なお、時間軸はアスラ王国編後を想定しています。
ある晴れた日の午後。
俺は手持ち無沙汰になっていた。
オルステッドから、今日は帰ってもいいと言われたからだ
午後は何をしようか、などと考えながら家の門を潜ると、エリスとばったり出くわした。
外套を身に着けていて、今から外出するところらしい。
「おかえりなさい、ルーデウス」
「ただいま、エリス。今からお出かけ?」
「そうよ! 今使ってるのが壊れそうだから、新しい剣帯を買いに行くわ!」
「俺もついて行っていい?」
そう言うと、エリスは少し心配そうな顔をした。
「いいけど、仕事は大丈夫なの?」
「今日はもうおしまいだってさ。付き合うよ」
「わかったわ!」
弾けるような笑顔で、エリスは同意してくれた。
◆ ◆ ◆
俺たちは並んでシャリーアの街を歩いていた。
弾むような調子でエリスは前に歩いて行く。
俺も負けじと歩調を合わせて歩く。
歩いていると、俺とエリスの手の甲が触れた。そっとエリスの手を握ると、エリスも指を絡めて握り返してくれた。
時折、エリスに「早くしなさいよ」という目で見られ、手を引かれるようにしながらも武器屋に着いた。
エリスは武器屋で、ある剣帯を手早く選ぶと購入した。彼女に迷うという言葉は無いらしい。
あらかじめ購入代金も準備していたのか、お金のやり取りも問題はなかった。
まだまだ時間はあるし、散策して帰るのも良いだろうな。
「エリス、そこの屋台に寄って行こうか」
行きの道中でエリスの目が釘付けになっていた、串焼きの屋台を指さす。
エリスは目を輝かせながら頷いてくれた。
俺は屋台の主人に串焼きを二本注文すると、一本をエリスに渡した。
屋台の横にベンチを置いてくれていたので、そこに座り、串焼きを食べる。
「美味しいわね!」
エリスは相変わらずだ。
そんなエリスを見ながら食べた串焼きは、とても旨く感じられた。
串焼きを食べ終わった後、エリスの手の甲にタレがついているのが見えた。
「エリス、ちょっといい?」
呼びかけて彼女の手を取ると、タレを舐め取る。手は綺麗にしないとね。
「なにしてんのよ!」
――突如として視界が明滅した。気が付くと、目の前は青い空だった。
フン!と鼻を鳴らす音が聞こえる。殴られたのだと気付いた。
「ごめん」
起き上がった俺は、殴られた顎に治癒魔術のスクロールを使いつつ、エリスへ謝った。
その後、街中を歩いていると、エリスはしきりに舐められた手を気にしている様子だった。
そんなエリスを見ていたら、少し揶揄いたくなってくる。一体どうかしたのかね? うーん?
「エリス、どうかした?」
衝動に逆らえなかった。ごめんよ、エリス。
「何でもないわ!」
そう言い張るエリスの頬には、少し赤みが差している。
俺は更に彼女の手を取った。
「エリスの手は好きだよ。努力してる人の手だし、何度も俺を元気づけてくれたから」
そう言って握ると、火の点いたようにエリスの顔が真っ赤になった。可愛いな。
「可愛い」
おっと。心だけでなく、口にも出てしまった。
エリスは俺から顔をそらすと、「なに言ってんのよ! 行くわよ!」と言って、歩き出そうとした。
顔をそむけてはいたが、耳は真っ赤だった。
「エリス」
俺はエリスの腕を掴んで引き、呼び止める。
「今から休憩しよう」
俺の誘いに、エリスはきょとんとした後、真っ赤な顔で頷いた。
俺たちは手を繋いで、手近なそういう用途でも部屋を貸してくれる宿屋へ向かう。
エリナリーゼのおかげもあり、俺はこの街の宿屋には精通しているのだ。
宿屋の主人へ休憩と伝え、チェックインする。
部屋に入るなり、エリスは俺の唇を奪いにきた。
「まだ服も脱いでないし……落ち着いて、エリス」
「ルーデウス、好きよ。我慢なんてできないわ」
エリスは俺をベッドに押し倒すと、更に何度も貪るようにキスをしてきた。呼吸ができない。
「ぷはっ! 俺も好きだよ、エリス。息ができないから、ちょっとだけ控えめに、ね?」
「ルーデウスがあんなことを言うから、ずっとしたかったんだもの」
劣情に染まったエリスはニマニマとしている。釘を刺しておかないと、やり過ぎてしまいそうだ。
「夕方になったら帰るからね。夕飯までには家に帰らないと」
「わかったわ!」
わかってる時の「わかったわ!」だと思うが、大丈夫だろうか……
その後、俺たちはイチャイチャしながら服を脱がし合って、融け合うんじゃないかってくらい、激しく愛し合った。
デートで気分を盛り上げてからするのって、良いものだな。
お楽しみで夢中になっていると、エリスのお腹がぐうと鳴った。
窓を見ると、赤い夕日がカーテン越しに見える。
「そろそろ帰ろうか」
上に乗るエリスに笑いかけると、「そうね」 と顔を赤くしつつも笑った。
夕暮れの中、俺たちはまた手を繋いで、家路に就くのだった。