ピアノが弾けない少女たち   作:エビフライ定食980円

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第53話 真野浜水泳場(2)

「……じゃあ、ひなのさん。

 テントのチャック閉めるけど……良いよね?」

 

「ちょ、ちょいタンマ! それ閉めると雰囲気が大変なことになるって、『部屋キャンプ』のときに思い知ったじゃん!」

 

「え、でも。

 閉めないと、周りから私たちが日焼け止めを塗り合っているのが丸見えなんだけど……」

 

「……閉めるしかないじゃん、それは」

 

 私はゆっくりとオレンジ色のテントの出入口のチャックを……閉めた。

 すると、外の喧騒はどこか遠い世界の出来事のように霞みがかった感じになり、『部屋キャンプ』のときのように、徐々にわずかな空気は『私たち』に置換されていく。……いや、更に屋外なので熱気も相まってより『部屋キャンプ』以上の雰囲気があるし、挙句に荷物もテントが飛ばないように中に置いているので、スペースも狭い。

 

「……」

 

「……」

 

「……日焼け止め、塗ろうか。ひなのさん」

 

「そ、そうだね……」

 

「じゃあ、ひなのさん。脱いで――」

 

「えっ!? あ、明菜そんな……いきなり」

 

「いや、そのシャツ着てたら、背中に塗れないでしょ」

 

「あっ、あ、そっちね……。

 あははー、そうだよね。着てたら塗れないじゃんー」

 

 もう一線は余裕で踏み越えているような雰囲気の中で、ひなのさんは不自然にもったいぶるかのように、ゆっくりとオーバーサイズのシャツを脱ぎ、その上に白いキャスケット帽も置いた。

 ……これは流石にひなのさんによる煽りではなく、この状況下での彼女の緊張によるものって分かったので、深くは言及しないでおく。

 

「……背中に塗るね?」

 

「お、おねがい……」

 

 もうひなのさんの声はほとんど涙声みたいな感じになっていたが、ぺたんと座っているひなのさんに後ろを向いてもらって、私はそんな彼女の露出している背中に日焼け止めクリームを塗ることにした。

 1人用テントに2人入っていることもあり、足を伸ばして横になるスペースは無いので、今はお互いに座っている。

 

 案の定、背中に触れた瞬間『……ひゃっ!』とひなのさんは声を出したが、それは正直想定していたところもあったので、それにも突っ込みを入れることはしない。

 

 まあ、塗り始めてしまえば、意外とあっさり終わるもので。しかし、いつもと違う雰囲気はテントの中で継続しているので、私も……いつもより踏み込んだ発言を不用意に漏らしてしまう。

 

「……じゃあ、前は? 私が塗る?」

 

 そこは別に手伝ってもらう必要ないじゃんと、私の良心は理解していたが踏みとどまることが出来ずに本音が口から洩れた。

 

「……ふえっ!? あ、うん……お、お願いしようかな……」

 

 ――そして、それを断らないひなのさんもまた、テントの中の雰囲気に呑まれていた。

 

 

 結局、私は彼女の脚にも日焼け止めを塗ったし。

 挙句には、ひなのさんから塗り返してもらうときには、同じように塗ってもらってしまったのであった。

 

 

 

 *

 

「と、取り敢えず泳ごう!! テントの中はダメだよっ! 私たちはあの中に居ると大体マズいことにしかならないっ!」

 

「……まあ、流石にここがただの水泳場であることを考えると、さっきのは軽率だったね。

 ――『部屋海水浴』なら大丈夫かも……?」

 

「『部屋海水浴』って意味わかんないじゃん! なんで、泳げもしないのに部屋で水着を着るのさ?」

 

「えー……そりゃあ……雰囲気作りのため?」

 

「今の私たちは雰囲気作ったらアウトなんだってば! もうっ!

 ほら……泳ぐよ、明菜っ!」

 

 ひなのさんに手を握られて、そのまま水辺へと連れられる。

 砂浜から波打ち際へ変わり。足元に水が当たる最中、私は思わず声を出す。

 

「冷た……くない? ……結構ぬるいね」

 

「やっぱり海と勝手が違って脳がバグるよー、明菜ー。

 全然、身体がべたつく感じもないしー」

 

 やっている行動は海水浴なのにも関わらず、部分部分海水浴のエッセンスが抜け落ちて、湖だなあと感じる辺り変な気持ちになる。

 沖合の方に……って、沖じゃないのか、面倒だな――ともかく奥の方へと進んでいって大体胸元までが水に浸かるところまで来て、その辺りで軽く泳ぐことにする。

 足が水底につく場所じゃないとちょっと不安になるから、このくらいの深さがちょうど良い。

 

 ひなのさんが顔を水につけないで平泳ぎをする手抜き泳ぎをしていたり、私が背泳ぎをしようとしたら、このときは普通に立っていたひなのさんが脇腹の辺りに密着してきてびっくりさせられたり、かと思えばクロールでバシャバシャ泳いだ後にUターンして私の元に戻ってくるひなのさんに『犬っぽい』って言ったら妙に上手な犬かきを見せてくれたり。

 

 一通りそんな感じで遊んだら、ひなのさんがボーっと湖の遠くの水面を見つめているような感じだったので、私は気になって問いかける。

 

「どしたの、ひなのさん?」

 

「あー、うん。なんか地平線の向こうに町……というかマンションとかが見えるのってすごい違和感あるよねえ」

 

 そう言われて琵琶湖の対岸を見てみれば。基本どこを見ても山は見えて、見た目では頑張れば泳いでいけそうな距離感のところに、マンションやらショッピングモール的な建物だとか、高層建築もちらほらと見えていた。

 海水浴場だとしたら中々無いだろう光景かもしれないね、これ。私が地元に居た頃に行っていた海水浴場も伊勢湾だから対岸自体は存在していたけれども、流石にここまで建物1棟1棟が分かるような距離ではなかった。

 

「ひなのさんは、この景色を見てどんなことを考えるの?」

 

「えっ、大喜利?

 そうだなあ……。離島で暮らしていた子どもが都会に思いを馳せるシーン、かなあ」

 

「なんかテレビドラマでありそう」

 

「実際、その島の子がいざ都会に行くと順応できなくて、危うく水商売に落ちかけるようになったり、悪い男と付き合って捨てられたりするんだよね」

 

「急にダーティになったね……」

 

 割と、ひなのさんってドラマ好きだよね。いつ見ているのかはよく知らないが、サブスクの動画サイトとかに登録すればいつでも見れたりもするから、暇なときに見ているのかも。

 

「じゃあ、明菜はこの景色で大喜利するとー?」

 

「国境線の川の向こうには、平和な街並みが――って感じ?」

 

「まさかの亡命!? 洋画の世界観じゃん。

 絶対自国が内戦とかになってるやつでしょ、それ」

 

「川には国境警備の巡視船が居るんだよね」

 

「あ、主要キャラが死ぬやつだ」

 

 とはいえ、ここは湖なのでそんなことはなく。

 私たちは一通り、ロールプレイを楽しんだのちに、一旦砂浜へ上がることにした。

 

 

 

 *

 

 湖から上がったら、ちょうどお昼に近い時間だったので、身体を乾かしてから海の家でお昼にすることにした。ひなのさんはオーバーサイズのシャツを着直して白い帽子も再び被っている。

 

 とはいえ、私は焼きそばでひなのさんはカレーという超ド定番メニューに落ち着くことになった。

 味覚というものは、案外雰囲気に流されるチョロいところがあるので、こういうところで食べる焼きそばは美味しく感じる。特別なものが入っているわけではない何の変哲もない焼きそばなんだけど不思議だよね。

 

「……明菜、おいしそうに食べるじゃん? 一口ちょうだい?」

 

「はいはい。ひなのさん、あーん……。

 で、どうする? 午後も泳ぐんでしょ?」

 

「んっ……む……ごくっ。焼きそばもアリだね!

 まー、せっかく来たのに午前中しか泳がないんじゃ勿体ないって! あ……明菜、カレー食べる?」

 

「辛くないなら一口もらおっかな……ありがと。……あーん、んんっ……。

 もー、ひなのさん。ちょっとピリッとするじゃん。言ってよー」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

 そんな感じでご飯を食べながら、のんびりと午後の予定を詰める。

 やっぱり、私たちに流れる時間は、普通の女子高生と比べてもかなりゆっくりとしていた。

 

 

 結果的には、午後は浮き輪を1つレンタルしてみよう、ということになった。

 

 

「……あ。ひなのさん、また海に入る前に、日焼け止めクリームは塗り直すからね?」

 

「え、あ……ひゃ、ひゃい……」

 

 ……流石に2回目なので、初回よりは手短にお互いに塗った。

 

 

 

 *

 

「浮き輪を使って浮いているだけだと楽だねえ……」

 

「女子高生とは思えないようなこと口走ってるね、明菜……」

 

 私がぼーっとして浮き輪でぷかぷか浮いているだけで、ひなのさんがバタ足で浮き輪を動かしてくれる。自分で動かなくても、ひなのさんが動かしてくれるとなると私は気楽だ。

 大人用の浮き輪なので大きさにも余裕がある。それはすっぽりと抜けやすいという意味ではちょっと危ないけれども。

 

「ちょっと休憩! 私も浮き輪に寄っかかって良ーい?」

 

「どうぞー」

 

 まあ、こんな感じで浮き輪の外からひなのさんが寄りかかるくらいのことはできる。その状態で私がひなのさんに当たらないようにバタ足をすれば、ひなのさんが寄りかかっている方とは逆方向に進むことができる。

 

「わわっ、ちょっと振り落とされそうだから……明菜を掴むね?」

 

「え……。ひゃう! ひなのさん、そこ腰……」

 

「明菜の腰ほそーい、顔も肩に乗っけちゃうね」

 

 ひなのさんはほとんど半身を浮き輪に乗せるような感じで私に抱き着いてきた。最初は腰に巻かれていた手は、徐々に上に持ち直して、今は両肩を持っている。後ろでまとめたローポニーがひなのさんに若干かかっていると感じるほどだ。

 ここまでの薄着で密着したのははじめてかもしれない。

 

 それでもう私の真後ろに引っ付いたひなのさんは、耳元でこうささやく。

 

「……明菜、照れてる? 可愛いんだー」

 

「――そこまでやるなら、もういっそ一緒に浮き輪に入ろうよ」

 

 私はそう言うと、ひなのさんが肩に回してきた腕を離して、元の位置まで戻す。

 そしてひなのさんに改めて浮き輪を被せるように中に入ってもらって、私は後から水中からひなのさんと浮き輪のスペースへと入った。

 

 当然、浮き輪の中に残された空間はそこまで広くないので、急速に密着することになる。

 

「え……あの、明菜……その。当たってる、よ?」

 

 ひなのさんの背中に私が抱き着いているような形になった。ひなのさんの背中のボディラインが完全に分かる程度には密着しているので、まあ当然私の身体のラインもひなのさんに伝わっていることだろう。

 

「……なにが当たってるの? ひなのさん」

 

 私はひなのさんのわきの下に手を回して、彼女の胸元の上辺りで手を組む。そうするとほとんど無かったはずの浮き輪に再び僅かだがスペースが生まれて余裕ができる。

 ……それくらいには私とひなのさんの距離はゼロとなっている。

 

「分かってるくせに」

 

「ふふっ……知ーらない。

 それより、ひなのさん? この格好のまま泳げたりしない?」

 

「えー……こんなに、引っ付いていたら無理だよー」

 

 そう言いつつもひなのさんは平泳ぎに近い要領で、私に足が当たらないようにしながら泳ぎはじめた。こういうところは、ひなのさん優しいんだよねえ。からかいが無ければ、本当に出来た彼女である。

 

 浮き輪で一緒に泳ぐのは、ひなのさんが終始真っ赤になっていたのと、結構水温が上がってきたこともあって。一旦ひなのさんがのぼせないためにも、テントへと再び戻ることにした。

 

 

 

 *

 

 テントのチャックを閉めると、色々とマズいことになるので開けっ放しのまま、私はクーラーボックスから飲み物を取り出してひなのさんに渡す。

 まだ、凍らせて持ってきた飲み物は溶け切っていなかったので、私も途中のコンビニで買った方の飲み物を飲むことにする。

 

「ふー……結構、泳いだ……というか、明菜に泳がされたような気が――」

 

「気のせい、気のせい。

 あ、そだ。コンビニで買ったアイスも食べておく?」

 

「おっ、ちょうど良いかも」

 

 テントまで戻ってくると、ひなのさんは速攻で白い大きなシャツを上に羽織り直す。そして、今は体育座りみたいに膝を丸めて座っていた。そのひなのさんの足先に私が横に流した足が当たっているが、もう浮き輪であれだけ接近したから段々気にならなくなってきた。

 

「ひなのさんは、かき氷のやつだよね?」

 

「そーだよー」

 

 プラスチックのカップに入った氷のアイス。ひなのさんのはコーヒー風味のかき氷に中央にはバニラアイスがあるやつだ。

 

 私はカップアイスじゃなくて、クッキーサンドのアイスにしてみた。

 

「いただきます、ひなのさん。

 ……アイス食べ終わったら、そろそろ帰る準備かな?」

 

「まあ、テントとか色々片付けしなきゃだもんね。

 一瞬だったなあ……。あ、明菜のクッキーもちょうだい」

 

「はいはい。口開けて」

 

「あーん……」

 

 帰りのことを考えると3時前のバスには乗っておきたい。それを乗り過ごすと次が最終便の4時半でちょっと遅くなっちゃうから。

 

「明菜、食べながらで良いから聞いて?」

 

「……ん、なあに?」

 

「テントを出てぐっと右の方を見ると分かるんだけどさ。湖を横断している橋があるじゃん? 琵琶湖大橋って言うんだけど……」

 

「どれどれ……あー、あれね」

 

 オレンジ色のテントの出入口から、私はひょこっと顔を出して、ひなのさんの言った方向を見ると確かに、そこそこ近い場所に大きな橋があった。

 

 それは琵琶湖大橋。

 名前の通り琵琶湖に架かる橋で東西を渡ることが出来るのだけれども。ひなのさんが貴重品袋から取り出したスマートフォンで地図アプリを見せてもらうと、思ったよりも東西の陸地同士が近いところを通しているので、正直横断感は薄めだ。

 

「この橋がどうかしたの、ひなのさん?」

 

「これ、明菜用に仕入れたネタなんだけどさ。

 ……あの橋の道路……楽器なんだって」

 

「……んんっ? どういうこと?」

 

「メロディーロードって言ってね――」

 

 ひなのさん曰く。

 メロディーロードというのは、車が走っているだけで音楽が奏でられるという仕組みの道路らしい。

 これだけだと良く分からないが、どういうことかというと、道路と車のタイヤの摩擦音を利用しているものだ。

 

 普段でも車が通過すると道路との摩擦で音が鳴る。ということは逆に考えれば、道路にレコード盤のように溝を彫っておくと、車が通っただけでまるでレコードのように曲を再生することも出来るのだ。

 溝を狭くすれば高音となり、広くすればより大きな音を奏でることができる。その状態で一定の速度で車が走れば曲の完成、ということだ。

 

 

 私は、ひなのさんのスマートフォンでその琵琶湖大橋の『メロディーロード』の動画を再生する。屋外なのでひなのさんの私物のイヤホンを借りて。私たちは片耳ずつイヤホンを入れて聴いた。

 

「……思ったよりも、しっかり曲になっててびっくりした」

 

 流れている曲は知らなかったが、しかし初見であってもしっかりと音楽が奏でられていることが分かった。

 道路って楽器になるんだね、知らなかった。

 

「でしょでしょ!? 私も初めて知ったとき、すっごい驚いたもん」

 

「なんというか、あれだね。

 道が音楽を奏でるなんて、なんか童話の世界みたいな話だよね」

 

「……なるほど。明菜はそう考えるんだね?」

 

 

 そう言ったひなのさんは思案するかのように考え込んでしまった。なにか琴線に触れることでもあったのだろうか。でも、ひなのさんは伝えるべきことは絶対に話す人だと知っている。

 だからこそ、取りうる行動は別であった。

 

「……あ。ひなのさんのかき氷アイスも食べていいかな?」

 

「……え、うん。良いよ、ほら……あーん」

 

「――んっ」

 

 私はひなのさんからかき氷部分だけ一口貰う。口の中にはコーヒーの味が広がる割と慣れ親しんだ味だ。

 

 しかし、私はそのまま飲み込むことなく。氷がまだ原型を保っている間に。口をすぼめるようにして開けて――

 

「……ふーっ」

 

「……ひゃんっ! つめたっ!

 明菜、え、え……今、なにしたの?」

 

 ――ひなのさんの耳元にそっと息を吹きかけた。すると馴染みのない冷たい風がひなのさんの耳へと伝わっていく。単純に耳に息を吹きかけられるよりも、もっと不思議な感覚を感じたことだろう。

 

「……び、びっくりしたー……。冷たこそばゆい感じの吐息が耳に来たら……驚くよ、ほんと」

 

「……気持ち良くなかった?」

 

「……。それ、言わなきゃダメ?」

 

「今のひなのさんの反応で分かったからいいや。今度は氷を口に含んでやってあげるね?」

 

「もー! …………お願い」

 

 

 ……冷たい息を吹きかけられるの、ホントに好きな感じだったんだね、ひなのさん。

 

 

 

 *

 

「ひなのさん。シャワーはどうする? 有料なんだけど……」

 

「浴びれるなら浴びておきたいかも。

 でも、海とは違って潮感はゼロだから、ウェットティッシュとかで汗を拭くくらいでも割となんとかなりそうね。

 一応、足の洗い場は無料なんでしょ?」

 

「確かに、来るときに見たね」

 

 テントを片付けて。水着から着替える前にシャワーを浴びるかどうするのかをひなのさんに相談する。

 海だったら間違いなく浴びていただろうが、湖でべたつく感じが無いので、ちょっと有料シャワーに勿体なさを感じてしまう。

 

 別に浮き輪レンタルとかやってるし、今日1日で見れば誤差くらいの金額ではあるんだけど、無理に使わなくても良い場面と認識してしまうと、ちょっと迷いが生じてしまうのだ。

 

「……あ。……っ」

 

 ひなのさんが、何かを思いついたかと思ったら。二の句が続かず、そのまま顔を赤くして硬直してしまう。今日だけで、ひなのさんは何回熟れたのだろう。完熟だ。

 

「……ひなのさん、何を思いついたの?」

 

 私が努めて優しく問いかければ。

 ひなのさんは、逡巡はしたものの、決心して彼女のワインレッドの瞳を私の目に真っすぐ向け、こう言い放った。

 

「……提案なんだけどさ。

 明菜……一緒にシャワー浴びようか。……そうすれば、1人分の料金、じゃん?」

 

「……ひなのさん。

 今のは、グッときたし……良いよ。一緒にシャワー浴びようか」

 

 

 もちろん、私たちは水着を着たままシャワーを浴びたけれども。

 2人で1つのシャワーのお湯を分け合って。狭いシャワールームで一緒に持ってきたシャンプーやボディーソープなどで洗ったのは――今日の最後の想い出となったのであった。

 

 その個室のシャワールームで私たちは一言も会話することなく。

 ――ただ、お湯の流れる音だけが辺りに響き続けていた。

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