憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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ようやく俺が書きたかった、ホシノを書けたかもしれない……!


6.変わらない本質

 

 

 

 

 その場に立ち尽くすホシノと『顔無し(ノーネーム)』だったが、砂埃が消えたことで彼に気付いた先生が大声で呼び掛けたことで、それは解かれることになる。

 

 そして今、『顔無し』は先生の仲間ということでアビドスの面々に連れられ、アビドス廃校対策委員会の部室に来ていた。

 

 

「……なんか新鮮だね。武装した『顔無し』」

 

「使わないけどな。俺の場合、銃より殴る蹴るの方が早い」

 

 

 声を掛けてきた先生に、『顔無し』はそう言いながら部室に入る。彼はいくつもの銃器を首や腕にぶら下げていた。

 気絶したヘルメット団が起きた時に再び攻め込めないように、念のため奪っておいたのだ。

 彼を物色するように、シロコが彼を囲うように歩く。

 

 

「全部売れば結構なお金になりそう。助かる」

 

「ああ。金にするのはいいんだが……うーん。自衛のために先生に一つぐらい持たせてやるべきか?」

 

「……ん。確かにそうだね。先生、いる?」

 

 

 シロコと『顔無し』に顔を向けられ、先生は一度窓から外を見て、首を振った。

 

 

「私より、それはあの子達に渡して欲しいかな?」

 

 

 手招きをされ、窓に近付く『顔無し』。

 そこから見えたのは、武器を失い、肩を落としてトボトボとアビドス高等学校から離れていく、ヘルメット団の姿だった。

 

 

「……あー」

 

 

 仮面の下で、『顔無し』は眉尻を下げた。

 やった張本人が思うことではないが、庇護欲が生ずる程、今のヘルメット団が可哀想に思えたのだ。

 コテンパンにやられただけでなく、自分の武器さえ奪われた。

 『顔無し』の元にある銃器には、女子らしいストラップや装飾もされている。

 

 彼女達が、大事に扱ってきた証拠だ。

 

 

「流石に、これはやり過ぎだな……」

 

「うん。反省できて偉いね。『顔無し』」

 

「うるせぇやい」

 

 

 微笑む先生にそう言い、『顔無し』は攻撃されても困らない量の弾薬を詰めた銃器を抱え、校庭へ飛び降りた。そして、ヘルメット団の後を追いかける。

 

 

「おい」

 

「「「ひっ」」」

 

「攻め込んできた奴等がする反応かよ、それ……」

 

 

 追いついた『顔無し』が後ろから声を掛けると、短い悲鳴を上げてヘルメット団は身を寄せ合う。異性に生理的に無理という反応をされたように感じ、『顔無し』の声が少し小さくなった。

 彼は咳払いをし、ヘルメット団に下投げで銃器を渡す。

 

 

「ほら、持って帰りな。そして相棒(銃器)をお洒落にでもしてろ。二度と攻め込んでくるなよな」

 

「い、いいの……?」

 

「……言い出しっぺはシャーレの先生だ。あの人がいなきゃ、今頃そいつらは金に変わってたよ。だから感謝するなら、先生にするんだな。俺はただの使い走りだ」

 

 

 そう言って、ヘルメット団に背を向けて来た道を戻る『顔無し』。

 

 

「それと……二度目はないからな」

 

「っ」

 

 

 銃器を向けていた一人が息を呑んでから、ゆっくりと銃口を降ろす。

 目の前の男に勝てるビジョンが見つからない。ヘルメット団全員の胸中が一致した。

 彼女達は勝機がないことを悟ると、『顔無し』に背中を向けアビドスから去っていくのだった。

 

 

 

 

 

「おかえり、『顔無し』」

 

「……その顔やめてくれないか、先生。そんな顔向けられる歳じゃないし」

 

 

 先生は、銃器を向けられたにも関わらず見逃した『顔無し』を見て、嬉しく思っていた。それが笑顔という形で現れている。

 その顔で迎えられた『顔無し』は、合成音声だが少し気恥ずかしさを抱いているのか、ふいっと顔を背けた。

 

 

「あっ、皆。この素直じゃない子は『顔無し』。こんな見た目だけど、実は優しいし腕も立つから、警戒しなくて良いからね!」

 

「……よろしく」

 

 

 座ったまま、『顔無し』の腕を抱き寄せてくる先生。

 グイグイとされるたび腕に心地よい感触の胸が当たるが、『顔無し』は指摘せず、されるがままにした。

 指摘したら揶揄われる光景が簡単に思い浮かんだからだ。

 話が始まりそうだったので、優しく先生による腕の拘束を振り解き、『顔無し』は立ったまま壁に背をつけて、話を聞くことにした。

 

 

「あはは……少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します」

 

「私達は、アビドス対策委員会です。私は委員会で書記とオペレーターを担当している一年のアヤネ……。こちらは同じく一年のセリカ」

 

「どうも」

 

 

 アヤネに片手で示されたセリカが軽く挨拶する。

 

 

「二年のノノミ先輩とシロコ先輩」

 

「よろしくお願いします、先生〜。それと『顔無し』君も、よろしくお願いしますね〜」

 

「さっき、道端で最初に会ったのが、私……あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」

 

「うちの先生が大変お世話になりました」

 

「ん、気にしなくていい。『顔無し』」

 

 

 シロコに拾われていなければ、先生はどうなっていたか分からない。

 大恩人であるシロコに自然と敬語になり、『顔無し』は頭を下げる。彼女は両手を前にして首を振るだけだった。

 それを見て微笑むと、アヤネは視線を移す。

 

 

「そして、こちらは委員長の三年のホシノ先輩です」

 

「いやぁ〜よろしく、先生〜。あと『顔無し』君も、よろしくね〜」

 

 

 眠そうな様子で挨拶をしてくるホシノに、内心『顔無し』は驚いていた。

 斑目の日記を経由して、以前から彼女達の名前を『顔無し』は把握している。その中で唯一、ホシノは容姿も書かれていた。過去の姿は写真で確認済みだ。

 

 

(にしても、変わり過ぎだろ……)

 

 

 髪の毛が伸びている。

 ユメ先輩を思い起こさせるような恰好。

 自堕落な姿を見せる。

 

 正にその通りだ。記述に間違いはない。だが斑目の部屋で見た写真にあった、刺々しい目も雰囲気も感じられず、『顔無し』は目の前の人物が写真にあった少女と同一人物だとは、今でも思えなかった。

 実は姉妹です、と言われた方がまだ信じられる。

 

 驚く彼を時間は待たない。

 アビドス対策委員会全員の紹介を終えたアヤネは、現状の説明を始めた。

 

 

「ご覧になった通り、我が校は現在危機に晒されています……そのため『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました」

 

「あはは……それに至っては、私より『顔無し』が貢献してくれたよ」

 

「最初は敵かと思ったけどね……」

 

 

 セリカのジトっとした目に、『顔無し』は頭を掻く。

 

 

「悪かったよ。ここが襲われてるのが見えたからな。先生がいるかもと思ったら、居ても立っても居られなかった」

 

「……え? まさか『顔無し』、私が遭難してシロコ達に救助されることを予測してたの!?」

 

「……やっぱり遭難してたのか。いやまあ、事前知識なし且つ先生の身体じゃ仕方ないか」

 

 

 『顔無し』は持ち前の身体能力と体力で何とかなった。だが先生の体力と身体能力では出来る行動は限られている。

 さらに地図が更新されてないことも、砂漠化していることも知らなかったようなので、遭難するのは仕方ないだろう。

 

 

「俺はユウカからアビドス地区の話は聞いてたし、先生のメモも見たからな。ちょこちょこビルは建ってたし、その屋上から辺りを見回して、学校を探しただけだ」

 

 

 先生の捜索に手を貸してくれると思ったし、運良ければ先生が辿り着いてると思ってな、と『顔無し』は続けた。

 先生が目をパチクリとする。

 

 

「あ、じゃあ救助されるのを予測していたわけじゃないんだ」

 

「そこまで予測できるか。大体、俺はそういうキャラじゃないっての」

 

 

 うんっ、と咳払いをするアヤネ。そういえば話の途中だったと、先生と『顔無し』は黙った。

 

 

「何はともあれ。お二人がいなかったら、さっきの人達に学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません……」

 

 

 先生は弾薬の補給と戦闘の指揮。『顔無し』はその戦闘能力。

 そのお陰で対策委員会の負担は、普段より大幅に軽減された。そのことに対し、アヤネが再度礼を告げた。

 

 

「気にしないで! 先生として当然のことをしただけだから! それで皆が所属している、アビドス対策委員会って一体……?」

 

「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを甦らせるために、有志が集った部活です」

 

「へぇ……」

 

 

 仮面の中で、斑目の口角が吊り上がる。

 元のアビドスは分からないが、砂漠と化した今でも建物の跡があるため、近代的な街ではあったのだろう。

 

 窓から見えるこの砂だらけの風景。これをまた近代的な姿に戻すというのか。

 

 そんな不可能に近い目標を、強い意志を持って発言するアヤネ。対策委員会の全員も同様に、諦める様子はない。

 その事実に『顔無し』は感心した。

 

 

(直接見たわけじゃないけどさ。お前もこんな目をしてたんだろうな……斑目よ)

 

 

 胸が高鳴っている。

 『顔無し』は自身がアビドスを思う者達に心を打たれたのか、この身体(斑目ユウ)が意志を継いでくれてる後輩と同級生に喜んでるのか、その理由までは分からなかった。

 

 

「……ぇ。『顔無し』!」

 

「っ……先生か。どうした、そんな声張り上げて」

 

「はぁ……下見て下」

 

 

 溜息を溢しながら、下を見るよう指で促す先生に、『顔無し』は首を傾げながら言われた通りにする。

 

 

「うわっ」

 

「うへ〜」

 

 

 そこにはホシノが立っていた。

 『顔無し』を見上げるように立ち、にへらと笑みを浮かべている。

 

 

「『顔無し』くん。私の話、ちゃんと聞いてた〜? さっきから静かだなと思ってたけど、まさか寝てたわけじゃないよね?」

 

 

 いや、笑みを浮かべているけどこれは怒っている。

 ホシノからの威圧を感じ、『顔無し』はそう直感した。

 

 アビドス対策委員会とは何か、という話題から結構時間は経っているようだが、『顔無し』は今の話題が何なのか全く分かっていない。

 

 つまるところ、自分の世界に入って話を聞いていなかったのだ。

 

 

「……寝てない。それだけは言える」

 

「成程ねー。話を聞いてないっていうのは、否定しないんだ?」

 

「あー、それはな」

 

 

 頭を掻いて、『顔無し』はこの窮地を脱する方法を考える。

 つまるところ言い訳だ。しかし何を言っても、火に油を注ぐ結果になりそうだと感じ、先生に視線を寄越すも首を振られるのみだった。

 

 

「……悪い委員長。聞いてなかった」

 

「……うへ。最初からそう言ってくれれば良かったんだよ〜」

 

「っ?」

 

 

 ホシノは『顔無し』に背を向けて、自分の席に戻る。その背中を、『顔無し』は見つめる。緊張に身を包みながら。

 

 

 『観察』されていた……? 

 

 

 その額には冷や汗が流れる。

 先程の光景を思い出す。相変わらずホシノの目は緩んでいた。

 だがその開かれた黄色と青の瞳に、『顔無し』は全てを筒抜けにされているように感じたのだ。

 

 

「じゃあ、もう一度言うよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度はこっちから仕掛けよう。奴らの前哨基地を襲撃して損害を与えるよ。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」

 

 

(変わり過ぎ? 違うだろ)

 

 

 はっ、と『顔無し』は鼻で笑う。その対象は、見当違いも甚だしい評価を下した自分にだ。

 先程の観察然りこの発言然り、ホシノに関して『顔無し』は新たに分かったことがあった。

 

 

(本質は変わってないだろうが)

 

 

 今も現れている、斑目の部屋で見た過去の写真のような、攻撃的な性格が垣間見えるホシノの瞳を見て、『顔無し』はそう結論付けるのだった。

 

 






俺はホシノに怒られてェんだよ……!!!
過去ホシとホシおじ、それぞれの良さがある説教をされて、最終的には甘やかされてェんだ……ッ!!!

一つのイベントにつき、話数を使い過ぎ? 文字数とか内容を削った方がいい?

  • 使い過ぎ
  • 丁度良い
  • 寧ろ少ない!!
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