プロローグに話数かかり過ぎだろ! 書きたい場面が多過ぎる!
あと4話以内に、斑目くんのターン、斑目くん(偽)のターンを終わらせて、本編に入りたいなぁ……!!!
小鳥遊ホシノは一人になっても、アビドス高等学校の廃校を阻止するために尽力していた。
というか、彼女しかそれを出来る者が学校には残っていない。
幸い、ホシノはユメの手伝いをすることが多かった。ユメがマイペースなのもあり、自主的に行うことが殆どであったが。
「……よし。終わった」
故に、ホシノが完全にユメの引き継ぎを終える期間はそう長くはなかった。
当然だ。近くでずっと、その仕事を見て経験していたのだから。それを紙に纏め出来上がったマニュアルを見て、深い息を吐く。
ユメがいた時は、自主的に手伝いをする必要があったことを不満に思っていたが、こんな形で役立つことになるとは思わなかった。
「まだやってないのは……カイザーローンへの支払いだけ」
既に行った業務には、段落の先頭に小さくチェックを付けている。こうした方が、まだ見ぬ後輩達も見やすいだろうと思ったためだ。
その中にある、『カイザーローンへの支払い』だけチェックがなかった。
この学校が、アビドスに広がる砂漠化を止めるために借金を行った、悪徳金融業者である。
「……はぁ」
とはいえ、すぐに行うことになるだろう。
カレンダーを見ると、支払い日は一週間後に迫っていた。それまでに稼げるだけ稼いでおこうと、ホシノは腰を上げた。そしてある方向を見る。
「斑目。私、外に行って稼いでくるから」
校内の掃除でもして待ってて、と続けようとした。
だがいるべき同級生の席には誰もいない。ホシノは小さく口を開けたまま停止し、そして、はっ……と自嘲した。
「そうだった。斑目、退学したんだった」
私がそうしたんだ。ユメ先輩が死んだ後に。
斑目も辛かった筈だ。混乱もしていただろう。
保健室で寝ていたら、ユメ先輩の死を伝えられて、その責任を負わされて、学校を追い出された。
「……行こう。お金を稼ぎに」
これだけのことをやらかし、どの面下げて彼の前に立てるものか。
謝りたい思いを邪魔する罪悪感で、ホシノはまだ斑目の自宅に行けていない。
否、行けるわけがなかった。
「ああ……イライラする」
自分に対する怒りが湧き出てくる。斑目に酷い仕打ちをした過去の自分、勇気を出して謝りに行けない今の自分。
ホシノは無自覚に足音を大きくさせ、生徒会室から出て行くのだった。
一人学校に通い、一人で業務をこなし、一人でお金を稼ぐ。
そんな気が遠くなるような日常を過ごしたホシノに、カイザーローンへの支払日が訪れる。
「……来た」
窓の外を見ていると、一台の車がこちらに走ってきているのを確認した。ホシノは稼いだ現金を持って、校舎を出る。
スーツを着たロボットはホシノを見つけると、笑顔のアイコンを浮かべ、深々と頭を下げた。
「お金、これでいい?」
それが癪に触り、ホシノはぶっきらぼうに現金を差し出す。ロボットは顔を上げて、嬉しそうにそれを受け取ると数え始めた。
「はい。確認いたしました! カイザーローンとお取引頂き、ありがとうございます、来月も宜しくお願いいたします」
「因みに、残りの借金はいくら?」
大して期待もせず聞いてみる。
一人で稼いだお金だ。利息分で消えてしまうだろう。
だから、ホシノは次のロボットの発言が信じられなかった。
「4億8117万5千円となっております」
「……は?」
どういうことだ、とホシノは思った。
ユメが生きていた時の借金額は、確か9億6235万円だったと記憶している。それで利息分しか払えず、借金額は減っていない筈だった。
なのにどうだ。『半分』も減っているではないか。
「おい」
「お、お客様!!?」
だからホシノは、自身の愛銃を目の前のロボットに突き付けた。
何か自分の知らないところで、アビドスを陥れようとしている奴がいる。そいつが借金を半分負担し、それを盾にこちらを言いなりにしようとしているのではないかと。
「この金はどこからだ? 言え!!」
「も、申し訳ございません。守秘義務というものがありまして」
狼狽えるロボットの声が、発砲音に掻き消される。
音を立てて地面の砂が舞い、そこに無数の弾痕が生じた。ロボットの足元に向けて、ホシノが撃ったのだ。
「ひっ!!?」
「今度は当てるぞ……ッ!」
歯を剥き出しにし、ロボットを睨みつけるホシノ。
小さい背丈だが、その迫力は凄まじい。非常に獰猛。
まるで肉食動物を目の前にしているようで、ロボットは死を待つ獲物の如く身体を震わすことしか出来なかった。
「……っ!!」
それを見て、フラッシュバックする。
『ユメ先輩を返せッ!!』
『お前なんか……お前なんか仲間じゃない!!』
『ここから出ていけ! 二度と私の前に現れるなッ!!』
大切な仲間だった斑目への、自身の発言。
「あ……っ」
手が震え、持っている凶器が音を鳴らす。音の出所を視界に収めてしまい、その後の行動も思い出される。
振り返った斑目の肩に、銃弾を撃ち込んだ。
顔を顰め、悲しそうに歪められた彼の顔。
遠ざかっていく、その身体。
「いやっ……! 私っ、そんな……!!!」
ホシノは震える全身を抑えようと、自分の身を抱く。
彼女の異変に気付き、カイザーローンのロボットは慌てて車に乗り込み、その場から逃げ去った。
徐々に遠ざかっていく車が、全く違うのに、最後に見た斑目と重なった。
「っごめん……!」
許しを乞うように漏れ出た、ホシノのか細い声はすぐに消え去った。
『……おや?』
地下研究所にて。
黒服は自身の端末を見て、珍しい物を見たような声を上げる。
そこにはホシノの番号が表示されていた。
『まさか、貴女から連絡をくれるとは思いませんでした。ホシノさん。何かご用ですか?』
『しらばっくれるな。今度は何を企んでる? 誰が借金を負担してくれなんて言った?』
『クククッ。早々に私だと気付くあたり、流石ですね』
『当たり前だ。お前以外に、こんなこと仕出かす奴を私は知らない』
端末越しに感じるホシノの怒り。だがその声からは、少し疲れが見える。だからか、黒服の余裕は消えなかった。
『結論から言いましょう。その通りです。私が負担させて頂きました』
『今すぐ止めろ。お前に借りなんて作りたくないっ』
『おやおや、嫌われたものですね』
しかし、と黒服は笑う。
『本当にそれでいいのですか?』
『……何?』
ここで初めて、ホシノの声に戸惑いが混ざった。黒服は気にせず続ける。
『確かに私が借金を負担しました。ですがこれは、アビドスを復興させたいと願う生徒にお願いをされましてね。その生徒に代わって、私が出したわけです』
『……その子に何を要求した。お前がただで、そんなことをする訳がないだろ』
『ククッ……貴女が想像している通りですよ。少々、私達に協力をお願いしただけです』
『っ……!』
ホシノはその協力者の生徒を叱ってやりたかった。
アビドスを想ってくれるのは嬉しい。それは本当だ。
しかし、どうしてこのような男に身を差し出した。どうして他校のためにそこまで。どうして仲間は止めなかった。
……待て。その生徒にとって、アビドスは本当に他校なのか?
脳裏に浮かぶのは、この学校から去った一人の男子生徒。
『その子は誰だ! どこの学生だ!? っ……アビドスか!!?』
『守秘義務がありますので、お答えは出来ません』
ギリッと端末越しに、歯を強く噛む音が聞こえる。余程強く噛んでいるようだ。ホシノが鬼のような形相で、端末を睨みつけていることが黒服には容易に想像出来た。
『落ち着いてください、ホシノさん。アビドスではありません。これは確実に言えます』
『っ……信じて、いいんだな』
『ククッ……ええ。その生徒はアビドスに所属していない。自分は無所属だと本人も言っていました』
小さく、よかった……と呟くホシノの声が聞こえる。詰まったものが吐き出されたような、そんな声だった。
これで斑目まで失ったら、私は……。とホシノは口に出しそうになり、唇を結ぶ。
まだ黒服との通話は切れていない。興味を持たれたら面倒だし、もしかしたら斑目にもその手が迫るかもしれない。
『……そう、分かった。話は終わり』
返答を待たずにホシノは通話を切る。
取り敢えず、やることが増えた。
借金を早く返済し、名も知らぬ黒服に協力した生徒を奪還する。
無所属だと言っていたので、居場所がないと言うのなら、アビドスで面倒を見よう。ホシノはそう誓った。
「もう少しだけ待ってて。必ず助けるから」
アビドスの復興。そして斑目に戻って来てもらうこと。最後にアビドスのために黒服といる、無所属の生徒の奪還。
これらの解決には、自分だけの力じゃ足りない。後輩達の力が必要だ。
小鳥遊ホシノは望む未来へ向けて、一歩足を踏み出したのだった。
『ええ。アビドスではありませんよ、ユウさんは。貴女が追い出したのですから……ククッ』
端末を見つめ、小さく笑う黒服。そして視線を違う場所に移した。
そこには斑目がいる。
〜〜〜っ!!!! っっっ!!!!
斑目は、防音がなされた部屋で一人、手足と首に拘束具を嵌められ、それを揺らしながら苦痛に満ちた表情で叫んでいた。
地上ではホシノが一歩踏み出した。望む未来へと。
そして地下では、斑目が一歩踏み出している……人間ではないナニカへとなるために。人間を超えた、その先へと。
ホシノの中で、『ユウくん=謎の無所属の生徒』という構図は出来上がっていません。ホシノはユウくんを一時の感情で追い出しましたが、再会出来たら仲直りすることを望む程、彼に対して仲間意識を持っています。
酷いことをしましたが、ユウくんも同様の気持ちを自分達に抱いていると、ホシノは考えています。実際その通りなんで、相思相愛ですね。
なのでユウくんなら、黒服に対し必ずアビドスに所属していたことは言う。決して無所属なんて言わない。3人の思い出を無かったことになんかしない。例え発砲されたとしても、嫌いになるのは撃ったホシノ自身だけ。だからアビドスに所属していたことは言うだろう。
そうホシノは思ってる訳です。まあ、無意識に可能性から目を逸らしてる部分もあるかもですが……。
こうしてホシノは未来に向けて、一歩足を踏み出しました。
さて、ユウくんはどうなんでしょう。次の話はそれになります。
では、また次回。