憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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これからも性癖に従い、文字を連ねられたらと思います。
今後とも、よろしくお願い致します。

では、どうぞ。



4.追いついた『顔無し』

 

 

 先生がアビドスに出張してから数日が経っていた。

 その間、『顔無し(ノーネーム)』は自分が出来る仕事を行い、先生の手が必要なものは彼女の机に積んでいく。

 高さを増やしていくそれに、また先生がゾンビになる未来が簡単に予想でき溜息を吐いた。

 

 

「こんにちは、先生……って、『顔無し』しかいないの? 先生は?」

 

「出張中。その証拠に、書類の山は高くなるばかりだ」

 

 

 『顔無し』が親指で差す先生のいない席と、その前にある机に置かれた書類の量にユウカは顔を引き攣らせる。

 想像通りの反応に、『顔無し』は頷いた。

 

 

「引く量だろ? 先生がいないから処理出来ないんだよ。俺達に決裁権与えられたら、また別なんだろうけどな」

 

「そうね……。今度、先生にマニュアルを作るように提案しようかしら。パターンさえ分かれば、私達にも出来ることはあるだろうし」

 

 

 部屋に入ってきたユウカは『顔無し』の横に立つ。離れたところより、近くで話し合った方がやはり聞きやすい。

 『顔無し』は、ユウカの意見に賛同するように頷いてから、口を開いた。

 

 

「それで人員も増えてくれれば、さらに良いんだけどな。今のところ現実は、シャーレに入部を希望する生徒は0らしい」

 

 

 マニュアルが作られたとしても、今の人員と仕事量は釣り合わない。正直なところ、もう少しだけでもいいから欲しい。

 頭を悩ます『顔無し』に、ユウカは得意げに笑って見せた。

 

 

「ふふん。聞いて驚きなさい。私の計算上、近々その数値に変化が起きるわ」

 

「ほー……その根拠は?」

 

「出張先の生徒が、先生に影響されて入部を希望するのよ! 先生なら間違いなくやってくれる筈だわ!」

 

 

 計算と言えるのかそれは? と思ったが、口に出すのは野暮なので黙っておいた。

 しかし人手が増えるとはいえ、それがアビドス高等学校の者達となると『顔無し』は複雑な気持ちだ。

 この身体であるために接触は控え、遠くから『出来る限りのサポート』はしてきた。なのにその地雷自体が迫ってくるなんて、笑えない。

 

 

「それで? 先生はどこに出張を?」

 

 

 ユウカに話を振られ、ナーバスになっていた頭を切り替える。

 

 

「……アビドスだとさ」

 

「えっ」

 

「どうした」

 

 

 ユウカが身体を硬直させた。何か問題があるのだろうか。

 

 

「そこ数年前に砂漠化してるの……先生、地図、持って行ったわよね?」

 

「……出るところ見てないから分からないけど、持って行ったんじゃないか? 流石に地図を忘れるなんてミス、するわけないだろ」

 

 初めて行く土地に手ぶらで行くなんてことは、子供ならまだしも大人ではしないだろう。必ず道を確認する手段は持って行く筈だ。

 そうじゃないの……とユウカは頭を振った。深刻なその表情に、『顔無し』は嫌な予感を抱く。

 

 

 

「アビドスの地図……更新されてないのよ。砂漠化する前の地図から」

 

「……」

 

「道は砂で埋もれて、建物は荒廃してなくなってるかも……そんな地区で、昔の地図が役立つと思う?」

 

「いいや、ただの紙切れだな」

 

 

 二人の声は自然と小さくなっていく。

 

 

「因みに、先生が出たのは?」

 

「……数日前だ」

 

「……アビドスって広いんだって。街のど真ん中で道に迷って遭難する人が出るって話も聞いたことあるわ」

 

「ははは。先生もそうなってるかもしれないってことね……」

 

 

 沈黙が場を支配する。

 

 

「行くしかないな」

 

 

 地雷云々言ってる場合ではないようだ。

 『顔無し』は機敏な動作で部室を出て、先生がいるアビドスへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの仮面と動きやすい服装の上に、身体を覆える大きな白い布を頭から被ってから、首の周りに紐を巻いて固定する。

 それがアビドスでの、『顔無し』の普段着だった。

 

 風で舞う砂や暑さから身を守るのと、少しでも正体をバレないようにするためである。

 

 シャーレからずっと走り続けてアビドス地区に侵入すると、ここに来るたびに立つ、建築物の屋上から景色を見下ろす。そこからアビドス高等学校が見えた。

 そこ目掛け、定期的に大金が入ったアタッシェケースを投げ入れるだけに留めていたが、遂に自分自身がその敷地に入る日が来たようだ。

 

 先生がアビドスに出張した以上、彼女はアビドス高等学校に向かうために既にこの地区の中に入っているだろう。

 アビドス高等学校からしてみれば、ここは地元だ。手を貸してもらえれば、先生の捜索も捗る筈だと『顔無し』は考えた。

 助けられて既に校内にいれば御の字である。

 

 だから『顔無し』は行き先をアビドス高等学校に定めた。

 

 

「複雑な心境だ……」

 

 

 その要因となった先生を恨む気持ちと、感謝する気持ちの相反した感情を『顔無し』は彼女に抱く。

 

 前者は自分の今迄の努力を無駄にしたため。

 後者は借金の返済のために大金を投げ続けているにも関わらず、アビドスの状況は変わっていないように思える。

 その理由を知れて、直接力になれる機会を得たからだ。

 

 

「……また豆粒が校門の前に集まってるな。あいつらも懲りないねェ」

 

 

 『顔無し』は校門前に群がる集団を目に留め、そう呟く。

 いつもなら、ここで見るだけに留めていた。あまり近付き過ぎるとアビドス側に見つかる可能性が高まるし、何しろ彼女達があんな集団に負けることはないと思っていたからである。

 

 実際『顔無し』の想像通り、アビドスはいつも群がる集団を退散させていた。

 しかしこう何度も攻められると、精神面でも肉体面でも弾薬も余裕がなくなっていくのではないだろうか。

 

 

「今迄で一番数が多いみたいだし、奴等にとってここが土壇場。攻め時ってところか?」

 

 

 消耗が続いている可能性もあるアビドス高等学校。それを畳み掛けると言わんばかりの集団。推測が現実味を帯びてきて、『顔無し』は静かに口を開いた。

 

 

「そう好きにはさせないけどな」

 

 

 そんな状況に彼は闘志を燃やす。地上に降りて足場の悪い砂漠を一気に駆けていくのだった。

 

 

 

 




 

 先生はアビドス高等学校にある、アビドス廃校対策委員会の部室にて戦闘の指揮を行っていた。隣にはそこの一年生である、アヤネがドローンを操作して、外で戦う委員会メンバーを支援していた。


『! 皆さん! 何者かが凄いスピードで近付いて来ています!』

『うわ本当だ! 何あれ列車!?』


 窓から見えた光景に、アヤネと先生が声を上げた。
 外で戦闘を行う三年生のホシノ、二年生のシロコとノノミ、一年生のセリカの四人もその光景を視界に入れる。


「うへぇ……おじさん達、カタカタヘルメット団で精一杯なんだけどな〜」

「冗談じゃないわよ! この状況で、さらにイレギュラーなんて……!!」


 ホシノとセリカはあまり喜ばしく思っていないようだ。
 前者は面倒臭そうに、後者は歯を見せてあからさまな不機嫌を表す。


「うわぁ〜。凄い砂埃、本当に列車みたいですね〜」

「ん。移動手段に良さそう」


 ノノミとシロコは自分の思ったままの感想を告げた。だが、ホシノ達と同じく警戒はしているようで、銃身を持つ手に力が入る。


「おい! 何だあれ!?」

「私達の仲間……じゃなさそうだな! 突っ込んでくる!!」

「何なんだ! 何なんだあいつ!?」

「誰? 誰なの!? 怖いよォ!!!」


 カタカタヘルメット団は何も知らないようで狼狽えている。
 自分達と同じだと知り、走ってくる人影が完全なイレギュラーなのだと、アビドスの面々は知覚した。


『ッ!! 跳びました!!!』


 ある程度離れた場所に、強風が吹いたような砂埃が立つ。それと同時に黒い影が飛来してきた。


「撃て撃て撃て撃て!!!!」


 ヘルメット団は狙いをイレギュラーに改める。
 アビドスの面々は不意打ちを行うことも可能だったが、得体の知れない敵と戦う可能性も踏まえ、弾の節約のために一先ず様子を見ることにした。
 

 ズザァァーッ!!!!!


 鋭角に飛び込んできたそれは、砂埃を立たせて辺り一面の視界を悪くする。すると、短い悲鳴と鈍い音が絶えず聞こえる状況が出来上がった。
 それが仲間の声であると分かったヘルメット団は、叫びながら銃器を乱射する。


(ヘルメット団だけを狙っている……?)


 自分達に被害がないことから、イレギュラーの目的を看破するホシノ。その場にいるメンバーに待機命令を出した。


「シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん。このまま待機命令〜。狙いは私達じゃないみたいだしねぇ。……でも、警戒は解かずにね」

『ん、了解』

『は〜い☆』

『分かったわ!』


 とはいえ、下手に動くのも得策ではない。音を出した者を片っ端から倒してるだけかもしれない。
 無理に動かず、仕掛けられたらカウンター。その方針でいくことにした。
 



 

(もう……この学校から誰も失わせない。私の可愛い後輩達に手を出した瞬間、銃弾を撃ち込んでやる)



 ホシノは唯一、『影の動きを捕捉している』。
 さらにシルエットで、後輩達の居場所も掴んでいた。

 委員会のメンバーが今の彼女の顔を見れば驚くだろう。
 その目は獣だ。獲物を視界に入れ、狙う獣のように吊り上がっていた。





 介入者(イレギュラー)の観察を続けながら、いつでも攻撃を仕掛けられるように、ホシノは戦闘態勢を取るのだった。

一つのイベントにつき、話数を使い過ぎ? 文字数とか内容を削った方がいい?

  • 使い過ぎ
  • 丁度良い
  • 寧ろ少ない!!
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