憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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自分の「好き」を「好き」になってくれる人達がいて、心から喜びを感じております。
そろそろ原作に突入したい……!!!


4.ユメの終わり

 

 

 

「……ははは。やっぱり、大人しくアビドスから去るべきだったのかなぁ」

 

 マンションの自室にて。斑目は日記を書いている。

 顔の片方を歪める斑目から、涙が零れ落ちる。

 もはやそれが、悲しさからくるものなのか。『肩からの出血』による痛みからなのか分からない。

 腕を伝い、ノートに落ちる血を気にしないまま、斑目は日記に記した。

 

 アビドス生徒会への謝罪と、自分の選択の過ちを。

 

 後悔しても時間は戻らない。それは斑目も分かっている。余計に苦しくなるだけだということも。

 分かっているが、だとしても後悔せずにはいられなかった。

 

 

「ユメ先輩っ……! うぁっ……! ああああああああああッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前中のことだ。

 ユメ先輩とホシノと寝床を共にして以降、斑目は自宅でも眠れるようになった。そのため普通に通学し、帰宅後も頑張ってトレーニングを行う日々を過ごしていた。

 だが不眠が当たり前だった頃に蓄積された疲れは残っていた。その状態で激しく身体を動かせば、当然不調が起きるわけで。

 

 

「……クソ雑魚でごめんなさい。けほっ」

 

「ちょっとおでこ触るね……。ありゃりゃ、酷い熱だよ」

 

 

 保健室のベッド隣の椅子に座るユメが、横になる斑目の額に手を置いて苦笑する。

 頬が上気して赤く染まる斑目は、いつもより速い呼吸だ。しかしその表情は、気持ち良さそうにしている。

 

 

「あ。ユメ先輩の手、冷たくて気持ち良いです……」

 

「本当? じゃあ、ずっとしててあげようかな〜」

 

「普通に冷却シートを付けてください」

 

「おかえりホシノちゃん。お水、ありがとうね」

 

 

 むすっとしたホシノが、ユメが座る椅子の隣に立つ。

 片手には冷却シートと錠剤。逆の手にはペットボトルに入った水があった。

 

 

「ほら、飲んで」

 

「ありがとう小鳥遊さん……んぐんぐ」

 

 

 斑目は錠剤を口に含み、水で体内に流し込む。その間にホシノは冷却シートの保護シールを剥がし、彼の額に貼った。

 

 

「これで寝てれば治るでしょ。今日はここで大人しく寝てて。分かった?」

 

「はい……」

 

「よし。じゃあユメ先輩、生徒会室に戻りますよ」

 

 

 斑目がペットボトルのキャップを閉めたのを確認して、ホシノは彼の胸を押してベッドに寝かせ、布団を掛ける。

 その時、布団を伸ばすことを忘れない。こういうところにホシノの優しさが現れている。

 斑目は掛けられた布団の下にある口元を綻ばせた。

 

 

「えぇぇぇ。その前にユウくんのお粥を作らせてよ〜」

 

「……材料は?」

 

「……ないです」

 

「これから買いに行くんですか!? 出費はなるべく抑えてくださいよ! ただでさえ多額の借金があるのに!」

 

「で、でもでも! 栄養の補給は大事でしょ? ユウくんはどう? 食べたいよね?」

 

 

 縋るような視線を向けられ、斑目は苦笑する。普通、こっちが食べさせて下さいと縋るんだよなと。

 ユメの問いだが、斑目の答えは勿論『はい』だ。病気と戦った身体に褒美をやりたいし、彼女の料理は美味しい。

 しかし、ホシノが言った通りこの学校は多額の借金がある。その返済に充てられる金を、自分のために使わせるのは気が引けた。

 

 

「正直食べたいですけど、借金の返済に充ててください」

 

「食べたいんだね! 分かった! 私が美味しいお粥を作ってあげる!」

  

「後半聞いてました……? 本当にいいんですか?」

 

 

 ユメはいそいそと準備を始める。もう斑目の声は聞こえてないようだ。

 そんな先輩を見て、ホシノは眉根を揉む。

 

 

「ユメ先輩、前も言いましたけど、あなたは最後の生徒会長なんですよ!? もっと責任を持って……!!」

 

「あわわわ。ごめんね、ホシノちゃん! ホシノちゃんにも美味しいお粥食べさせてあげるから、許してーー!!!」

 

 

 そう言って、わたわたと保健室を出て行った。

 ホシノは諦めたように溜息を吐く。すると、ドドド!と音と共に再びユメが保健室に帰ってきた。

 何か伝え忘れたことがあったようだ。横になる斑目の額に手を置き、撫でながら彼女は言う。

 

 

 

「ユウくんも。美味しいお粥作ってあげるから、いい子で寝て待ってるんだよ!!」

 

 

「……はいっ。ユメ先輩っ」

 

 

 

 斑目は普段ぐらいの声量は出せなかったが、ユメにとっては満足のいく答えだったようだ。

 うん! と頷いて、彼女は手を振って笑顔で保健室から去った。

 

 

「ユメ先輩のお粥、楽しみだな……」

 

 

 きっと自分が目覚めるのは、匂いに釣られてだろう。目を開けたら、満面の笑みを浮かべたユメが、スプーンの刺さったお粥を両手で持って立っている。

 そんな近い未来に思いを馳せながら、斑目は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユメは二度と帰ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃそうだよなぁ……! こうなるよなぁ……っ」

 

 

 日記を閉じて、斑目は自分の負傷した肩を見る。ニヒルな笑みを浮かべるが、まだ涙が流れるためか弱々しい印象だった。

 

 これはホシノによって付けられた傷だ。

 

 斑目が目を覚ましてから数分後、ホシノが保健室に現れた。その瞳は輝きを失い、手にはユメの盾が握られていた。

 そして身を起こしている斑目と目が合った瞬間、ホシノは彼を糾弾する。そこで斑目も、ユメの死を知った。

 

 茫然としていると、いつの間にか斑目は校庭に出ていた。

 

 

「ユメ先輩を返せッ!!」

「お前なんか……お前なんか仲間じゃない!!」

「ここから出ていけ! 二度と私の前に現れるなッ!!」

 

 

 背後からはホシノの叫びが聞こえる。

 その度に彼女の心が悲鳴を上げている気がした。

 それが嫌で。こんな形で終わりたくなくて、斑目は振り返る。

 

 応答は銃声だった。

 

 肩を撃たれ、つい前のめりになる。痛みに顔を顰めながらホシノを見ると、顔を引き攣らせてこちらを見ていた。

 銃を持つ手は震え、何かを恐れているようにも捉えられる。

 

 

「小鳥遊さんは、優しいなぁ……」

 

 

 ポツリと呟き、斑目はアビドス高等学校を去った。

 ホシノは追撃することなく、ただ小さくなっていく後ろ姿を見ることしか出来ない。

 完全に彼の存在が視界から消えた後、彼女は崩れるように両膝を地面に付けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

「……もしもし。斑目です。黒服さん」

 

 

 

 

「例の話。受けさせて下さい」

 

 

 





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