多分3話くらいで終わります。
オッス、いきなりではあるが俺は所謂転生者とかいうやつだ。
まだ赤ん坊である俺だが、この世界がどんな世界かはもう判っている。
【推しの子】そう呼ばれている作品がある。
俺はその【推しの子】の世界に転生した。
***
俺は当初あまりこの作品には興味が無かったのだが、ダチが相当沼っており、布教と称して原作単行本三冊とCD(某ロボットアニメとの合成動画しか知らなかった)を渡してきた。
仕方なく一日で読み切ってプレーヤーでCDをヘビロテしながらそのダチとの待ち合わせ場所に向かっていたんだが、近くの婆さんから鞄をひったくった野郎を止めようとしたらひったくり野郎はナイフを所持しており、それにぶっ刺された挙句道路に突き飛ばされトラックに轢かれるとかいうピ○ゴラスイッチか!というコンボを食らい即死した“らしい”。
“らしい”というのも死後にお迎えに来た死神を名乗る眼鏡のお姉さんから聞いたんだがな。
その後、色々あって転生する事になったのだが、俺が出した条件は“健康でノースタントアクションが熟せるようになれる肉体”仮面ライダーが放送している世界”の二つ。
死神ちゃん*1には『それだけでいいんですか!?』『先輩にはチートだのなんだの無理難題吹っ掛けられるって聞いてたんですけど………』とか言われたが、俺がなりたいのは仮面ライダー俳優である。
その為にバイクの免許を取ろうとバイトだって色々していたのだ。
転生はその夢に費やせる時間が増えると考えればむしろ得をしたのかもしれん。
結局、死神ちゃんが『ならせめて役者さんと縁のある生まれにしますね』とサービスしてくれたのだが、思えばこの時に死神ちゃんが生前の俺の荷物*2を気にしていたのはフラグだったのだろう。
***
そうして転生した俺が最初に目にしたのは瞳に星の輝きを宿したの“完璧で究極のアイドル”にして今世の母親となる“星野アイ”の顔であった。
そして
多分由来はルビーとよく間違われるレッドスピネルだと思う。
はい、見事に原作ブレイクして三つ子でしたよ!ポジションは兄・
しかし、二人とは違い俺は黒髪赤眼とアイに似た特徴を持っている。
さて、そんな俺だが、自発的に原作ブレイクしていく方向でいこうと思ってる。
①まずアイが殺されるのを阻止する。
殺されるのわかってて何もしないってのはライダー俳優志望の俺としては放っておいていい問題じゃない。
それに事務所がそのまま存続出来れば俳優になるのも難しくはなくなるし、瑠美衣がアイドルを目指す際にもプラスになるはずだ。
②前世暴露して兄と妹を仲良くさせる。
前世でダチから聞いた話だとこの兄妹は将来仲違いするらしい。
お互いがお互いの前世を知らぬまま愛久愛海がアイの仇である父親を追って色々やらかすからなんだそうだが、アクアは吾郎センセーで、ルビーはさりなちゃんなのだからさっさと前世バレさせといて仲良くさせといた方がいいだろう。
それに俺も転生者と明かせば①に協力してくれるかもしれない。
③クソ親父を社会的に抹殺する。
これも前世のダチ情報だが、アイ殺害の黒幕である父親というのがかなりの屑らしく、社会的に潰して再起不能にした方が世界の為だということだ。
どうも異母兄もいるらしいし………*3
実際にやってしまうと俺達の経歴にも傷が付くので父親と同じように俺達からは直接手を出さずに裏から手を回して世間から勝手に潰してもらう策を取る必要がある。
これに関しては医学部卒の経験のある吾郎センセーことアクアを巻き込めばなんとかなるだろう。
④積極的にルビーをアイドルに、アクアを役者にする。
原作でもあれだけの才能があるのだ。アイ生存ブーストと事務所ブーストがあれば即活躍できるようになるはず。
そうすれば俺もライダー俳優への障害が減るに違いない。
という訳でまずは兄妹に前世暴露するとしますか………
***
とあるインタビュー『須日煉流について』(アクア)
「えっ?スピネルですか?昔っから身体を動かすのが得意なヤツですよ………あとは兄妹喧嘩とかになると真っ先に仲裁に来て偶にどっちが兄かわからなくなりますね」
ーー兄妹仲が良いんですね
「………いえ、多分スピネルがいなかったら家族はバラバラになっていたかもしれませんね」
***
「第二回転生者会議〜」
「わぁ〜」
「………」
夜中にルビーがアンチとリプ合戦していた事が判明して直ぐに二人は俺にも転生者である疑いがあると声を掛けてきたのだが、それを待っていました!とばかりに転生者会議を開催。
その際にアクアとルビーの前世も暴露した。
俺が二人の素性を知っていた事から異世界転生してきたのはとりあえず信じてもらえた。
ルビーは好きだったセンセーが殺されていた事にショックを受けていたが、そのセンセーが兄であるアクアに転生していた事を知ってブラコン化し、そんなルビーが今もベッタリになって辟易しつつもその中身がさりなちゃんと知って邪険に出来ず困っているアクアをニヤニヤしながら見る俺という構図が日常となっている。
「ノリが悪いなぁ、アク兄」
「そうだよ、セン…アクアお兄ちゃん」
「お前ら、案外仲良いんだな………」
そんなこんなで開催された第二回のテーマは『アイ殺害阻止計画』である。
前回の前世バレで俺の知識を信用してくれた二人にこの話題を出したところ見事に食いついた。
それもそうだ。この二人は死んでも尚同じアイドルを推しにしているレベルのガチファンである。*4
そうでなくとも今世の母親が殺されるかもしれないなんて言えば食いついてくるのは当然かもしれない。
「で、その話は本当なのか、スピネル?」
「ああ、俺もガッツリ原作を読んだ訳じゃねぇが一巻の締めでそんな展開で頭ぶん殴られたぐらいのインパクトがあったからな」
「何よそれ!アイドルは恋愛したら殺されても仕方がないの!?子供を作って幸せになっちゃ駄目なの!?」
「ルビー、気持ちはわかるが落ち着け、アイが起きる」
「うっ………」
「そうならないようにする為の会議だ。次の実行犯はセンセーをヤッたストーカーくんで、そいつに情報を流したのは俺らの父親だ」
「やっぱりか」
「どういうこと?」
「アイの妊娠と病院は本人と斎藤社長しか知らなかったはずなんだ。病院にも偽名で入院していたからな………これについては俺も疑問に思っていたんだ。あのストーカー野郎は何でアイがウチの病院にいるって知る事が出来たのかって」
「可能性として一番高いのはアイが俺らの父親にそれを話した事なんだ」
原作でこのあと起こる事件はアイが二人と親父を会わせようと住所を漏らしたのが原因ではあるのだが、自分が孕ませた女を他人を使って殺させようとするとかいうかなりのサイコパス野郎が父親というのはかなり複雑な気分である。
厄介なのはそのサイコパスな本性を隠し通せるくらいには演技力も高いという点だ。
「もしかしたら親父は役者なのかもな」
「どうしてそう思ったんだ、スピネル」
「いや、明らかにサイコパスな野郎なのにそれを一切悟らせずにいるって点から演技力が高いのかもって」
「確かに………」
「あとはお兄ちゃんにそっくりなのかも」
「えっ?」
「だって私やお兄ちゃんの髪とお兄ちゃんの眼はアイと違うじゃない?」
「だな、俺は髪と眼はアイ、ルビーは髪は親父で眼はアイ………そうなるとアク兄は親父の特徴をまんま受け継いでるって事になるな」
そこにアイと密接な関係にあった歳の近い芸能界の人間となれば自ずと候補は限られる。
「とりあえず親父の事は一旦置いといて………実行犯の方をどうするかだな」
その日から何度か話し合いつつも俺達は運命の日に備えた。
***
とあるインタビュー(かな)
「スーについて?アイツはあれよ!仮面ライダー馬鹿!………前に本人に言ったら『最っ高の褒め言葉だ!』とか言ってたわね」
ーー仮面ライダー馬鹿、ですか?
確かに仮面ライダーの主演が決定された際には物凄く喜んでいたと聞きましたが
「そりゃあはしゃいでたわよ………まあ、知り合った当初から夢だって言ってたものね」
ーーそれは前にお聞きした五反田監督の映画の撮影の時でしたか?
「そうよ。あの兄妹と知り合ったのはその時だったわ」
ーー長い付き合いなんですね………
「ある意味腐れ縁というか何というか………」
ーーところで兄のアクアさんとは仲がよろしいと聞きますが?
「の、ノーコメントでっ!」
***
当然その運命の日までには色んな事があった。
ミニライブに行った日は二人にキレッキレのヲタ芸を一緒にやらされてバズったが、あれは本当に恥ずかしかった。
またアクアが映画に出演する事になり、その撮影現場に行った時には後に腐れ縁となる有馬かなとも出会ったのだが………
***
その日はアクアがとあるドラマ撮影に同行した際に縁の出来た五反田監督の映画に主演する事になり、そのオマケとして撮影現場に同行する事となった。
どうも素に近い言動を見せた事で興味を持たれ、前にアイの出たドラマに文句を言ったら映画にアイを起用するバーター*5として参加させられる事になったという。
これに関しては原作通りなのだが………
「兄妹とは言ってもここまで違ってくるのは珍しいな」
何故か俺も五反田監督に目を付けられていた。
「そ、そうですかねぇ………俺とアク兄の特徴を足して割れば妹と同じになると思いますけど………」
「まあいい、そういう事にしといてやるよ………お前さんも機会があれば起用してやるからな、早熟弟」
「仮面ライダー俳優になりたいので主演とかは出来ればやめてくださいね?」
「ほぅ、その歳でもう将来のビジョンがありやがるのか………しかも仮面ライダーそのものじゃなくて仮面ライダー俳優とはな」
「(あっ、やっちまった!?)」
仮面ライダー俳優、しかも主演となると子役をしていた役者や新人俳優等のそこまで有名ではなかった俳優から選ばれるケースも多く、そこから人気俳優になる者も少なくはない。
なので俺は目立った役等は避け、仮面ライダーで主演デビューしたかったりする。
なので今回の出演者やスタッフにはアクアが世話になりますと声を掛けつつ印象に残ろうと画策していたのだが、この監督はやはり鋭い。
「兄貴共々面白い奴」
そこから少し監督と仮面ライダー談義に花が咲き、アクアやルビーに少し呆れられるハメになったが、これはこれで中々得難い経験だった。
そして、子役やその関係者の控室にやってきた俺達はアクアの共演者である有馬かなと出会った。
「ここはプロの現場なんだけど!遊びに来てるなら帰りなさい!」
ルビーがアイがいない事に愚図り泣き出したのを聞いて声を掛けてきた第一声がこれである。
「えと………」
「私は有馬かな。今日の共演者よ」
「………あっ、この子あれじゃない?えっとなんだっけ………重曹を舐める天才子役?」
「「十秒で泣ける天才子役」!!えっ!?」
有馬かなの声に被せて俺がそう呟くと物凄く意外そうな顔でこっちを睨んでくる。
「仮にも共演者なんだから事前に調べとけよアク兄………あと、ルビーは普通に失礼だからな?」
「あんたは?」
「あんまし似てないがそこの兄妹の真ん中。俺はスピネル………名前は色々自覚はあるから気にしないでくれると助かる」
「ふ〜ん………あのアイドルの子もアンタも監督のゴリ押しだって聞いてるわよ!こないだ監督が撮ったドラマ見たけど全然出番なかったじゃん。どうせカットしなきゃいけないほどへったくそな演技したんでしょ?媚び売るのだけは上手だったみたいだけど!」
それだけ言うとかなはADに荷物を持たせて去って行った。
「アクアお兄ちゃん」
「分かってる。相手はガキだ………殺しはしない………」
「いや、ガキじゃなかったらお前らどうするつもりなんだよ………」
「スピ兄、好きなライダー俳優の演技馬鹿にされたらどうする?」
「………なるほど、お前らの心情は理解した………一度天狗になってる鼻を叩き折っておいた方がいいな」
この時、かなは途轍もない悪寒を感じたと後に語っている。
その後は原作通りアクアの何とも言えない不気味な子供の演技(?)に見事鼻を叩き折られ、三兄妹とかなは妙な縁が結ばれる事になる。
***
映画で人気が爆発したのか、そこからのアイ人気は凄く連日テレビへの出演が続きすっかりアイドルタレントとして有名となった。
アクアにも五反田監督から偶に子役としてオファーが来ることもあったし、俺も仮面ライダーではないが、戦隊モノのエキストラとしてテレビデビューを果たしたりもしたし(その際、何故かかなもいた)、ルビーは前世での苦手意識から上手く踊れなかったのを克服し、アイドルの才能の片鱗を見せていたりとしばらくは平和な時間が流れ………運命の日は刻一刻と迫っていた。