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今回はホシノの回想から始まります。平和な回です。
『ちょっとだけ』シリアスもあります!!
過去ホシノ可愛いですよね。今ホシノも可愛いですけど。
ショートカット好き。ロングも好き。
鋭い目好き。寝ぼけてるような柔らかい目好き。
小さい身体なのにクソ強いの好き!!!!!
アビドス高等学校の体育館で、目の前をいそいそと動き回る同級生と先輩に、ホシノは溜息を吐いた。
準備が終わったようで、体育館の中にマットを敷いて作られた大きな四角形が出来上がる。
「……斑目。本当にやるつもり?」
「勿論。小鳥遊さん、手加減はなしでお願い」
マットの上に立ち、こちらに身体を向ける斑目はどこで習ったのか分からない構えを見せた。
僕と組み手してほしい。
そう斑目に言われた時、ホシノは正気かと思った。
自慢ではないが、目の前の少年が100人同時に襲ってきたとしてもホシノは対処できる自信がある。
1人なら尚更だ。15秒以内に他に伏せることが出来るだろう。
「……ユメ先輩」
「ホシノちゃん、私も止めたんだよ? でもユウくん、『自分も戦えるようになりたい』って聞かないの。だから好きなようにやらせてあげようかな……って」
「……斑目を甘やかし過ぎです。全く」
気乗りしないまま、ホシノもマットの上に足を踏み入れ、四角形の中心に向かった。
「ユウくんもホシノちゃんも、頑張って!!」
「はい! 頑張ります!」
「はぁ……」
恐らくユメが手を振ったのだろう。斑目が数秒手を振り返した。
こんな緊張感のない中で戦うことを考えると、ホシノは肩が重くなるように感じた。
早く終わらせよう。
そう思ったホシノは、斑目に問い掛ける。
「勝利条件は?」
「え?」
「勝利条件。参ったって言わせたらとか、相手が気絶したらとか、あるでしょ?」
「あ……あはは」
……ああ。これは考えてなかったな。
口を開けてしばらく黙り、頭を掻いて苦笑する斑目に、ホシノは白けた目を向けた。きっと今、勝利条件を考えているのだろう。
ホシノの損なわれていく機嫌を感じ取ったのか、慌てたように指を立てて斑目は宣言した。
「じゃあ、相手をマットの上に倒して5秒キープしたら!」
「OK。じゃあいくよ。よーい、スタート」
「もう!?」
ホシノの開始宣言に驚きながらも、構える斑目。
そんな彼に対し、容赦なく一瞬で距離を詰めるホシノ。突然彼女が目の前に現れた斑目は、驚いて仰け反る体勢になってしまう。
「うわっ!? たぁっ……!」
「体幹弱……」
そんな隙だらけの獲物を見逃す筈が無く。
ホシノに服の背面を引っ張られ、背中からマットに倒れる斑目。
起き上がろうとする前に、両手を掴んで押さえつけられ、頭部から上半身までをホシノの身体に覆われて、身を起こすことが出来ない。
「んぐぐぐ! ん! んん!」
「1、2、3、4、5……はい。おしまい」
「ぷはっ……負けた。こんな簡単に」
身体を離して立ち上がるホシノと、大の字のまま動かず、マットに寝転ぶ斑目。
彼はホシノの拘束を斑目は全力で解こうとしていたのだ。
それによって自分が息が上がっているのに対し、顔から感じる微かに柔らかいホシノの胸からは、一定のリズムで鼓動が刻まれていた。
その格差は、気恥ずかしさより悔しさを斑目に抱かせる。
「ああ、もう……情けない」
「戦ったことないのに、私に勝てる方がおかしいよ。だから、そんなに気にしなくていいと思うけど」
「そうそう。ホシノちゃんは凄く強いんだから! そんなに気を落とさないで、ユウくん」
「ユメ先輩」
「?」
斑目を慰めようと彼に近付くユメを、ホシノが一歩離れたところから引き留めた。
ユメは不思議そうに首を傾げる。
ホシノが止めなければ、覗き込む形で斑目にスカートの中身を見せてしまうことに気付いてなかったようだ。
そんな彼女が、ポンと手を鳴らす。
「そうだ。じゃあ今度は、私が組み手の相手してあげよっか?」
「え? ユメ先輩が?」
まさかの提案に、起き上がった斑目が目を丸くさせる。
その反応に幼い子供のように、ユメは頬を膨らませた。
「あ、ユウくん! その顔失礼だな〜。私だってホシノちゃん程じゃないけど、強いんだぞー?」
そう言ってマットの上に足を踏み入れると、ユメは斑目にいつもの笑顔を見せた。
「さ。かかっておいで、ユウくん。私が胸を貸してあげる」
「えっと……それじゃ、遠慮なく」
戸惑いながらも、斑目はユメに掴みかかる。
大きな胸に触ってしまわないよう、肩や腕を捕えて倒そうとした。
「よっ。ほいっ。おっとと」
「……!」
だが全て捌かれる。運良く掴んでも、簡単に外されてしまった。
斑目も本気になるが、それを何度も繰り返され、体力は徐々に減っていく。
「うあっ……!?」
そして掴もうとした時、遂に足がグラついた。流されるままに、身体は重量に従いマットに吸い込まれる。
顔面と腹に鈍い痛みがくるのを覚悟して、斑目は強く瞼を閉じた。
「……大丈夫? ユウくん」
「はい……ありがとうございます、ユメ先輩」
しかし痛みはやってこなかった。代わりに暖かくて柔らかいものに顔面を包まれる。ユメが斑目を受け止めたのだ。
疲れた身体にこれは駄目だった。匂いと体温と感触の全てが心地よく、このまま眠ってしまいたかった。
「ユウくん、疲れてる? 眠いの?」
「……ちょっとだけ」
「そう。じゃあ寝ていいよ。頑張った分、しっかり休まないと」
「はい……おやすみなさい……」
眠気に抗おうとするも、鼓膜を揺さぶる優しいユメの声と頭を撫でられる感触に、斑目は夢の中へとおちた。
眠りから覚めると、斑目は自分がユメに膝枕をされていることに気付く。
「ようやくお目覚め? マット一人で片付けるの、大変だったよ」
「あ、はは。ごめん……小鳥遊さん」
二人が動けない状況にあり、特にやることもなかったため、マットは全てホシノが片付けることになった。
そんな彼女から向けられる視線に、斑目は上体を起こし、頭を下げた。
「別にいいけど、何でいきなり『戦えるようになりたい』だなんて言い出したの?」
ホシノにそう問われ、斑目は俯く。
「……僕はさ、守られてばかりだから。少しでも役に立ちたいんだよ。僕もアビドスの一員なのに、襲撃があったら校舎の中に隠れて見守るばかり」
「銃を握らせて貰っても、筋肉が足りないのか才能がないのか、まともに的に当てられやしない……」
援護できるように銃を持たせて貰った時もあったが、的に当てられなかった。ホシノとユメに当たってしまう可能性を考え、斑目は銃を置いた。
戦闘において、彼は紛れもなく戦力外だったのだ。
「ユウくん、それは……」
「分かってます。ユメ先輩」
悲しそうに自分の背中に手を添えるユメに、斑目は続けた。
「僕は二人と違う。撃たれればすぐ死ぬ程、身体が弱くて脆い。現実は外に出た瞬間、二人の足手纏いです。鍛えたところでそれは変わらない。こんな何となくの護身術なんか、役に立つわけがない」
でも、と斑目は拳を握る。その瞳から涙が零れ落ちる。
「変わりたいんですよっ!!! 二人に並べるようにっ、守れるようにっ……! 結果は変わらないって分かっていても、ジッとしてはいられないんです……!!!」
「それでも僕は弱いからっ、ここを守るために誰かを殴れる勇気すらない……!!」
ホシノとユメは、つい先程のことを思い出す。
斑目は1度たりとも、自分達に対して蹴りの動作や殴る動作を見せなかった。
『何となくの護身術』という言葉からも、敵を倒すのではなく無力化することに主軸を置いていることが分かる。
「役立たずでっ……ごめんなさい……!!!!」
そんな心優しい後輩が。
そんな心優しい同級生が。
自分達の前で泣いている。それなら、すべきことは一つだった。
ユメは静かに縮まる斑目の身体を抱き締めて、ホシノは……ただ立ったまま、その頭を撫でてやった。
「そんなことないよ、ユウくん」
「斑目は役立たずじゃない。誰もそんなこと思ってない。私達は、斑目がいてくれるだけで助けられてるから」
「う、あぁぁぁぁぁっ……!!!!」
静かなアビドスで、一人の無力な少年の泣き声が響き続けた。
何で今、斑目が初めて自分の目の前で泣いた日を思い出したのか。
ホシノはそう自身に問う。
例えばそれは、デジャヴを感じた時に起こるものだろう。
誰かが体育館で泣いたとか、マットで作られたリングを見つけたとか、それこそ斑目のように、心優しそうな同年代の異性を見掛けたとか。
なのに。何故それを今思い出す??
「ぎゃん!!」
「いっ……!?」
「くあっ!?」
ホシノの目の前では、蹂躙とも呼べる『暴力』が行われていた。
その主は突然ヘルメット団と自分達の間に割り込んできた、介入者だ。砂埃の中で、的確にヘルメット団の数を減らしていく。
一撃で気絶しない相手には、動かなくなるまで腹部を殴り続け。
倒れる団員の片足を持ち、武器のように振り回したりもしていた。
殴る動作を見せた際、影ではあるものの、筋肉質な硬い印象を受ける腕をしていたことから、その者が男であることが分かる。
(斑目と、似ても似つかないのに……)
線が細くて、例え敵であろうと『暴力を振るうことの出来ない』心優しい斑目。
引き締まった男らしい身体を持ち、容赦なく『暴力で敵を沈めていく』目の前の男。
両者共に、身体も在り方も正反対であるのは一目瞭然だ。
なのに、とホシノはぐっと奥歯を噛む。
(なのに、何で斑目の顔が浮かぶのさ……!?)
男だからか。または他に、気付いてないだけで共通点があるのか。
ホシノは目の前の存在から目を逸らすように俯く。
これ以上彼を見てると頭がおかしくなりそうで、斑目を追いやった罪が痛みという形でジワジワと身体を蝕んだからだ。
「……い」
鈍い打撃音は消え、何者かの声が聞こえる。
「おい」
自分が何かに遮られてるのに気付き、ホシノは顔を上げる。
既に砂埃は消え、男の姿がはっきりとしていた。
「……怪我はないか?」
彼は身に着けた白い布を揺らし、こちらを見下ろしている。
顔にある仮面は、恐らく声を自動で合成音声に変えているのだろう。
「……ぜ〜んぜん大丈夫。お兄さん、強いんだねぇ。おじさん、びっくりしたよぉ」
「おじ……?」
……そんな男、信じられるわけがない。
戸惑ってるように見える男を前に、ホシノは笑顔を『貼り付ける』のだった。
だが彼女は気付かない。
その演技が完全ではないことに。
その証拠に、頬は微妙に引き攣って完璧な笑顔を作れていなかった。
それはつまり、完全に信頼できてないわけではないことを意味している。
心のどこかで、
ホシおじの上手く笑えてない表情が美し過ぎる……。
絶対匿名さん、ありがとうございます!
一つのイベントにつき、話数を使い過ぎ? 文字数とか内容を削った方がいい?
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使い過ぎ
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丁度良い
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寧ろ少ない!!