妄想と捏造の産物とご理解ください。
では行ってらっしゃいませ〜
Noside
「癖になってんだ、音殺して歩くの……。アハ!また会ったなぁマセガキ」
軽薄にペカーっと笑顔を貼り付けたその者。しかし漂う雰囲気は絶対的強者らしい鋭い殺気を纏っていた。
そう!相も変わらず皆様ご存知、愉快にも目が笑っていない顔で口角を上げるのは今し方封印から抜け出した禪院征哉である。末永く宜しく頼もう。
「……は、マジでどうなってんだよ君」
「ま、僕って自他ともに認める最強だからさ?いやー、生命線張っておいて良かったわ。僕ってほんと最っ高なナイスガイだろ?」
顔に1発、鳩尾に黒閃を1発食らったメロンパンは慄いた。
どうせ月詠の事だから呪術とは違うミラクルマジカルパワー☆で再登場してくるとは思ったが、これは予想外。
次に獄門疆から出てきた時は禪院征哉ではなく月詠の人格が先導していると確信していたのに!トホホ……って感じである。
残念ながら羂索の長年の勘は当たらなかったようだ。月詠の企みの方が一枚上手、羂索は月詠の読み道理に行動し掌に転がされていた。
《肉体は貸すがクソガキを有利に立たせず、尚且つ己目的の邪魔をさせない》……月詠の考えに気づいているのかいないのか、羂索の顔は動揺が顕になっている。
「どうやってッ……いや、アレか!?」
「おぉ?知りたいか?その真っ白な脳ミソで考えてみろよ。あ、でもホルマリン漬けは考える事もできねーか!だって死んでんだもん!!ギャハハハハ!!!」
未だかつて【獄門疆】の封印を解いた者はいなかった。
素晴らしく恐ろしい快挙である。計画が狂った上にこんな快挙あってたまるかと叫びたいメロンパンだ。
正反対に、征哉の美人フェイスは煽りと下品な笑いに乗算して心底楽しそうだ。
愉快愉快、他者を弄ぶことに興が乗るのは平安時代の前世の性と今世のクズっぷりの合成体であった。これぞ皆が知る俺様何様禪院征哉様である。
「……っと、冗談も程々にして。お前……、あの人を取り込んだか?」
スン、と顔を引き締まらせた征哉は確認するように問いかける。
答えは分かっていたが、数少ない前世の友人には恩がある。その恩を返せなくなったのは少しばかり惜しかった。
「まぁ、少し反抗的だけどね」
「その体に付与された術式は【影の兵士】だけ。……術式のたった1部だぜ?それすら制御出来ないとは滑稽だね」
「君がかけた保険で身体が言うことを聞かなくてね。でも、悲しくないのか?彼女が死したのに冷たいね」
「なんとでも言えよ」
弔いをするのも、故人を悲しむのも今じゃない。
天元の友人は月詠であって、禪院征哉では無い。彼女が禪院征哉を月詠の転生体ではなく個人として見たように、征哉もまた天元をかつての友人としてではなく呪術界の要人として見ている。
二人にとってはそのくらいの距離感が好ましかった。
「天元も自分が狙われていた事は分かっていたらしい。抵抗するだけして私の配下に下ったよ」
「負かしたの間違いだろ。名誉毀損で訴えっぞ白子脳」
「やめてくれ、そんな不名誉」
強い風が吹き付ける。直哉から貰い受けたお気に入りの羽織が征哉を守るかのように靡いた。
天元に死んで欲しくはなかったが、自分が封印されてしまってはどうしようもなかった。
残った最強のどちらかを天元の護衛につけたとしても、神の御体に宿る羂索に
唯一の対抗手段は同人物の征哉が羂索の相手をする事だった。
だが月詠の魂が10分の6しか集まっていない今の征哉は人間のままだ。征哉が魂を集めて神になるか、羂索の体を神から降格させるかしないと話は始まらない。
脳ミソを取り出すのもいいが、ヤツからして肉体の制約に引っかかる為出来ないのもある。
征哉を含めた人間は手が出せず、メロンパンは逃げられない。綱の引っ張り合いだ。
ぶっちゃけ征哉封印√に入った時点で天元の死亡は確定だった訳だし、征哉vsメロンパンが停滞するのも想定の1つではあった。それはそうとして納得出来るかはまた別の問題だが。
「……天元から聞いたよ【裏】の事。本当に出てくるとは思わなかったけどね。月詠に染まってないのも不思議だ」
羂索は月詠が前世に用意した保険を知らない。月詠についてのデータベースは『派生術式を宿した弟の生まれ変わりを見たいがために何らかの手段で転生した』という情報しか記入されていないのだ。
まぁ、その情報ですら月詠が垂らした水であるから、いつまで経ってもマセガキな羂索は月詠に勝てない。
魂の分割と集結、そして操作。それによって引き起こる人格同士の確立。ここまでスケールのでかいことをしてるとは夢にも思うかもしれないが、リアルでは有り得ないと笑い飛ばすだろう。
常識を凌駕する、それが神であり月詠であった。たかが人より頭の回る人間如きが神を測れるわけがねーだろ、と征哉は思った。
「私の術式は移動した先の肉体の術式も扱えるが、その肉体に刻み込まれた記憶もインプットされる。生憎制限で霞1つも見えないが……月詠、天元から昔話をされるのもいいと思わないか?」
「ハ!口を慎め
「っ……」
「おちおちと仕掛けた罠にハマる阿呆に片腹痛いわ」
おっと、白子脳ミソ君は言葉を選んだ方がいい。
ここにおいて命の手網を握っているのは間違いなく征哉だ。殺せるかは別として、生物としての格が違う。
ガワで虎の威を借る羂索も、本体部分の脳ミソと征哉が殺り合えば征哉に圧倒的な分がある。所詮中身がゴミじゃ意味無いと征哉は皮肉を込めて比礼【燈】を放った。
「クソみてーな『欲』も過度な慢心も昔から変わってない。そういう人間って俺の地雷なんだけどなー?」
不意打ちの攻撃を避けもしなかった羂索。征哉は軽蔑の眼差しを向けながら高速で思考する。ついでに決戦で勝ち越しするための無数な演算も欠かせない。
攻撃が当たる直前、メロンパンの体がぶれた。不安定な肉体が希薄化?いや、肉体を持たない概念存在と実体を行き来したのか?しかしそれは神に準ずるものだ。【神の権能の使用不可】の制約を破る事になるから違うか。
ならもっと単純なナニカ。解釈の拡大とか?影を薄くして存在を消すという言葉があるように、己が存在する
消えたまま二度と戻れないはずなのに行き来できてケロッとしていられる……。もしかして肉体のオリジナルが現世にいるから?オリジナル(魂in転生体)と複製(ただの受肉体)じゃ世界に俯瞰される価値が違う。
うん、有り得るな。奴はアホだがバカじゃない。これくらい考えるのも朝飯前だろう。僕の存在で自己を保っているようなら人の笠を着るメロンパンらしいじゃないか。
ってな感じで長々と述べたが、頭の回転が早い征哉は1秒でこれを紐解いた。
随分とハードな内容を羂索は行っていたようだが、そこは神の御体。解釈だけならまだしもヒトでは耐えきれない存在の抹消・再生をやってのけたのは、単に月詠のガワがあったからこそだろう。やっぱり神様ってすげぇ!!
「おや、いつから嫌われたのかな。昔は仲良くしていた気がするのだけれど」
「勘違いすんなよコノヤロー。てめぇの事は初めましてから嫌悪してたわ」
ここまで嫌われるのは一周まわって誇らしかろう。
征哉はクソメロンパンを徹底的に処す所存であるが、それ以前に己と仲が良かったらしい存在しない記憶を妄信するその脳内にメロンパンでも詰まってるんじゃないかと本気で疑った。
クソメロンパンの変な所(主に月詠絡み)で視野が狭まるのはドSからドMにジョブチェンジするように軽率にグッピーが温度差で死ぬ。これマジで。
この絶対恋人にしたくないランキングNo.1(征哉調べ)は月詠からの好感度が1パーセント未満でも残っていると本気で思っているのだろうか?
危ない危ない。母親の胎内に倫理と人の心を置いてきたならまだしも、頭がガチのメロンパンなのは天才で最強でイケメンな前世神様でもセルフ無量空処だ。
どこぞの国民的ヒーローなア○パンマンじゃないんだから……。メロン○ンダちゃんに失礼であるから謝罪しろクソメロンパン(八つ当たり)。
「メロンパン詰まってるなら言葉のキャッチボールが出来ないのも仕方ない。肉体言語で行こうか」
先程の考えを検証してみる。事実確認さえ出来たらあとは対策を練って殺せばいいのだ。思考の裏で演算していた勝利への軌跡を絞り、成功率を上げることもできる。
ある程度味見したら退く。征哉はやる事やってから高専に帰ろうと思っているので長くて1週間は愛しい人達の顔が見れない事だろう。
この界隈じゃ男は度胸、女も度胸だ。癒しがない期間を乗り越えろ最強。
「ふふ、軽く言って幻滅だよ。君って本当に前世は月詠か?混じり物だったりしない?」
「どうだと思う?」
メロンパンは察しのいいクソガキだった。これがもし目に入れても痛くない身内なら、征哉はデレッデレに「うちの子すごーい!分かっちゃうなんて天才!愛してる!!」と言うのだろう。
だがしかし羂索に対しては「ハ?キモ死ね」がセオリーだ。喋る脳ミソなんて誰が好感を持つだろうか。いや、持たない。
「記憶にある君は私の目標であり大義でもあった。随分口も頭も悪くなったようだね」
「お前如きが俺を語るな。勝手に期待して失望して、俺の一族と何ら変わりない。反吐が出る」
「癪に触ったかな?すまないが君の口からその生涯を聞くことはなかったものでね」
聞かなくても探ってただろ。前世からケツを追っかけるお前と鬼ごっこしてたんだから。と副声音が聞こえてくる。
Noside担当のナレーションもこれには呆れ顔だ。舐めてもらっちゃ困りますクソガキ。
嘘は言ってないが本当の事も言っていない口を縫ってやろうかと征哉は思った。
なんなら自分とクリソツの面で解釈不一致の言動をするのはやめて欲しい。自分の尊厳に関わる。
ハー、殺そ。と、気だるげに首を掻いたのは月詠こと月夜見影月か、それとも禪院征哉か。分かるのは対峙してるメロンパンだけだろう。
「生産性の無い会話だ。俺ほど長生きじゃないんだから僕の貴重な時間を無駄にしないでよねー。無駄な事に脳のリソース割いてないで神職にでも転生したらどう?ま、体を点々としてきたお前如きが上手くできるとは限らないけど」
「ウザイね月詠」
「そっくりそのまま返しまーす!」
売り言葉に買い言葉だ。双方も中身はいい歳のジジイなくせに冷静さの欠如が見受けられる。
でもこれは全て羂索が悪い。月詠も主犯の一角ではあるが、前世で懸念していたように現代が混沌と化したのは概ね羂索のせいだ。おい、お前が始めた物語だぞ。責任取れ。
「来い、【
呪霊被害により崩落した都市の残骸。それが地に落ちた時を皮切りに両者は拳を交える。
征哉の背後に立つ式神は元土地神。神の肉体に堕ちた神をぶつけたらどうなるのか、それを試行するとしよう。
◇◇◇
秘書side
初めましてよろしく。何気に初登場のオレだ。
オレは総監並びに禪院征哉の秘書をやってる補助監督っつーモンだ。気軽に秘書くんって呼んでくれ。
「ねぇねぇ〜、ほんとに征哉の居場所知らないの?え、死んでないよね?封印解けたよね?ねぇ、秘書くんは何か知らない?」
さて、オレは今、オレが大っ嫌いな奴の目の前で中指を立ててる。ついでに舌もべーってしてやる。
「うるせぇ黙れ総監の努力も考えも知らねぇで助けられてばっかな性格カスクソゴミ野郎お前なんか総監の代わりに封印されて滅多刺しでボコられたあと胴体ちょん切られて死ね」
「僕に対して殺意ありまくりじゃん」
ウケる〜と無駄にあるタッパを折り曲げて笑うコイツ。その目隠しの下が真顔なのは想像に容易い。
オレがいくら罵詈雑言を言ったってかすり傷1つもついてねぇだろうな。コイツは、五条悟はそういう奴だ。
「秘書くんの癖にお手上げ状態なんだね」
「あ''???お前だって御友人様の癖にあの人の事知らねぇだろ。オレは忙しいんだから帰れ。邪魔だ!!」
埼玉県木呂子鉱山、呪術高専第4練習場で総監の封印を解いたはずだった。
既に4日経過しているが総監は高専に現れていない。上層部にも、禪院家にもだ。
封印されて9日、行方不明の5日の計14日間。
その間に東京校3年の秤金次と星綺羅羅は高専に戻ってきたし、生徒や術師が続々と死滅回游に参加したりと状況が移り代わっている。
あの人の事だから「ごっめ〜ん!待った?」とか言いながら瞬間移動で帰ってくると思ったのに連絡の1つも来やしない。おかげで合理的に最短で計画された対羂索作戦にズレが生じた。
天元様から頂いた獄門疆・裏は本物のはずだから、封印から出てきた事は確かなんだぜ。けど探そうにもコッチは余裕ないし。
オレなんて総監秘書やってっから真面目上層部と御三家と上層部以外の保守派ジジイに板挟みだよ。可笑しいな、迷惑ジジイ共は総監が始末してくれたんじゃなかったか?あれ、始末したのって上層部だけ?他は???
総監は次期総監を夜蛾正道にしたらしいけど、認められてる感はねぇから統率もギリギリだ。大抵の上層部は夜蛾さんに信頼も信用もあるけど、やっぱり前総監の征哉には劣る。そこを比較されてるから夜蛾さんも胃が痛いだろ。
外交の噂じゃ米国が乗り出すかもしれねぇっていうし。あ''ー、ダル。
総監早く帰ってきてくんないかな。道草食ってないで顔見せてくれなきゃオレが過労死しちゃいます。まだ30代なのに……。
「今日、何日だっけ」
「11月14日 09:57。一昨日生徒が
「大丈夫っしょ。覚醒者に殺られる程ヤワじゃないし、昔の術師はちょ〜っと厳しいかもしれないけど」
「昔ねぇ……。そういえば、あの人の前世も平安を生きたのか」
「んー、多分ね」
顎に手を当てて考える。死滅回游が始まって14日目、フィールド内の情報は外に回って来てない。生徒達の安否確認もままならないから肝が冷えるな。
上手く事が運ばれている事を願うしかねぇが、あの人がいなけりゃ意味がねぇ。
公表される
高専云々、外国とのイザコザをほっぽり出してまでそっちが優先だと思ったんかな?それとも1人でカタをつけようとかしてる?……は?冗談キツ。帰ってきたら関節キメ確定な。
「お?秘書くん、何かポケットに入ってるよ」
「何も入れてないですけど??頭平気か?」
「え、僕の美貌が眩しいって?まぁね、今日も僕はキレッキレだよ!!一瞬征哉の呪力が視えたちゃうくらいに絶好調!」
「それを早く言え若白髪!無駄な会話が多いんだわ」
「はぁ?生まれつきだしぃ〜!28歳ってまだお爺ちゃんには程遠いよ!?」
騒ぐ五条を無視してスラックスのポケットを弄る。手に触れた物を取り出して見てみればメモ帳サイズの紙切れだった。
パッと見怪しい術は掛けられてない。開いてみれば、音沙汰無しで行方不明の総監からの現状報告が綴られていた。
『連絡遅れてごっめ〜ん!皆のおかげで無事出れたよ、ありがとう♡これが届く頃には僕は死滅回游の
……だってさ。はァ、ため息止まんねー。隣でメモを覗いてくるクズ系高身長目隠しもニチャニチャしててうぜぇしキモイ。
無駄にいい香りなのも癪に障る。ま!征哉の方がオレ好みのいい匂いだけどな!!!
「
「ルール破ったらどんなペナルティが課せられるか分かんねぇ。だから時差発動型で送り付けたって訳か。でもマーキングとはまた別物だな?六眼、見ろ」
「名前で呼んでくださいよ〜センパイ♡」
「こんなクソ後輩お断りだ♡征哉で十分」
五条悟に向けて右手の親指を下に下げて首を掻っ切るのを見せつけてやった。
オレは京都校出身で守銭奴冥冥の同期だ。高専を卒業して数年後、東京校にヤバいのが入ったと楽巌寺学長から愚痴を聞かされたのを覚えている。冥冥は「金ズルになりそうだった」って笑ってた。
六眼と無下限呪術の抱き合わせな五条悟と十種影法術の上位互換な禪院征哉。何方も御三家宗家の次期当主。
オレもまぁまぁな地位の呪術家系生まれだが、これには家の騒がしいジジイ共もお口チャックだった。ざまぁみやがれ死に損ない。
しかしまぁ、相当甘く育てられていたとは思ったが、五条悟は生意気でクソガキだったし禪院征哉は実力の割に禪院家(ジジイ)からの評価が底辺だった。オレ、会った事すらないやつに同情したよ。
その後征哉の人柄が術師にしては宝玉レベルで綺麗だったからオレも惚れ込んだ。だから今あの人の秘書をやってる。
だが五条悟、てめぇはダメだ。幼体からやり直してこい。人としての基本ステータスがなってねぇ。
「征哉の状況はわかった。けど何処のコロニーにいるかまでは書いてないね」
「
「初っ端からプレイヤー認定されてた悠仁はもうデスゲームに参加しちゃってるし。タイミング悪いね」
「それな。コガネだけ借りパクできてりゃ楽だったのに」
こうなれば総監の事は一旦保留にすべきだな。特定で目を付けてられるんなら敵も易々と殺すことは無いはずだ。ま、殺そうとしても殺せないだろうけど。
そういえば、夏に総監が拾ってきたビビり君って死滅回游にいるのかな。えーっと、ヨシダジュニア?みたいな名前の元非術師。毒系呪術で攻撃回復型が珍しいから拾ったとか言ってたな。
総監、確かにこの界隈でヒーラーは重宝されるけど勝手に進めるのはどうかと思いますよ。ちゃんと親御さんに説明とか規約書類とか色々やったんですか?やってないですよね。伊地知が泣いてましたよ。可哀想に。
「吉野順平ね。誰だよヨシダジュニア」
「あぁその子だ!で、やっぱり留守番か?」
「まぁね。恵みたいに物心ついた時から呪術に触れてないし、悠仁のような身体能力もない。戦闘経験も浅いし今回は犬死にするだけだよ」
過去の術師がゴロゴロいる中で初心者ぶち込むのも酷だもんな。仕方ねぇよ、オレでも無理。
オレだって家の相伝持ってから、術師でも中の上か上の下ら辺だと思ったさ。でもそれも井の中の蛙ってわけだ。
三強(五条悟、禪院征哉、夏油傑)と比べたらオレはミジンコ。息してるだけで偉い。お前ら知ってたか?あの夏油傑って一般家庭出身なんだぜ。オレ未だに信じられねぇよ。
「あの子は?保守派ジジイが好きそうな術式持ってた女の子……トゲサキバラ子ちゃん?」
「だから誰だよ。釘崎野薔薇ね!」
「いや知らねーし。入学名簿チラッと見ただけだし」
「彼女は今修行中だよ。ツギハギ呪霊と殺り合って自分の弱さを思い知ったらしい。彼女なりのケジメだろうね」
……ふーん。あ、そう。特級と戦ってよく生きてたな。総監が作ってたマル秘特級呪具(鈴)すげーな。
にしてもなんでオレって五条悟と話なんかしてるんだっけ。あ、そうじゃん。こいつが総監の居場所聞きに来たんだった。
「用は済んだろ?なら天元様の後釜探せ。暇じゃねーんだからよ」
「それ僕の仕事?」
「いいや?でも天元様が敵の手中に落ちたんだ。つべこべ言ってないで動け」
「だってあんなに簡単に高専内に侵入するなんて思わないじゃん……。九十九由基だっていたんだよ?」
「オレに聞くなよ低色素!!!」
「えぇっ、低色素なんか初めて言われたんだけど!?それ悪口だよね!?!?」
こちとら報告書で知ってド肝抜かれたんだから知らんがな。オレに同意求めてんじゃねぇよ28歳児。
足蹴りして(無限で当たらねぇけど)オレが二徹して全国からリストアップした結界術師名簿を叩きつけてやった。天元様程の技を再現するのは無理だが数いりゃどうにかなるだろ。
「おら働け!総監の足引っ張りが」
バーカバーカ。総監がいない分仕事は大量にあるんだよ。オレのところに来てぺちゃくちゃ喋ってる暇ねーからな。
夏油傑を見習え!呪術家系巡って戦力集めて、超偉いんだぞ?なのに五条悟と来たらコレだ!どうやって育てたらこうなるんだよ。
「ヘイヘイ、分かりましたよ〜上層部の犬くん」
「だぁれがジジイ共の駒だ?調子に乗りやがってこのクソ後輩が」
「ハ!征哉の前じゃ敬語使ってお行儀良くしちゃってさ。忠犬ハチ公なの?ワンコちゃん?」
オレはな、総監と違って気が長い方じゃねぇ。とどのつまり、オレはキレた。
「あ''?忘れたとは言わせねぇ、あの人が高専中退して上層部に来たのもお前の為なんだからな?」
「はぁ、昨年もそうさ。再開して暫くは僕の事殺すくらいに睨んでくるのもめっちゃウザかったよ」
「なのに勝手に勘違いしてキレたらしいじゃねぇか。家の乳母に言われっぞ、坊ちゃんどうなられました?まぁ、また癇癪ですか!ってなぁ!」
「アイツの後ろをちょこまかと付いて回って欲情でもしてんの?犬の癖に腰振っちゃう節操なしめ♡」
「あの人の演技は上手だったろ?噂の六眼にはどう写った?」
「鼻はいいのに目は悪いのかな?雌と主くらい見分けつければ?」
「「……あ''ぁ''ん''???」」
たかがが知れてる。こんなのが総監の大事になるっていう経緯を知りたい。
絶対オレの方がいい。総監どうですか、オレの嫁に来ません?一生愛し尽くす自信ありますよ。そしたら五条悟に一泡吹かせられるしオレも幸せだしオールオッケーなんだけどな……(捨てられた子犬の眼差し)。
◇◇◇
征哉side
「ハクションッ……!」
やばい。何故かくしゃみが止まらない。鼻水も垂れてきた。
え、誰か僕の噂でもしてる?風邪なんか滅多に引かないはずなんだけど。
鼻がムズムズする。思いっきり鼻かみたい〜!けどできない〜!なぜなら今の僕は演技中だから〜!!!
「月詠様、術師を1人捕ってまいりました。如何致しましょうか」
「ン、あぁ、連れてこい」
「御意に」
何だろう……自分に言うのもなんだけど、上から目線とか止めてもらっていいですか?いや、止めれないんだけどさ。
ってか今話しかけて来たお前誰だよ。命令貰えて嬉しいって顔してるけどハジメマシテだよな?僕超困惑してんだけど。
「どうしてこうなった……」
本日は2018年11月14日、只今岐阜県飛騨霊山
えー……。時は11月9日、僕は獄門疆からパッカーンしてちょっとだけメロンパンと戦いました。
高専2年の頃の灰原が死にかけた原因の堕ちた土地神から作った9体目の式神【鬼灯】のダメージが少量だけど羂索に有効なのが判明。この日は比較的マシだったボロい建物で就寝。
11月10日、元土地神の攻撃がちょびっと効いたなら現役三大神(オリジナル)なら楽勝では?と寝起きで考えた。
月詠の魂の収集を超特急で開始。前世の記憶を頼りに探したらこの日のうちに残り4つのうち2つが集まった。
今で言う九州に封印した魂in依代を回収しに行く時、京都でばったり会った呪詛師集団から金を巻き上げた。それを使って禪院家御用達の呉服屋で着替えてひと休憩。
その後福岡のスイパラに行った。糖分不足の上昨日から何も食べてないからいつもより5割増で美味しく感じられました。焼き鳥も美味しかったよ。
11月11日、ポッキー食いながら前日に素通りした残り1つの封印場所に嫌々向かった。最後の1個はメロンパンが持ってるのでヤツが使用するまで待機ゲー。
原作改変した僕が自信をもって言うけど、最後のやつは宿儺の第二の受肉体になると思う。原作伏黒恵の代わりかな。
面倒なのは宿儺の術式にプラス『ドキドキ♡何が当たるかな〜?』のランダム運ガチャで【幻影法術】の一部が付与されること。特筆するなら式神操術がレア度SSRだから当たらない事を願いたい。
原作を思い出して脳内をぶん回し、プリッツ食いながら辿り着いた先は日本を東西に分割する飛騨霊山。岐阜県ですね。
霊山の麓には前世の僕の第二屋敷があった。本丸は仙台、地獄の旧月夜見家は今の大阪、第三屋敷は函館。けど、実際本丸より第三屋敷の方が長く過ごしてた。近くに自然が多くて気に入ってた。
ここでエマージェンシー発生!!霊山に死滅回游の
けどそれ以外にも方法は無いため仕方なーく、手持ちの紙切れに秘書くん宛のメモを書いて、イタズラ秘技で時間セットしてからコロニーに直行した。
イタズラ秘技ってのは神の魂8割持ってる恩恵みたいなモンね。時間操作系の技だから簡易的なものしか出来ないけど。
11月12日、僕に着いたコガネにルール説明を受けていれば、ルール9に僕の名前が上がってた事に気がついた。どうやらメロンパンは初めから僕の参加を強制してたらしい。
僕は自分がプレイヤーだったなんて知らなかった。せめて参加期限を過ぎれば死ぬって注意喚起くらいしてくれても良くない?お前プレイヤーだからね〜とか一言も言われてないんだけど?と言ったら「滅茶苦茶移動しててついていけなかったアル!最終手段で待ち伏せアル!」って言っていた。
それから神の気配が増大しててクソザコナメクジなコガネは近づけなかったって。……いや逆だろ逆、普通先に言うべきなのこれだよな?
コロニーに入った瞬間、転移してお空ダイビングを楽しんだ僕はその数秒後に
そのモブを殺したあとはプレイヤー狩りに没頭。前世の関係者に何度か声を掛けられたがサーチアンドデストロイ。必見必殺!!!!やはり暴力!暴力は全てを解決する!!
魂の依代は第二屋敷にあるので手短に山をチョン斬りました。僕が死ぬ前に屋敷全体を霊山の大洞窟に隠したので、斬撃飛ばして大規模露天掘りです(ピースピース!)。べ、別に入口がどこか忘れたとかじゃないからネ。違うからネ。
11月13日、この日は特に何も無い。ルール9によって僕に襲いかかる、または僕を仲間にしようとする奴の頭をちぎっては投げ、拷問して点を搾取した。
昼過ぎになって、単純作業に感情が喪失した頃には前世関係者が僕の周りを囲っていた。うん、信者共ですね。
僕の中身が月詠と信じてやまない奴らが話しかけてきて、えっさほいさと供物を捧げてきたり、アンタ寛いでなさいよ!とか団扇で扇がれながら信者を椅子にしたりと、まぁ特に何も無かった……わけがなかったよね。
・
・
・
ど・う・し・て・こ・う・な・っ・た!!!
叫ばずにはいられない。あれかな?クソ真顔でバッサバッサ殺してたからかな?もしや前世の月夜見影月が受肉したとか勘違いしていらっしゃる???
「月詠様!お会いしとうございした!!お姿は変わっていませんね、私はすぐに貴方様だと分かりましたよ!」とか言われちゃって、フリーズしながら「あぁ、そうか」とか返事したからこうなったのかな?何だよ、僕の自業自得じゃねーか!!!
そんなのがあって11月14日、今日を迎えた。流されるままに繰り広げられる信者同士の会話はヒートアップして冷める兆しが無い。僕の表情筋は死んだ。
月詠じゃなくて禪院征哉ですよ〜っていうタイミングも逃した。バッカじゃねーの色々と。
「……月詠様、少し……具合がよろしくないので?」
「は?なんで」
「いや、口調が変わられたのに違和感がございまして。雰囲気も……その、以前より温厚な気が」
「今世の性だろ。こんな俺は嫌か?」
「いえ!滅相も御座いません!!」
まじ面倒。影月の口調は固めに無表情、無気力で自由奔放と唯我独尊のハイブリットだ。
後半はまぁ、当たずも遠からずだけど、前半は今の僕には似つかない。数年ぶりの演技力をフルで活用してるけど長引くようならキツいな。
息を吐きながら空を見上げる。お天道様は日本の地獄絵図なんて気にもしないで笑ってた。
僕には分かる、分かるぞ。天照姉上が
「少し出掛ける。お前らは好きにしろ」
「はっ、お気を付けて」
気分転換がてら適当な場所に瞬間移動し、視認不可の影を周囲にばら蒔いて索敵。何人か引っかかった奴らを影に引き摺り込んだ。
一応のために点数は取っておく。原作通りなら恵達も死滅回游に参加してるだろうから余った点数は後で送ってやろう。あっちの情報が一切ない僕が勝手にルールを追加するのも後々齟齬が発生しそうだしね。
「……。(4人が覚醒者、2人が受肉か)」
霊山コロニーは山が舞台になってるからか、人が隠れやすくて隠密行動する奴らが多い。
うん、やっぱ昔の術師は気配の隠し方が上手だ。僕程じゃ無いし、僕の索敵には負けるだろうけど森の環境を活用出来ている。
動物の気配が身近で、風と植物が喋るこの場所はインフラに慣れきった現代人には不慣れな環境だろう。
背の高い木々が生い茂って方向感覚も狂うが、昔はこういう場所が戦場だった。過去の術師からしたら懐かしの場、現役時代の記憶と感覚が蘇ることだろう。
僕は勿論、このコロニーは彼らの独断場だ。だから覚醒系プレイヤーは受肉体プレイヤーの餌食になる。
参加した覚醒者泳者は長くて数日でほぼ死ぬ。故に、この飛騨霊山結界は猛者しかいない。激戦区且つ、お互いが牽制しあっている冷戦だ。
「行っておいで【八咫】【大海蛇】」
周囲は僕の索敵でいいとして、霊山の遠方は【八咫】や【大海蛇】に頼って情報を集めてもらった。
八咫は遠目で見ればただの鴉(呪力は纏ってるけど微量)だし、大海蛇は周囲の影に潜れるからバレない。
「……ん?」
ぼーっと受け渡される情報を脳内で処理していたら、一人だけ気になる気配のヤツがいた。背の低い青年。佇まいと格好から昔の術師に違いない。
何か既視感を感じる。元神の直感で、何か似通った所があるかも?と首を傾げた。可笑しい。ヒト相手にこれは有り得ない。
八咫と視覚を共有したら、式神越しに目が合った。嘘だろ、結構距離あるんだけど僕が視てんのバレてらァ。
そこで僕の影の中にある呪具【影楼】がカタカタと震えた気がした。ふむ、違和感。アイツに反応しているという事は、だ。
「なるほど。贖罪をするのは俺か、それとも……」
あぁ、そうじゃん。黒塗りになった記憶の1部を思い出した。
消化できないモヤモヤを、先程影に引き摺り込んだプレイヤーを殺す事で発散する。八つ当たりでゴメン。でもデスゲームに参加してるんだから殺す覚悟も殺される覚悟もあるよね?
「人間って凄いのにバカだよね。そう思わない?
呼応するように呪具が鳴く。
うんうん、バカアホマヌケはいつの時代だっているんだよ。いい意味でも悪い意味でもさ。
……ヤツら月夜見家は、血を濃くし神を創ろうと試みたのは知っているよね?何度も何度も何度も何度も。それこそ神の血を引くと自称する初代の時代から。
完全に成功した
しかし、傑作ということは失敗作もいるって事。神になったのは何も俺が初めてじゃなかった。
忘れてたよ。神と人間の半端者がどんな惨たらしい生き様になるかは、俺自身が何百年も経験したはずだったのに。
《探していた》
「……あぁ」
《吾の名を知っているか》
「否」
《無理も、ない。吾は貴様より前に死した残霊だ》
八咫の情報を頼りに彼の元に向かった。
肉眼で見た彼に言葉を失ったよ。酷く爛れた顔に、歪な複腕、背中には不格好な羽と、触手のようなモノが生えている。
早々人とは思えない容姿。……あぁ、これが月夜見が生み出したモノか。
もし俺が傑作(状態良好)ではなかったら、あのような化け物になったんだろうね。
生まれた瞬間に殺され、死体は隅々まで解剖されて、また次の神を創るための資料となる。
恥だ。道具として死んでいったヒト達にやるせなさを覚える。う''っ、虚しさで心にダメージが……!
「魂で放浪していたのか」
《はて、忘れてしまった》
「俺に用があると?」
《そうだ》
僕は、家族と仲間以外どうでもいい。それは皆が承知している僕の性格だ。
ならば
俺は僕が当たり前に持っていた感情を持ち得ないし、僕は俺が常に纏っていた冷酷と残忍さを持ち得ない。
もう一度自分に問いかける。すぐに結論は出なかった。
彼は護るべき対象か?まぁ、関係値的にはそうだね。でも、僕も俺も彼を知らない。今ここで初めてその存在を知った。我らが一族の罪を、しかと見せつけられた。
《月夜見は滅んだか。それとも、滅ぼしたのか》
「……」
《月詠よ、知っているか。死とは何か》
「?」
高専時代のある日、『俺が救えるのは、他人に救われる準備ができた人だけだ』と悟は言った。
サマーは『そうかもね』と肯定し、僕は『俺が救おうと思った人なら救える。命に変えてもな』と返した。硝子に自己意識が激しすぎると笑われたよ。
《死は、救いだ。貴様もよく分かっているはず》
救うべきなのだろうね。言ってしまえば、俺は彼の後継だから。
なぁ、悟。救われる準備ってなんだっけ。僕、彼を放っておけなくてさ。救える人を救うって言ったけど今の僕に助けられるかな?
《その体、完全体ではないな。魂が足りん。それとは別に完全な魂も存在している》
「おー……」
《体一つに魂は一つ。2つも宿る訳が無い》
「はは!」
《誰だ、貴様は》
この可哀想なこのヒトを救えるのは僕だけだ。僕がやらなくてはいけない。
例え彼が僕の事を、己を生んだ一族の人間だと恨み、己と違い最高傑作であったと憎んで……
「さっすが〜!僕以下の成り損ないでもちょっとは神らしいんじゃん」
《殺す》
己の復讐の対象として僕に殺意を向けていたとしても。
気がついたら前話から5ヶ月経過しててワロタ。