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今後もよろしくお願いいたします!!
パヴァーヌ編クリアしました。熱かったです。
やっぱりモモイとネル先輩いい……!!! いいよぉ……!!!!
そして今、エデン条約2章に突入してまァす!!!
このままガンガンいこうぜ!
パソコンに映る画面には、その場から逃げようとした斑目が足を止め、黒服がいる方向に振り返る姿が映されている。
黒服が発した、アビドスの援助が可能だという趣旨に対する反応だ。
声が届かないことは理解している。だが、画面の前の二人は叫ばずにはいられなかった。
「ユウくん!? そんな怪しい人の話を聞いちゃダメだよぉ!」
「そうですよ斑目! そいつは……!」
ホシノは言いかけて、口を紡ぐ。
ここにはユメもいるのだ。自分も既にその怪しい人の話を聞いていること、そしてその内容を知られたくなかった。
だから、ホシノにはこれから黒服が告げる内容が分かる。
実際、二人の間で行われる会話は予想通りのものであった。
画面の中の斑目が、声を震わせて言う。
『……実験台に、なれということですか』
やっぱりだ。
ギリ……と静かに、だが強くホシノは歯を噛み締める。だがそれは次第に弱まった。
それは画面の中の斑目が原因である。
『受けるメリットは、アビドスの借金を減らせること。小鳥遊さん、ユメ先輩の隣に立てること』
『それに仲間外れではなくなりますね。貴方もヘイローを持てますよ』
『黙ってください。デメリットは……死ぬ。もしくは廃人に、なること』
そこまで、気にしていたのか。
ユメは悲しそうに目尻を落とし、ホシノは呼吸を忘れる。
斑目は最初の選択肢にあった、逃走という手段を忘れていた。寧ろ黒服の提案を受けるか悩んでいる様子を見せている。
受ければ自分の今後がどうなるか分からないというのに。
「っ何を悩んでるですか、早くそこから逃げてください斑目! 命より大事なことがありますか!?」
「そ、そうだよ! ユウくんが学校からいなくなっちゃうなら、借金なんて減らないでいい!!」
静かな視聴覚室に二人の声が響く。
画面の中の斑目は黒服に対し、NOを突き付けない。
沈黙の時間が長くなればなる程、YESと答えるのではないかという不安が高まっていく。
だから画面の中の斑目が、涙を溢しながら発した言葉は、文字通りユメとホシノの身体を脱力させた。
『でもっ、まだ、3人で過ごしたいっ……!!』
「っ……ふぅ」
「はうぅ……! よかったぁ」
体重を支えたからか、二つのキャスター付きの椅子が音を鳴らす。
だが安心をするにはまだ早い。
『……すぐには決められないようですね。であるならば、期間を定めましょう』
『っ。ずずっ……期間?』
『一ヶ月。最低でもこれを過ぎたら、答えを聞かせてもらいます。因みに、同じような話を別の方にもしています。もし彼女が一ヶ月経つより早く先に承諾したら、この話はなかったことになりますので、ご注意を』
それを聞いた斑目の瞳が揺れる。
彼の様子を見たホシノは焦りからか、ユメに聞こえないように小さく舌を打った。
それは今、黒服の話から出てきた人物が彼女本人であるためだ。
もちろん自分は受ける気がない。しかし自分のせいで、斑目から冷静な判断を奪ってしまう可能性もあった。
その手には乗らない。
黒服の姿が見えなくなった後、彼はそう呟いているが安心して見られるような姿ではなかった。
(そもそも、これはいつの記録なんでしょうか……)
ホシノは思案する。
これが数ヶ月後なら良い、数日後でもまだ良い。猶予がある。
斑目の意識を少しでも変えられるよう、会話を試みたり、登下校を共に行い黒服との接触から斑目を守ることができるためだ。
だが既に起こった後。そうであってほしくはない。
アビドスの借金を減らせる。自分達と同等の身体能力や頑丈さを得れる可能性があると知った状態となるとだ。
説得は可能かもしれない。
だが借金の返済生活が続き、ふとした拍子に後悔させてしまうのではないか。斑目に、自己嫌悪をさせてしまうのではないか。
やっぱり受ければよかったと。
そんな彼の姿を想像するだけでも、心が締め付けられる。
ふと、ユメ先輩の声が聞こえた。戸惑うような、そんな様子だ。
「え……どういうことだろ……」
「ユメ先輩?」
「あ、ホシノちゃん。見て……今、私達が映ってるんだけど」
ホシノはユメの指先を目で追う。
そこには自分達と斑目の一幕が映されていた。考え事と並行して耳で聞いていたため、流れは理解している。
斑目の異変に気付いた自分達によって、彼は思い止まることが出来たようだ。そして今、ユメの提案で保健室のベッドにて川の字になっている。
そんな平和な光景だ。
羞恥心から言われるまで見ることは出来なかったが、特に戸惑うような要素は見られない。
(でも、素直なユメ先輩があんな反応をしたんだ。絶対何かある筈……)
ベッドに眠る自分達、仕切りのカーテン、置かれている体重計と範囲を広げていく。そしてついに、それを見つけた。
壁にあるカレンダー。丸を付けられている日付は……今日だ。
「これ、は……」
「どういうことかな……? 時刻は同じなのに、私達の状況と全く違う」
「っそりゃそうですよ……」
ホシノはユメの方に顔を向ける。
「もし先輩がDVDを拾ってなかったら、私達はまだ生徒会室にいた筈です。そこで斑目といつものように会い、その異変に気付いて、この画面の通りになっていた」
「え。ほ、ホシノちゃん……それって」
ホシノの発言を咀嚼し、ユメは身体を震わした。そのことに気付いてしまったのだ。
ホシノは溜息を吐き、言った。
「……はい。未来、変えちゃってます。私達」
「ええ!?」
ユメが大きな声で叫ぶ。
もしかして自分は、とてつもないことをやらかしてしまったのではないか。そう思っているようだ。
「そ、それ大丈夫なのかなぁ……!?」
狼狽えるユメ。確かに、未来を変えるというスケールの大きいことをした張本人が自分だと考えると、そのような反応をするのも仕方がなかった。
対して、ホシノは違う。冷静に今後のことを考えていた。
「落ち着いてください。そもそも今私達が見ている未来に、こんなDVDはありませんでした。特別な状況なんです、私達が生きている今は。未来を変えたからといって、私達がこの世界ごと消えるなんてことは起きないでしょう」
「う、うん。確かにそう言われるとそうかも……?」
「それを踏まえた上で、私はこの動画を最後まで見るべきだと思います。そして阻止するんです、あの大人と斑目が再び接触することを。あいつは、必ずまた現れる」
ユメは瞬きをして、ホシノを見る。
彼女が今語ったのは推測だ。だが何故だろう。
確信をしているように思えた。ユメは恐る恐る、といった感じでホシノに顔を寄せる。
「もしかしてホシノちゃん……あの人のこと知ってるの? 何か確信めいた言い方だったし、身に覚えでもあるのかなぁって思ったんだけど……」
「っそれは……」
顔を背けるも、真正面からユメに見つめられていることが分かった。
きっと自分が認めるまで、彼女はこれを止めない。時間が経つごとにその瞳に水気が増していくのもあり、ホシノが折れた。
「ごめんなさい……私も、あの大人……黒服に同じような提案を受けていました。今迄黙ってたのは、受けるつもりがなかったのと、余計な心配を掛けたくなくて……」
「うぅ。私ってそんなに頼りないかなぁ……?」
「正直、頼れるかと問われたら答えるのが難しいです……」
「ひぃん」
ぶわっと瞳の水気が増し、ユメの顔に滝が出来上がる。
先輩として悩みを聞いてあげたいものの、後輩二人が話してくれてなかったことが判明し、更にその片方にやんわりと頼りないと言われてしまったのだ。
ユメにとっては踏んだり蹴ったりだろう。
でも、とホシノはそう続けた。
「大切だと思っています。私は、ユメ先輩を大人の策略に巻き込みたくありませんでした……貴女を心配させたくありませんでした。だから黙ってたんです。きっと斑目も、そうだと思います」
「ホシノちゃん……それでも私は、頼って欲しいよ。悪い方向に物事が行って、何も知らないまま二人がいなくなるのは……嫌だよぅ」
「ユメ先輩……」
ユメは泣きながらホシノを抱き締める。
いつもなら抵抗するホシノだったが、ズビズビと鼻を鳴らすユメに対してはそれが出来ず、素直に受け入れた。
何も知らぬまま後輩達が姿を消した未来を想像したからか、中々ユメは泣き止まない。
ホシノは抱き締められたまま言う。
「分かりました、分かりましたよ……。今度からは連絡します。だから泣き止んでください、ユメ先輩」
「……本当? 本当の本当に?」
ホシノが頷くと、ユメは嬉しそうにはにかんだ。
照れ臭くなり、ホシノは視線をパソコンの画面に戻す。
そこに映されているのは保健室だった。
だが日を跨いでることが分かる。
「斑目が一人で寝ていますね」
「あ、私もいる。看病しているのかな?」
何故なら、ベッドには斑目が一人で寝ていて、ユメが近くの椅子に座って様子を見ていたからだ。
苦しそうに息をしていることや、いつもと比べて少し赤くなっている顔から、彼は発熱を起こしたのだと分かる。
続いてホシノが薬と水を持って入ってきた。
斑目の服薬が終わると、ユメが突然お粥をご馳走したいと言い出す。
申し訳なさそうにしつつも、斑目は乗り気だった。目尻を吊り上げるホシノから、逃げるようにユメは保健室を去っていく。
画面で一連の流れを見たホシノは、溜息を吐いた。
「ユメ先輩?」
「い、今の私に言われても……!」
「でもこの状況になったら、同じことをしますよね?」
「あ、あはは……はい」
苦笑するユメに、ホシノは腕を組む。
優しいことは良いことだが、過度な世話焼きで出費を増やすのは良いこととは言えない。
それについて注意しようと口を開くも、やめておいた。
(まぁ……私のことです。ユメ先輩が帰ってきたら注意するでしょう、それをこっちのユメ先輩にも聞かせればいいですかね)
画面の中、そして現実でも後輩に注意されるユメの気持ちを考え、ホシノはこちらでの注意はしないことにした。
その分、画面の中の自分がしてくれるだろう。そう思ったためだ。
ユメが明らかに一人分ではない量の食材を買ってきて、それを自分が叱り、斑目がベッドから小さな声で宥める。
そして三人で、量が多いお粥を分け合う。そんな未来が鮮明に思い浮かんだ。
だから、夢にも思わなかった。
『ユメ先輩を返せッ!!』
『お前なんか……お前なんか仲間じゃない!!』
『ここから出ていけ! 二度と私の前に現れるなッ!!』
斑目に対して、罵声と銃弾を放つ自分の姿など。
そんな未来が確かにあったのだと、思わなかったのだ……。