東方無貌神〜Find love and enjoy the journey〜 作:文才の無い本の虫
永く生きると言う事は人から逸脱し、人よりも多くの死を見るということ
そして何よりマトモな人としては生きられないということだ
あれから数日。
俺とルーミアは森を歩いていた。
「ん?」
「ニャルーどうしたのだー?」
ふと懐かしい気配を感じて足を止めた俺に肩に座っていたルーミア(永琳の影響で幼女のときは基本的にニャル呼び)が問い掛けて来る。
因みにルーミアはあの月の使者たちを倒した時から小さくなっているのが――正確には肩に座ったりしているのが――気に入っているようだ。
「いや、面白いものが見れそうだと思ってな」
「面白いことー?」
「ああ。飛ばすから落ちるなよ」
「うん!」
ルーミアがコートをつかんだのを確認し、走り出す。
魔術を使い周囲の風――大気を操り、ソニックブームが出ないように道を作り、
「わぁー速い速いー!!」
「お前素でこの速度出せるだろ」
「えー、ニャルに乗ってた方が面白いの!!」
「さいで」
周りの風景が流れていく。
目的の――瓶を持っている少女の前に停止する。
俺は常時発動している隠者のルーンの出力を下げ、少女に姿を見せた。
「なっ?!誰だ!!」
少女は瓶を隠すように両手で覆い、警戒心を剥き出しにする。
・・・・・ふむ。
「ルーミア、少し静かにしててくれ」
「りょーかい」
小声でルーミアに言い、少女に向かい合う。
「おい、童。それは『蓬莱の薬』か?」
「そうだよ!!でもくれてやるもんか!!」
「・・・・・飲むつもりか?」
「ああ!!コレで輝夜に復讐してやるんだ!!」
少女の着物は薄汚れ、艷やかだったであろう髪もボサボサ。
その中で赤い瞳だけが爛々とした輝きを放っている。
「名は?」
「・・・・・藤原妹紅」
「そうか、妹紅。其れは、地獄への道だ。それでも飲むのか?」
「ああ、何か文句あんのか」
「一つ、助言だ」
「何だよいきなり」
「永く生きると言う事の意味を考えろ。そして忘れるな」
「・・・・・あんたの名前は?」
「俺の名前はナイアルラトホテップ・・・・・また会おう、藤原妹紅」
俺は隠者のルーンの出力を上げ、姿を隠す。
「・・・・・幻?いや、さっさと飲もう」
さて、藤原妹紅。
壊れて無いマトモな人間。
お前は何時まで保つのだろうか?
「まずっ?!蛙かこれ?!」
藤原妹紅が薬を飲み、髪の色が抜け落ちたのを見届けてから俺は立ち去った。
・・・・・『蓬莱の薬』って蛙の味がするのか。
◇◇◇◇
あの藤原妹紅という少女と会ってから数年。
俺は都や小さな村などを見て回り、特に気に入った光景――人の輝きや自然風景が多い――を手帳に書いた。
永琳と居た頃や後戸の国で過ごしていた頃とは異なり書いた手帳の頁はもう既に二桁だ。
良くも悪くも現世は変化が多いということだろう。
「良い風だ」
「どうしたのだー?」
「いや、何か面白い出会いがある・・・・・そんな予感がしただけだ」
「すごく曖昧な予感なのだー」
そうして歩いていると木陰に日傘を差した人影が見えた。
不思議な女だ。
神秘が薄れているこの時代には珍しい紫の色。
その女が此方を・・・・・いや、隠者のルーンで認識阻害をしている俺を見た。
「もし、銀色の方。少しお茶でもどうですか?」
「・・・・・お言葉に甘えさせてもらおう」
それが、これから長い付き合いになる稗田阿礼との出会いだった。
◇◇◇◇
「私は稗田阿礼。貴方の名前は?」
「俺はナイアルラトホテップ・・・・・ってその手帳は?」
「取り敢えず貴方の事を聞かせて下さい!!」
それから・・・・・
「ほうほう・・・・・貴方に興味が湧いてきました!」
「歳は?能力は?好きな物は?」
「何処に住んでいるんですか?」
等々。
阿礼は俺に様々なことを聞いてきた。
・・・・・少し気になるな。
「一つ聞くが俺のような人外が恐ろしく無いのか?」
「いえ、恐ろしいですよ?ですが知らないで死ぬ方がよっぽど恐ろしいですね」
凄まじい知識欲。
それも恐怖を感じるほどの強迫観念。
「・・・・・ハハハ!!」
「どうしたのですか?」
「なぁ、阿礼。もっと色んな事を知りたく無いか?」
「はい!!」
食い気味の即答。
此奴、早死しそうだな・・・・・あ、当分の暇潰しを思いついた。
俺は何時も使っている手帳を取り出して、予備の手帳で写しを作る。
「くれてやる」
「これは?」
「飛ばし飛ばしだが俺の日記の写しだ」
「そんな貴重なものを?!良いんですか?!」
「ああ。当分暇でな・・・・・対価と言っては何だが用心棒を雇わないか?お前、絶対要らんことに首を突っ込むだろう?」
「良いんですか?!」
「ああ」
「雇います!!」
「おう、契約期間はお前が生きてる間だ」
「あ、対価は?」
「清潔な寝床」
「凄くお手軽?!」
「代わりにお前の人生で暇潰しさせてもらうからトントンだ」
「成程。長命にとって暇は大敵と聞いたことがあります。ないあるら・・・・・呼びづらいですね・・・・・というかそのままだと都とかで呼ぶと不味いのでは?」
「不味いだろうな」
ナイアルラトホテップなんて予備知識有りでも化け物や邪神っつーカテゴリーだしな。
「うーん、じゃあ"銀さん"とかでどうでしょう」
「安易だな・・・・・まあ良いが」
「じゃあ、改めて宜しくお願いします、銀さん」
「ああ、宜しく、
因みに俺の最初の仕事は日傘を持って阿礼の屋敷まで帰ることだったとさ。
◇◇◇◇
阿礼と出会ってからもうすぐ一年になる。
この一年間は凄く濃密で刺戟的だったと言える。
「銀さん、向こうに新しいお店が出来たらしいですよ、行ってみましょう!」
「ああ・・・・・って走るなよ?!お前病み上がりだろうが?!」
取り敢えず、阿礼は病弱だった。
今は全力疾走しているが・・・・・病弱だ。
病弱とは?
・・・・・まぁ、そのため俺の仕事はよく阿礼の看病になったりしたこともある。
つい最近も高熱で寝込んでいたところだ。(ルーミアに薬草を取ってきてもらい治療した)
しかし、不思議なことに彼女はとても身体能力が高い。
意味がわからん。
「店主、俺と此奴に団子を三本ずつ」
「あいよ」
新しく出来たという団子屋に入り、店主に金子を渡す。
因みにこの金は自腹だ。
まあ、金には困っていない。
「ん~絶品です!」
「喉に詰まらせんなよ」
「私はおばあちゃんじゃありませんっ」
「一言もそんなこたぁ言ってねえんだが・・・・・」
「そう言えば銀さんって雰囲気変わりましたよね」
「あー、そんなに変わってるか?」
「はい。まぁ私は今のほうが好感が持てますが」
「ははっ。そりゃあ良かった」
そうして阿礼と雑談をしながら団子を楽しむ。
うん。
自分で作るのとはまた違った味だ。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
「ごちそうさん・・・・・さて、帰るか?」
「うーん、少し散歩してから帰りましょう」
阿礼が立ち上がる。
俺は彼女の横に立ち、日傘を開き、彼女の上に持つ。
この動作にも随分慣れたな。
「じゃあ、行きましょうか」
「はいはい、仰せのままに」
稗田の娘が銀髪のお付きを伴って街を歩く。
この街でよく見られる日常だ。
『銀さん』
髪色から命名。スーツにコートじゃなく黒と白の着流しに稗田の
『阿礼』
お金持ちのお嬢様。知りたがりで早死しそうな病弱少女(14)。今話のヒロイン?家はでかい。少し前関わったに古事記の編纂を切掛に知りたがりに成った。自身の短命には薄々気付いている模様。
『稗田家の皆さん』
『妹紅』
当分出ない。というか完結までに出るかすら不明。蓬莱の薬の味は適当にルーレットで決めた☆