御三家に生まれたので生存戦略を遂行する   作:超甘味

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妄想と捏造の産物とご理解ください〜。
では行ってらっしゃいませ。

皆ー!!テンション上げてー!!!!
渋谷事変だよー!!!



僕、渋谷に行く。─壱─

 

 

 ──記録 2018年 10月31日 19:00

 東急百貨店・東急東横店を中心に半径およそ400mの帳が降ろされる。

 

 

「避難、させたんだよね?」

『ひっ……。は、はい。そのように誘導も告知もしましたが、その……聞かなくて』

「付和雷同かよ。集団心理は面倒だね」

『す、すみません〜〜〜!!』

「泣くなよ伊地知〜、僕が泣かせたみたいじゃん」

「ゔ〜……」

 

 

 はい、どうも禪院征哉だよ。ハロウィンの渋谷nowでーす。

 

 

 今僕は帳の外、上空から周りを見渡してる。

 【八咫(やた)】の偵察と影を使って帳の外中を伺って、メカ丸から貰った小型通信機で伊地知と会話をしてます。確か司令官用として補助監督だけに繋がるやつってメカ丸が言ってた気がする。

 

 

 

『大体の人が疑問を持っていまして、結局多い方についてます。これでも大分避難させたんですよ……』

「あっそ。頑張った方なんじゃない?」

『う''ぁ……!』

 

 

 僕は死にたくないなら避難しろって命令出したのにさぁ、パンピー達は全然言うこと聞いてくれなくて困っちゃうよね。

 

 

 サマーだったら「猿め!!」って言って怒ってそう。ってかさっき見た時怒ってたわ。灰原が宥めてたのを見てちょっとだけ僕の心も落ち着いた。

 仕方ないことは仕方ない。僕は指示出したからね?パンピーが死んでも知らねーから。

 

 

 それよりも、渋谷での術師たちのコンディションは完璧だ。御三家や各呪術家系、アイヌの呪術連との協力もOK。

 敵の居場所や目的も、捕らえた呪詛師の尋問によって大体は把握してる。あとはこの騒動を乗り越えるだけ。でも無性に嫌な予感がするんだよなぁ……。

 

 

「遺書書いといて良かった」

『え''、禪院さんは死なないでくださいよ!?!?』

「伊地知うるさーい。インカムなんだから音量配慮してくれ。マジビンタするよ?」

『すみません!!!』

 

 

 緊張感の無い会話をしてるけど僕の心臓はバックバクだ。口から心臓が飛び出しちゃいそう。

 

 

 僕が死ぬことはまず無いけど仲間が死ぬ可能性は大いにある。

 だからあえて控えてた鈴作りを再開して、大量に作ったのを仲間に1人2個づつあげた。おかげで僕の疲労はパネェけど今は復活してるから問題ない。

 

 

「あー全班、聞こえる?」

『七海班、聞こえます』

『こちらパパ班だぞ。聞こえておる』

『灰原雄です!日下部班聞こえてます!』

「各呪術家系とその他もいい?」

『はい!聞こえます』

 

 

 一応御三家や京都校を含む全班に問題がないかを確認する。

 念の為にそれぞれの班でやる仕事や動き、敵の目的もね。司令官って重労働だけど確認は大事だから。

 

 

「では諸君、今宵は皆が命を懸ける戦いになる。覚悟が無い者は今から降りても遅くはないぞ」

 

 

 最低でも2級以上の術師を集めたけど、特級呪霊が相手では手も足も出ないと思う。パンピーの恐怖で呪霊も沢山湧くから尚更。

 だから無駄な死者を出さないために降りたい者は降りればいい。怖気付いた足手纏いは要らないんだ。

 

 

「ただ、命は大事にしてくれ。死んで勝つと死んでも勝つは違うから、そこを履き違えないように。……武運を祈る」

 

 

 よし、これで総監としての役割は終わりだ。あとはただの特級術師、禪院征哉として暴れよう。……あ、そうだ。もうちょっと個人的なお願いがあるんだった。

 

 

「あーもしもし?さっきぶりだけど帳の中に入る班で誰かCタワーに向かって。呪詛師の影が見えたから。それと打ち釘も、多分帳のモノかな」

『了解!』

 

 

 甚爾は死んでないから降霊されないとして、過去の強い術師とかを降ろされたら厄介だ。

 原因となるCタワーにいるババアとあべこべジジイは優先的に制圧するべきだな。

 

 

 ちなフィジカルゴリラがいる伏黒一家は禪院本家に避難させて、ついでにお家を守ってもらってる。

 直哉も待機させてるから京都の戦力は十分でしょ。ただパパが東京に来たのは誤算だった。

 

 

「早く五条悟と禪院征哉を連れて来い!!」

「五条と禪院って誰だよ?」

「知らねーよ!!でもそいつらが来ないと出られねぇんだよ!!!!」

 

 

 影を介して、帳の中からそんなに会話が聞こえた。中の非術師も帳から出られなくてパニックになってるね。大変大変ー。

 

 

「準備はいい?悟」

「あぁ。傑は?」

「一足先に中に入ったよ。基本的に僕らは単独行動だし。でも共闘もあるかもしれない」

「わかった。死ぬなよ」

「ふふっ、誰に言ってんの」

 

 

 空中からの偵察も止めて地上に降りる。僕を待ってた悟と会話してから帳の中に入った。うーん、やっぱり人がいっぱいだね。

 

 

「あ?いってぇ……」

「あ、ごめん」

「ちょっと通して」

 

 

 ごった返した人の波を掻き分けていく。忠告を無視したパンピーに呆れすぎて、僕達すっげぇ棒読みだった気がするよ。まぁ、いい。ここからは渋谷事変の始まりだ。

 

 

 常に気は抜けない。僕も尋常じゃないくらいピリピリしてる。この状態で戦闘に入ると確実にハイになるね。僕のイケメン美人フェイスでお目目ガン開きしちゃうかもしれない。

 

 

「……あ?悟、もしかして皆もう作戦開始してる?」

「え、うん。僕らが最後だよ」

「あ''ー……。OK、そういう事か。あいつが言ってたの」

「ん?」

 

 

 現在時刻は22:31。原作とは2時間遅れの時間差にずっと違和感があった。

 なるほどね、クソメロンパンが言ってた計画の一環とは情報を流すことでの対策と確認、それを含めた時間のズレのことか。アイツの考えてる事がなんとなく分かったわ。

 

 

「……何を準備している」

 

 

 マジで遺書書いといて良かったかもしれない。ハー、考えても起きちゃった事は変えられないから切り替えよう。

 悟とも分かれたことだし、準備運動して式神出すか。順平と硝子がいる医療班には【環】を向かわせよう。

 

 

『征哉ー。聞こえとるかー?おーい?』

「ん?何パパ」

 

 

 体を伸ばしたり腕を回したりしてたら影越しでパパの声が聞こえた。

 これは通常の通信機とかとは全く別物で、術式(索敵)を使う時のオマケだから帳に防がれることが無い。

 

 

 帳で通信が遮断される中で通信ができるのは有難いよね。さっきの全班への確認も影越しの会話だったし、術式様々ですわ。

 

 

『タコがおってな。特級じゃ』

「分かった。すぐ行く」

 

 

 発覚した時間のズレの件だけど、パパがタコと戦ってるのを聞くに僕と悟以外は原作通りの時間でドンパチやってるみたい。

 ということは総合的に悟の封印は遅れるわけだね。でも僕からしたらさっき悟と分かれたから封印までの時間が無い。

 

 

 禪院班がタコ(陀艮)と対峙してるのも普通に考えてヤバいな。

 原作なら降霊された甚爾が乱入して呪霊を祓うけど、肝心のその役割をするはずのゴリラは今京都だ。

 

 

 僕が助けに入らないと全滅は有り得る。それだけは避けたい。

 禪院班に渡した鈴も全て破壊されてるみたいだし。

 

 

『早めにな、今領域内だ』

「それを早く言え!!!」

 

 

 なんで先に言わないんだこのバカ親父!!マイペースすぎんだろジジイ!!!

 ぶっちゃけ本音言うなら東京の応援に来るのはパパじゃなくて直哉が良かった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「あと、2回。最後の1回は彼の前で……ふふ」

 

 

 面布を外した羂索は笑う。そして9回目の布瑠の言を唱え始めた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 Noside

 

 

 受胎から成長した陀艮は腹に書かれた呪印を使って領域を展開した。

 陀艮の領域【蕩蘊平線(たううんへいせん)】──それに巻き込まれたのは禪院直毘人、禪院真希、七海建人の3名だ。

 

 

「落花の……ッ!」

『海は、万物の生命、その源』

「グッ!!」

 

 

 直毘人は領域展開後の初撃を秘伝【落花の情】を展開して事なきを得た。だが真希と七海は領域の必中攻撃をモロに受けている。

 その後も陀艮が解放した術式【死累累湧軍(しるるゆうぐん)】によって3人は依然として押された状況にあった。

 

 

『お前が1番弱い。【死累累湧軍(しるるゆうぐん)】は際限なく湧き出る式神だ』

 

 

 大量の式神に襲われた七海と直毘人の姿は見えない。残ったのは陀艮に蹴飛ばされた真希1人、だが特級相手では圧倒的に力不足。

 

 

「弱ぇって言うならよ、一撃で倒せよ」

『ならばお前もあの二人のように』

「くそっ」

『食い尽くしてやる』

 

 

 真希だけでこのタコをどうこうするのは無理だ。1級術師2人ですら祓えない相手である。

 対呪霊で領域を展開される可能性を予想していたからこそ兄さんは直毘人入りの(こんな)編成を組んだんだ、と焦る脳内で真希は考えた。

 

 

 最低でも領域対策ができる人が欲しかった。それか今持つより強力で上等な呪具(遊雲)

 だが残念、唯一領域に抗える直毘人の手が借りられない今では真希の勝算は皆無。

 呪具は恵が持っているため手元にない。生命線である征哉から貰った鈴も初撃と式神の畳み掛けで破壊されてしまった。

 

 

「(どうする……!)」

 

 

 攻撃してもまともな傷は作れない。絶対絶命が正しいだろう。

 だがそんな中でも転機は訪れた。真希が薙刀の呪具を構え直した時、領域外から何者かが侵入してきたのだ。

 

 

「真希さん!これ!!」

「恵!オマエって奴は本当に、クソ生意気な後輩だよ!!!」

 

 

 海の中、結界のへりから侵入してきたのは伏黒恵だった。真希は恵が伸ばした影中から特級呪具【遊雲】を受け取る。

 

 

 影を伸ばした応用技を見るに、征哉の教えはきちんと効いているようである。

 もしここに征哉がいたのなら満面のニッコリ笑顔を晒していたことだろう。

 

 

『自ら私の領域に侵入するとは、愚かな』

 

 

 侵入した恵は領域を展開をしていた。

 会得したばかりの拙い領域ではあるが、恵のそれは確実に陀艮の領域の必中効果を押さえ込んでいた。所謂領域の押し合いである。

 

 

 己の領域の必中効果が発動しないことに陀艮は気付いた。先に恵を始末しようとして巨大な式神を向ける。

 そこで恵に向かった式神を切り捨てて助けに入ったのが約1分間【死累累湧軍(しるるゆうぐん)】に耐えた血濡れの七海だ。よ!男前ナナミン!!!

 

 

「2人は」

「猪野さんはリタイア、虎杖は別行動です」

「君は私が守ります。領域に集中してください」

 

 

 七海が耐えたことに驚く陀艮。その背中に迫るは、同じく大量の式神攻撃に耐えた直毘人と特級呪具を持った真希である。

 

 

「たかが右腕1本。されとて71年物……高くつくぞ!!!征哉ー。聞こえとるかー?おーい?」

 

 

 直毘人の右腕は欠損していた。どうやら親子共々肉体欠損がお好きらしい。だがそれでも落ちぬ実力は流石と言うべきか。

 

 

「(何やってんだあのジジイ!!)」

 

 

 珍しく真希が感心していたところで、直毘人は突然意味不明の行動をとった。なんともまぁ、己の影に向かって息子に呼びかけているのだ。

 

 

 それを見た陀艮は、頭がイカれたかと鼻で笑った。

 誠に同意である。領域に集中している恵ですら心の中で激しく頷いた。

 

 

「ハァ、ハァッハァ……七、海さん!」

「……?」

「あのタコは今、俺と領域の押し合いをしてると思ってます……。でもッ、俺の狙いは違う!」

 

 

 鼻血を出しながらも領域を展開し続ける恵が七海を呼ぶ。

 恵が言うに、領域……この結界に僅かでも穴を開けて脱出することが狙いらしい。内から外は難しいが人1人通れる穴を数秒維持することはできると。

 

 

 あのタコ呪霊は一日に何回も領域展開はできないはず。そして結界の(へり)は恵の足元。あとは皆が一斉に脱出できたらこちら側の勝ちだと言った。

 

 

「いつでもいけます。3人同時に飛び込めば」

「……君だけ残るなんてことは無しですよ」

「命は懸けても、捨てる気はありません。兄さんに誓って」

 

 

 恵の覚悟を見受けた七海は深く息を吸う。砂浜で陀艮と戦っている2人に向かって大声を出した。

 

 

「2人ともぉお!!!」

「「!!」」

「しゅうごぉぉおう!!!!!!」

『(少年の周りを固めるか。こちらとしてもまとまって……ッ!)否!!』

「(バレた!だがもう遅い。)伏黒君の足元へ!!!」

 

 

 真希と直毘人は反射的に声の主へ向かう。その背後には目的に勘づいた陀艮が迫ってくる。

 

 

「「「「ッ!!!」」」」

 

 

 その時だった。恵が作り出した穴に向かって体を入れようとした瞬間、穴から何者かが侵入してきた。

 原作のように降霊された甚爾では無い。そして先程直毘人が影に呼びかけていた名前。それらを擦り合わせると明白になるその人物は……

 

 

「来よったか、征哉!!!」

 

 

 禪院征哉。禪院家でも呪術界でも歴代最強と謳われる術師である。

 4人が領域外に出られなかったことは残念だが、征哉が来たからには勝ちは確定。楽勝のヌルゲー。そう思わせるほど征哉には確かな信頼と実力があった。

 

 

「ん、待たせたかな」

「ハァ''、ハァ、 ……兄さん……!」

 

 

 穴から飛び出して陀艮の領域(海の上)に立つ征哉はカラカラの笑顔で笑っていた。作り笑顔というやつである。

 

 

「存外早かったな」

「やる事やってる途中だったけどね、急いだんだよ」

 

 

 悟と別れ、パパから連絡が来るまでに征哉がやっていたのは準備運動の他に非術師からの呪力の収集であった。

 自らの拡張術式【順転】を使用した手作業では無い。式神によるものだ。

 

 

 以前(11年前)、悟との会話でチラッと出た2対の鹿型の式神である。

 【石鹿(こくろく)】と【岩鹿(がんろく)】……それぞれが順転と反転を付与した式神だ。

 

 

 やる事、とは呪力を奪う【石鹿】を顕現し、各地を回って非術師から呪力を奪って自分に渡せと命令する事だ。

 パニック状態で負の感情ダラダラの今の渋谷では新規の呪霊が湧いてしまう。それを防ぐために征哉は式神を顕現させていた。

 

 

「恵、よく頑張ったね。もういいよ」

「?」

「役割交代をしよう」

「禪院さん……」

「七海も、少し休んでな」

 

 

 水音を鳴らしながら海上を歩く征哉を陀艮は見た。

 征哉が登場してから陀艮が何も発さなかったのは彼を恐れたからだ。あまりにもな格の差、絶対的神のような存在に恐怖を感じた。

 

 

 ぴちゃん……

 

 

「僕、急いでるんだ」

 

 

 ぴちゃん……

 

 

「タコと戯れ合ってる場合じゃないの」

 

 

 ぴちゃん……

 

 

 ゆっくり近づいてくるその存在に陀艮は後退る。

 これを花御は相手したのかと震えた。と同時に、花御はよく生きていたなと防御に長けたあの体を羨ましく思った。

 

 

 その体を軽々割ったのは目の前の特級術師だが、それは棚に置いておく。兎に角も、花御が生きていたのは征哉の完全なる私情と気まぐれだった。

 悠仁の成長を促すために手加減しまくった為に生き残ることが出来たのだ。

 

 

 その気になれさえすればあの交流会の場で確実に祓えていた。……つくづく恐ろしい男である。禪院征哉のいう()()は。

 

 

「一瞬で片をつける」

 

 

 呪霊のくせに恐怖を感じているタコに征哉は言った。

 よく耳に響く水音は陀艮からしたら死へのカウントダウンに聞こえた。

 

 

 ぴちゃん……

 

 

『うぉおおお!!!!!』

 

 

 再度鳴る水音を踏ん切りに、陀艮は式神を飛ばす。

 そしてその時ら領域を維持していた恵は限界だった。恵の領域が解かれたことで陀艮の必中効果が戻される。

 

 

『術式解放【死累累湧軍(しるるゆうぐん)】!!!!!』

 

 

 見えない式神が征哉に向かっていく。しかし陀艮の攻撃に動じず征哉は優雅にサングラスを外し、片手の手のひらを下に向けた。ただ、()()()()

 そんな何気ないその行動(掌印)に気が付いたのは父、直毘人だけだった。

 

 

「──領域展開【神采盈夜(しさいえんよう)】」

 

 

「兄さん、の領域……?」

『なっ……!!!』

 

 

 陀艮の領域が一瞬にして塗り変わっていく。明るい海とは正反対の夜空と黄金月の風景だ。

 

 

 領域同士の呪術戦はより洗練された術がその場を制する。

 一瞬にして陀艮の領域が変化したのは、言うまでもなく征哉の方が……という事である。

 

 

 陀艮にはもう1度領域を展開することは出来ない。はっきり言おう。タコ野郎は詰んでいる。残る道は死のみだ。

 

 

「ほう、中々やりよる。美しいな」

「兄貴……」

「禪院さんのは私も初めて見ました。感嘆です」

 

 

 美しい夜空のような異空間に誰もが目を奪われる。

 一方陀艮は影に拘束され、暗闇へと引き摺り込まれるホラー体験真っ最中だった。

 抵抗は出来ない。何故か抵抗するための気力や力が入らないのだ。

 

 

「はい、終わり」

『クソ!!これがこの領域の必中か!!!』

 

 

 半場叫んでいるタコ野郎に、ブッブー、惜しいけど違いま〜す!と、征哉は口を尖らせて煽るように言った。

 

 

 征哉の領域【神采盈夜(しさいえんよう)】は高次元の異空間(裏世界)として現実に顕現させた領域()である。

 表世界の現実に結界で隔てた裏世界を持ってきているのだ。

 

 

 言い換えれば、征哉が操る概念の影と影の概念の本元がここだ。

 それを征哉が裏世界(領域)から引っ張ってきて現実で操っているのである。

 

 

「あのガキ、今まで機会もあっただろうに……何故俺に見せなんだ」

「それはアナタだからでは……???」

 

 

 この領域は影の概念を基準に生成されて存在している異空間(裏世界)である。

 故に現実とは違い、影以外のその他の概念の優劣が存在しない。

 影こそトップ!影こそ王様!影こそ神様!と考えてくれれば分かりやすいだろう。

 

 

 そのため、領域展開直後に影は『侵食』を開始する。侵食対象は領域内の影に劣る存在。つまり領域にあるモノ(概念)全てだ。

 

 

 よって『侵食』の強制……、これが征哉の領域【神采盈夜(しさいえんよう)】の必中効果である。

 これにより領域内ならなんでもアリが爆誕した。征哉が己の術式を応用メイン、領域チートと称したのが理解出来ただろう。

 

 

「お前に侵食させたのは抵抗する意思と体力だ」

『クッ……』

「侵食する対象や速度は僕が決めるんだよね。なんでもいい、何かを侵食させればそれは必中を補うことになるから」

 

 

 『侵食』の副次的効果が与える恩恵は大きい。

 これは征哉の術式【幻影法術(げんのかげほうじゅつ)】が応用メインであるのと似たような感覚だ。

 

 

 『侵食』の対象を変えるだけで人を廃人にもできるし、呪霊の鏖殺も、現実を幻に、幻を現実に書き換えることも容易い。なんなら世界の理でさえ変更できてしまう。

 最後の1つは条件が多々ある為現時点の征哉では未だに会得に至っていないが、論理的には可能なのだ。

 

 

 ……と、まぁこんな感じで仕事をしすぎる必中。領域チートの名に適った【神采盈夜(しさいえんよう)】は禪院征哉が誇る呪術の極地であった。

 さて、もう少し詳しく説明したいところだが、悟の封印が迫っている今は時間が無い。さっさと呪霊を祓ってしまおうと征哉は呪霊の自我を侵食して(殺して)影に引き摺り込んだ。

 

 

「ハハッ、見たか?あれが俺の自慢の息子だぞ」

「ちゃんと見ましたよ。アナタの腕、治ってますね」

「そう言うお前もピンピンじゃないか」

「ゲホッゲホッ」

「おい恵。しっかりしろ」

 

 

 ……バチッ!と領域が解けた。

 そこに呪霊の姿は見当たらない。領域によって名残の塵すら残さず祓ってしまった。

 

 

 しかも征哉が来る以前に負った皆の怪我も治っている。何故か、と疑問が浮かぶが征哉の領域のおかげだと言わずとも理解した。

 正直、強すぎて周りの仲間は引き気味だ。征哉が合流してからまだ5分も経っていない。

 

 

「じゃ!僕はこれで!!」

「は?ちょっと禪院さん!」

「七海、新しい鈴だ!!ツギハギに気をつけろよ!!!!」

 

 

 突然現れ、突然去る征哉に七海は困惑した。

 新たに鈴を5個も渡してきやがったし、捨て台詞が「ツギハギに気をつけろ」である。まるでこれから会敵するようではないかと七海は宇宙を背負った。

 

 

「兄さんは何を急いでるんだ?」

「さぁな。だがアイツのことだ、概ね五条のガキの元へ行ったんだろう」

「なんでジジイが知ってるんだよ」

「ジジイとはなんだ真希。まぁ、俺はアイツのパパだからな!!」

 

 

 怪我と疲労が無くなった4人はすごいスピードで走り去っていく征哉の背中を見た。

 領域展開後はしばらく術式が使えない。術式を即座に回復する術はあるにはあるのだが、そこまでする必要も無いため征哉は呪力強化で猛ダッシュしていた。

 

 

「早く行かないと……」

 

 

 直毘人の息子自慢が始まるのに気付かず、征哉は刻一刻と迫る時間で渋谷ヒカリエに向かった。

 

 

 

 

 





領域はずっと考えてた。征哉のは韋駄天印ですね。
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