御三家に生まれたので生存戦略を遂行する   作:超甘味

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妄想と捏造の産物とご理解ください〜
では行ってらっしゃいませ。

今更だけど直哉の方言は翻訳使ってる。間違いモリモリなのは仕方ない。


僕、箱入り息子中。

 

 

 禪院直哉side

 

 

「……あ''?よう聞こえへんかった。もう1回言うてみぃ」

「東京からの速達です。……ご当主様が封印されました」

「チッ、冗談やったら殺す。で、今東京はどうなってんねん」

「渋谷を中心とした区はほぼ壊滅。現在も敵の首謀者による呪霊解放で被害が広がっています」

 

 

 渋谷の事件から数日は経ってる。それで速達なんて足が重いんか?俺が直々に出向いた方が効率的やろ。何処ぞのノロマよりな。

 

 

 兄ちゃんの帰りが遅いんは仕事があるさかいやと思うとった。

 なのに封印?巫山戯んな。どないな手使うたのか知らへんけど俺の兄ちゃんやぞ。

 

 

「悟くんと夏油くんもいたんやろ。2人は何しとったん」

「御三方とも別行動です。五条様に関しては征哉様から特級を任され、その処理に当たっていたそうで」

「そんなん言い訳やろ!あぁ、もう!兄ちゃんの件は皆知ってるん?」

「はい、真希様と恵様もつい先程此方に到着されました。……征哉様のご遺言状は甚爾様が預かり人だったようでして、重鎮や征哉様と縁が深かった皆様は居間に集まっておられます」

 

 

 クソッ、なんで最後に伝えたのが俺なんや。普通弟の俺が1番最初やろ。ってキレたら「直哉様は当主代理としてお忙しそうでしたから。お心に余裕が無さげでしたし……」て言われた。なんやねんそれ。

 

 

 ドスドスと廊下を歩いて勢いよく居間の襖を開けたった。

 その場にいた皆が一気に俺を見る。揃いも揃うて暗い顔しとるわ。お通夜かいな。

 

 

「んじゃあ、まずは恵と双子ちゃん、生きとって良かったわぁ。ほんでパパも」

「おう」

「……直哉さん、俺」

「兄ちゃんって呼んでや恵。……ほな、禪院が騒ぐ一大会議と行きましょか。甚爾くん、あれ持ってるんやって?」

「あぁ、言うぞ」

 

 

 甚爾くんが肩におる武器庫呪霊から取り出したクソ長い紙。一体兄ちゃんはどんだけ遺言を書いたんや……。まぁ、その8割は家族に向けたラブレターやろうな。

 

 

「まぁ、気楽に聞け。『1つ、禪院家28代目当主は以下の禪院直哉、禪院真希、伏黒恵こと禪院恵を有力とす。ただし本人らの意志を尊重する事。1つ、28代目の当主は27代目の全権を引き継ぎ、更なる勤めを全うする責務を課す。以下は省略。僕は硬いことが嫌いだから好きにしてね♡でも僕が変えた禪院を落としたら祟ってやるから』……だとよ。あとは個別に向けた手紙だ」

 

 

 ……簡潔やな。そんでとんでもない脅し文句や。最強の兄ちゃんに祟られたら禪院終わんで?そやけど1部のアホを抑えるには十分か。

 

 

 ただ、この遺言状が有効になるのんは兄ちゃんが死亡、もしくは意思能力を失うた場合や。

 せやけど兄ちゃんなら封印ぶち破ってピースしてくるやろ。問題あらへんな。

 

 

「保留にしいひん?兄ちゃんまだ死んでへんし、意思能力つっても頭トんだわけとちゃう。兄ちゃんなら死ぬより封印から出てくる可能性の方が高いしな」

「俺は賛成です。直哉さんは当主代理ですから次期当主を決定するのは遅らせてもいい」

「私も賛成だ。ってなわけで候補全員が賛同してんだろ?遺言状より考えなきゃなんねぇ事が山ほどある」

「ちょっと真希……」

「んだよ真依。これくらい言わねぇと統率できねーって」

 

 

 んまぁ、真希ちゃんが言うてる事は正しい。遺言状の件が保留になったら次は積み重なった問題をどないかせな。

 例えば兄ちゃんが封印されてる獄門疆の奪還、双子の天与呪縛の完成やらな。

 

 

 あ、兄ちゃんの総監の立場的な問題はどないするんやろ。政治やら国際問題やら兄ちゃん関わっとったよな?……ま、対策してそうやしええか。

 

 

「さて、話題切りかえんで〜。獄門疆もそうやけど、やっぱ今1番厄介なのは?」

「「「死滅回游」」」

「せやな。術師同士のデスゲームや」

 

 

 これのせいで世間がやかましなった。特に呪術界隈はな。

 

 

 回ってきてる情報によったら、敵は兄ちゃんの前世の肉体を使うてるらしい。

 ほんで、前世の兄ちゃんは肉体の改造やらができたって話や。敵はそないな兄ちゃんの体を使うて肉体改造(術式)を遠隔発動。一般人を呪術が使える体にした。

 

 

「最悪や。そないな不届き者は俺がぶち殺したる」

「兄貴もあんな奴に使われるなんて胸糞悪いだろ。私もボコす」

「真希さん、その時は呼んでください。俺も気分悪いんで」

 

 

 この家、家族仲良好すぎひん?まぁ、これも兄ちゃんのおかげか。

 

 

 明日は双子の天与呪縛を完成させる予定やけど、悟くんに手紙でも書いて任せたろ。

 はぁ……、今の日本マジでヤバイで?早う兄ちゃん出てきてくれへんかな。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 五条悟side

 

 

 僕さ、最強なんだよね。んで傑と征哉も最強なの。前にも言った気がするけど。

 

 

「これ僕のせい?それとも征哉?」

「いや、あの偽物の「だよね」……うん」

 

 

 最強なのに征哉は封印されちゃったし、僕はツギハギを殺せたとは言え獄門疆を奪え返せなかったし、傑と共闘したのに偽物を逃した。

 カッコつけて奪い返すとか言ってたのが恥ずかしいね。

 

 

 渋谷は壊滅。東京のThe中心部は瓦礫と呪霊の山だ。

 とんだ大惨事に日本国民の皆さんは大絶叫。僕も叫びたいけど我慢してる。

 

 

「ハー、どうしろってんだよ。死滅回游?なんのお遊戯会だっての」

「偽物と対峙したあの時がチャンスだったね。こうも面倒な事になると獄門疆奪還も遠くなる」

「んなの僕でも分かってる。硝子はどう思う?あの偽物色々と変だったんだけど」

 

 

 あの偽物、めちゃめちゃ変だった。傑が使役する呪霊が言う事聞かなかったんだよね。

 別に僕達に攻撃ってわけじゃないけど傑の命令を渋ってる感じ。イヤイヤ期のガキみたいな。

 

 

 使役だよ?使役してるのにそれっておかしいでしょ?

 僕の眼で見ても特に問題は無かったから不思議だよね。それで傑の戦力削られたし!不利すぎる!!

 

 

「相手も呪霊操術擬きを使うんだろ?禪院の前世だし。それ関係か、もしくは前世自体が何か特別とか?」

「有り得るね。だとしたら一大事だけど」

「平安時代の禪院なら今より強そうだしな。逆にあんたらが相手で良かったかも」

「逃したら意味ねーだろ」

「悟……私だって落ち込みたいんだ。もっとポジティブに考えようよ」

「けっ!!」

 

 

 逃げられたら追えばいいってのが常識だけど、追跡すらできなかったんだから前向きに考えようにもできないでしょ。

 

 

 はい。ここで追跡できなかったって言葉に引っ掛かったそこの君は優秀だね。

 偽物が逃げた、って事は渋る傑の呪霊もいい子ちゃんに戻るだろ?だから追跡系の呪霊で後を追うとかマーキングとかを試みたの。でもね、あろう事か呪霊が対象を見失った。

 

 

「範囲圏外って事では無いね。あれは遠距離でも大丈夫な追跡呪霊だった。見失うなんてほぼ絶対に無い」

「……じゃあ、呪いを呪いで弾いた?うーん、納得はいかないな」

「硝子もそう思うだろ?だから望み薄で征哉の前世について五条家と禪院家、情報部に調べてもらった。ほら、結果だ」

「権力凄……。……は!?これは本当か!?」

 

 

 残念ながら本当だよ硝子。

 征哉の前世についてほとんど分からなかったけど、あの見た目とか力でまぁまぁ合致する存在がいた。征哉の前世が人間じゃないなら、僕が疑問に思った点も全て説明がつくんだよねー。

 

 

 たった1枚のペラペラな調査書で全てを断定するにはいかないけど、でももしそうなら今度こそ僕は叫びたい。

 そりゃ上位存在に呪霊は平伏するし追跡不可能にもなるわ!!!!

 

 

「あー、まぁ、神の肉体ならなんでもありか?」

「追跡不可能は何故?」

「ならお前、神をリアルで見た事ある?僕はない」

「……ないね」

「そういう事だ。結論、奴は文字通り姿を消した。概念存在になって僕達の認識から外れたんだよ。傑のは概念系の術式じゃなかったから追跡できなかったんでしょ。あと追跡対象が呪霊の平伏相手だったから」

「待てよ……、って事は私と相性最悪じゃないか!」

「「そうだね/そうだな」」

「なんてこった……!!!」

 

 

 僕の隣で頭を抱える傑だけど、まぁ、ドンマイだよね。偽物を殺る時は傑以外って事だな。

 んで、征哉がいなくなったことで発生する問題だけど、上層部とかが代表例かな。ジジイ共がやりたい放題だよ。

 

 

 呪術総監部からの通達では『宿儺の器の即刻処刑』『僕や傑や夜蛾センが渋谷事変を起こした罪で死罪』『呪霊の公表』、『東京にしか呪霊は発生しないよ〜』とかすごい暴れっぷり。

 なに、征哉がいなくなって急に元気じゃん。

 

 

 最後のヤツは一般人の呪力の漏出を東京へ促し、呪霊の発生を東京に限定させたいんだろう。

 やりたい放題やってる割にはちょっとだけマトモな事も言ってるよね。どうせ保守精神からそうした方が良いって判断したんだろうけど。

 

 

 あー、あと『禪院征哉の封印を解け』ってあったから征哉の人望の厚さが伺えるよね。慕われてるようで何より。流石僕の運命。

 きっと封印されたのが僕だったら、何せすっごい嫌われてるもんで呪術界から永久追放&封印解くのは許さないってなってたね!アハハ!!!!

 

 

「でも、大方の上層部の害虫は死んだらしいじゃん?征哉が封印されて暫くでバタンキュー」

「あぁ、残穢から見るに征哉だったね。無法化しないように保険としてマーキングしてたのかな」

「いやはや、死んでくれてよかったよ。僕も頭を悩ませなくていいし、征哉の秘書によれば次の総監には夜蛾センを任命してるらしい。上層部の指揮は大丈夫そう」

「やるね、クズ3号のくせに」

「用意周到すぎて怖いな」

 

 

 呪術界は征哉のおかげでそこまで乱れてない。でもなぁ、偽物が逃げ際に大量(1000万)の呪霊を放ったおかげで今の東京は人外魔境だ。

 そっちの処理と人名救助、一般人の避難とかで呪術師の人手が圧倒的に足りてない。

 

 

 上層部の好き勝手は心配しなくていいとしても戦力的な問題が浮上しちゃった。

 あーあ、やんなっちゃう。この休憩が終わったら僕と傑も呪霊狩りの再開だ。あ、その前に直哉から頼まれたアレやらないと。

 

 

「硝子、真希とその妹連れてきてくれた?」

「うん。呼んでくる」

「何をするんだ?」

「天与呪縛の完成。ここからは弱い奴から死んでいくし、なんなら強い奴もぽっくり死ぬからパワーアップしようって事。よく考えたよ、征哉は」

「頭は回るが、彼はやり方がなぁ……。因みに、方法は?」

「片方に一瞬死んでもらって一気に反転術式!!双子の縁を断ち切ったら双子だった事で不完全だった天与呪縛が完成する」

「ふむ、一卵性双生児は呪術では同一人物としてみなされる……。1度死んで個々とするのか。本当にできるのか?」

「……やってみるしか?」

 

 

 征哉の考えることは複雑な事が多いよね。面倒くさがりなのに頭がいいせいで、結果を重視するあまり途中経過を疎かにしがちだ。

 昔からさぁ、強引に進めて自分の体も蔑ろにするの、僕の気持ちも考えて欲しいね。

 

 

 でも、今回ばかりは遠回りもしていられない。今さら再議論するのも征哉が悩んだ時間が勿体ない。

 こんな事にならなかったら、きっと妹同然の存在達を一度殺そうだなんて実行に移さなかったはずだ。やむを得ない。

 

 

 

「連れてきたよ〜」

「や、2人とも!話は直哉から聞いてるよね?」

「おう、待ちくたびれたぜ」

「言っとくけど!失敗してお姉ちゃんを死なせたら許さないから!」

「おー怖い怖い。治療するのは硝子だからあいつに言ってね。ささ、真希は寝台へどうぞ」

 

 

 信じる心は大事!出来ることはやれって征哉も言ってた。

 直哉からの手紙には死ぬ役は真希って書いてある。それは多分、真希の肉体が強いから真依より生き返りやすいってことかな。

 

 

 僕は刃物で心臓を真希の心臓を一突き、硝子が全力で治す。オッケー、シュミレーションはできてる。

 

 

「真依、心配すんな。手でも握っててやるからよ」

「今こそしぶとく生きるのよ真希」

「ハハッ、おう!」

 

 

 キリがいいところで硝子と息を合わせて僕は真希に刃を向けた。真希の心臓が止まったのを確認し、硝子が迅速に反転術式で蘇生させる。

 

 

 体が治ったら次は心臓マッサージ。真希が息を吹き返したのを見て張り詰めた空気も緩和した。

 いやー、これは神経すり減らすね!もう二度とやりたくない!

 

 

「ゲホッ!……あ''ー、三途の川ってマジであんだな」

「真希!変なところは無い!?大丈夫?」

「んな心配すんな。見ての通り平気だって。それより……これが、私の本当の力か?」

「私も呪力が多くなったのが分かるわ。お兄ちゃんの推測はアタリってわけね」

 

 

 んー、成功?っぽいね。真希は微塵も呪力が感じられないし、真依は呪力量が増えた。普通よりちょっと多くあるから構築術式も以前よりは活かせそう。

 

 

「そうだ!直哉からの手紙でね、真依の好きにしなってさ。術師になりたくなかったんでしょ?」

「……えぇ、けど」

「誰も急かさないから真希と話し合いでもしな。ほら、行った行った!」

 

 

 真依はどんな選択を取るかな?ひとまずさっさと追い出しておnewな力に慣れさせよう。

 今は一刻一刻が貴重だからモタモタしてらんない。稽古は暇な人に付き合ってもらえばいいよね。真希は伏黒甚爾(前例)とかいるし。

 

 

「はい、稽古行ってらっしゃーい!バイバイ〜」

「……あれ?以外とすんなり……?」

「それは私も思った。いい資料になりそうだから論文でも書くか……」

「硝子お疲れ様。協力的で助かったよ」

「おう。お前ら休憩時間は終わったろ?呪霊狩りもいいが天元と話すのも忘れずにな」

「おっと、忘れてたー。天元と話すのは僕と生徒の数人が行ってくるよ。傑は狩人やってきて」

「了解」

「じゃ、解散!」

 

 

 次から次へと仕事が舞い降りるのは勘弁して欲しい。天元と話すのも気が重いな〜。生徒に投げちゃおっかな。うん、目上に揉まれる経験も大事だよね。社会経験だって言いくるめよう。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 Noside

 

 

 マブ達と解散した後、五条悟は乙骨憂太と虎杖悠仁、伏黒恵とそれから何故か着いてきた脹相と九十九由基と共に薨星宮に向かった。

 

 

 はっきりとした道が分からなかった悟だが、そこはお兄ちゃんパワーで燃え上がる受胎九相図1番こと脹相が弟センサーで道案内をする事になる。

 他の九相図が保管されてる忌庫が薨星宮へ行く道の途中にあって幸運だ。これで道に迷わなくて済む。

 

 

「うわっ、懐かし〜」

「ここに来るのは12年振りだろう?五条くん」

「あんまりいい思い出でも無いですけどね」

 

 

 原作と比べたらいい思い出だろう、僕に盛大な感謝しろと征哉がいたら心の中で思っていたことだろう。

 しかし現在、禪院征哉は獄門疆にて箱入り息子中である。なんなら前世の色々を振り返って虚無に陥っているだろう。

 

 

「クソッ」

「なんもねぇ……」

「これが本殿?」

「……おかしいね?僕の記憶が正しければ、昇降機を降りたらまっすぐ進んで本殿だったはずだけど」

「天元が私達を拒絶しているのさ」

 

 

 本殿に続くはずの道は何も無い空間で行き止まっていた。記憶と違う内部に悟は首を傾げる。九十九もまた拒絶されている理由を思考した。

 

 

「戻ろうか。待っていても時間が無いし」

「憂太の言う通りだね。また僕が来てみるから帰ろう」

「帰るのか?」

「「「「ッ!!!」」」」

 

 

 無駄足だったかと戻ろうとする一同だったが、耳に入った声に後ろを振り返る。

 

 

 そこに居たのは、失礼ながら人とは思えない面をしている天元だ。

 悠仁と恵、憂太は固まり、悟も少し眼を細める。六眼に映る天元の情報にやべぇなコレと冷や汗をかいた。

 

 

「はじめまして。禪院の子、道真の血、受胎九相図、そして宿儺の器」

「私には挨拶なしかい?天元」

「君は初対面じゃないだろう、九十九由基」

「……何故薨星宮を閉じた」

「羂索に君が同調していることを警戒した。私には人の心までは分からないのでね」

 

 

 何かと刺々しい会話にお人好しな悠仁と憂太はハラハラした。それを落ち着けと宥めるのはお兄ちゃん(脹相)バカ()である。

 ちなみに悟や高専の皆が脹相と敵対していないのは「仲間なら大歓迎。人手不足だし」と全会一致したためである。悠仁の兄弟というのも大きい。手綱を握ってくれるだろう。

 

 

「羂索?」

「かつての加茂憲倫。今は禪院征哉の前世、月夜見影月の体に宿っている術師だ」

「影月?また知らない名前だ……。伏黒は知ってる?」

「知るわけねぇだろ」

「君達でも分かりやすく言うなら、影月は夜の神《月詠》として知られている」

「ッ!?あの人神様だったの!?総監ヤバッ!!」

「オイ、待てお前、兄さんの事総監って呼んでんのか」

「え、うん。いいよって言ってたし」

 

 

 天元からの証言で悟のマブ達との会話中に出てきた調査書が正しい事が証明された。

 それに悟は目隠しの下で険しい顔をする。まだまだアイツには、六眼で写せない秘密が多いらしい。いつになれば征哉の全てを明かしてくれるのか。

 

 

「すみません。僕達はその羂索の目的と獄門疆の解き方を聞きに来ました」

 

 

 教え子の恵と悠仁の会話に目的が脱線しそうになるが、そこは先輩の憂太が本題に戻す。

 先輩として立派になってるのを見るに、1年前の俺とは違うぜ状態である。

 

 

「知ってることを話してもらえませんか?」

「勿論……と言いたいところだが1つ条件を出させてもらう」

 

 

 その条件とは乙骨憂太、九十九由基、受胎九相図の内2人が天元の護衛につくこと。

 そこで九十九は護衛の期間も理由も明かさないのはフェアじゃないと主張した。

 

 

 そんな九十九の態度に天元は羂索について語る。

 

 

 奴の目的と、手段。12年前に同化に失敗し、天地そのものが自我となって進化した天元は悟っていた。

 自身と人類を同化させ、日本全土を対象とした人類への進化の強制が羂索が目論む混沌であると。そしてその動機が遊び心である事も。

 

 

「ごめん、質問いい?」

「どうしたのかな、六眼の術師よ」

「征哉の前世が凄いことは知ってるし、そんな肉体でなら世界を好き勝手できるってのも理解してる。でも、羂索は何故あの時天元様の結界を利用し、【幻影法術】で日本国民全員を術師にしなかった?奴ならこんな回りくどいことをしなくてもいいはずでしょう」

「……そうだね」

 

 

 影月の最期は神で幕を閉じた。彼は神である魂を十の依代に封じ、呪物として保管した。

 つまりその呪物で受肉した肉体は神の体である。制限がある半人半神ではない。完璧な肉体。そのはずだ。

 

 

 では何故あのマセガキが神の体を使いながらも面倒な事に同化の慣らしとして『死滅回游』なんかを開くのか。

 その答えを、天元は影月との別れの逢瀬で聞いている。

 

 

「ズバリ、罠だよ。前世の彼は羂索を嫌っていてね。至る所に制約を設けた」

「制約?」

「あぁ。あの肉体に掛る制限は大まかに4つ。『呪力量に上限がある事』『【幻影法術】で使える術が限られている事』、それから『二度とあの肉体の外に出られない事』と『神の権限を行使できない事』」

「「「!!!」」」

「分かるかい?宿ったのが神の肉体であっても、出来はそこらの術師と大差ないんだ。寧ろ今後によっては此方が有利にもなりうる」

「……となれば兄さんの術式で何が使えて、何が使えないかを把握しないといけませんね」

「禪院さんのような無限の呪力が無いってことは呪力切れもある……。かと言って1人1人進化を促すのは効率が悪い。だから人類を天元様と同化させるんですね?」

「その通り。聡いね、道真の血」

 

 

 実の所、受肉の際の『ドキドキッ!【幻影法術】どれが使えるかな〜?』のガチャで羂索が引いたのは呪霊操術擬きのみ。

 

 

 しかし今の征哉が扱う小技(マーキングなど)や呪霊擬きについての解釈で絶妙なバフはかかっている。

 正直に言おう。そんな羂索はクソ面倒臭い。傑と相性が悪いのも考慮し、奴との戦闘は最強達を主軸としてやるしかない。

 

 

「でもそれって天元様が同化を拒否すれば言いだけじゃ?」

「そこが問題なんだ。宿儺の器」

「?」

「進化を果たした今の私は組成としては人間より呪霊に近い。そして、羂索があの体で扱える【幻影法術】は呪霊操術とほぼ同類の物。私は彼の術式対象だ」

「「「「!?」」」」

「ウンウン、だよね。六眼で視た時からそんな気はしてましたよ」

 

 

 悟が天元を視て冷や汗をかいた理由はコレだ。天元が羂索の手に落ちたらゲームオーバーである。リスタートは勿論できない。

 

 

 ここまで来たらいっその事先手を打って傑に取り込んでもらうか……?と、とち狂った考えまで浮かんでくる始末。

 無理も無い。最悪なビジョンがそれぞれの脳内で再生されているのだから。

 

 

「羂索の術師としての実力を考慮すると、接触した時点で取り込まれるかもしれない。だから私の本体は今、薨星宮で全てを拒絶している」

「その上で護衛を?」

「あぁ。羂索は私に次ぐ結界術の使い手。薨星宮の封印もいつ解かれるか分からない」

 

 

 まじ怖いとしか言えない。内心泣き出したい憂太だった。

 

 

 羂索といい禪院さんの前世といい宿儺といい……平安時代ってヤバい奴しかいないんですかね?と悟に目で訴えるが、悟は無言で肩を竦めるだけだった。肯定か、それは。

 僕に言われても……、と暗に言っているようなものである。憂太は元担任の変わらない態度にガックリと肩を落とした。

 

 

「何故今なんだ。星漿体との同化の阻止、天元(オマエ)を進化させ、術式で取り込み操る。羂索は宿儺とも関わりがあるようだった。少なくとも千年術師をやっている。何故!今なんだ!!」

「『天元(わたし)』『星漿体』そして『六眼』。これら全て、因果で繋がっている」

 

 

 羂索は過去に二度六眼の術師に敗れている。

 2度目の羂索は徹底し、星漿体も六眼も全て生後一月以内に殺していた。それでも同化当日に星漿体と六眼は現れた。

 

 

「その後羂索は六眼を抹殺ではなく封印へと方針を変え、獄門疆の捜索を始めた。六眼は同時に2人は現れないからね」

「でもその方針ズレてますよね。封印されたのは五条先生じゃなくて兄さんだ」

「まぁまぁ、最後まで話を聞きなさい。……12年前、予期せぬ事が起こった。禪院甚爾と禪院征哉の介入だ」

「親父と兄さん!?」

「天与呪縛によるフィジカルギフテッド。その中でも特異な()()()呪力から脱却した存在。それからこの世界に属さない魂で存在する彼。因果の外に出た人間が私達の運命を破壊してしまったんだ。そもそもあの二人は、あの二人だけの因果が存在する」

 

 

 こりゃまぁ、中々頭が痛くなる内容である。悠仁は即刻リタイアしそうだった。

 その横で、勘の鋭い悟は天元の発言に違和感を持つ。何だ、この世界に属さない魂って。

 

 

「で、封印されたのが何故禪院征哉だったかと聞いたね。羂索が敵に回して1番焦るのは六眼じゃない。神だ。禪院征哉は前世と同様に神に成れるからね。うん、この続きは彼が封印から出てきてから話そうか」

「えぇ、そこで話止めちゃう!?めっちゃ続き気になるんだけど!」

「彼の話は終わりだよ。死滅回游の話は既に出回ってるんだよね?」

「はい。同化前の慣らしが目的で、いわば儀式。予想ではこの儀式を成立させるために羂索自身も縛りを負っていると」

「いいね。ちゃんと解ってるじゃないか」

 

 

 縛りの1つとして『死滅回游』の管理者(ゲームマスター)は羂索ではない。そのため奴を殺しても死滅回游は終わらない。

 

 

 終わらせるためには泳者(プレイヤー)が全員死ぬか、泳者(プレイヤー)が全員参加を拒否して死ぬかである。

 これがリアルクソゲーというやつだ。悟は小さく舌打ちをした。

 

 

「死滅回游の参加者は「呪物を取り込んた者と脳を術師のデザインにされた術式保有者、約1000人」……脹相、俺のセリフ取らないでよ……」

「すまん」

「天元との同化を阻止するにしても慣らしの方が問題か。悪意ある奴は処理して、ゲームに消極的な奴は助けるべきかな。あわよくば此方の仲間(戦力)にでもなって欲しい。今ある以上の情報も欲しいね」

「となると……」

「僕らも死滅回游に参加するしかない」

 

 

 憂太の言葉に一同は賛同する。悟は参加出来ないだろうが、憂太を筆頭とした凄腕揃いの生徒達なら心配することもないだろう。

 死滅回游に対して一応の道筋が決まった事で次は獄門疆の封印解除を問い詰める……前に護衛の2人を決めなければならない。

 

 

「「私/俺が残ろう」」

 

 

 そう言ったのは10人兄弟の長男、脹相と放浪特級の九十九由基だった。

 いい感じに戦力が別れたと悟は思ったが、やはり生徒だけをコロニーに行かせるのは傑(と征哉)が反対しそうである。

 まぁ、そうなれば傑をコロニーにぶち込むだけだが。そうしたら無双できるだろうし、いい事尽くしである。

 

 

「ありがとう。……これが禪院征哉の解放、そのために必要な──」

 

 

 空間から何かを掴んで取り出す天元。その拳に皆の視線は集中した。

 

 

「【獄門疆・裏】だ」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 死滅回游《総則(ルール)

 

 

 1、泳者は術式覚醒後 十九日以内に任意の結界にて死滅回游への参加を宣誓しなければならない。

 

 2、前項に違反した泳者からは術式を剥奪する。

 

 3、非泳者は結界に侵入した時点で泳者となり死滅回游への参加を宣誓したものと見做す。

 

 4、泳者は他泳者の生命を絶つことで点を得る。

 

 5、点とは管理者によって泳者の生命に懸けられた価値を指し 原則術師5点、非術師1点とする。

 

 6、泳者は自身に懸けられた点を除いた100得点を消費することで管理者と交渉し 死滅回游に総則を1つ追加できる。

 

 7、管理者は死滅回游の永続に著しく障る場合を除き、前項によるルール追加を認めなければならない。

 

 8、参加または点取得後、十九日以内に得点の変動が見られない場合、その泳者からは術式を剥奪する。

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 9、禪院征哉が死滅回游に参加した場合、死亡・戦闘不能・戦意喪失・協力者の何れかにした者には1000得点が加点された後、1度だけ自身の死を取り消すことができる。

 

 

 

 





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