が怖いのか、それとも単純に祈本里香が怖いのか。
はぁー、昔みたいにくだらないお喋りがしたいなー。気を遣う会話は楽しくない。
祈本里香が暴れ回った事で呪霊は祓われた。乙骨憂太が負傷した真希を背負っているのを見てホッと息をつく。
「おかえり。頑張ったね」
『初めてにしては上出来だね。手当してあげなよ』
「あぁ。……また話せる?」
『……。かァ!?かァ……』
「……いや、謝らなくていいよ。ありがとう八咫、久しぶりに話せた」
端的に言えば僕は逃げた。真希の無事も確認できたし、これ以上一緒にいたら昔みたいにベタベタしちゃいそうだったから。
それに悟って僕の事嫌いでしょ。再会した時キレてたし、裏切り者!!!って罵られたんだよ?あれは心にグサッと来た。
今は再会して5年くらい経って、少しは火も収まってきたけどまだギスギスは治ってない。なのにこうして会話してるのは笑っちゃうよね。
「はぁ、逃げちゃダメだって碇シンジも言ってるよ……」
心の底では仲直りしたいなって思ってるけど、素直にできない僕は子供のままだね。気まずさで逃げてるとか恥だよ。
式神達はこういう僕の本音を分かってるから悟に謝ってるんだと思う。八咫ちゃん、マジ迷惑かけてごめんねぇ!!僕の式神達が優秀で泣いちゃうわ。
現状、上層部も乗っ取ったからいつでも悟に告げられる。でも中々言い出せない自分に自己嫌悪。
ちょっとメンタルにキてるので戻ってきた八咫で動物セラピーしてもらいます。羽がふわふわ……可愛い。
「……ん?ちょっと待って八咫。なんで乙骨憂太の学生証持ってるの」
『かァ!かァ〜』
「え、拾った?なんで返さなかったの」
『かァ???』
「何その人間で言う『はァ???』みたいな反応。僕が渡せって?」
『かァ!!カァカァ』
「式神がみんな賛同してるの!?お前ら無茶言うなよ……」
完全に自立した精神を持つ式神はこういう時に不便である。飼い主に厳しいなお前ら。でも可愛いので許す。
◇◇◇
五条悟side
『特級過呪怨霊、折本里香……422秒の完全顕現。このような事態を防ぐために乙骨を君に預けたのだ。申し開きの余地はないぞ五条悟』
此方を責めるような言い分に眉を顰めた。
「まぁ、元々言い訳なんてするつもりないですし。我らが総監サマは見ていても何も言いませんでしたよ?」
『何をふざけている!祈本里香があのまま暴走していれば町1つ消えていたのかもしれんのだぞ!!総監にはお力がある。暴走したとて問題なかった故に言わなかったのだろう!?』
「そうなりゃ命懸けで止めましたよ……」
はぁ……。なにを言ってんのかご老人様方は。
征哉の力を認めてるんなら僕も認めるべきでしょ。老いた頭は使えないねぇ。
というか、征哉が見てたのは監視とかじゃなくて心配だったからでしょ。
仲間想いのあいつの事だし、ぽっと出の一般家系出身で特級過呪怨霊を背負ってる乙骨憂太を気にかけたんだよ。……そういう所は優しいよね。
『乙骨の秘匿死刑は保留だと言うことを忘れるな』
けっ、征哉の脛齧ってるヤツが偉そうに言いやがって。
しかも今ここに征哉は居ないみたいだし……。あ、ふーん?征哉に秘密で僕にお説教してるって事ね?いい気になってるじゃん。
「そうなれば私が乙骨側に付くことも忘れずに」
『その時は今度こそ総監の敵だな』
『はは、言えておる』
ウザッ。僕と征哉が絶対対立って信じてるのか。
僕だって、……それは信じたくないけど。征哉が考えてる事は分からないしなぁ。
傑や硝子が言うように上層部を乗っ取って呪術界を革新させたいならなんで僕に言ってくれないんだって話だよね。
……征哉、なんで僕に何も言わずに消えたんだよ。
「……チッ」
この話は止そう。征哉は次に生身で会う時に話すって言ってた。
普段の僕ならこんな無期限の破りやすい約束に頷かないけど征哉は別だ。
なんだかんだ10年は会ってないし、征哉から縁を切ったからまともな会話もしてない。
だから今日、久しぶりに話せたのは良かった。
でもジジイ共のせいでせっかく上がってた気分も下がったよ。ったく、野暮な年寄り共め。僕もああはなりなくないから気を付けよっと。
大体さぁ、若人から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ。何人たりともね。
「ささ、どうぞ〜」
「……おぉ」
さて、憂太を連れた僕は武器庫に向かった。呪いは物に憑いてる時が1番安定するからね。憂太に刀かなんかをあげようと思って。
「刀……?」
「里香の呪いをもらい受け、刀に込めて支配する。繰り返し量を増やして何れは全てを手中に収める。あとは晴れて自由の身さ。君も、彼女もね」
「刀に呪いを込める……」
「と、同時にぃ〜。刃物の扱いも覚えなきゃだし〜。何より君貧弱だから、まずは徹底的に扱きます!!」
刃物と長物、というより呪具全般は征哉が得意だったんだけど……もう頼めないしね。
真希は征哉に呪具の扱いを教わったって言ってたから彼女に頼もうかな。
僕はからっきしだし、傑は出張中だからね。はぁ、いつになったら征哉とちゃんと話せるんだろ。
◇◇◇
禪院征哉side
「……今、なんて?」
乙骨憂太が地獄の界隈に足を踏み入れてからしばらく経ったある日。僕は補助監督によりとある報告を受けた。
突然執務室のドアを開けられて放心していたら、聞かされた内容がとんでもなく……とんでもなかった。
因みに突入してきた補助監督っていうのは伊地知の事ね。後輩の口からびっくり報告を受けて思わず聞き返しちゃった。
「ですから、日本各地で大量の呪霊が確認されています。しかもゆっくりと確実に集団で移動しているんです!近づいても術師や非術師を見向きもせず、祓っても数は増加する一方です。一応現地を夏油さんに回ってもらって取り込んで貰ってますが、間に合ってません」
「……マ?」
「マジです」
えぇ……何それ。サマーが長期出張ってのは知ってたけどそんな裏話があったとか知らなかったわ。
え、仮にも僕呪術総監なのになんで今更報告上がってきたの?
「その……上層部の皆さんが言わなくてもいい、と」
「はぁ?報連相してくれよ爺さん共……。絶対『総監の耳に入れるまでもない!お前らが解決しろ!!』とかほざいてたでしょ」
「正解です……。よくお分かりですね」
「かれこれ15年くらいの付き合いだからな。嫌でも理解できるわ」
もうヤダ〜。呪霊が各地に出現、しかも集団で移動して敵対はしてないと来た。
高確率でなんかあるじゃん。何か起こるじゃん。なんでどうにかなるって判断したんだよジジイ共!!
「どこに向かってる?」
「東京と京都です。もしもの時は被害が大きくなります。御三家や高専にも応援を呼んだ方が良いかと」
「……うん、僕もそう思う。伊地知、高専に知らせてくれる?僕は御三家やアイヌの呪術連に「禪院さんが高専で!!御三家と呪術連は私が!!」え……」
……伊地知、僕に死んで来いって言ってる?高専って悟がいるんだよ?
これ僕に死ねって言ってるよね。ギスギスしてるのに顔合わせろって?
あ、ちょ……待って行かないで!「では行ってきます!仲直りしてくださいね!!」ってそんなに笑顔で言うなよ。絶対サマーと硝子の差し金だろお前。
「仕方ないね。式神で……いや、こういう重要な事は口頭で言ってお願いしなきゃダメか」
悟と鉢合わせしませんように、と願いながら丸型サングラスを取り出した。肌寒いので羽織も着る。
黒地に金の刺繍があるそれは、直哉が「兄ちゃんと同じカラーやで!」と言って誕生日プレゼントでくれたやつだ。何歳になっても弟ちゃんが可愛い!
「……うわー、なっつかしー」
ってとこで早速やってきました。10年振りの呪術高専!
先に京都校とは話してきたので、あとは問題の東京校。京都から東京に瞬間移動した僕は深呼吸しながら滞空してます。
悟には会いたくない。これはフラグじゃない。マジで会いたくない。
だって次会った時に話をしようねって約束しちゃったもん。決心しとく、とか言ったけど心の準備出来てねーよ。
「ん?」
「どーした憂太」
「えーっと、なんか凄い気配が……」
「気の所為だ」
「気の所為だな」
「おかか」
「ちょっとみんなぁ」
「だって憂太の呪術感知超ザルじゃん」
呪力強化と赤鱗躍動で強化した聴覚は地上からそんな会話を拾って来た。
え、すごい気配って僕のこと?やだ〜照れるなぁ〜♡……ごめんってマジで。ふざけて話せる相手が周りにいないんだもん。だったら一人芝居するしかないじゃん?
独りごちながら高専内に入る。するとなんていうことでしょう!高専の結界に引っ掛かった感覚がした。
……嘘やん。僕完全に裏切り者扱い?泣くよ??
「珍しいな」
「憂太の勘が当たった」
「しゃけ」
「?」
結界に感知されちゃったのは仕方ない。どうせ学長に用があるんだし割り切ろう。
悟とは会いたくないからさっさと帰りたいところだが。
そんな感じで高度を下げて地上に降りたら1年生達が僕をガン見してきた。
おいおい、そんな警戒すんなよ。僕呪術界のトップだよ?真希に関してはお兄ちゃんのこと忘れた?棘も僕と知り合いでしょ?
「お前何者だ?侵入者は許さんぞ、憂太さんが」
「こんぶ」
「え!」
「殴られる前にさっさと帰んな!憂太さんに」
「「うんうん」」
「えぇ!」
……え、これガチで僕だって分かってないパターン?あーそっか。まぁ、何年も会ってないしな。グラサンしてるし髪型も変わってるから分からないのか。
「初めまして乙骨憂太とパンダ。真希は久しぶり、兄ちゃんだよ〜。棘もおっきくなったね」
「は、初めまして……」
「は?兄貴!?なんだって今……。雰囲気変えたのかよ」
「たかな!?ツナマヨ〜!!」
「ん?なんだお前ら知り合いなのか」
そういえば、真希が言うように昔と雰囲気が違うってよく言われる。主に見た目のせいだけど。
長さは耳が半分隠れるくらい。前髪は目に掛かるのが邪魔だからセンターで分けてる。結果的にイケメンな僕の顔が丸見えだけど、悟と違って後ろは刈り上げてないよ。
服装はシンプルに首までの黒インナーにシャツとスラックス。時と場合で羽織と丸型グラサン。
別にファッションセンスは普通だと思うけどね。胡散臭さがプンプンするらしい。ポイントアイテムがちょっと特殊なだけなのに。
グラサン外せばただのイケメンだって伊地知にも言われたよ。……いや、これグラサンが全てをダメにしてる説あるな。高専時代の悟を彷彿とさせるし。
「ちょっと〜、僕の生徒に何か用?それとも決意ができたわけ?」
「……悟、久しいね」
「上層部関係?ならその子達から離れてもらおうか、征哉」
おっと〜、これはまずい。1番会いたくない
「違うよ。学長に話すことがあってね」
「へー、それって僕たちの関係より大事なわけ?10年振りだっていうのに」
「今はその話より優先すべき事がある。事態は一刻を争うんだ」
「言い訳?ダサいよ」
「煽り癖は治しなよ?もう大人だろ」
あーヤダヤダ。別に喧嘩したい訳じゃないのに喧嘩になっちゃう。ほら、周りも戸惑ってるじゃん。
「夜蛾学長!そちらに協力を仰ぎたい。日本各地で呪霊が大量に発生している。集団で東京、京都に進行しているそうだ。占い師によれば集結するのは12月24日。既に御三家などには話が回っている。高専はどうするか決めてもらいたい」
「なに!?それは本当か!」
このままじゃ悟と殴り合いしそうなのでさっさと要件を話すことにした。
こりゃもうヤケクソ。僕を高専に行かせた伊地知は後でマジビンタしよう。
「僕は嘘なんか言いませんよ。早めにご決断を。人事配置をするのは僕なんです」
「嘘は言わない?ホントの事だってなーんにも言わないでしょ」
「はぁ。……悟、蒸し返すな。今はそういう話じゃない」
「……じゃあ何。それを伝える為にここに来たの?総監サマはいつもの式神でいいのでは?」
うわー、なんかイラつく言い方だな。さっすが五条悟。僕だって来たくて来たわけじゃねーっつーの。煽りが上手くて酒のツマミだわ。
「これは総監としての命令じゃない。僕個人のお願いだ。命をかける戦を強制させる気はないんだよ」
「自分は僕との対峙を避けてるのに?」
「悟だってそうだろ。何を今更僕に突っかかる」
「ハッ、最初に逃げたのは征哉でしょ」
「……は、本気でそう思っているのか」
「本気さ。何も言わずに逃げただろ」
「へー、……そうか。そうなんだ。悟の気持ちがよ〜く分かったよ」
はい、怒った。怒っちゃったよ。
僕が逃げたことなんて無いし!僕がどれだけ葛藤して上層部に行ったか、皆を守る為にどんだけ頑張ったか知らないだろ!ふん!!!悟なんて大嫌いだ。謝っても許してやんねー!!!!!
「皆さん、騒がしくしてすみません。僕はもう戻ります」
「あ、あぁ。征哉、大丈夫か?」
「問題ないですよ。あんなやつなんて知りません。では学長、決まったら連絡ください」
「分かった。……話し合えよ」
「……それ、今の見て言います?」
周りの術師も1年生も引いちゃってるよ。
そりゃ目の前で拗らせた喧嘩したらそうなるけどさ、そんな「あー、お互いすれ違ってんな」みたいな目で見るの止めてくれない?すっげぇ恥ずかしいから。
「では」
「……あぁ」
学長と会話するために無視していた悟はなんかずっと喋ってた気がする。けどシャットアウトしてるので僕の耳には届かない。
しばらく悟の顔はみたくない。……あ、そもそも生身で会うのって10年振りじゃん。でも僕が逃げたって言ったこと怒ってるからスルーしてやるわ!
◇◇◇
──12月24日 百鬼夜行 当日
「クーリスマスが今年もやってくる〜♪僕は仕事〜百鬼夜行〜♪」
世間じゃクリスマスだなんだとリア充が騒ぐ日だ。
僕も暇して遊びたいけど、残念ながら年中通して僕の休みはあまり無い。ブラックすぎる。早く引退したい。
それに今年は大量発生した呪霊の進行が観測されたので僕以外の術師も大忙し。
呪術師の間ではこれを『百鬼夜行』と呼んだ。今まで無い現象だからそれっぽく命名したらしい。
「労働はクソだって七海も言うわけだ。ニートになりたいなぁ」
「何言ってるんですか禪院さん。皆さん配置は完了ですよ、いつでもいいです」
「結構本気なんだけど……。まぁ、いいや。サポートありがと伊地知。やっぱり優秀だね」
「い、いえ!褒められるほどじゃ……」
仕事が出来る伊地知は補助監督の要だね。悟の面倒事で頼られたり、僕の雑用をこなしてくれたりと補助監督の中では株が爆上がりだ。
そうだ……、補助監督にもトップみたい役職作ろうかな。伊地知なら上手くやれそうだし。一応案でも出しとく?いや、やめとこう。
「良かったんですか?
「いいよ。僕も特級術師だし、戦力として加えなきゃ」
「確かに禪院さんがいれば安心ではありますね」
「頼もしいでしょ?……伊地知。伏せて」
「え?」
『……ィィ''ア''ァア''ギャァア''!!!』
伊地知と話していたら背後から迫る呪霊の気配を察知した。
影での探索は便利だね。広範囲だし精密な情報が脳に送られてくる。
しかも今は夕暮れ、これから夜だからどこにいたって無制限のテリトリー展開だ。居場所バレバレ。
僕にとっての好条件に軽く笑いながら、襲いかかってきた呪霊を右の掌を向けることで祓った。
今のはただ呪力を飛ばしただけだけど、まぁ、低級呪霊ならこんなもんか。
「来たね。呪霊が集う百鬼夜行」
「無線で伝えます。……北方面では既に戦闘が開始されているようです」
「おっけー。呪詛師も乗じているだろうから注意ね。伊地知は悟に伝えることがあるんでしょ?早く行きな」
「はい、ご武運を!」
僕びっくりだよ。まさか百鬼夜行が自然発生するとか思わないじゃん?
サマーが呪詛師堕ちになってないからてっきり百鬼夜行は起こらないって思ってたよ。
「……にしても、僕に向かって来すぎじゃない?」
絶影で拒んではいるけど、僕の視界を埋め尽くす程の呪霊に囲まれてる。
ワンチャン僕が狙いだったりする?だとしたら首謀者は某クソメロンパン辺りで心当たりあるんだけど。
ボキュ!!ゴキィ!!!
「雑魚ばっかはダルいって……。もっと手応えある奴いないの?」
僕に寄ってくるのは2級くらいの雑魚ばっかり。
他は僕との実力差に怯えて寄ってこない。雑魚戦は時間も食うし、早く一掃したいよね。そう、こういう時は〜?式神にぶん投げましょう!!!
「【
【飛天】は鷹+雷獣の形をした式神だ。
僕が吸収したエネルギーを飛天が操り、変換する。例えば雷とか炎にね。
広範囲の鏖殺が得意だし指向性があるから優秀だよ。
普通、広範囲の攻撃は仲間を傷付けるデメリットがあるけど、指向性によってそれが無い。すげーよな。うちの子偉い。
「雷鳴を起こせ。できる限りの鏖殺だ」
『ガウ!』
上空に飛んでもらい、しばらくエネルギーで変換した雷電を溜めてもらう。
なんで雷かって言ったら理由は単純だ。エネルギーを電気に変えるのが1番効率がいいから。
因みに、エネルギーを炎に変えるほどアホなものは無い。燃費悪すぎて笑っちゃうから僕は極力炎を使わないようにしてる。
エネルギー変換効率ってマジで大事だよ。
炎を気軽に発生させたらストックしてたエネルギーの在庫が瞬く間に消費されるもん。アホだよアホ。やっぱり電気が最高。知らない人は覚えておいて。
チ''ィ……、バチ、バチバチ……!!!!
「後は任せた、飛天」
刹那、稲妻によって空間が裂けた。言葉で表すならドォーン!バリバリって感じ。
対象は呪霊のみだろうし、飛天の半径300mは雷の嵐でしょ。いきなりの事で固まった呪詛師をパパっと縛って回収しちゃおう。
「はーい、大人しくお縄についてね〜」
「……な、いつの間に!」
「今さっき♡瞬間移動って知ってる?僕のアレのせいで気づかなかったかな」
「あの雷渦お前かよ!!!バケモンだな!」
「ハハ、お褒め頂きありがとう」
とりあえず気絶してもらって、【
向かってくる威勢のいい奴もいるけど、そういう奴は片手で遊んでやって情報を抜き出したりする。
何人くらいの呪詛師がいるか分からないしね。多分、多くて50人くらいじゃないかな。
「そうだ、お前!呪具師の知り合いがいるな?」
「呪具師?知り合いならいるけど、それが何」
「お前にこれを見せろと言われてな。呪具師家系の呪具師で有名な武倶の写真だ」
「ふーん?さっさと見せて。(武倶さんってやっぱり有名なのか……)」
さらっと武倶さんを見直したところで本題に入ろう。呪詛師の1人に写真を渡された僕は顔から表情が消えた。
「これ何の冗談?」
「事実だ。今朝の写真だぜ?額に傷があるヤツがお前に見せろってよォ」
「そうか、アイツか」
写真を握り潰した。
写るのは血塗れた武倶さんと多分彼から奪ったであろう呪具を持ってピースしてるクソメロンパン。しかも律儀に顔はお面で隠してやがる。
僕が退学して上層部側に付く時にも首突っ込んできたしさぁ、まじアイツなんなの?
あの日の詳しくは番外編小話まとめ2を見てくれれば分かるから今は割愛するけど、アイツ僕の事大好きかよ。なんでこうも胸糞なことしてくるのかなぁ?
「チッ」
「オォ?怒ったか?」
「黙れうるさい社会のゴミが」
「口悪ッ!」
キレた。悟に『逃げた』って言われた時よりキレた。思わず目の前に正座してる呪詛師の顎を蹴っちゃったし。
「……100%確定、今回の百鬼夜行はメロンパンのせい。各地で発生した呪霊は僕の
東京には僕がいるし、京都は幼少期からこびり付いた僕の残穢がある。……進行の理由としては有り得るな。傍迷惑な野郎だぜメロンパン。
ふつふつと湧き上がる怒りを抑えずに呪霊を祓って、ちぎっては投げでとにかく殺す。
無我夢中で祓ってたらいつの間にか大分移動してたみたい。高専の近くまで来てしまった。そこでふと気付く、そういや僕の出身校ここだから残穢を追ってここにも来そうじゃね?と。
「ピンポーン。ガッデム!うじゃうじゃ来てやがる」
高専内には戦闘ができない低級の術師や数人の補助監督がいる。
事前に僕が張っていた結界も破られそうだ。おかしいな、天元の隠す結界はどうした?僕の結界だって簡単に突破できるものじゃないでしょ。
中には真希や乙骨も待機してるはず。他の術師は渋谷で呪霊と呪詛師とドンパチやってると思うから僕が高専を守るしかない。
僕の結界が破られたらお終いだ。天元のは隠すだけで防御性能皆無な結界だし。
『ギャァ!!』
『ォオオ''ェェエエゥゥ』
『ア、アケ''テェ』
……パリン!!!
「やっぱり割れたか」
『アハハハハギャハハハハ』
『アアア、入レたァ』
「行かせないよ」
呪霊の前に立ちはだかって術式を展開。掌に銀色の光が集まった。
全てを虚空に返す比礼【
渋谷で暴れてる【大海蛇】と【飛天】はそのままに【
「幻狼は僕についてこい。獅來は部隊を組んで高専を守れ」
【
式神化呪霊と兵士に一々命令を出すのが面倒で、式神に全部丸投げしたかった面倒くさがり(昔の僕)が四徹目の限界状態で作りあげたやつ。
そして初めて聞くであろう『影の兵士』。この仕組みはちょっと厨二病っぽい。
概要は
よく言うじゃん?中の人とかもう1人の自分とか。それを僕が奪って支配してるの。
表に出てるのが普段なら、裏を奪っても生産元に影響はない。つまりwin-winの関係。
概念の影に分類されるから呪霊からも人間からも兵士を作れる。僕は戦力が増えるし、人に支障はない、呪霊も祓える。ほら、最高でしょ?
「あ、そうだ。【
『シィ?』
「人手が足りないでしょ。反転術式使えるんだから働いてきなさい」
『シュウ!』
「陣に入って、送るから」
【
きっと硝子の所は怪我人もいるだろうし手助けになればいいと思う。
他人に反転術式できるのが僕と硝子しかいないんじゃ大変だよ。しかも僕は戦闘が本業だから硝子しか治療できないし。
───イギャアアアアア!!!
「えぇ……。祈本里香の完全顕現か。色々展開早すぎじゃね?」
呪力探知がザルな僕でも分かる
突然すぎて僕戸惑ってるよ。上層部が騒がしくなりそうで遠い目したわ。
あー。確か、原作で里香が顕現したのって仲間が倒されたからだよね?
って事は真希とかが怪我してるのかな。いったい何処のどいつだ?僕の
「嫌だなぁ、私が用あるのは君じゃないんだ。退いてくれよ」
「……合わせろ、里香」
「別にいいじゃないか1人2人死んでも。大して変わらないんだから」
うん、……どういう状況?顔隠してる知らない人がいるんだけど、憂太キレてるし。
って待て、憂太が対峙してるソイツの気配知ってるよ。お前メロンパンだろ。
……あー、なるほど理解。メロンパンは僕に用があるのね。
10年前みたいに
相手が悪すぎるから【幻狼】の顕現を解いた。こういうのは僕だけで戦った方がいい。1人isサイキョー!
戦闘のために幻狼を呼び出したけど結局出番無かったな。まぁ、頭のいい式神の事だから影に戻したのも納得してくれるはずだ。
「憂太、ちょっと下がりなさい」
『ダァレェエ?テキィ?』
「!!貴方は、真希さんのお兄さん……。里香、ちょっと静かにして」
『ワ、ワカ''ッタ……』
「禪院征哉だよ、憂太。で、お前はここで何してる。僕に用があるなら直接来いよ変態」
「久しぶり〜友よ!今回は君じゃないよ。君の遺産を取りに来たんだ」
本音言っていい?……とてもとてもキッショ!!!って思った。
ストーカーだけじゃなくて前世の遺産まで回収しようって?やめろよ鳥肌ヤバいから。
「……あの人と知り合いですか?禪院さん」
「いや、あっちが知った気になってるストーカーだよ。それで遺産って何?」
「君が残した、と言うより君の死後に呪物に転じてしまったモノだよ。あと君の呪具」
「うっわ……、また知らない話してるよコイツ。前世は前世だろ。今の僕に関わるなよ」
軽率に前世ネタを振りまくの止めて欲しい。今の僕に前世の記憶なんてないから理解できないよ。仲良さげに話しかけてくるけど、ただのストーカー野郎にしか思えない。
「君の呪物は全部で10個。そのうち1つは私が使って、もう1つは呪具師から回収済みだ。残りは破壊されたか行方不明……。君の呪具も高専と御三家には無かった」
「呪具を探すために高専に侵入、ねぇ……?僕の結界を破ったのはお前か」
「え、あの割れた結界って禪院さんのやつだったんですか」
「そうだよ。ちゃんと守れてたのにアイツが破壊したおかげで呪霊がワンサカ。天元の隠す結界もあんまり機能してない。多分アイツのせい」
「天元……?」
「知らないならいい。後で悟に聞きな」
もう災害だろあいつ。メロンパン君よォ、平和の為に頼むから死んでくれ。というか僕が殺す。
死んでるかもしれない血塗れの武倶さんの件も相まって再度怒りが湧いてきたわ。
「……写真に写ってた、武倶さんから奪った呪具が呪物だって?」
「正解!元は君が所持していた呪具だけど、それが呪物に転じた。あの呪具師は呪具だって勘違いしたようだけどね!おかげで楽に手に入れられたよ」
「つまりこうか。呪具を求めて高専と御三家に侵入。偶然にも武倶さんが手に入れた呪具がお前の探していた呪物だったと」
「あの呪具師が封印を解いてくれたからね。いや〜良かった良かった」
なんにも良くねーよ。お前が何したいんだよ。呪物を集めて前世の僕を蘇らせようとか?笑止、心の愉快犯は仕舞えよゴミクズ。
「禪院さん。あいつ、真希さんや僕の友達も傷つけたんです。許せません」
「真希が?……そうか。僕の妹にも手を出したか。武倶さんも襲って?」
「ククク、そういえば昔も家族想いだった。そのせいで君は堕ちたのに……まぁ、いいか。呪具師は違うよ」
「あ?」
「襲ったんじゃない、殺したんだ。君の妹は中々活きのいい女だったから見逃したけどね」
──ブチッ!!
「「殺してやる」」
コンマ1秒で憂太と同時に踏み出した。こいつの事は許せない。死んでも嫌いだ。
パシ、バシ!ガキン!!!
憂太は刀、僕は素手。だけど、憂太と里香の間合いに入らないように注意しつつ、僕も呪具で戦うことにした。
里香は憂太の言うことしか聞かないし、僕に当たらないように配慮してくれないからな。近づきすぎないように長物の呪具の方がいい。
正直僕一人の方が戦いやすいけど里香がいるから憂太にお願いもできない。
特級過呪怨霊に今ここで襲いかかられるのも嫌だ。ってことで影に入っていた呪具を取り出す。
「!!やはり君が持っていたか!」
「知らない間にな。お前が探してたのはコレだろ」
「なるほど、影に入れた状態で死んだから今世に引き継がれたのか。面白い……」
「よそ見するな!」
「はぁ、乙骨……。今は彼と話してるんだ。割り込まないでくれるか、なっ!」
「……!」
憂太がすっげえ吹っ飛んだ。
まぁ、すぐ戻ってくるだろうし着地は里香がいるから問題ないでしょ。気にしない事にした。
僕が取り出した呪具、とは言うけどその実体は曖昧だ。なんか霞掛かった感じでそこだけ幻を見ているような感じ。
「1000年前の君が造り、愛用していた。術者の思うまま姿形を変え、術者の術式効果が任意に付与されて発動する呪具【
「ハッ、お前には使いこなせねーよ」
影内でこれを見つけた時に思った。これは僕の呪具で、僕が生み出した呪具だって。
全く……、僕の前世はクズらしいけど、それが気にならないほど優秀だったらしい。
現に今、槍の形に姿を変えた【
「君は殺せないしなぁ。それ、頂戴よ。上手く使うかr……ブッ!!」
『ゆ''うた''……ケガ、な''ぁ''い?』
「ククッ、おかえり憂太。平気?」
「ッはい!」
「ペッ!しぶといね。黒閃なんてやるじゃないか……!」
遠くに吹っ飛んだ憂太が里香に連れられて戻ってきた。
憂太は空中で里香を踏み台にして加速、黒閃をメロンパンの顔布越しにぶち込んだようだ。ハハ!最高の後輩だな。こういうの案外好きだよ。
「……乙骨。今、君を殺す事にしたよ。折本里香を使いこなされたら今後の計画に少し綻びが出そうだ」
「計画……?ただの余興だろ。お前が楽しむだけの」
「わかってるじゃないか、友よ。だからこの術を使おう」
そう言ってメロンパンは掌を上に上げた。
掌で発生した渦のように巻いている黒いもの。風が巻き上がり、吸い込む様な術だ。メロンパン版の極の番うずまきかよ。
「周囲にいる呪霊全てを1つに纏め、乙骨にぶつける。この吸い込みはその予備動作だ。黒い部分で混ぜ合わせるんだよ。君が昔やっていた技だ」
「だから前世ネタ止めろって。でも不味いね、周辺って言ったらとんでもない量の呪霊だ。憂太、ここは僕に任せて引きなさい」
「……嫌です。すぐ理解できました。こいつは放っておいたらダメな人間です。だから今、ここで殺す。……里香」
え?そこは「お任せします。頑張ってください!!」って引くところでしょ。
っておい、里香呼んで何しようとしてる。まさか純愛砲撃つとか言わねーよな???やめとけってメロンパンの事だからそんなんじゃ死なないよ。
「里香……」
『な''ァに?』
「いつも僕を守ってくれてありがとう。僕を好きになってくれてありがとう」
「憂太、やめなさい」
「最後にもう一度力を貸して。アイツを止めたいんだ。その後は、もう何も要らないから。僕の未来も、心も体も全部里香にあげる」
「憂太!」
「これからは本当にずっと一緒だ。……愛してるよ、里香。一緒に逝こう?」
うっそぉ……、止めろって言ったじゃん。何してんの憂太。死ぬよ?いいの?いやよくねぇよ!!!
待て待て、僕の目の前で悟が受け持ってる生徒が死んだら僕が責められるよ?あ、でも原作じゃ生きてるからセーフ?でも心臓に悪いからやめてほし……あ、キスしやがった。
『あ''っあ''あ''あ''あ''!!!!憂太!憂太っあ''!!!大大大大大大、大好きだよぉ!!!!!』
あー……、里香が開眼しちゃった。覚醒しちゃったよ。
これは離れた方がいいな。よし、巻き込まれたくないので上で滞空してよっと。絶影も展開しなきゃ致命傷だ。
「自らを生贄とした呪力の制限解除!……そうくるか、女たらしめ」
「失礼だな……純愛だよ」
淡い桃色の光とメロンパンが発動した黒い呪霊の集合体が放たれた。
衝突後、純愛砲の出力が勝って辺り一面を飲み込む。
衝撃波で周囲一面吹っ飛んだ。無論、上空にいる僕もあまりの威力に口角が引き攣ってる。こりゃ絶影なかったら危なかった。
「……逃げ足の早いやつ」
晴れた視界で憂太が気絶したのを見た。息はありそうだし、解呪おめでとうって感じだな。
でも肝心のメロンパンは逃げたらしい。後を追うか……。どうせピンピンに生きてる。
「路地裏でコソコソ何やってんの?」
「……なんだ、君か。乙骨が来たのかと思ったよ」
「まさか、気絶してるよ。今頃仲間が肩揺さぶってるんじゃない?」
「はぁ、少し見くびってたよ。折本里香があれ程までなんてね」
「……ハイハイ。どうする?今死ぬ?僕が殺してあげるけど」
殺すのは肉体じゃなくて脳みそってのは分かってる。早くしないと悟も来そうだし、殺すなら早く殺したい。
「いや、まだだ。この肉体は特別性でね。そう簡単に死なないよ」
「特別性?……ソレ、僕の呪力と同じじゃん」
「察しがいいね。呪物を私に使ったと言ったろう?」
「……あっそ」
つまりそういう事だ。
「ふぅ……。でも前世の君は保険を掛けてたようだ。まんまと嵌められたよ」
「前世もお前のことが嫌いだったって事でしょ」
「それは言えてるね。会う度に嫌な顔をされたし。じゃ、話もできたから帰るとするよ」
「あ?待てよ。10年前みたいにみすみす逃がさないよ」
「それはどうかな。彼が来たよ」
僕に背を向けたメロンパンを逃がさないように1歩踏み出した。そして背後から聞こえた声。……悟だ。
「……征哉、生身で会うのは2度目だね」
「悟。タイミング悪すぎだよ」
「何の話?」
「別に……」
声の主を見るために振り返った一瞬でメロンパンはいなくなってた。ホント逃げ足早いなあの野郎。
しかも僕と呪力が一緒だから悟の六眼でも判別がつかない。
はぁ、気が重いわ。もうメロンパンのことは忘れよう……。どうせ来年辺りには殺せるし。
「決心はついた?」
「……あー、うん。先延ばしにしすぎたよね」
「さすがに10年はない。高専に知らせにきたこの間もさ、僕に会いに来たって思ったのに百鬼夜行の知らせだったし。仕舞いには喧嘩しちゃうし」
「う''っ、だって悟から突っかかってきたんじゃん……。一応謝っとくけど」
包帯を外した悟に倣って僕もサングラスを外した。互いに目を見て話をする。
……うーん、やっぱり悟の顔はイケメンだな。僕も負けてないけど、好きな顔だ。
「いいんだよ、僕もごめん。煽るような事して。
「いいよ。僕も伝えたい事が沢山あるんだ」
言えなかったとこも沢山ある。
10年だよ?上層部で誰1人仲間がいない中で10年も耐えたんだ。任務の振り分けに細心の注意を払って、仲間を守る為に暗躍してた。
「僕は……、縁を切るなんて言ったけど、ほんとはずっと一緒にいたかった」
「……うん」
「煙草吸いまくっては反転術式で肺を治す硝子も、クソ真面目で善人すぎる傑も、元気でキラキラしてる灰原も、硬いけど笑うと可愛い七海も、目立たないけど仕事が出来る伊地知も……!」
「あぁ……」
「喧嘩したけど、何も言わないで消えたけど……10年も待ってくれた悟も、みんな大好きなんだ」
……嫌だなぁ。悟の目の前で泣いちゃいそう。
背の高い悟を見上げる感じになってるけど、ちょっと出てきた涙でボヤけて顔がよく見えないや。
「きっと、征哉は僕らを守る為に色んなのを犠牲にしてきたでしょ。心を押し殺して汚い事もやったと思う。僕も背負うから、全部教えてよ」
「は?それはやだ。僕が全部背負うって決めてるの!」
「アハハ、……そっか。ならちょっとでも楽になれるように話聞かせて?」
僕を抱き締めて一緒に背負うとか言ってきたけど、それは容認できないね。あと抱きつくな。そういう触れ合いに慣れてないんだよ。
体を押して抵抗してもがっちり腕を回されてて離れられない。照れ隠しで抵抗してると思ってる?……そうだよ、あたりだ。
離れようとすると逆に力が篭るから力負けだ。仕方ないので諦めて、そのまま10年の道のりと僕の思想を教えることにした。
「行こう、征哉。みんな征哉の帰りを待ってるから」
「……うん。目、腫れてないかな」
「平気だよ。いつでもお前は綺麗だ。さすが僕の運命」
「ん、それを言うならお前もな。あ、これあげるよ。乙骨優太の学生証」
「征哉が持ってたんだ。……自分で渡せば?」
「残念、後処理でしばらく休めそうにないからね」
昔、硝子に言われたよ。端折らないでちゃんと言えってさ。……ちゃんと言えたぞ硝子。仲直りもした。
長い喧嘩も終わりを迎え、夕日を背にして殴り合ってはないけど、暁の空を見てラーメンは食べたいなーって悟に言ったら笑ってた。
その時僕は、悟があんまりにも優しい笑顔で僕を見つめるから、久しく感じる胸の温かさに昔に戻った心地だった。
的外れかもしれないが、直哉が生まれた時と同じだ。これがよく言われる愛しさって感情なのかもしれない。
◇◇◇
Noside
「今更だけど、君がやっつけた呪詛師は誰か分からなかった。まあ、多分死んだんだろうけど、生憎現場がボロボロじゃ判別もつかないよねって話」
百鬼夜行から数日。雪がチラチラと振る高専内を五条と乙骨は歩いていた。
「その件はすみません……。僕の給料から差し引ける分は負担します」
「いいよいいよ。それについては解決したから。それから、これ」
「あっ!学生証。先生が拾ってくれてたんだ」
「いや、僕じゃない。……僕の大事な唯一の人だよ。憂太もよく知ってる」
五条は今尚、上層部にて後処理を頑張っているであろうその人を思い浮かべた。
口元には笑みを浮かべ、10年振りの彼の姿を脳裏に映し出す。
百鬼夜行が終了した後、互いに真似あっていた部分を上げた話は笑ったものだ。
征哉は悟の丸グラサン、悟は征哉の性格。
長年会っていなかった分、悟が模倣した征哉の性格が明るすぎるクズになってたのを征哉は笑った。
そして悟は、丸グラサンをする事でカタギには見えない不審者になる征哉に笑ったのだ。似合ってはいる、とは悟の言葉だ。
「ほら憂太、いつまで待たせんだ!行くぞ!」
仲間の元にかけていく乙骨。それを尻目に五条も踵を返した。
「明日は征哉も休みもぎ取ったって言ってたし、ラーメンでも奢るか」
先日征哉が言っていた『暁の空でラーメンを食べる』を叶えるために、悟は今日の内に明日の分の任務を終わらせようと息巻いたのだ。
仲直り大成功!!と2人の喧嘩を知っている者は嬉し涙を浮かべるだろう。特に征哉と悟の間に挟まれてたサマーは大号泣だ。
式神の名前と呪具の性質はある読者からオマージュしました。
ありがとうございます!